予約とウォークインのお客さんの管理が別々のノートと頭の中でごちゃごちゃになっている。ランチのピークタイムはレジ対応だけで手一杯で、券売機かモバイルオーダーを入れて人手を減らしたい。仕入れと在庫がどんぶり勘定で、原価がいくらかかっているのか正確に把握できていない――。こうしたITツールの導入費用の半分から最大4/5を、国がまかなってくれるのが、これまで「IT導入補助金」の名で知られてきた制度です。

2026年度、この制度は**「デジタル化・AI導入補助金」という名称になりました。廃止されたわけではなく、AI活用ツールが新たに対象に加わり、枠組みも基本的に引き継がれています。補助上限は枠によって5万円〜450万円**、補助率は1/2〜4/5。申請受付は2026年3月30日から始まっており、直近の締切(1次締切)は2026年8月25日(火)17:00です。飲食店で何に使えて、いくらもらえて、自分の店が対象になるのか――順番に見ていきましょう。

図: IT導入補助金の全体像(飲食店向け)。詳しくは本文で解説します

IT導入補助金は飲食店の何に使える?【対象はITツール】

まず押さえておきたいのが、この補助金の対象は「ITツール」=ソフトウェア・クラウドサービスが中心だという点です。対象ソフトウェアが持つ業務プロセスとして、公式には「顧客対応・販売支援」「決済・債権債務・資金回収管理」「供給・在庫・物流」などの区分が示されています。飲食店の実務に当てはめると、次のようなツールが対象になりやすいと考えられます。

対象になる使い道の例

  • POSレジシステム:会計・売上管理を効率化するレジのソフトウェア・クラウドサービス
  • モバイルオーダー・券売機システム:注文をシステム化し、ホールの人手を減らすツール
  • 予約管理・顧客管理システム:電話予約とネット予約、ウォークインを一元管理するツール
  • キャッシュレス決済連携システム:各種決済手段とレジ・会計を連携させるシステム
  • 在庫・仕入れ管理システム:食材の仕入れ・在庫をデータで管理し、原価を可視化するツール
  • シフト管理システム:スタッフの勤怠・シフト作成を効率化するツール

図: IT導入補助金で対象になりやすい飲食店のITツールの例

対象にならないものの例

  • 厨房機器・什器そのもの(対象ソフトウェアとセットでない単体購入は対象外)
  • 通常枠における、POSレジ用タブレットなど業務以外にも使える汎用品単体の購入費
  • 仕入れ代・家賃・人件費など、日々の営業を回すための「単なる運転資金」
  • IT導入支援事業者を通さず、事務局に未登録のツールを独自に選んで導入する費用
  • 交付決定より前に発注・契約してしまった費用(フライング発注)

冷蔵ショーケースや調理機器の入れ替えなど、ハードウェア中心の投資をしたい場合は、この補助金ではなく省力化投資補助金など、ハードも対象になる別の制度を検討する必要があります。IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)は、あくまでITツール=ソフトウェアの導入を後押しする制度だという点を押さえておきましょう。

じつは、対象ソフトウェアとセットでPOSレジ用のタブレットやレジ本体を導入する場合、それが本当に「対象ソフトウェアと一体で機能するIT環境の整備」と認められるかどうかは、単に同時に購入すれば済むという話ではありません。通常枠では汎用品として対象外のPOSレジ用タブレットも、インボイス枠で対象のソフトウェアとセットで導入する場合に限り、PC・タブレットは上限10万円、レジ・券売機は上限20万円まで補助対象に加えられます(あくまで、対象ソフトウェアと一体で機能するIT環境の整備であることが前提で、ハードウェア単体の申請や、関連の薄い汎用品の便乗購入は認められません)。この“対象ソフトウェアと一体のIT環境整備として正しく位置づけ、申請書に落とし込むための考え方”は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、採択されやすい書き方の例とあわせて紹介しています。

いくらもらえる?枠別の補助上限額

「最大450万円」という単純な数字では実態を捉えきれません。上限額は枠・プロセス数・事業者規模の組み合わせで決まるので、まずは内訳を正確に押さえておきましょう。

補助額の目安補助率
通常枠(1プロセス以上)5万円〜150万円未満1/2以内
通常枠(4プロセス以上)150万円〜450万円以下1/2以内
インボイス枠(インボイス対応類型・50万円以下部分)〜50万円3/4以内(小規模事業者は4/5以内)
インボイス枠(インボイス対応類型・50万円超〜350万円以下部分)50万円超〜350万円2/3以内
インボイス枠(ハードウェア加算・PC/タブレット等)上限10万円1/2以内
インボイス枠(ハードウェア加算・レジ/券売機等)上限20万円1/2以内

補助率はいくら?

