会計ソフトも請求書のやり取りも、全部自分ひとりでやっている。事業拡大よりまず今の作業を楽にしたいのに、「補助金は法人向けでしょう」と最初から諦めていないでしょうか。個人事業主・フリーランスでも、要件を満たせばITツール導入費用の半分から最大4/5を国に補助してもらえる――それが、これまで「IT導入補助金」の名で知られてきた制度です。

2026年度、この制度は**「デジタル化・AI導入補助金」という名称になりました。廃止されたわけではなく、AI活用ツールが新たに対象に加わり、枠組みも基本的に引き継がれています。補助上限は枠によって5万円〜450万円**、補助率は1/2〜4/5。申請受付は2026年3月30日から始まっており、直近の締切(1次締切)は2026年8月25日(火)17:00です。個人事業主が対象になるための要件、必要書類、そしていくらもらえるのか――順番に見ていきましょう。

図: デジタル化・AI導入補助金の全体像(個人事業主向け)。詳しくは本文で解説します

個人事業主でも使える?結論から

結論として、個人事業主・フリーランスもこの補助金の対象になりえます。 法人でなければ申請できない制度ではなく、国内で事業を営む個人事業主も、中小企業・小規模事業者向けの各枠に申請できます。ただし「個人事業主なら誰でも無条件で対象」というわけではなく、次の3つの要件を満たしていることが前提です。

  • 従業員数の基準を満たしていること(業種ごとに定められた上限以下)
  • 開業からの事業実績があり、必要な税務書類を用意できること
  • GビズIDプライム・SECURITY ACTION宣言など、電子申請の前提となる手続きを済ませていること

それぞれ、具体的に見ていきましょう。

個人事業主が対象になる3つの要件

要件① 従業員数の基準(資本金の概念はない)

中小企業・小規模事業者向けの補助金は、業種ごとに「資本金の額」または「常時使用する従業員数」のいずれかの基準以下であることが条件です。ただし個人事業主には資本金という概念がないため、判定は常時使用する従業員数のみで行われます

業種中小企業者の従業員数基準小規模事業者の従業員数基準
製造業・建設業・運輸業その他300人以下20人以下
卸売業100人以下5人以下
小売業50人以下5人以下
サービス業(ソフトウェア業を除く)100人以下5人以下(宿泊業・娯楽業は20人以下)

ここで重要なのが、「常時使用する従業員」には個人事業主本人と、同居の親族従業員は含まれないという点です。夫婦だけ、あるいはひとりで営んでいる個人事業主の多くは、この時点で従業員数の基準を大きく下回り、多くの場合「小規模事業者」に該当します。小規模事業者に該当すると、インボイス枠(50万円以下部分)の補助率が4/5まで上がるなど、有利になる場面があります。

図: 個人事業主が対象になるかどうかの3つのチェックポイント

要件② 開業からの事業実績・必要書類を用意できること

個人事業主が申請する場合、本人確認書類に加えて、事業実績を示す税務書類の提出が求められます。具体的には次の3種類です。

  • 身分証明書(運転免許証・運転経歴証明書・住民票の写し 等)
  • 所得税納税証明書(税務署発行の「その1」または「その2」)
  • 確定申告書の控え(税務署の収受印、または電子申告の受信通知が確認できるもの)

つまり、開業したばかりで確定申告をまだ一度も済ませていない場合、必要書類がそろわず申請が難しい可能性があります。開業して間もない個人事業主は、まず確定申告の実績を1回以上作ってから検討するのが現実的です。

要件③ GビズIDプライム・SECURITY ACTION宣言

電子申請には、法人と同じくGビズIDプライム(発行までおおむね2週間)とSECURITY ACTIONの宣言(発行まで約2〜3日)が必要です。GビズIDプライムの取得には、個人事業主の場合もマイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類が必要になるため、税務書類とあわせて早めに準備しておくと安心です。

個人事業主が使いやすい枠・ツールの例

個人事業主・フリーランスの実務に当てはめると、次のようなITツールが対象になりやすいと考えられます。

  • クラウド会計・確定申告ソフト:日々の記帳から確定申告書類の作成までを効率化するツール
  • クラウド請求書・受発注システム:見積書・請求書の発行、電子取引(電子帳簿保存法対応)を一本化するツール
  • 予約管理・顧客管理システム:施術業・士業など、予約と顧客対応を一元化するツール
  • キャッシュレス決済連携システム:各種決済手段と会計・受発注を連携させるシステム
  • AI-OCR・AI会計ツール:レシート・領収書の読み取りや仕訳の自動化など、AIを活用した業務効率化ツール

対象にならないものの例

  • パソコン・タブレットなど業務以外にも使える汎用品単体の購入費(通常枠の場合)
  • 仕入れ代・家賃・人件費など、日々の営業を回すための「単なる運転資金」
  • IT導入支援事業者を通さず、事務局に未登録のツールを独自に選んで導入する費用
  • 交付決定より前に発注・契約してしまった費用(フライング発注)

