一人親方や、応援で来てもらう業務委託の職人が多い工務店は、それだけで対象外になるのか。結論から言うとなりません。 持続化補助金が数えるのは「常時使用する従業員」で、雇用契約のない一人親方・業務委託の職人は含まれない見込みです。建設業は要件が20人以下と比較的広く、職人を複数抱える会社でも対象になるケースが多くあります。
第20回の補助上限は250万円(基本額+特例加算)、補助率2/3。対象は事業者(法人・個人事業主)で、建設業・工務店を含む全業種、全国どこでも申請できます。申請受付は2026年11月5日開始、締切は12月15日17:00。
元請けの紹介だけで仕事が回っている。自社の名前では取れていない。施工事例を見せる場所もない。求人を出しても、現場の様子が伝わらず若手が来ない――。よくある悩みです。工務店で何に使えるか、いくらもらえるか、対象になる/ならないの境界を、実際の会社の例に沿って順に見ていきます。
「うちみたいな工務店でも対象?」まず従業員数を数える
建設業の従業員要件は次のとおりです。
- 建設業(「製造業その他」区分):「常時使用する従業員」20人以下
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):5人以下
建設業は20人以下という、比較的余裕のある基準です。しかも、全員を数えるわけではありません。この「常時使用する従業員」には、次に挙げる人は含めません。
- 事業主本人(個人事業主)・会社役員
- 同居の親族従業員
- 通常の従業員より勤務時間が短いパート・アルバイト(=短時間労働者)
- 日雇い、2か月以内の短期雇用、季節的な短期雇用の人
よく誤解されるポイント:一人親方・業務委託の職人は数えるのか
建設業ならではの悩みが、ここにあります。常用の職人に加えて、繁忙期だけ応援を頼む一人親方や、業務委託契約の職人が出入りする現場は珍しくありません。この人たちは「常時使用する従業員」に数えるのでしょうか。
常用の自社スタッフと、一人親方・業務委託契約の職人は別に扱われます。雇用関係にない一人親方・業務委託の職人は、「常時使用する従業員」には含まれない見込みです。ただしこの扱いを明記した公式資料は確認できていないため、該当する場合は商工会議所・商工会に個別に確認してください。
これを実際の会社に当てはめて数えてみます。
例:一人親方+パートで事務を手伝う配偶者の工務店(事業主は個人事業主) → 事業主本人は数に入りません。同居の親族が事務を手伝っている場合もカウントしません。数えるのは実質0人。20人以下なので、対象になります。
例:職人8人+事務スタッフ2人のリフォーム会社(法人) → 代表者を除く職人8人と事務スタッフ2人を合わせて10人。建設業の要件「20人以下」に十分収まるため、対象になります。
例:常用の職人5人+繁忙期に応援を頼む一人親方・業務委託の職人を随時活用する内装業者 → 数えるのは常用の職人5人。業務委託は雇用関係にないため、「常時使用する従業員」には含まれない見込みです。応援で単発に来る一人親方も、雇用契約がなければ同様と考えられます。この会社も5人=対象です。
例:常用の職人18人を抱える中堅の総合建設業者(法人) → 代表者・役員を除いても18人。建設業の要件「20人以下」にギリギリ収まりますが、あと2人でも常用スタッフを増やすと要件を超える可能性があります。従業員数の推移に注意が必要な規模です。増員を検討している場合は、要件を超える前のタイミングでの申請を検討することも一つの考え方です。
要件が20人以下なので、職人を複数抱える工務店・リフォーム会社でも対象になるケースが多い業種です。ただし雇用形態の判断は個別事情で変わります。業務委託や応援の職人の扱いに迷ったら、商工会議所・商工会や公募要領で確認を。数え間違えたまま申請を進めてしまうと、後になって計画のやり直しにつながります。
持続化補助金は建設業・工務店の何に使える?
