旅館の解体費を国が補助する、と聞くと、持ち主が1人で申請できそうに見えます。実際は違います。この補助金は、地方公共団体と一緒に「エリア再生計画協議会」を作り、跡地を引き継ぐ後継事業者の見通しを示した団体だけが入口に立てる制度です。
観光庁の事業で、補助は1次・2次支援の合計で最大6億円です。1次支援(計画づくり)の受付は2027年2月26日12:00までの随時審査で、予算の上限に達すれば先に終わることもあります。
廃屋撤去・温泉地まちづくり支援の要点まとめ
正式名:廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業
だれが
- 申請者
- 協議会の構成員(地方公共団体・民間企業・個人事業主・一般社団法人・NPO法人等)
- 対象業種
- 業種の指定なし(廃屋の用途も問わない)
- 利用目的
- 計画策定・廃屋調査(1次)/廃屋の撤去・減築・周辺事業(2次)
- 対象地域
- 全国(地方温泉地等の観光の中心地)
- 従業員数
- 規定なし
いくら
- 補助上限額
- 最大6億円(1次・2次の合計。周辺事業は延床面積に応じて1億〜3億円)
- 補助率
- 1次支援2/3(2次は撤去・減築2/3、周辺事業1/2、コア周辺事業2/3)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年7月1日12:00〜2027年2月26日12:00(1次・随時審査)
- 事業の完了
- 2次の撤去・減築は交付決定後、最長で翌年度2月末まで
何から始めればいい?
この制度は2段階です。先に出せるのは1次支援だけで、2次支援は「1次支援で採択され、エリア再生計画ができた後」に案内されます。
- 1次支援:エリア再生計画をつくる費用と、廃屋の調査費を補助する(補助率2/3)
- 2次支援:廃屋の撤去・減築費と、周辺事業費を補助する(案内は1次支援の採択後)
解体費だけをいきなり申請する道はありません。 最初の動きは、事務局(株式会社ダイブグループ)の無料の事前相談です。対象に当たるかを、申請前に確かめられます。
自分の廃屋や団体は対象になる?
次の条件にすべて当てはまれば、1次支援に進める見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 7
観光の中心地とは、観光振興計画などで観光エリアの中心と位置づけられ、周辺に観光資源・宿泊施設・商店が集まっている場所です。使用停止は建物の大部分についてで、協議会には地方公共団体と申請者が入ります。
再生をしたい事業者は、意向を示した民間事業者です。廃屋を以前運営していた旧経営者やその関係者ではない、新しい事業者であることが基本です。
次のどれかに当たると対象外、または対象になりにくくなります。
- ✕ 所有権がすでに後継事業者に渡っている
- ✕ 撤去せず所有者が改修して使う計画
- ✕ 譲渡に応じない意思の権利者がいる
- ✕ 跡地の再生施設が公設民営
- ✕ 再生施設の延べ床面積が廃屋より大きい
市区町村が撤去済みの土地なら、所有権が後継事業者に渡っていても対象外になりません。所有者がそのまま改修・リノベーションする費用は対象外です。2次支援は、再生施設が民間施設で、延べ床面積が廃屋と同等以下であることが条件です。
いくらもらえる?
補助額の総額は、1次・2次の合計で6億円が上限です。そのうち周辺事業(跡地まわりの観光施設の整備など)は、廃屋の延べ床面積で上限が変わります。
| 廃屋の延べ床面積 | 周辺事業の補助上限 |
|---|---|
| 3,000㎡未満 | 1億円 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 2億円 |
| 5,000㎡以上 | 3億円 |
補助率は費用の種類で違います。
- 1次支援(計画策定費・廃屋の調査費):2/3
- 廃屋の撤去・減築費:2/3
- 周辺事業費:1/2(廃屋の再生に特に欠かせない「コア周辺事業」は2/3で、補助総額の上限は1億円)
計算の例です。金額は仮のものです。
- 1次支援:計画策定の委託費と構造調査・アスベスト調査の見積が合計900万円 → 900万円 × 2/3 = 600万円
- 撤去・減築:解体の見積が3億円 → 3億円 × 2/3 = 2億円
- 周辺事業が上限に当たる例:延べ床面積2,800㎡の廃屋で、周辺事業が3億円 → 3億円 × 1/2 = 1億5,000万円 → 3,000㎡未満の上限1億円
延べ床面積が3,000㎡に届かない廃屋は、周辺事業の補助が1億円で止まります。計画を組むときは、先にここを見ておくと整理しやすくなります。
何に使える?
