主KW: チャイルドシート
チャイルドシートは道路交通法で6歳未満の子どもを乗せる際の使用が義務づけられていますが、この義務化自体には購入費を補助する国の仕組みはありません。 義務化されている一方で費用は保護者が全額負担する、というのが国の基本形です。
その隙間を埋めているのが、市区町村が独自に設けている購入費補助・レンタル料助成です。 実施しているかどうか、補助額がいくらかは自治体によってまったく違います。ここでは実在する制度を例に、購入費補助とレンタル料助成という2つの型の違いを整理します。
チャイルドシートの義務化そのものにも例外がある
補助制度の前提として、チャイルドシートの使用義務そのものにも、道路交通法上の例外があります。
- 道路交通法第71条の3第3項では、「疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき」は、使用義務の対象外と定められています
- 「その他政令で定めるやむを得ない理由があるとき」も例外として定められています()
- これらの例外は「補助が受けられない」という話ではなく、「そもそも義務の対象外」という話です。 補助制度を調べる前に、自分の使用場面が義務の対象になっているかを確認しておくと混乱しません
なぜ「全国一律」ではなく自治体ごとの制度なのか
チャイルドシートの購入補助は、国の制度ではなく、市区町村が独自の子育て支援策として実施しているものです。 実施の有無・補助額は自治体の予算と方針次第で、隣の市区町村と大きく差が出ることがあります。
- 実施している自治体でも、対象年齢(多くは0〜6歳未満)、補助回数(1人1回〜2回まで等)、補助額が異なります
- 実施していない自治体も多くあります。まず、お住まいの市区町村が制度を持っているかどうかを確認することが最初のステップです
- 「近隣の市が補助を出しているから、自分の市も出るはず」とは限りません。 隣接する自治体でも制度の有無が分かれるのが実態です
購入費補助の実例
購入したチャイルドシートの費用の一部を、後から現金で補助する型です。
- 益子町(栃木県): 6歳未満の児童が使用するチャイルドシート・ジュニアシートの購入費について、費用の1/2相当額、上限1万円を補助
- かほく市(石川県): 児童1人につき最大2回まで、購入費の1/3、上限1万円を助成。国の安全基準に合格したチャイルドシート・ジュニアシートが対象
- 松川村(長野県): 4歳未満の子どもを対象に、購入価格の3分の1、上限1万円を補助金として交付
上限1万円という額が複数の自治体で共通していますが、これは国が定めた基準額ではありません。 各自治体が独自に設定している金額なので、実施していない自治体もあれば、条件次第でこれより高い・低い自治体もあります。
レンタル料助成の実例
購入費ではなく、レンタルにかかる料金の一部(または半額)を助成する型もあります。
- 松戸市(千葉県): チャイルドシートの購入費助成は行っておらず、レンタル料金の半額を助成する制度を実施
なぜ購入費でなくレンタル料を助成するのかというと、チャイルドシートは子どもの成長にあわせて何度も買い替えが必要になるためです。 新生児用・幼児用・学童用で対象年齢が分かれており、使う期間がそれぞれ1〜2年程度と短いことがあります。買い替えの都度、購入費を補助するより、必要な期間だけ借りて返す仕組みのほうが、家庭の負担も自治体の予算も抑えられるという考え方です。
レンタルと購入のどちらを選ぶべきかは「その製品を何年使う予定か」で決まります。 1年未満で買い替える見込みなら、レンタル料助成のある自治体ではレンタルの方が総支出は少なくなりやすく、2年以上使い続ける見込みなら購入費補助の対象になる製品を買う方が有利になる場合があります。
チャイルドシートの使用率は全国で8割程度(対象なのに使っていない家庭も一定数いる)
警察庁とJAF(日本自動車連盟)が毎年実施している調査によると、チャイルドシートの全国の使用率は8割程度で推移しています(2025年調査で82.4%)。
- 使用義務の対象になる家庭のうち、約2割は何らかの理由でチャイルドシートを使用していないという調査結果です
- 正しく取り付けられていた割合、正しく座らせられていた割合はさらに低く、「持っている」ことと「正しく使えている」ことは別だとわかります
- 購入費補助・レンタル助成は、経済的な理由でチャイルドシートを用意できない家庭を後押しする役割を持ちますが、取り付け方法や座らせ方の正しさまではカバーしません
