主KW: 持続化補助金 学習塾
学生アルバイトの講師がいる教室は、従業員数としてカウントされるのでしょうか。ここを取り違えると、対象外だと思い込んで申請を諦めてしまいます。結論から言うと、勤務時間が短い学生アルバイト講師は「常時使用する従業員」に含まれない見込みです(数え方の詳細は後述します)。多くの個人経営の学習塾が、対象になる可能性があります。
第20回の補助上限は250万円(基本額+特例加算)、補助率2/3。申請受付は2026年11月5日に始まり、締切は12月15日17:00です。生徒募集がチラシ頼み。オンライン授業の環境が整っていない。体験申込の導線がない。学習塾・そろばん教室・英会話教室・音楽教室で何に使えて、いくらもらえるのかを見ていきます。
学習塾業界は、少子化の影響で生徒獲得競争が年々激しくなっています。大手フランチャイズがオンライン授業やAI学習システムへの投資を進める一方、個人経営の教室は「今のやり方を変える余力がない」という声も少なくありません。この補助金は、そうした投資を後押しする制度です。まずは何が対象になるのか、具体的に見ていきましょう。
持続化補助金は学習塾・教室の何に使える?
生徒募集の体制づくり、オンライン授業への対応、体験申込の導線整備、教室の魅力アップ。持続化補助金は、これらの幅広い使い道をカバーします。対象になりやすい使い道から、より具体的に順番に見ていきます。
対象になる使い道の例
- ホームページ・予約/申込システム:教室の魅力を伝えるホームページの制作、体験レッスンや入塾相談のオンライン予約・申込システムの導入
- オンライン授業対応:配信用カメラ・マイク・配信システムなどオンライン授業の環境整備、テキストや教材のデジタル化・電子化
- 販促・集客:チラシ・看板・DM(ダイレクトメール)の制作、地域向けの折込広告
- 体験会・イベント運営:無料体験レッスンや説明会の集客・運営にかかる費用、体験申込につなげる導線づくり
- 教室内装:体験レッスンや保護者面談がしやすいレイアウトへの改装、防音・空調など学習環境の改善
これらはあくまで代表例です。「生徒募集につながるか」「既存生徒の満足度・継続率の向上につながるか」という視点で説明できれば、他の使い道も対象になりえます。 逆に、同じ内装工事でも「単に古くなったから」という理由だけでは、販路開拓の取組として認められにくくなります。
対象にならないものの例
- 家賃・水道光熱費・講師人件費など、日々の運営を回すための「単なる運転資金」
- パソコン・タブレットなど、業務以外にも使える汎用品の単なる購入
- 教材・什器の単なる買い替え(授業の質向上や販路開拓につながる取組として説明できないもの)
- 交付決定より前に発注・契約してしまった費用(いわゆる「フライング発注」)
- 販路開拓や生産性向上につながらない、事業計画と関係のない支出
じつは、教材や什器の入れ替えが対象になるかどうかは、はっきり白黒つくものばかりではありません。同じ「教材・什器の入れ替え」でも、それが教室の販路開拓の取組にどう結びつくのかを事業計画のなかで具体的に示せるかどうかで、対象と認められるかどうかが変わります(あくまで、実際に販路開拓につながる取組であることが前提です)。
教室タイプ別に見る、対象になりやすい使い道
学習塾・そろばん教室・英会話教室・音楽教室は、それぞれ抱えている課題が異なります。教室タイプごとに、特に対象になりやすい使い道を整理すると次のようになります。
- 学習塾:オンライン個別指導システムの導入、模試結果を保護者に分かりやすく共有するシステム、体験授業の予約システム
- そろばん教室:級位認定試験の申込・管理システム、教材のデジタル化、教室紹介動画の制作
- 英会話教室:オンラインレッスン用の配信機材、外国人講師とのスケジュール調整システム、多言語対応のホームページ制作
- 音楽教室:発表会・イベントの集客用チラシ・DM、防音設備の改修、オンラインレッスン環境の整備
自分の教室タイプに近い使い道から、優先順位をつけて具体的に検討すると計画が立てやすくなります。
いくらもらえる?上限250万円の中身は
「上限250万円」は無条件ではありません。基本額に特例を組み合わせることで段階的に上限が引き上がる仕組みなので、まずは内訳を正確に押さえておきましょう。
| 区分 | 補助上限額 |
|---|---|
| 基本 | 50万円 |
| +インボイス特例 | 100万円(基本50万円+50万円) |
| +賃金引上げ特例 | 200万円(基本50万円+150万円) |
| +両特例併用 | 250万円(最大) |
特例の中身は次のとおりです。
