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HACCP対応で使える補助金|輸出向けと国内向けの違い

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「HACCP 補助金」を探す方は、大きく2つの目的に分かれます。海外への食品輸出のためにHACCPなどの認証を取得したいのか、国内向けに衛生管理を強化したいのかです。この2つでは使える制度がまったく違うため、まず自社の目的を整理してから制度を選ぶ必要があります。

この記事では、輸出向けの専用補助金と、国内向けに使える汎用型補助金の両方を整理し、対象経費・補助率を一次情報にもとづいて解説します。

HACCPは食品衛生法の改正で全事業者に義務化された衛生管理の手法であり、対応の要否そのものに選択の余地はありません。問われるのは「どこまでの設備投資をするか」「輸出も見据えるか」という判断であり、そこに補助金をどう組み合わせるかが実務上のポイントになります。

HACCPとは(前提の確認)

HACCP(ハサップ)は、食品の製造・加工工程で危害要因を管理する衛生管理の手法です。制度としての補助金の名前ではなく、「衛生管理の手法」そのものを指す点をまず押さえておきましょう。日本では、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されています(保健所への営業許可申請等を通じて確認される仕組みになっています)。

「HACCP認証」という言葉もよく使われますが、これは民間団体や自治体等が発行する第三者認証のことで、義務化されたHACCPに沿った衛生管理とは別の、任意で取得する上位の認証を指すことが多い点によく注意が必要です。

「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の違い

食品衛生法の改正により、令和3年6月1日からHACCPに沿った衛生管理が制度化され、原則すべての食品等事業者に取組が義務化されました。 この義務化には、事業者の規模に応じて2つの基準があります。

  • HACCPに基づく衛生管理(旧基準A): と畜場・食鳥処理場、および食品の製造・加工に従事する従業員数が50名を超える大規模事業者が対象。国際基準に沿った、より厳格な手順(7原則12手順)にもとづく衛生管理が求められる
  • HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧基準B): 上記以外の中小規模の事業者が対象。各業界団体が作成した手引書を参考に、簡略化されたアプローチで衛生管理を行うことが認められている

多くの中小の食品事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧基準B)」の対象になります。 「HACCP対応」と一口に言っても、自社がどちらの基準に該当するかによって、求められる衛生管理の厳格さも、必要になる設備投資の規模も変わってきます。補助金を検討する前に、まず自社がどちらの基準に該当するかを保健所等に確認しておくと、必要な投資の見通しが立てやすくなります。

輸出目的: 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(農林水産省)

海外への食品輸出を目的にHACCP等の認証を取得する場合、農林水産省の「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」が代表的な制度です。

  • 対象者: 農林水産物・食品の輸出事業者(食品産業事業者)
  • 補助率: 2分の1以内
  • 対象経費: 輸出先国・地域が求める規制等への対応に必要な、施設の新設・改修、機器の整備費用。認定・認証取得に向けたコンサルティング費、人材育成に係る研修費等も対象
  • 申請窓口: 都道府県。事前に都道府県窓口へ相談・審査を経てから申請する仕組み

上限額は予算区分(当初予算か補正予算か)によって年度ごとに大きく異なります。 過去の公募では上限が数億円規模になった実績もありますが、最新の公募要領で必ず金額を確認してください。年度が変われば水準も変わり得ます。

この制度は輸出を前提としているため、国内市場向けの衛生管理強化だけを目的とする場合は対象になりません。 輸出計画があるかどうかが、この制度を使えるかどうかの分かれ目です。

輸出先国によって求められる基準が違う

輸出向けのHACCP対応で見落とされがちなのが、輸出先の国・地域によって求められる衛生管理基準が異なるという点です。

  • 米国向け: FDA(米国食品医薬品局)の基準に沿った施設・記録の整備が必要
  • EU向け: EU独自のHACCP認証(対EU HACCP等)の取得が必要な品目がある
  • 中国・その他アジア向け: 相手国が指定する検査機関の認定や、施設の事前登録が必要になる場合がある

「HACCP対応」とひとくくりにせず、輸出したい国・地域ごとに必要な認証・登録が異なることを前提に計画を立てる必要があります。輸出向けHACCP等対応施設整備事業の対象経費も、この「輸出先国が求める規制等への対応」という枠組みで整理されているため、まず輸出先を確定させることが、対象経費を正確に把握する第一歩になります。

HACCPに沿った衛生管理を行わないとどうなるか

HACCPに沿った衛生管理は法律で義務化されているため、取り組んでいない場合、保健所の指導・改善命令の対象になることがあります。 営業許可の更新時や立入検査の際に、衛生管理の実施状況が確認される仕組みです。