補助を使って購入した場合も、取扱説明書に沿った正しい取り付け方を確認しておくことが、義務を守る以上に子どもの安全そのものに直結します。
対象になるチャイルドシートの条件
補助の対象になるかどうかは、製品そのものの基準を満たしているかどうかにもかかっています。
- 国の安全基準に合格した製品であること(国土交通省の認定マークが付いているもの)が、多くの自治体で条件になっています
- 中古品・譲り受けたもの・レンタル品の購入(買い取り)は対象外になる自治体があります
- 領収書に購入者名・購入日・品名・金額・販売店名が記載されていることを求める自治体が多くあります
「安いから」「知人から譲ってもらったから」という理由で選んだ製品が、補助の対象外になることがあります。補助を使う前提であれば、購入前に対象製品の条件を確認しておく方が確実です。
申請の流れ(自治体ごとに異なる)
多くの自治体では、購入後に申請する形が一般的ですが、一部の自治体では購入前の申請・決定が必要です。
- 購入前に確認しておくこと: 補助の対象になる製品の条件(安全基準マーク等)、補助額、申請の受付期間
- 購入: 対象製品を購入し、領収書を保管します
- 申請: 申請書、領収書の写し、(自治体によっては)製品の取扱説明書や振込先口座の写しを提出します
- 交付: 審査を経て、指定した口座に補助金が交付されます
購入前に申請・決定を必要とする自治体で、先に購入してしまうと補助の対象外になることがあります。 チャイルドシートは出産前後の慌ただしい時期に準備することが多いため、購入前に一度、自治体の窓口に手順を確認しておくことをおすすめします。
チャイルドシートの使用義務そのものには補助がない
チャイルドシートの購入補助を調べる前に押さえておきたいのは、チャイルドシートの使用自体は道路交通法で定められた義務であり、この義務化には国の補助制度が付いていないという点です。
- 道路交通法上、6歳未満の子どもを自動車に乗せる保護者は、チャイルドシートを使用させる義務があります
- この義務を守るための費用(購入費)を補助するかどうかは、各市区町村の判断に委ねられています。 国が一律に補助する制度ではありません
- そのため、「義務があるなら補助もあるはず」という思い込みは成立しません。 補助の有無はあくまで、お住まいの自治体が独自に用意しているかどうかにかかっています
義務化と補助制度が別々に決まっているとわかると、「なぜ自治体によって補助の有無が分かれるのか」も理解しやすくなります。 義務は全国共通でも、それを支える予算は自治体ごとの子育て支援策の一部として組まれているためです。
新安全基準(R129・i-Size)への切り替えで対象条件が変わる場合がある
チャイルドシートの安全基準は、従来の「ECE-R44」から、2017年以降「R129(i-Size)」への移行が進んでいます。 この基準の違いは、補助金の対象条件にも関わってきます。
- 旧基準(R44): 体重を基準にサイズを選ぶ規格。側面衝突の試験基準がありません
- 新基準(R129・i-Size): 身長を基準にサイズを選ぶ規格。側面衝突試験が追加され、後ろ向き設置の推奨期間も延びています
現時点でR44の製品も国内で販売・使用が認められていますが、自治体によっては「現行の安全基準に適合した製品」であることを補助の条件にしている場合があります。 どちらの基準の製品でも一律に補助対象になるとは限らないため、購入前に対象製品の基準がどちらを指しているかを確認しておく必要があります。
購入費補助以外に「無料レンタル」の制度もある
購入費の補助・レンタル料の助成とは別に、チャイルドシートそのものを無料で貸し出す事業を実施している自治体もあります。
- 坂出市(香川県): 市民から譲り受けたチャイルドシートを再利用する形で、子育て中の家庭に無償で貸し出す事業を実施
- 流山市(千葉県): 最大180日間、利用料金無料で貸し出し(返却時のクリーニング料は実費負担)。延長や再度の貸出はできません。市内在住・有効な運転免許証を持ち、6歳未満の乳幼児を養育している方が対象で、貸出希望日の5日前までに予約が必要です
- 都道府県の交通安全協会が、会員向けに1か月程度の無償貸出しを行っている例もあります