じつは、対象ソフトウェアとセットでPC・タブレットを導入する場合、それが本当に「対象ソフトウェアと一体で機能するIT環境の整備」と認められるかどうかは、単に同時に購入すれば済むという話ではありません。通常枠では汎用品として対象外のPC・タブレットも、インボイス枠で対象のソフトウェアとセットで導入する場合に限り、PC・タブレットは上限10万円、レジ・券売機は上限20万円まで補助対象に加えられます(あくまで、対象ソフトウェアと一体で機能するIT環境の整備であることが前提で、ハードウェア単体の申請や、関連の薄い汎用品の便乗購入は認められません)。この“対象ソフトウェアと一体のIT環境整備として正しく位置づけ、申請書に落とし込むための考え方”は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、採択されやすい書き方の例とあわせて紹介しています。

いくらもらえる?枠別の補助上限額

「最大450万円」という単純な数字では実態を捉えきれません。上限額は枠・プロセス数・事業者規模の組み合わせで決まるので、まずは内訳を正確に押さえておきましょう。

補助額の目安補助率
通常枠(1プロセス以上)5万円〜150万円未満1/2以内
通常枠(4プロセス以上)150万円〜450万円以下1/2以内
インボイス枠(インボイス対応類型・50万円以下部分)〜50万円3/4以内(小規模事業者は4/5以内)
インボイス枠(インボイス対応類型・50万円超〜350万円以下部分)50万円超〜350万円2/3以内
インボイス枠(ハードウェア加算・PC/タブレット等)上限10万円1/2以内
インボイス枠(ハードウェア加算・レジ/券売機等)上限20万円1/2以内
セキュリティ対策推進枠5万円〜150万円中小企業1/2以内・小規模事業者2/3以内

補助率はいくら?

  • 通常枠:原則1/2以内。「令和6年10月〜令和7年9月の間で3か月以上、地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上」という要件を満たす事業者(最低賃金近傍事業者)は2/3以内に引き上がります
  • インボイス枠(インボイス対応類型):50万円以下部分は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超〜350万円以下部分は2/3以内
  • セキュリティ対策推進枠:中小企業1/2以内、小規模事業者2/3以内

多くの個人事業主・フリーランスは、前述のとおり従業員数の基準から「小規模事業者」に該当するため、インボイス枠を使う場合は補助率4/5が視野に入ります

個人事業主のタイプ別・金額シミュレーション

同じ「上限」でも、事業のタイプとやりたいことで使い方はまったく変わります。異なる3つのタイプを例に、いくら投資すると補助がいくらになるかを見てみましょう。

図: 個人事業主のタイプ別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」

① フリーランスのWebデザイナー(従業員0人・通常枠) 請求書の発行から記帳、確定申告書類の作成までがすべて手作業で、締め日ごとに残業になっている。クラウド会計ソフトと電子請求書発行システム(2年分の利用料込み)を導入したい。見積もりは20万円(1プロセス構成)。 → 20万円 × 1/2 = 10万円の補助。自己負担10万円で、経理業務の大半をクラウド化できます。

② 個人経営の整体院(従業員1人=パート1名・インボイス枠) 常連客からの要望でインボイス発行事業者に登録した。会計・決済機能を持つ予約管理システムとキャッシュレス決済連携をあわせて導入したい。見積もりは45万円(インボイス枠・50万円以下部分)。 → 従業員1人=小規模事業者にあたるため補助率4/5。45万円 × 4/5 = 36万円の補助。自己負担9万円で、予約管理とインボイス対応、決済の効率化を同時に実現できます。

③ 一人親方の建設業(従業員0人・通常枠) 見積書・請求書・原価管理がすべて紙とExcelの手作業で、現場が終わった夜にまとめて処理している。見積書・原価管理クラウドを導入したい。見積もりは80万円(1プロセス構成)。 → 80万円 × 1/2 = 40万円の補助。ここに顧客管理・データ分析まで組み合わせた4プロセス以上の構成にすると、上限は150万円〜450万円に広がり、より大きな投資でも同じ補助率で対応できる余地が生まれます。

このように、従業員0〜1人の個人事業主でも「投資額の半分から4/5」という考え方は法人と変わりません。まずは自分の事業がどの枠・どのプロセス数構成に近いかを確認してみましょう。

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この補助金だけで判断がつかないと感じたら、他に使える補助金がないか探してみるのも有益です。

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締切はいつ?年に複数回ある「ローリング公募」です

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、他のjGrants補助金と違い、年に複数回、締切が繰り返し設定される「ローリング公募」の制度です。申請受付は2026年3月30日(月)10:00に始まっており、直近の1次締切は2026年8月25日(火)17:00、交付決定は2026年10月7日(水)頃の予定です。2次締切以降(2〜6次分)は、公式サイトで確定次第、随時更新される仕組みになっています。「今回の締切に間に合わなくても、次の回で申請できる」という点は、他の補助金にはない特徴です。