  • 軽微な不備: 口頭または文書での指導・改善指示にとどまることが多い状況
  • 重大な不備・改善が見られない場合: 営業停止等の行政処分に至る可能性があるので注意が必要

「補助金が無いから対応しない」という選択肢は、法律上想定されていません。 補助金はあくまで対応にかかる費用負担を軽くするための後押しであり、対応そのものは補助金の有無にかかわらず必要という前提を押さえておく必要があります。

国内向け: 汎用型の補助金でHACCP対応設備を導入する

国内市場向けにHACCP対応の設備(冷蔵・冷凍設備、温度管理システム、動線を分離するための改修等)を導入したい場合は、HACCP専用ではない汎用型の補助金を活用する事業者が多く見られます。

  • 小規模事業者持続化補助金: 販路開拓等に取り組む小規模事業者向け。HACCP対応の設備投資が「販路開拓のための取組」として位置づけられれば対象経費になり得る
  • ものづくり補助金: 生産性向上のための設備投資を支援する制度。HACCP対応の製造ラインの改修等が「革新的な製品・サービスの開発」「生産プロセスの改善」の一環として計画に組み込まれれば対象になり得る

いずれも「HACCP対応」という名目だけでは対象にならず、事業計画の中でどう位置づけるかが審査のポイントになります。 ここは事業計画の書き方次第で採否が変わり得るグレーな領域で、具体的な位置づけ方・書き方のコツはこの記事では扱いません。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は「業界団体の手引書」から始める

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧基準B)」の対象になる中小規模の事業者は、多くの場合、大きな設備投資を伴わずに対応を進めることができます。

  • 各業界団体(飲食店・惣菜・製菓・食肉等)が作成した「手引書」に沿って、日々の温度管理・記録を丁寧につける
  • 既存の冷蔵庫・調理設備に、温度計や記録表を導入する程度でも十分対応できるケースが多い
  • 大規模な改修・新規設備投資が必要になるのは、記録の自動化(IoT機器の導入)や、動線分離のための工事等、より高度な対応を目指す場合に限られる

「HACCP対応=高額な設備投資が必要」というイメージを持っている事業者もいますが、旧基準Bに該当する中小事業者の多くは、手引書に沿った運用の見直しだけで義務を果たせます。 補助金を検討する前に、まず自社が本当に大きな設備投資を必要としているのか、業界団体の手引書を確認して切り分けることが、無駄な投資を避ける第一歩です。「補助金があるから設備投資をする」のではなく、必要な投資かどうかを先に見極める姿勢が大切です。

都道府県・自治体独自のHACCP関連補助金

農水省の輸出向け事業とは別に、都道府県によってはHACCP導入を支援する独自の補助金・融資制度を持っている場合があります。 埼玉県・大阪府・北海道などは、農水省の輸出向け事業の窓口として公式ページを設けていますが、これとは別に、食品衛生法の改正(HACCPに沿った衛生管理の義務化)を受けて、中小の食品事業者向けに専門家派遣や設備導入の支援を行う自治体もあります。

「(お住まいの都道府県名) HACCP 補助金」で個別に確認することをおすすめします。全国一律の制度ではないため、実施の有無・内容は都道府県ごとに大きく異なります。実施していない自治体もあるため、無い場合は国の制度(輸出向け施設整備事業や汎用型補助金)を優先して検討することになります。

都道府県の担当窓口は、農政部・産業労働部・保健福祉部等、部署の名称も自治体によって異なります。「HACCP」というキーワードだけで検索しても目的の窓口にたどり着けないことがあるため、「食品衛生」「食品産業振興」といった関連キーワードもあわせて検索してみることをおすすめします。見つからない場合は、まず商工会議所や農政部の代表番号に問い合わせるのも一つの方法です。

専門家への相談も選択肢になる

HACCP対応・補助金の申請計画に不安がある場合、認定経営革新等支援機関(国が認定した支援機関で、商工会議所・金融機関・税理士・中小企業診断士等が該当)に相談する方法があります。

  • 商工会議所・商工会: 小規模事業者持続化補助金の申請時に必要な「事業支援計画書」の発行元にもなる存在
  • 中小企業診断士: 事業計画の作成支援、生産性向上計画の策定支援等の専門的サポート
  • 保健所: HACCPの制度そのものについての相談窓口(補助金の相談窓口ではない点に十分注意)