無料貸出事業は、新生児期など使用期間がとくに短い時期に向いています。 購入費補助・レンタル料助成・無料貸出のどれを使うかは、「その製品をどれくらいの期間使う予定か」で選ぶ基準が変わります。 短期間だけ必要なら無料貸出や交通安全協会のレンタルを、長く使う予定なら購入費補助のある自治体で購入する、という組み合わせ方ができます。
出産・子育て応援交付金との違い
「子育て」を対象にした国の給付制度に、出産・子育て応援交付金があります。これはチャイルドシート購入補助とは別の制度で、混同しないよう整理しておく必要があります。
- 出産・子育て応援交付金: 妊娠届出時・出生届出後にそれぞれ5万円相当(現金またはクーポン等)が給付される国の制度。使い道はベビー用品・産後ケア・子育て支援サービス等、幅広く指定されています
- チャイルドシート購入補助: 市区町村が独自に実施する制度で、チャイルドシート・ジュニアシートの購入・レンタルに限定されています
出産・子育て応援交付金のクーポンでチャイルドシートを購入し、さらに自治体独自のチャイルドシート補助を併用できる場合があります。 併用の可否は自治体の運用によって異なるため、両方の制度がある自治体では、担当窓口に確認してから購入する順番を決めるとよいでしょう。
出産・子育て応援交付金とチャイルドシート補助は併用できる場合が多い
出産・子育て応援交付金と、市区町村独自のチャイルドシート購入補助は、制度としては別物なので、原則として併用が可能です。
- 出産・子育て応援交付金のクーポン・現金でチャイルドシートを購入し、その領収書を使って、さらに自治体独自のチャイルドシート補助を申請する、という流れが基本になります
- ただし、交付金のクーポンを使った購入が、チャイルドシート補助の対象になるかどうかは自治体の運用によって異なります(クーポン利用分を補助の対象額から除く自治体がある可能性があります)
「どちらか一方しか使えない」と思い込んで、安い方を選んでしまうと、使えたはずの補助を見逃すことになります。 両方の制度がある自治体では、購入前に子育て支援窓口へ「両方を併用できるか」を確認してから買う順番を決めるとよいでしょう。
兄弟姉妹が複数いる家庭での考え方
複数の子どもがいる家庭では、チャイルドシートの購入・補助を子どもの数だけ独立して考える必要があります。 上の子のときに補助を使ったからといって、下の子のときに使えなくなるわけではありません。子どもが生まれるたびに、あらためて対象製品と手続きを確認する習慣をつけておくと安心です。
- 上の子が使っていたチャイルドシートを下の子に譲る場合、購入費補助の対象にはなりません(新規購入ではないためです)
- かほく市のように「児童1人につき最大2回まで」補助を出す自治体もありますが、この「2回」は同じ子どもの買い替え分を指すもので、兄弟姉妹それぞれに新たに1回分の権利が発生する制度が一般的です
- 年齢が離れた兄弟姉妹の場合、上の子のチャイルドシートが古い安全基準の製品になっていることがあります。下の子に譲る前に、現在の基準に適合しているかを確認しておくと安全面でも安心です(事故歴がある製品の再利用も避けるべきとされています)
お住まいの自治体で確認する方法
チャイルドシートの購入補助・レンタル助成があるかどうかは、次の手順で確認できます。
- お住まいの市区町村の公式サイトで「チャイルドシート 補助」「チャイルドシート 助成」を検索する
- 市区町村の子育て支援担当課(子育て支援課・こども家庭課等)に電話で問い合わせる
- 母子健康手帳の交付時や、妊娠届出時の案内に制度の記載がある場合もあります
制度が無い自治体も多いため、「補助があるはず」という前提で予算を立てず、購入前に確認してから計画する方が確実です。
里帰り出産で一時的に別の市区町村に住んでいる場合、補助を申請できるのは原則として住民票のある自治体です。 里帰り先の自治体の制度を探しても、住民票が無ければ対象外になることが一般的なので、住民票のある市区町村の制度を確認してください。引っ越しの予定がある場合も同様に、転居先の自治体で制度の有無・条件が変わることがあるため、購入前に確認しておくと安心です。
問い合わせの際は、①子どもの生年月日(または出産予定日)、②検討している製品の種類(新生児用・幼児用・ジュニアシート)、③購入予定時期の3点を伝えると、担当窓口からの案内がスムーズになります。 制度の有無だけでなく、申請の順番(購入前か購入後か)もあわせて確認しておくと、当日になって慌てずに済みます。
よくある質問
チャイルドシートの購入補助はどこの自治体でも受けられますか?