- インボイス特例:適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)に新たに登録した免税事業者向けの特例です。個人経営の学習塾・教室でインボイス登録した場合は対象になりやすい特例です。
- 賃金引上げ特例:事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる計画がある場合に使える特例です。
補助率は通常2/3です。賃金引上げ特例を利用する事業者のうち、赤字事業者は3/4に引き上がります。この2/3という補助率は、対象経費の3分の1を自己負担すれば残り3分の2が戻ってくるという意味です。 例えば60万円の投資であれば、自己負担20万円で40万円が補助されます(上限額の範囲内であることが前提です)。
教室タイプ別・シミュレーション
同じ「上限」でも、教室の規模とやりたいことで使い方は変わります。3つの教室タイプで見てみましょう。補助額は「対象経費×2/3」を、その枠の上限まで受け取れる、という考え方です。
① 個人経営の学習塾(基本枠・上限50万円) チラシのポスティングだけで生徒募集をしてきたが、教室の雰囲気や指導方針が伝わるホームページを作り、体験レッスンの申込もオンラインで完結させたい。ホームページ制作と予約・申込システム導入の見積もりは75万円。 → 75万円 × 2/3 = 50万円の補助(基本枠の上限に到達)。自己負担25万円で、生徒募集をチラシ頼みから脱却できます。
② 複数教室を展開する英会話教室(インボイス特例・上限100万円) 遠方の生徒にも対応できるよう、配信用カメラ・マイクとオンライン授業システムを導入し、あわせて地域向けのチラシ・DMも作り直したい。見積もりは150万円(配信環境の機材・設置費として計上。汎用的なパソコン単体の購入費は対象外になるため注意が必要です)。 → 150万円 × 2/3 = 100万円の補助。 ここがポイントです。基本枠(上限50万円)のままだと、配信環境の整備だけで枠を使い切ってしまいます。インボイス特例で枠が+50万円に広がると、同じ申請で配信環境に加えてチラシ・DMまで一度に手が届くのです。
③ 賃上げに取り組む音楽・そろばん教室(両特例併用・上限250万円) 無料体験会・体験レッスンを増やして体験申込の導線を整え、あわせて防音・レイアウトを見直した教室内装のリニューアルもしたい。見積もりは375万円。 → 375万円 × 2/3 = 250万円の補助(両特例併用の上限に到達)。 賃金引上げ特例(+150万円)まで使えると、体験会の運営“だけ”で終わらず、教室内装のリニューアルまで同時に実現できます。講師の賃上げと教室の魅力アップを一度に進めたい教室に向いています。
このように、使える特例が増えるほど「一度の申請でできること」が広がります。まずは自分の教室が2つの特例(インボイス・賃金引上げ)に当てはまるかを確認してみましょう。
オンライン授業のシステム投資など、やりたいことによっては別の補助金のほうが多くもらえます。この補助金だけで足りないと感じたら、他に使える補助金も探してみてください。
複数の教室を展開している場合の考え方
1つの事業者が複数の教室(教室名・拠点)を運営している場合でも、法人・個人事業主単位で1回の申請となる仕組みです。教室ごとに個別に申請することはできません。 複数拠点でホームページを統一したい、全教室で同じ予約システムを導入したいといった場合は、その投資を1つの事業計画としてまとめて申請する形になります。
拠点数が多いほど、対象経費の合計額も大きくなりやすいため、上限額に届きやすくなる傾向が見られます。ただし、その分事業計画書に書く内容も複雑になるため、拠点ごとの投資内容をあらかじめ整理してから計画を組み立てることをおすすめします。
「うちみたいな小さな教室でも対象?」講師の数え方が鍵
学習塾・教室業の従業員要件は次のとおりです。
- 学習塾・そろばん教室・英会話教室・音楽教室など(宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業):「常時使用する従業員」5人以下
- 宿泊業・娯楽業、製造業その他:従業員20人以下
ポイントは、講師を全員数えるわけではないことです。この「常時使用する従業員」には、次の人は含めません。
- 事業主本人(個人事業主)・会社役員
- 同居の親族従業員
- 通常の従業員より勤務時間が短いパート・アルバイト(=短時間労働者。学生アルバイト講師の多くはここに該当します)
- 日雇い、2か月以内の短期雇用、季節的な短期雇用の人
これを実際に自分の教室に当てはめて数えてみましょう。
