「事業譲渡」と「M&A」、検索する人の多くがこの違いを分かっていません。事業譲渡は、M&Aという大きなくくりの中にある、譲渡の手法の一つです。
結論から言うと、事業譲渡でも事業承継・M&A補助金は使えます。譲渡の手法が株式譲渡か事業譲渡かは、対象・対象外を分ける要件ではありません。
事業譲渡とM&Aは何が違うのか
M&Aは、会社の合併・買収を指す広い言葉です。その中に、いくつかの手法があります。
- 株式譲渡:会社の株式そのものを売買する。経営権が移り、会社自体は存続する
- 事業譲渡:会社の一部または全部の事業(資産・契約・従業員など)を個別に譲渡する。会社は残り、事業だけが移る
どちらもM&Aの手法の一つです。事業承継・M&A補助金は、譲渡の手法を限定していません。 株式譲渡でも事業譲渡でも、専門家活用枠の対象になります。
事業譲渡でも補助金の対象になる
事業譲渡による承継は、専門家活用枠が主な対象です。買い手・売り手どちらの立場でも使えます。
- 買い手支援類型:譲り受ける側。M&A仲介手数料・FA費用・デューデリジェンス費用が対象
- 売り手支援類型:譲り渡す側。仲介手数料・FA費用が対象
- 小規模売り手支援類型:小規模事業者が売り手となる場合。個人事業主の事業譲渡も含む
いずれの類型も、事務局の「M&A支援機関登録制度」に登録された仲介業者・FAを利用することが必須です。未登録の業者への支払いは対象になりません。
対象になる費用・ならない費用
- 対象になる:M&A仲介手数料、FA費用、デューデリジェンス(買収監査)費用
- 対象になる:譲り受けた事業を統合する専門家費用・設備投資(PMI推進枠)
- 対象にならない:M&A支援機関登録制度に未登録の業者への支払い
- 対象にならない:交付決定より前に契約・発注した費用
事業譲渡そのものの契約書作成費用や、譲渡対象資産の代金そのものは、補助対象の範囲外になる場合があります。対象経費は、公募要領の一覧で個別に確認するのが確実です。
一部譲渡+一部廃業のケース
事業譲渡では、会社の一部だけを譲渡し、残りを廃業するという選択肢もあります。
この場合、専門家活用枠と廃業・再チャレンジ枠を併用申請できます。
小売業(3店舗のうち1店舗を事業譲渡、残り2店舗は閉店) 好調な1店舗を同業他社に事業譲渡し、仲介手数料は80万円(専門家活用枠・売り手支援類型)。残り2店舗は閉店し、在庫処分・原状回復費は120万円(廃業・再チャレンジ枠)。 → 80万円 × 1/2 = 40万円、120万円 × 1/2 = 60万円。合計100万円の補助(各枠の上限内)。
税務・法務の判断は補助金と別
株式譲渡と事業譲渡では、消費税や譲渡益にかかる税務上の扱いが異なります。契約に含める資産・負債の範囲によっても変わってきます。
この判断は補助金の対象・対象外とは別の話です。どちらの手法を選ぶべきかは、税理士・弁護士に相談する領域になります。補助金が見ているのは、あくまで承継・M&Aにかかる専門家費用や、その後の設備投資です。
いくらもらえるか(シミュレーション)
卸売業(従業員30人・同業他社の一事業部門を事業譲渡で譲り受け) 自社の営業網を強化するため、同業他社の一事業部門(顧客リストと在庫、従業員数名)を事業譲渡で譲り受けることになった。M&A仲介手数料・デューデリジェンス費用の見積もりは500万円(専門家活用枠・買い手支援類型)。 → 500万円 × 1/2 = 250万円の補助(通常上限600万円〜800万円の範囲内)。
運送業(従業員20人・不採算部門を事業譲渡で切り離し) 本業に集中するため、不採算の一部門を別会社に事業譲渡することになった。仲介手数料の見積もりは200万円(専門家活用枠・売り手支援類型)。 → 200万円 × 1/2 = 100万円の補助(上限600万円〜800万円の範囲内)。
申請の流れと必要書類
| タイミング | やること |
|---|---|
| 検討を始めたらすぐ | GビズIDプライムを取得する(発行に2〜3週間) |
| 譲渡・譲受の方向性が固まったら | M&A支援機関登録制度に登録された仲介業者・FAを選定する |
| 公募期間中 | 電子申請システム(Jグランツ)で申請 |
| 採択発表後 | 交付決定(契約・発注はここから) |
| 事業実施後 | 実績報告 → 入金 |
直近の第15次公募は、2026年7月24日17:00に受付を終えています。次回(16次)の公募は本稿執筆時点で未発表です。M&A支援機関の選定や相手方との交渉は、公募が発表される前から進められる準備項目です。
よくある質問
事業譲渡と株式譲渡で補助率は変わりますか?
いいえ。補助率は譲渡の手法ではなく、事業規模(小規模事業者に該当するか)や赤字・利益率の状況で決まります。手法そのもので優劣がつくわけではありません。
事業譲渡の契約書作成費用も対象になりますか?
契約書作成そのものではなく、M&A仲介手数料・FA費用・デューデリジェンス費用が主な対象です。個別の費用が対象になるかは、公募要領の対象経費一覧で確認してください。
事業譲渡と株式譲渡、どちらを選ぶべきですか?
これは税務・法務の判断であり、補助金の対象・対象外とは別の話です。税理士・弁護士に相談したうえで、承継・M&Aの手法を決めることをおすすめします。
専門家活用枠は、相手方との交渉が具体的であるほど計画の説得力が増します。シナジー(相乗効果)をどう書けば伝わるかは、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、記入例とあわせて紹介しています。
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この補助金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 事業承継・M&A補助金(専門家活用枠[買い手支援・売り手支援・小規模売り手支援]/事業承継促進枠/PMI推進枠/廃業・再チャレンジ枠) |
| 対象業種 | 全業種 |
| 利用目的 | 事業を引き継ぎたい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業・小規模事業者(業種により資本金・従業員数で判定。目安300人以下) |
| 補助上限額 | 専門家活用枠は600万円〜800万円(特例で最大2,000万円)。小規模売り手支援類型は450万円 |
| 補助率 | 1/2〜2/3(枠・要件で変動) |
| 申請受付 | 第15次公募は2026年7月24日(金)17:00に終了。次回(16次)は公式サイトで随時発表 |
| 公式サイト | 事業承継・M&A補助金 公式サイト |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。
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譲渡の手法や税務の判断に迷う場合は、専門家に無料相談するのも一つの方法です。
※補助上限額・補助率・公募スケジュールなどの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
出典(一次情報): 事業承継・M&A補助金 公式サイト/令和7年度補正予算(15次公募)/中小機構「補助金活用ナビ」事業承継・M&A補助金のご案内
