結論から言うと、一人親方も補助金の対象になります。 従業員を雇っていないことは不利にならず、むしろ「小規模事業者」として有利な補助率が適用される場面も多くあります。ただし「一人親方だから使えない補助金」も正直に存在します。何が使えて、何が使えないのか、金額とあわせて順番に見ていきましょう。
図: 一人親方が使える補助金の全体像。詳しくは本文で解説します
そもそも一人親方は補助金の対象になるのか
補助金の多くは「中小企業・小規模事業者」を対象にしていますが、この基準は法人か個人事業主かを問いません。一人親方(従業員を雇わず自分ひとり、または家族だけで工事を請け負う個人事業主)も、要件を満たせば小規模事業者として補助金の対象になります。
判定のポイントは次の2つです。
- 資本金の概念がない:個人事業主には資本金という考え方がないため、判定は「常時使用する従業員数」のみで行われます
- 従業員のカウント方法:事業主本人・同居の親族従業員・短時間勤務のパート・日雇いや季節雇用の人は「常時使用する従業員」に含まれません
建設業(「製造業その他」の区分)の基準は常時使用する従業員20人以下です。一人親方は、応援の職人を単発で頼んでいても、雇用契約を結んでいなければこの人数にカウントされない見込みのため、多くの一人親方は実質0人としてカウントされ、小規模事業者に該当します。
つまり「従業員がいない」ことは、対象外になる理由ではなく、むしろ小規模事業者としての優遇(後述するインボイス特例の補助率アップなど)を受けやすい立場だということです。
一方で、正直にお伝えしておきたいのは、雇用している従業員がいることを前提にした補助金・助成金(キャリアアップ助成金など)は、一人親方には使えないという点です。この整理は次の章で詳しく見ていきます。
一人親方が使える補助金の全体像
一人親方が実際に使える可能性がある制度を横断で整理すると、次のようになります。
| 制度名 | 対象になりやすさ | 補助上限額 | 補助率 | 締切 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金(第20回) | ◎ 従業員ゼロでも対象 | 最大250万円(基本50万円+特例加算) | 2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者3/4) | 2026年12月15日(火)17:00 |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | ◎ 個人事業主も対象 | 最大450万円(枠・プロセス数で変動) | 1/2〜4/5 | 1次締切2026年8月25日(火)17:00(ローリング公募) |
| 自治体独自の中小企業・個人事業者向け補助金 | △ 地域による | 制度ごとに異なる | 制度ごとに異なる | 制度ごとに異なる |
| キャリアアップ助成金など雇用系助成金 | × 従業員ゼロだと対象外 | ― | ― | ― |
図: 一人親方が使える・使えない制度の全体像
小規模事業者持続化補助金
自社のホームページ制作、施工事例のカタログ化、看板・チラシによる集客など「元請け頼みから抜け出して自分の名前で仕事を取る」ための投資が対象です。基本の上限は50万円、特例を組み合わせると最大250万円まで広がります(詳しくは後述)。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
見積・原価管理ソフト、会計クラウド、インボイス対応のレジ・受発注システムなど、ITツールの導入費用が対象です。個人事業主も申請でき、小規模事業者に該当するとインボイス枠の補助率が最大4/5まで上がります。ただし、事務局に登録済みの「IT導入支援事業者」を通じて、登録済みのITツールを選ぶ仕組みのため、自分で好きなソフトを選んで即申請、とはいきません。
自治体独自の制度
市区町村によっては、独自の中小企業・個人事業者向け補助金(設備投資・創業支援など)を用意している場合があります。制度の有無・内容は自治体ごとに異なるため、自分の事業所在地で使える制度があるかは個別に確認が必要です。
使えない制度も正直に:雇用系助成金
キャリアアップ助成金のような雇用系の助成金(社労士が扱う領域)は、「雇用保険適用事業所であること」「事業主・3親等以内の親族以外の従業員を1人以上雇用していること」が前提条件です。従業員を雇わず自分ひとりで営んでいる一人親方は、この時点で対象外になります。将来、従業員を1人でも雇用する予定があるなら選択肢に入ってきますが、「今すぐ使える制度」からは外れることを正直にお伝えしておきます。
一人親方とインボイス制度――使える補助金はある?