対象外の経費が公募要領に細かく並んでいます。1次支援のぶんを先に挙げます。
対象にならないもの
- 再生後の施設の建築等にかかる費用
- 土地の取得・賃借の費用(地代・借地料・抵当権の解除費用など権利関係の清算費用を含む)
- 既存建物の通常の維持管理・修繕・保全の費用
- 補助事業にあたる人件費・旅費、事務所の家賃・光熱水費などの経常的な経費
- 交付決定前(または完了実績報告後)に発生した経費
- 不動産の購入費、登記費用、振込手数料
対象になるもの
- エリア再生計画の策定費(協議会の運営費・会議費、策定の委託費、事前調査費、専門家を招く費用)
- 廃屋と土地の調査費(構造調査費、アスベスト調査費)
- 2次支援では、廃屋の撤去・減築費(新しい宿泊施設の建築費は対象外)と周辺事業費
申請の流れは?
1次支援の流れです。電子申請のみで、郵送・持参は受け付けられません。
- 公募要領と様式を取る(申請者→特設サイト。様式は Excel の申請様式第1号・第2号)
- 事務局に事前相談する(申請者→ダイブグループ。無料。30分程度の個別相談)
- 書類6種類をそろえる(申請者・地方公共団体・後継事業者。登記事項証明書は申請日から3か月以内の発行分)
- マイページから電子申請する(申請者→特設サイト。2027年2月26日12:00まで)
- 審査を受ける(事務局・有識者。申請後おおむね1〜2か月で採択の可否が通知される)
- 交付決定を受けてから計画づくりと調査を始める(申請者。交付決定前の発注・契約・支出は対象外)
- エリア再生計画を作る(協議会。交付決定後おおむね6か月以内が目安)
- 完了実績報告を出す(申請者→事務局。成果物のエリア再生計画と、支出の証拠書類つき)
交付決定とは、採択とは別に届く通知のことです。この通知より前の発注や契約は、補助の対象になりません。
必要な書類
準備できた 0 / 9
様式は特設サイトの「1次支援 申請様式」(Excel)です。協議会の構成員と検討スケジュールも様式第1号に書き、費用の内訳は様式第2号に書きます。理由の書類は任意様式で10ページ以内、概要シートはA4横1枚です。
廃屋の要件は延床面積と使用停止の時期で、建物登記、報道記事、電気・ガス・水道の使用履歴などで示します。登記事項証明書は建物と土地の分を取ります。後継事業者の意向は、意向確認書(LOI)、意向確認ずみの会議録、または意向を示す事業者のリストと担当役員の氏名・連絡先で示します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に発注した:計画づくりや調査の契約を先に結ぶと、その費用は補助されません。
- 後継事業者が決まらない・合意しない:2次支援には、後継事業者が決まり、エリア再生計画に合意していることが必要です。
- 完了実績報告が期日に間に合わない:期日までに提出が確認できないと、交付決定を受けていても補助金は受け取れません。
- 予算の上限に達した:受付期限の前でも、受付が終わることがあります。
- ほかの国の制度と重複した:同じ内容を国の別の補助金・委託費で賄っている部分は対象外です。
- 虚偽の記載があった:交付決定の取消しや全額返還、不正の公表などの処分があります。
2次支援と、見ておきたい変更・注意点
2次支援(撤去・減築と周辺事業)は、「1次支援の採択後に順次案内する」と公式サイトにあります。申請方法・完了報告の細かい扱いは、公募要領でも「別途定める」とされています。この記事の内容は、2次支援の詳細が出たら変わりえます。
周辺事業は、新しい宿泊施設の竣工の2年後までに行うものが対象です。予算が継続されることが前提とされています。エリア再生計画に最初から全部を載せる必要はなく、後から計画変更で足せます。
国の補助金なので、補助事業の関係書類は完了年度の終了後5年間、保存する義務があります。事業の途中には、事務局が指定する期日までの中間報告書も必要で、出さない場合や不十分な場合は交付決定の取消しや交付額の変更があります。
よくある質問
旅館のオーナーが自分の廃業した宿の解体費だけ、申請できますか?
できません。補助の入口は1次支援で、エリア再生計画の策定費と廃屋の調査費だけが対象です。解体費にあたる撤去・減築費は、1次支援で採択されて計画ができた後の2次支援で補助されます。申請者は協議会の構成員で、協議会には地方公共団体の参加が必須です。まずは地元の市町村に相談するか、事務局の事前相談で進め方を確かめる形になります。
どんな廃屋が対象になりますか?
延べ床面積が概ね2,500㎡以上で、建物の大部分の使用が止まってから概ね5年たっている廃屋です。場所は地方温泉地等の観光の中心地に限られます。廃屋の用途は問われず、観光施設でなくても構いません。観光の中心地かどうかは、観光振興計画などでの位置づけ、周辺の観光資源や宿泊施設・商店の集まり、来訪状況から総合的に判断されます。
後継事業者がまだ決まっていません。申請できますか?