  • 通常枠:原則1/2以内。「令和6年10月〜令和7年9月の間で3か月以上、地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上」という要件を満たす事業者(最低賃金近傍事業者)は2/3以内に引き上がります
  • インボイス枠(インボイス対応類型):50万円以下部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超〜350万円以下部分は2/3以内

お店のタイプ別・シミュレーション

同じ「上限」でも、店の業態とやりたいことで使い方はまったく変わります。飲食の中でも異なる3つの業態を例に、いくら投資すると補助がいくらになるかを見てみましょう。

図: 飲食店の業態別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」

① 個人経営の定食店(従業員2人・インボイス枠) これまで免税事業者だったが、常連客からの要望でインボイス発行事業者に登録した。会計・受発注機能を持つPOSレジシステムを導入したい。見積もりは40万円(インボイス枠・50万円以下部分)。 → 従業員2人=小規模事業者にあたるため補助率4/5。40万円 × 4/5 = 32万円の補助。自己負担8万円で、インボイス対応とレジ会計の効率化を同時に実現できます。

② カフェ(従業員6人・通常枠4プロセス以上) バラバラに受けていた電話予約とネット予約を一本化し、モバイルオーダーとキャッシュレス決済連携もあわせて導入したい。見積もりは300万円(予約管理・モバイルオーダー・キャッシュレス決済連携・顧客データ分析を組み合わせた4プロセス構成)。 → 300万円 × 1/2 = 150万円の補助(4プロセス帯・上限450万円以内に収まる)。

③ 居酒屋チェーンの一店舗(従業員15人・通常枠4プロセス以上) 複数店舗共通の予約・顧客管理システムに加え、この店舗分の在庫・仕入れ管理システムとシフト管理システムをまとめて導入したい。見積もりは420万円。 → 420万円 × 1/2 = 210万円の補助。 最低賃金近傍事業者の要件を満たすと補助率は2/3に上がり、420万円 × 2/3 = 280万円(上限450万円の範囲内)。浮いた70万円分で、需要予測にもとづく仕入れ最適化ツールまで追加導入できます。

このように、業態が違っても「投資額の半分から4/5」という考え方は共通です。まずは自分の店がどの枠・どのプロセス数構成に近いかを確認してみましょう。

店ごとにどの枠・どの組み合わせが合うか迷ったら、まずは専門家に無料で相談できます。

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厨房設備やハードの入れ替えなど、やりたいことによっては別の補助金のほうが自社に合っているケースもあります。この補助金だけで判断がつかないと感じたら、他に使える補助金がないか探してみるのも有益です。

あなたの店で使える補助金は、これだけではないかもしれません。他に使える補助金を無料で診断する

締切はいつ?年に複数回ある「ローリング公募」です

IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)は、他のjGrants補助金と違い、年に複数回、締切が繰り返し設定される「ローリング公募」の制度です。申請受付は2026年3月30日(月)10:00に始まっており、直近の1次締切は2026年8月25日(火)17:00、交付決定は2026年10月7日(水)頃の予定です。2次締切以降(2〜6次分)は、公式サイトで確定次第、随時更新される仕組みになっています。「今回の締切に間に合わなくても、次の回で申請できる」という点は、他の補助金にはない特徴です。

申請にはGビズIDプライム(電子申請用のアカウント。発行までおおむね2週間)とSECURITY ACTIONの宣言(発行まで約2〜3日)が事前に必要です。店の営業を回しながらの準備になるため、この2つは思い立ったらすぐ着手しておきたい手続きです。

図: 申請から着金までのスケジュール。GビズID・SECURITY ACTIONは最初に済ませておきたい手続きです

事業実施期間は交付決定日から2027年3月31日(水)17:00までが予定されています。補助金は経費を立て替えて支払った後に交付される「精算払い」のため、着金は実績報告のあとになります。着金までの資金繰りに不安がある場合は、早い段階で金融機関に相談しておくと安心です。

承認までの重要なタイミングと必要書類

「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。着金までの主なタイミングと、その時点で必要になるものは次のとおりです。

タイミングやること必要になるもの
導入を決めたらすぐGビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請にはこのIDが必須。発行までおおむね2週間)マイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類
申請の少し前SECURITY ACTIONの「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言する(発行まで約2〜3日)宣言済みアカウントID(交付申請時に入力必須)
申請前IT導入支援事業者に相談し、事務局に登録済みのITツールを選定する導入したい業務内容(POSレジ・予約管理等)の整理、見積もり
〜1次締切:2026年8月25日(火)17:00電子申請システムで申請事業計画書、決算書、その他申請枠に応じた添付書類
2026年10月7日(水)頃交付決定
交付決定日〜2027年3月31日(水)17:00事業実施(ツールの契約・導入・支払い)契約書・見積書・請求書・領収書などを保管
事業終了後実績報告 → 補助金の入金実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など)