インボイス制度は、多くの一人親方にとって避けて通れない論点です。免税事業者のままだと元請けとの取引で不利になる可能性がある一方、インボイス発行事業者に登録すると消費税の申告・納税義務が生じます。登録すべきかどうかの判断は税務・税理士の領域であり、本記事では判断そのものには踏み込みませんが、「登録した場合に使える補助金」は整理しておく価値があります。
- 持続化補助金のインボイス特例:適格請求書発行事業者に新たに登録した免税事業者向けの特例で、補助上限が基本50万円から100万円に引き上がります。元請けとの取引のためにインボイス登録した一人親方は対象になりやすい特例です
- デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠:インボイス対応の会計・受発注・決済ソフトの導入費用が対象で、小規模事業者は補助率が最大4/5まで上がります
なお、インボイス制度導入時の緩和措置である「2割特例」は2026年9月30日を含む課税期間で終了し、個人事業主であれば2026年分が最後の適用年になる、と説明されています。 制度変更のタイミングと合わせて、インボイス登録・未登録それぞれの場合に使える補助金を把握しておくと、判断材料の一つになります。
一人親方の使い道の具体例(対象経費)
持続化補助金・デジタル化・AI導入補助金それぞれで、一人親方が実際にイメージしやすい使い道は次のとおりです。
- 自社のホームページ・SNS発信:施工実績を紹介するホームページの制作、Instagramでの施工事例発信の外注費
- 見積・原価管理ソフトの導入:どんぶり勘定になりがちな見積・原価計算をシステム化(デジタル化・AI導入補助金の対象)
- 名刺・チラシ・看板:現場に立てる自社の看板、地域向けのチラシ・ポスティング
- 展示スペース・相談スペース:エンド顧客に直接提案できる小規模な相談スペースの設営
一方で、対象にならない・なりにくいものも正直にお伝えします。
- 工具・重機の単なる買い替え(性能維持だけの更新は、販路開拓の投資として認められにくい)
- 軽トラック・営業車など車両の購入(多くの場合、業務以外にも使える汎用品として対象外になりやすい)
- 仕入れ代・外注費・人件費など、日々の現場を回すための運転資金
- 交付決定より前に発注・契約してしまった費用(フライング発注)
じつは、工具・機材の入れ替えが対象になるかどうかは、はっきり白黒つくものばかりではありません。同じ「機材の入れ替え」でも、それが自分の販路開拓の取組にどう結びつくのかを事業計画のなかで具体的に示せるかどうかで、対象と認められるかどうかが変わります(あくまで、実際に販路開拓につながる取組であることが前提です)。この“販路開拓の取組として正しく位置づけ、事業計画に落とし込むための考え方”は、GRANTOS公式LINEの登録者限定・攻略ガイドで、採択されやすい書き方の例とあわせて紹介しています。
いくらもらえる?一人親方の金額シミュレーション
持続化補助金は「基本額+特例」で上限が決まります。ここで一人親方特有の重要な事実があります。賃金引上げ特例(上限+150万円)は、申請時点で従業員を雇用していない事業主は対象外と説明されています。 つまり、従業員ゼロの一人親方が現実的に狙える上限は、基本枠の50万円か、インボイス特例を使った場合の100万円までが目安になります(250万円は、従業員を雇用している事業者向けの上限額です)。
図: 一人親方が現実的に狙える補助上限の目安
① 内装工事の一人親方(インボイス未登録・基本枠・上限50万円) これまで知人の紹介だけで仕事を回してきたが、施工事例を載せた自社ホームページを作って直接エンド顧客からも仕事を取りたい。ホームページ制作と現場用の看板作成の見積もりは75万円。 → 75万円 × 2/3 = 50万円の補助(基本枠の上限に到達)。自己負担25万円で、自分の名前を出して営業できる土台が作れます。
② 電気工事の一人親方(インボイス登録済み・インボイス特例・上限100万円) 元請けとの取引のためにインボイス発行事業者に登録した。あわせて見積・原価管理ソフトを導入し、名刺代わりのホームページも作り直したい。見積もりは150万円(見積ソフト導入費+ホームページ制作費)。 → 150万円 × 2/3 = 100万円の補助。基本枠(50万円)のままだとホームページ制作だけで枠を使い切ってしまうところ、インボイス特例で枠が広がり、見積ソフト導入まで一度に手が届きます。
③ 職人を1人雇い始めた型枠大工(両特例併用・上限250万円) 一人親方から一歩進み、若手職人を1人正社員として雇い始めた。事業場内最低賃金の引き上げにあわせて、施工事例集(カタログ)と採用ページも作りたい。見積もりは375万円。 → 375万円 × 2/3 = 250万円の補助(両特例併用の上限に到達)。従業員を雇うことで、初めて賃金引上げ特例の対象になり、上限250万円まで視野に入ってきます。
このように、「従業員がいるかどうか」が上限額の大きな分かれ目になります。今は一人でも、将来的に従業員を雇う予定があるなら、そのタイミングで使える特例が広がることも覚えておくとよいでしょう。
デジタル化・AI導入補助金や自治体独自の制度など、この補助金だけで足りないと感じたら、他に使える補助金がないか探してみるのも有益です。
あなたが使える補助金は、これだけではないかもしれません。 → 他に使える補助金を無料で診断する