例:教室長1人+学生アルバイト講師3人の個人経営の学習塾(教室長は個人事業主) → 教室長本人は数に入りません。学生アルバイト講師も、通常の従業員より勤務時間が短い場合は「常時使用する従業員」に含まれません。数えるのは教室長本人を除き実質0人。5人以下なので、対象になります。
例:正社員講師3人+業務委託の専任講師を随時活用する複数教室の英会話教室 → 数えるのは正社員講師3人。業務委託は雇用関係にないため、「常時使用する従業員」には含まれない見込みです。ただしこの扱いを明記した公式資料は確認できていません。該当する場合は商工会議所・商工会へ確認してください。この教室も3人=対象です。
事業主本人・家族・短時間の学生アルバイト講師を除くと、人数は思っているより少なくなります。多くの個人経営の学習塾・教室が対象です。雇用形態の判断に迷う場合は、商工会議所・商工会や公募要領で確認してください。
「短時間労働者」の判断基準
「通常の従業員より勤務時間が短いパート・アルバイト」という基準は、具体的にどう判断すればよいのでしょうか。一般的な目安としては、同じ業務を行う正社員・フルタイム従業員と比較して、1週間の所定労働時間が短い場合が該当します。学生アルバイト講師の多くは、授業がある時間帯だけ勤務する働き方のため、この基準に当てはまりやすい傾向があります。
ただし、正社員・フルタイムの講師がいない教室(教室長のみが専任で、他は全員パート・アルバイト)の場合、「通常の従業員」の基準をどこに置くかが判断しにくいケースもあります。このような場合は、自己判断せず商工会議所・商工会に確認することをおすすめします。
第20回のスケジュール(申請受付開始・締切)
第20回の申請受付は2026年11月5日(木)に始まり、申請締切は2026年12月15日(火)17:00です。受付開始日と締切日を取り違えないよう、まずこの2つの日付を押さえておきましょう。採択発表は2027年3月頃、事業の実施期間は交付決定日から2028年3月31日までが予定されています。
小規模事業者持続化補助金は、これまでも回次を重ねて実施されてきた制度です。第20回に間に合わなくても、次年度以降に新たな回次が実施される見込みが高いため、今回の準備が間に合わなくても諦める必要はありません。ただし、要件・補助上限額は回次ごとに見直されることがあるため、次回を待つ場合も最新の公募要領を確認する姿勢が欠かせません。
補助金は「精算払い」です。着金は実績報告のあと。ホームページ制作費や内装費は、いったん自己資金や借入で用意します。資金繰りに不安があるなら、早めに金融機関や商工会議所・商工会へ相談してください。
個人経営の教室にとって、数十万円〜数百万円の投資をいったん立て替えるのは決して小さな負担ではありません。「補助金が出るから」と見積もりより大きな投資に踏み切るのは避け、自己資金・借入だけで実施できる範囲の計画を立てることをおすすめします。補助金はあくまで後から戻ってくるお金であり、最初から当てにした資金計画は資金ショートのリスクを高めます。
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を先に押さえておくほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。着金までの主なタイミングと、その時点で必要になる書類は次のとおりです。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 〜2026年12月4日(金) | 商工会議所・商工会に相談し「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらう | 経営計画書・補助事業計画書の下書き(相談時に使う) |
| 〜2026年12月15日(火)17:00 | 電子申請(GビズIDが必要) | 経営計画書、補助事業計画書、見積書、事業支援計画書(様式4) |
| 2027年3月頃 | 採択発表 → 交付決定 | ― |
| 交付決定日〜2028年3月31日 | 事業実施(制作・発注・支払い) | 契約書・請求書・領収書などを保管 |
| 事業終了後 | 実績報告 → 補助金の入金 | 実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など) |
注意したいのが、事業支援計画書(様式4)の発行締切です。申請締切の11日前、2026年12月4日(金)。発行には商工会議所・商工会での相談が必要なので、締切ぎりぎりでは間に合いません。
商工会議所・商工会への相談は必須?