いいえ。国の一律の制度ではなく、市区町村が独自に実施しているものです。実施していない自治体も多くあります。お住まいの市区町村の公式サイトや子育て支援窓口で確認してください。
補助額の上限はいくらですか?
自治体によって異なります。益子町・かほく市・松川村のように上限1万円(購入費の1/2〜1/3)とする自治体が多く見られますが、これは共通の基準額ではなく、自治体ごとに独自に決めている金額です。
中古のチャイルドシートを購入した場合も補助の対象になりますか?
自治体によって異なりますが、中古品や譲り受けたものは対象外になる場合があります。購入前に、対象製品の条件(新品限定かどうか、安全基準マークの有無)を確認してください。
購入前に申請しないと補助を受けられませんか?
自治体によって異なります。多くは購入後の申請ですが、一部の自治体では購入前の申請・決定が必要です。先に購入すると対象外になる自治体もあるため、購入前に手順を確認しておくことをおすすめします。
レンタルでも助成を受けられますか?
自治体によります。松戸市のようにレンタル料金の半額を助成する自治体もあれば、購入費のみを対象にする自治体もあります。使用予定期間が短い場合は、レンタル助成がある自治体かどうかを確認する価値があります。
古い安全基準(R44)のチャイルドシートは補助の対象になりませんか?
自治体によります。R44の製品は現在も販売・使用が認められていますが、自治体によっては「現行の安全基準に適合した製品」であることを条件にしている場合があります。購入前に、対象製品の基準がどちらを指しているかを確認してください。
出産・子育て応援交付金のクーポンで購入した分も、自治体独自のチャイルドシート補助の対象になりますか?
自治体の運用によって異なります。原則として2つの制度は別物なので併用できる場合が多いですが、クーポン利用分を補助の対象額から除く自治体がある可能性があります。購入前に子育て支援窓口へ確認しておくと確実です。
チャイルドシートの使用義務が免除されるのはどんな場合ですか?
道路交通法第71条の3第3項では、疾病のため幼児用補助装置の使用が療養上適当でない幼児を乗車させる場合、その他政令で定めるやむを得ない理由がある場合が、使用義務の対象外と定められています。義務の対象外であることと、購入補助が受けられるかどうかは別の話なので、混同しないよう注意してください。
上の子が使っていたチャイルドシートを下の子に譲る場合、補助は受けられますか?
新規購入ではないため、購入費補助の対象にはなりません。かほく市のように「児童1人につき最大2回まで」と定める自治体もありますが、これは同じ子どもの買い替え分を指すもので、譲り受けには適用されません。譲り受ける場合は、現在の安全基準に適合しているか、事故歴がないかを、新品を購入するときと同じくらい丁寧に確認してから使用してください。安全に関わる判断なので、迷ったら販売店や自治体の窓口に相談することをおすすめします。