1次支援では「見通し」で足ります。跡地に宿泊施設等を再生したい民間事業者が1社以上いることを、意向確認書(LOI)や、意向を確認した会議録などで示します。ただし2次支援には、後継事業者が決まり、エリア再生計画に合意していることが必要です。公設民営の施設や、廃屋より大きな延べ床面積の施設は、2次支援の対象になりません。後継事業者は申請者と同じ法人でも別法人でも構いませんが、廃屋を以前運営していた旧経営者やその関係者ではない、新しい事業者であることが基本です。
エリア再生計画協議会には、誰が入りますか?
地方公共団体と申請者の参加が必須です。必要に応じて、後継事業者・DMO(観光地域づくりの法人)・観光協会・地域金融機関・周辺事業者・地域住民などが入ります。申請時には、構成員と、その人を入れる理由を申請様式に書きます。主な構成員からは内諾を得て、調整状況を付記する必要があります。計画は交付決定後おおむね6か月以内の策定が望まれています。
補助率はすべて同じですか?
同じではありません。1次支援の計画策定費・調査費と、2次支援の廃屋の撤去・減築費は2/3です。周辺事業費は1/2で、廃屋の再生に特に欠かせないコア周辺事業は2/3にできます。コア周辺事業の補助総額の上限は1億円です。早見表の補助率は、1次支援のものをいちばん上に書いています。
上限6億円は、全部もらえる金額ですか?
6億円は1次・2次の合計の上限で、満額が出るとは限りません。補助額は、費用の見積と補助率で決まります。周辺事業には別枠の上限があり、延べ床面積が3,000㎡未満なら1億円、5,000㎡未満なら2億円、5,000㎡以上なら3億円です。撤去・減築費に上限額の定めがあるかは、公募要領(1次支援)に記載がありません。
2次支援はいつから申請できますか?
公募要領の時点では決まっていません。公式サイトには「1次支援採択事業者を対象として、順次受付予定」「詳細・申請方法は、1次支援採択後にご案内」とあります。2次支援では、エリア再生計画が策定されていること、後継事業者が決まっていること、権利取得の調整がついていることが要件です。撤去・減築は、交付決定後、最長で翌年度2月末までに完了する必要があります。事務局のFAQ追加資料(2026年7月15日付)では、令和9年度末(2028年2月末)の完了を目指して計画するよう求めています。1次と2次の交付決定は別のタイミングです。
申請の締切と予算の状況はどうなっていますか?
1次支援の受付は2027年2月26日12:00までです。ただし、申請があったものから受付締切に関わらず随時審査・採択され、予算の上限に達した場合は受付を終了することがあります。審査は申請後おおむね1〜2か月が目安です。締切ぎりぎりまで待つと、予算がなくなっている可能性があります。書類をそろえるには時間がかかるため、事前相談を早めに使うのが安全です。
交付決定の前に、調査や計画づくりを発注してもいいですか?
避けてください。1次支援では、交付決定前に行った発注・契約・支出は補助の対象になりません。見積書は交付決定額の基礎になるため、費目ごとの内容と積算の根拠(数量×単価など)を、できるだけ正確に出します。交付決定後に内容を変えるときは、変更の契約をする前に変更交付の手続きが必要で、認められない場合もあります。
廃屋を壊さず、買い取って改修して使う場合は対象ですか?
対象外です。事務局のFAQ追加資料では、既存の所有者がそのまま改修・リノベーションして観光施設として再生する費用(廃屋を撤去せずに活用する場合)は、本事業の対象外とされています。撤去・減築は2次支援の対象ですが、撤去だけを単独で支援するものではありません。撤去後に新しい宿泊施設等の整備と周辺事業が一体で行われることが前提です。なお、廃屋の所有権がすでに後継事業者に渡っている場合も対象外です。
市区町村がすでに廃屋を撤去した土地は対象になりますか?
条件つきで対象になります。市区町村による撤去が概ね5年以内で、新しい宿泊施設等がまだ竣工前の土地です。この場合は撤去・減築費が対象外で、周辺事業費だけが補助されます。撤去された廃屋が、延べ床面積や使用停止の期間の要件を満たしていたことも、書類で示す必要があります。撤去に係る契約書などが例として挙がっています。
事前相談は有料ですか?どこに申し込みますか?
無料です。申請を検討する事業者・地方公共団体が、公募期間中いつでも使えます。公募要領の読み方、対象要件に当たるか、手続きやスケジュールを相談できます。事務局はフォームからの連絡をすすめており、電話は03-6773-7674(平日10:00〜17:00)です。ただし、事前相談は書類の事前審査や採択の見通しを示すものではなく、計画の内容への助言もしません。
申請は郵送でもできますか?
できません。電子申請のみです。特設サイトで書類一式をダウンロードし、申請者マイページを作って、必要書類をすべてそろえたうえでシステム上で提出します。システムでの申請が難しいときは、事務局に問い合わせることになっています。登記事項証明書は申請日から3か月以内に発行されたものが必要なので、早めに取りすぎないよう注意します。