図: いつ・何が必要になるか。GビズIDプライムとSECURITY ACTION宣言の2つが、最初に済ませておきたい手続きです

特に注意したいのが、この補助金は自分で好きなITツールを選んで申請する仕組みではないこと。事務局にあらかじめ登録された「IT導入支援事業者」に相談し、その事業者を通じて、同じく登録済みの「ITツール」を選定したうえで申請する流れになっています。「POSレジを入れたい」「モバイルオーダーを入れたい」といった要望を整理したうえで、その領域に強いIT導入支援事業者を探すところから始めると、ツール選定がスムーズです。

「うちの店でも対象?」対象事業者の考え方

対象になるのは、資本金または常時使用する従業員数のいずれかが、業種ごとの基準以下の中小企業・小規模事業者等です。飲食店は、日本標準産業分類上は「宿泊業、飲食サービス業」ですが、中小企業基本法上の業種区分では「小売業」に分類されます。

業種資本金の基準従業員数の基準
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
製造業・建設業・運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業(ソフトウェア業を除く)5,000万円以下100人以下

このほか、常時使用する従業員数が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下の事業者は「小規模事業者」に該当し、インボイス枠(50万円以下部分)で補助率が4/5まで高くなります。

例:フルタイム1人+短時間パート2人の定食屋(店主は個人事業主) → 小売業の基準は「資本金5,000万円以下または従業員50人以下」。店主本人・短時間パートの数え方は事業所ごとの実態によりますが、いずれにしても基準の50人を大きく下回るため中小企業者として対象です。商業・サービス業の小規模事業者基準(5人以下)にもあたる可能性が高く、インボイス枠を使う場合は補助率4/5が視野に入ります。

自社が中小企業・小規模事業者のどちらにあたるかの最終判断に迷う場合は、公式サイトの「申請対象者チェッカー」で確認するか、IT導入支援事業者に相談すると確実です。

なお、150万円以上を申請する場合は賃上げに関する目標へのコミットも求められます。2026年度からはこの算定基準が「給与支給総額の年平均成長率」から**「1人当たり給与支給総額」**の基準に変更され、目標水準も引き上げられています。

よくある質問

締切は2026年8月25日で終わりですか?

いいえ。2026年8月25日(火)17:00は1次締切です。この補助金は年に複数回締切が設定される「ローリング公募」で、2次締切以降も確定次第、公式サイトで随時公表されます。

厨房機器やレジそのものは対象になりますか?

原則、ハードウェア単体は対象外です。ただし、インボイス枠で対象のソフトウェアとセットで導入する場合に限り、レジ・券売機は上限20万円、PC・タブレットは上限10万円まで補助対象に加えられます。厨房機器などハード中心の投資をしたい場合は、省力化投資補助金など別の制度の検討が必要です。

好きなITツールを自分で選んで申請できますか?

いいえ。事務局に登録済みの「IT導入支援事業者」を通じて、同じく登録済みの「ITツール」の中から選定して申請する仕組みです。まずはPOSレジ・予約管理など、自店が導入したい領域に強いIT導入支援事業者を探すところから始めましょう。

個人経営の小さな店でも対象になりますか?

はい。飲食店は中小企業基本法上「小売業」に分類され、資本金5,000万円以下または従業員50人以下であれば対象です。多くの個人経営店・小規模店がこの基準に収まります。

※補助上限額・補助率・締切などの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

出典(一次情報): デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト(中小機構)同・事業スケジュール同・通常枠同・インボイス枠(インボイス対応類型)同・申請を行う前に必要な手続き中小企業庁 中小企業・小規模企業者の定義


採択される事業計画には“書き方の型”があります

同じITツール導入でも、事業計画の書き方ひとつで採択・不採択は変わります。審査で見られるポイントや、そのまま使える記入例は、一般には出回っていません。

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この補助金の概要(早見表)

検索項目内容
制度名デジタル化・AI導入補助金2026(旧称「IT導入補助金」。通常枠/インボイス枠2類型/セキュリティ対策推進枠/複数者連携枠の5枠)
対象業種全業種(飲食店は「小売業」区分=資本金5,000万円以下または従業員50人以下)
利用目的設備整備・IT導入をしたい
対象地域全国
従業員数中小企業・小規模事業者(業種により資本金額・従業員数で判定。目安300人以下)
補助上限額最大450万円(枠・プロセス数で変動。内訳は本文表を参照)
補助率1/2〜4/5(枠・要件で変動)
申請受付2026年3月30日(月)〜(1次締切2026年8月25日(火)17:00。2次以降は確定次第更新)
公式サイトデジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト

※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。