必須です。事業計画は、商工会議所・商工会の支援を受けて作成します。窓口は事業所の所在地が「商工会議所地区」か「商工会地区」かで決まり、両方には申請できません。まずは自分の教室がどちらかを確認しましょう。
複数拠点を運営している場合、本部の所在地ではなく、それぞれの教室が所在する地域の商工会議所・商工会に確認が必要になることもあります。拠点が複数の地域にまたがる場合は、どこが窓口になるかを事前に確認しておくと、相談の二度手間を防げます。
相談枠は、申請締切が近づくほど混みます。様式4の発行にも時間がかかるので、公募が始まったらすぐ予約を取ってください。
商工会議所・商工会の相談は、単に様式4を発行してもらうだけの手続きではありません。事業計画の内容について、経営指導員からアドバイスを受けられる貴重な機会でもあります。教室のホームページ制作や体験会の企画など、どんな取組が「販路開拓」として評価されやすいのか、相談の過程で具体的なヒントが得られることもあります。初めて申請する場合は、早めに相談の予約を取り、複数回のやり取りを想定してスケジュールを組んでおくと安心です。
商工会議所・商工会以外の相談先
事業計画の作成そのものに不安がある場合、商工会議所・商工会以外にも相談先があります。認定経営革新等支援機関(国が認定した中小企業の支援機関で、税理士・中小企業診断士・金融機関などが登録しています)に相談することもできます。ただし、事業支援計画書(様式4)の発行は商工会議所・商工会の専管業務のため、最終的にはそちらへの相談が必須です。
よくある質問
締切は2026年11月5日ですか?
いいえ。2026年11月5日は申請受付の開始日です。第20回の申請締切は2026年12月15日(火)17:00です。あわせて、事業支援計画書(様式4)の発行締切(2026年12月4日)にも注意してください。
補助上限は本当に250万円ですか?
250万円は、基本額50万円にインボイス特例・賃金引上げ特例を両方併用した場合の最大額です。特例を使わない場合の基本上限は50万円で、無条件で250万円がもらえるわけではありません。
講師を含めて従業員が5人を超える学習塾は対象外ですか?
学習塾・そろばん教室・英会話教室・音楽教室など(宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業)は、従業員5人以下が要件です。ただし短時間勤務の学生アルバイト講師は「常時使用する従業員」に含まれません。在籍人数がそのまま数えられるわけではないので、迷う場合は商工会議所・商工会にご確認ください。
複数教室を運営していますが、教室ごとに申請できますか?
いいえ。申請は法人・個人事業主単位で1回です。複数教室を運営している場合、それぞれの教室への投資をまとめて1つの事業計画として申請する必要があります。教室ごとに個別枠を持つことはできません。
教材や教具のデジタル化は対象になりますか?
対象になる可能性はあります。ただし、単に紙の教材をそのままPDF化するだけでは「販路開拓」の要素が弱く、評価されにくいと考えられます。デジタル化によって、オンライン授業対応や、生徒・保護者への配信環境の整備につながるといった、具体的な販路開拓効果を事業計画に明記することが重要です。
商工会議所と商工会、どちらに相談すればいいですか?
事業所の所在地によって決まります。所在地が「商工会議所地区」か「商工会地区」かで窓口が異なり、両方に申請することはできません。まずは自分の教室がどちらの地区にあたるかを確認しましょう。複数拠点を運営している場合は、拠点ごとに窓口が異なる可能性もあるため、あわせて確認しておくと安心です。