HACCPの制度に関する相談は保健所、補助金の申請計画に関する相談は商工会議所・中小企業診断士等というように、相談先を使い分けることで、それぞれの専門性を活かした支援を受けられます。どこに相談すればよいか迷った場合は、まず商工会議所に問い合わせるとスムーズです。

HACCP対応でよく発生する費用の内訳

補助金を検討する前に、HACCP対応にどのような費用がかかるかを把握しておくと、対象経費に当てはまるかどうかを判断しやすくなります。

  • 施設・設備費: 温度管理が可能な冷蔵・冷凍設備、手洗い設備の増設、動線分離のための間仕切り工事等
  • 記録・管理システム費: 温度・時間等の記録を自動化するIoT機器やソフトウェア
  • コンサルティング費: HACCPプランの作成支援、外部専門家への相談費用
  • 研修費: 従業員向けの衛生管理研修

このうち、輸出向け施設整備事業の対象になるのは主に施設・設備費とコンサルティング費・研修費です。記録・管理システムのIT化は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象になる可能性もあるため、目的に応じて複数の制度を組み合わせることも検討できます。

省力化のための機器(自動計量機、自動洗浄機等)を導入する場合は、人手不足対応に特化した省力化投資補助金が使える可能性もあります。「HACCP対応」という切り口だけで探すと選択肢が狭く見えますが、実際に導入したい設備の性質(生産性向上・省力化・輸出対応等)で探し直すと、使える補助金の選択肢が広がることがあります。

対米・対EU輸出は準備期間が長くなりやすい

米国・EU向けの輸出では、施設整備だけでなく、現地の規制当局への施設登録や、定期的な査察対応が求められることがあります。

  • 米国向け: FDAへの食品施設登録(Food Facility Registration)が必要になる場合がある
  • EU向け: 対EU HACCP認証施設としての承認プロセスに数か月〜1年程度の時間がかかることもある

施設整備の補助金が採択されても、輸出開始までの全体スケジュールはそれだけでは決まらないという点を理解しておく必要があります。 認証取得・現地当局とのやり取りにかかる期間も見込んだうえで、輸出開始の目標時期から逆算して補助金の申請時期を決めることを強くおすすめします。

HACCP対応のシミュレーション(2つのケース)

ケース1: 国内向けの中小食品製造業者(惣菜製造)

自社の惣菜製造ラインで、動線分離のための間仕切り工事(200万円)と、温度記録の自動化システム(100万円)を導入するとします。旧基準Bの対象事業者であるため、義務としては業界団体の手引書に沿った記録で足りますが、生産性向上や品質向上を目的に、より高度な設備投資を計画している場合、ものづくり補助金(補助率1/2、対象になれば100万円程度の助成)等の汎用型補助金の活用を検討できます。

ケース2: 米国向け輸出を計画する水産加工業者

米国のFDA基準に対応するための施設改修(3,000万円)を計画する場合、食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(補助率1/2)が使えれば、1,500万円の助成を受けられる可能性があります。ただし都道府県への事前相談・審査を経る必要があり、着工前の準備期間を見込んでおく必要があります。

申請前に確認すべきタイミング

輸出向けHACCP等対応施設整備事業は、都道府県への事前相談が前提になっている点が特徴です。

  1. 自社の輸出計画(輸出先国・品目)を整理する
  2. 都道府県の窓口(農政部等)へ事前相談する
  3. 都道府県での審査を経て、国への申請書類を提出する
  4. 交付決定を受けてから、施設整備・機器導入に着手する

交付決定より前に着工・発注してしまうと、その部分は補助対象外になります。 これは他の多くの補助金と共通するルールですが、施設整備は着工までの準備期間が長くなりがちなため、特に注意が必要です。

施設整備は、着工から完成までの工期自体も長くなりがちです。 交付決定を待ってから着工する分、事業計画全体のスケジュールに余裕を持たせておく必要があります。輸出計画のスケジュール(取引先との契約時期等)と、補助金の交付決定・工期を照らし合わせ、無理のない計画を立てることが重要です。

まとめ: 目的を先に決めてから制度を選ぶ

HACCP対応で使える補助金は、「輸出目的か、国内向けか」という最初の分岐で選ぶべき制度がまったく変わります。

  • 輸出目的: 農林水産省の食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(補助率1/2)
  • 国内向け(旧基準Bの手引書対応): 大きな設備投資は不要なことが多く、まず業界団体の手引書を確認する
  • 国内向け(設備投資を伴う場合): 小規模事業者持続化補助金・ものづくり補助金等の汎用型補助金
  • 都道府県独自の制度: 実施の有無・内容を個別に確認する

「HACCP 補助金」という一つのキーワードだけで探すのではなく、自社の目的(輸出の有無・投資規模)を明確にしてから制度を絞り込むことが、遠回りに見えて一番確実な進め方です。義務化対応と補助金活用を切り分けて考えることが、無理のない計画につながります。

よくある質問

HACCPの認証取得費用そのものは補助の対象になりますか?