図: 申請から着金までのスケジュール。個人事業主は税務書類の準備も早めに着手したい工程です

事業実施期間は交付決定日から2027年3月31日(水)17:00までが予定されています。補助金は経費を立て替えて支払った後に交付される「精算払い」のため、着金は実績報告のあとになります。個人での事業では資金繰りの余力が限られることも多いため、着金までの資金繰りに不安がある場合は、早い段階で金融機関に相談しておくと安心です。

承認までの重要なタイミングと必要書類

「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。個人事業主の場合は、法人にはない税務書類の準備が加わる点に注意しましょう。

タイミングやること必要になるもの
導入を検討し始めたらすぐ直近の確定申告が済んでいるか、必要な税務書類がそろうかを確認する所得税納税証明書(その1/その2)、確定申告書の控え(税務署収受印または受信通知)
導入を決めたらすぐGビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請にはこのIDが必須。発行までおおむね2週間)マイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類
申請の少し前SECURITY ACTIONの「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言する(発行まで約2〜3日)宣言済みアカウントID(交付申請時に入力必須)
申請前IT導入支援事業者に相談し、事務局に登録済みのITツールを選定する導入したい業務内容の整理、見積もり
〜1次締切:2026年8月25日(火)17:00電子申請システムで申請事業計画書、身分証明書、納税証明書、確定申告書控え、その他申請枠に応じた添付書類
2026年10月7日(水)頃交付決定
交付決定日〜2027年3月31日(水)17:00事業実施(ツールの契約・導入・支払い)契約書・見積書・請求書・領収書などを保管
事業終了後実績報告 → 補助金の入金実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など)

図: いつ・何が必要になるか。個人事業主は税務書類の確認を最初のステップとして押さえておきたいところです

特に注意したいのが、この補助金は自分で好きなITツールを選んで申請する仕組みではないこと。事務局にあらかじめ登録された「IT導入支援事業者」に相談し、その事業者を通じて、同じく登録済みの「ITツール」を選定したうえで申請する流れになっています。税務書類の準備とGビズID・SECURITY ACTIONの手続きは、ツール選定と並行して早めに進めておくと、申請直前になって慌てずに済みます。

なお、150万円以上を申請する場合は賃上げに関する目標へのコミットも求められます。2026年度からはこの算定基準が「給与支給総額の年平均成長率」から**「1人当たり給与支給総額」**の基準に変更され、目標水準も引き上げられています。

よくある質問

個人事業主・フリーランスでも本当に対象になりますか?

はい、対象になりえます。法人限定の制度ではなく、国内で事業を営む個人事業主も、業種ごとの従業員数基準を満たし、必要な税務書類を用意できれば申請できます。ただし従業員数や書類要件を満たさない場合は対象外です。

開業したばかりでも申請できますか?

申請には所得税納税証明書と確定申告書の控えの提出が必要なため、確定申告をまだ一度も済ませていない開業直後の場合は、必要書類がそろわず申請が難しいと考えられます。まずは確定申告の実績を作ってから検討するのが現実的です。

従業員がいない一人事業主でも小規模事業者になれますか?

はい。「常時使用する従業員」には事業主本人や同居の親族従業員は含まれないため、従業員を雇っていない一人事業主の多くは、業種の基準(5人以下または20人以下)を下回り、小規模事業者に該当します。

※補助上限額・補助率・締切などの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

出典(一次情報): デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト(中小機構)同・事業スケジュール同・通常枠同・インボイス枠(インボイス対応類型)同・申請を行う前に必要な手続き中小企業庁 中小企業・小規模企業者の定義中小企業庁 中小企業の定義に関するよくある質問


採択される事業計画には“書き方の型”があります

同じITツール導入でも、事業計画の書き方ひとつで採択・不採択は変わります。審査で見られるポイントや、そのまま使える記入例は、一般には出回っていません。

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この補助金の概要(早見表)

検索項目内容
制度名デジタル化・AI導入補助金2026(旧称「IT導入補助金」。通常枠/インボイス枠2類型/セキュリティ対策推進枠/複数者連携枠の5枠)
対象業種全業種(個人事業主・フリーランスも従業員数基準を満たせば対象)
利用目的設備整備・IT導入をしたい
対象地域全国
従業員数中小企業・小規模事業者(個人事業主は資本金の概念がなく従業員数のみで判定。事業主本人・同居親族は従業員数に含まれない)
補助上限額最大450万円(枠・プロセス数で変動。内訳は本文表を参照)
補助率1/2〜4/5(枠・要件で変動)
申請受付2026年3月30日(月)〜(1次締切2026年8月25日(火)17:00。2次以降は確定次第更新)
公式サイトデジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト

※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。