申請の流れ・スケジュール(持続化補助金 第20回)
第20回の申請受付は2026年11月5日(木)に始まり、申請締切は2026年12月15日(火)17:00です。採択発表は2027年3月頃、事業の実施期間は交付決定日から2028年3月31日までが予定されています。
図: 申請から着金までのスケジュール。様式4の発行締切は申請締切より前の“隠れ期限”です
補助金は経費を立て替えて支払った後に交付される「精算払い」のため、着金は実績報告のあとになります。特に注意したいのが、**事業支援計画書(様式4)の発行締切が申請締切の11日前=2026年12月4日(金)**にあること。発行には商工会議所・商工会での相談・手続きが必要です。現場仕事で忙しい一人親方こそ、逆算して早めに窓口へ相談しておくことをおすすめします。
デジタル化・AI導入補助金は年に複数回締切がある「ローリング公募」で、直近の1次締切は2026年8月25日(火)17:00です。事務局に登録済みの「IT導入支援事業者」への相談から始める必要があるため、こちらも早めの着手が安心です。
複数制度の使い分けや、インボイス特例・従業員要件の該当可否など、判断に迷う場面は専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
従業員ゼロでも対象になりますか?
なります。持続化補助金・デジタル化・AI導入補助金のいずれも、事業主本人しかいない一人親方は「常時使用する従業員」がゼロとしてカウントされ、小規模事業者としての要件を満たします。ただし、賃金引上げ特例(持続化補助金の上限+150万円)は従業員を雇用していることが前提のため、従業員ゼロの場合は対象外と説明されています。
開業したばかりでも使えますか?
開業していれば申請できる可能性がありますが、確定申告書の控えなど事業実績を示す書類の提出が求められる場合があり、開業して間もない事業者は必要書類を用意しにくいことがあります。 開業直後の場合は、まず商工会議所・商工会やIT導入支援事業者に、必要書類を用意できるか相談するのが確実です。
労災保険の特別加入や建設キャリアアップシステム(CCUS)の費用も補助されますか?
労災保険特別加入の保険料やCCUSの登録料そのものを対象にした国の補助金は、本記事執筆時点では確認できていません。これらは補助金とは別の、一人親方が現場に入るための必須手続き・保険という位置づけです。自治体によっては独自の助成制度を用意している場合もあるため、気になる場合は事業所在地の自治体窓口に確認しておくとよいでしょう。
キャリアアップ助成金など雇用系の助成金は使えますか?
従業員ゼロの一人親方は対象外です。キャリアアップ助成金は「雇用保険適用事業所であること」「事業主・3親等以内の親族以外の従業員を1人以上雇用していること」が前提条件のため、従業員を雇っていない間は使えません。将来、従業員を1人でも雇用した場合は選択肢に入ってきます。
※補助上限額・補助率・締切などの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
出典(一次情報・裏取り情報): 中小企業庁 小規模事業者持続化補助金について/中小企業庁 第20回公募要領公開告知/中小機構 補助金活用ナビ(小規模事業者持続化補助金)/デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト/そよぎ行政書士事務所「賃金引上げ特例」解説/佐々木中小企業診断士事務所「賃金引上げ特例」解説/マネーフォワード クラウド建設業「一人親方の労災保険特別加入」/マネーフォワード クラウド建設業「建設キャリアアップシステムとは」/助成金サポート.JP「キャリアアップ助成金は個人事業主も対象?」
採択される事業計画には“書き方の型”があります
同じ投資内容でも、事業計画の書き方ひとつで採択・不採択は変わります。審査で見られるポイントや、そのまま使える記入例は、一般には出回っていません。
\プロだけが知る申請のコツはコチラから/
この補助金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 小規模事業者持続化補助金(第20回・一般型/通常枠) |
| 対象業種 | 全業種(建設業・一人親方も対象) |
| 利用目的 | 設備整備・IT導入をしたい/販路拡大・海外展開をしたい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 20人以下(建設業=製造業その他区分。商業・サービス業は5人以下) |
| 補助上限額 | 最大250万円(基本50万円+特例加算。従業員ゼロの場合は賃金引上げ特例対象外のため実質上限100万円が目安) |
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例利用の赤字事業者は3/4) |
| 申請受付 | 2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00 |
| 公式サイト | 小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠> 公式ポータル |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。