輸出向けHACCP等対応施設整備事業では、認定・認証取得に向けたコンサルティング費が対象経費に含まれています。ただし、認証機関に支払う審査手数料そのものが対象になるかは制度・年度によって異なるため、公募要領できちんと個別に確認してください。

個人事業主でもHACCP関連の補助金は使えますか?

小規模事業者持続化補助金は個人事業主も対象です。輸出向け施設整備事業は法人・個人を問わず「食品産業事業者」であれば対象になり得ますが、輸出実績・計画の有無が前提になる点に注意してください。

HACCPに対応していないと営業できませんか?

食品等事業者は原則としてHACCPに沿った衛生管理を行うことが法律で義務化されています。ただし小規模な事業者には、より簡略化した基準(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)が適用される場合があります。詳細は最寄りの保健所にご確認ください。

飲食店(レストラン・カフェ等)もHACCP補助金の対象になりますか?

飲食店の多くは、従業員数の規模から「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧基準B)」の対象になります。輸出向け施設整備事業は輸出を行う食品産業事業者が対象のため、一般的な飲食店単体では対象になりにくい制度です。国内向けの設備投資であれば、小規模事業者持続化補助金等の汎用型補助金の活用を検討できます。まずは自店が輸出を行うかどうかで、検討すべき制度を絞り込みましょう。

自分の業種の手引書はどこで確認できますか?

厚生労働省のウェブサイトに、業界団体別の手引書一覧が掲載されています。飲食店、惣菜、食肉、菓子製造等、業種ごとに手引書が用意されているため、自社の業種に該当する手引書を確認することで、必要な衛生管理の水準を具体的に把握できます。該当する業界団体が無い場合は、保健所に相談してみましょう。

輸出向けHACCP等対応施設整備事業は毎年公募されますか?

過去の実績では、当初予算・補正予算それぞれのタイミングで複数回募集が行われています。ただし年度によって公募回数・予算規模は変わるため、農林水産省の公式ページで常に最新の募集状況を確認する必要があります。募集が締め切られる前に、余裕を持って準備を進めておくことをおすすめします。

HACCP認証(第三者認証)を取得する費用はどの補助金で対象になりますか?

輸出先国によっては、任意の第三者認証(対米HACCP認証、対EU HACCP認証等)の取得が輸出の条件になることがあります。この場合、輸出向けHACCP等対応施設整備事業の「認定・認証取得に向けたコンサルティング費」の枠で対象になる可能性がありますが、認証機関に支払う審査手数料そのものが対象になるかは、そのつど公募要領で個別に確認する必要があります。

中古の設備を導入する場合も補助金の対象になりますか?

制度によって扱いが異なります。多くの補助金では、新品の設備・機器の導入を前提としており、中古設備は対象外、または対象になっても適正な価格評価(複数の見積もり取得等)が求められることが一般的です。導入を検討している設備が中古の場合は、申請予定の制度の対象経費の条件を事前によく確認してください。安価だからといって安易に選ぶと、後から対象外と判明する場合もあるため注意が必要です。

免責事項: 本記事の内容は2026年9月時点で確認できた情報にもとづきます。補助率・上限額・対象経費は年度ごとの予算や公募要領により変更されるため、申請前に必ず農林水産省・お住まいの都道府県の公式ページでご確認ください。

この補助金について、専門家に相談する

対象になるか、いくら出るか、いつまでに何を用意するか。 申請の可否で迷ったら、補助金を扱う専門家に確認するのが確実です。相談は無料です。

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出典(一次情報)

この記事を書いた人
まっさん。|元経営者
補助金で会社を立て直した元経営者

補助金で会社を立て直した元経営者。資金繰りに悩んだ末に補助金を活用して事業を再建した経験から、中小企業・個人事業主が“本当に使える補助金”とその活かし方を発信しています。掲載内容は公募要領などの一次情報をもとに整理しています。

本記事は情報提供を目的としており、補助金の採択・交付を保証するものではありません。 補助上限額・補助率・締切等の内容は変更される場合があります。申請にあたっては、必ず 公式サイト・最新の公募要領をご確認ください。