対象は、自社の名前で仕事を取りにいくための「販路開拓」の投資です。工具や重機の単なる更新は対象外です。まずは具体的な使い道の例から見ていきます。
対象になる使い道の例
- 自社の情報発信:施工事例・実績を紹介する自社ホームページの制作、リフォーム・注文住宅の事例集(カタログ)の作成
- 販促・集客:現場に立てる自社の看板・のぼり、チラシのポスティング、地域向けの折込広告
- ショールーム・展示スペース:エンド顧客に直接提案できる小規模ショールームや相談スペースの設営
- 見積・現場管理の効率化:見積作成・工程管理・顧客とのやり取りを効率化するシステムの導入(元請け依存から抜け出し、自社で直接受注を回すための基盤づくり)
- 採用のための発信:職人・現場スタッフの採用につながる求人ページ・会社案内パンフレットの制作・掲載
対象にならないものの例
- 仕入れ代・外注費・人件費など、日々の現場を回すための「単なる運転資金」
- 重機・工具の単なる買い替え(性能維持のための更新だけでは、販路開拓につながる投資として認められにくい)
- パソコン・タブレットなど、業務以外にも使える汎用品の購入
- 交付決定より前に発注・契約してしまった費用(いわゆる「フライング発注」。交付決定とは、採択の後に届く「補助金を出します」という正式な通知のこと)
- 販路開拓や生産性向上につながらない、事業計画と関係のない支出
よく誤解されるポイント:重機・工具の入れ替えは対象になるのか
「新しい重機を入れれば作業効率が上がる。だから対象になるはずだ」と考える経営者は多いですが、これは誤解です。
分かれ目は、その投資が販路開拓にどうつながるかを事業計画で説明できるかどうかです。じつは、重機・工具の入れ替えが対象になるかどうかは、はっきり白黒つくものばかりではありません。
- ✗ 老朽化した重機を、同等の性能の新品に単純に交換するだけ
- ○ 新しい重機の導入によって、これまで受けられなかった規模・種類の工事を受注できるようになり、それを新しい販路として事業計画で説明できる
同じ「機材の入れ替え」でも、それが自社の販路開拓の取組にどう結びつくのかを事業計画のなかで具体的に示せるかどうかで、対象と認められるかどうかが変わります(あくまで、実際に販路開拓につながる取組であることが前提です)。「性能が上がるから」だけの理由では、対象と認められにくいという点を、あらかじめ押さえておいてください。
似ている制度との違い:省力化投資補助金との使い分け
建設業の設備投資で検索すると、持続化補助金と並んで「中小企業省力化投資補助金」も候補に挙がります。この2つは目的が異なります。
- 持続化補助金:販路開拓(新しい顧客・受注ルートの獲得)が主目的。ホームページ制作・看板・ショールーム設営などが中心
- 省力化投資補助金:人手不足の解消が主目的。重機・工具そのものの入れ替えでも、「人手が減る」ことを客観的なデータで示せれば対象になる可能性がある
同じ「重機の入れ替え」でも、狙いが新規受注の獲得なら持続化補助金では説明が難しく、人手不足の解消なら省力化投資補助金のほうが目的に合っている、という住み分けです。重機・工具そのものの入れ替えを検討している場合は、持続化補助金よりも省力化投資補助金の対象要件を確認したほうが、話が早いことがあります。逆に、ホームページや看板づくりのような情報発信の投資は、持続化補助金の得意分野です。
よく誤解されるポイント:下請け専門でも「販路開拓」になるのか
建設業に特有の疑問が、もう一つあります。元請けからの下請け仕事だけで経営してきた工務店・職人が、「自社の名前で直接受注したい」という取組は、この補助金の「販路開拓」に当てはまるのでしょうか。
元請け依存から抜け出し、エンドユーザーや別の元請けから直接仕事を受けられるようにする取組は、典型的な販路開拓として対象になりやすいケースです。自社ホームページの制作、施工事例集の作成、ショールームの設営などは、まさにこの「元請け依存からの脱却」を後押しする投資として位置づけられます。
一方で、既存の元請け1社との関係を維持するためだけの投資(例:元請け専用の業務システム導入で、その元請けとの取引を効率化するだけ)は、新しい販路の開拓とは言いにくく、対象になりにくくなります。「新しい取引先・新しい顧客層に届くための投資か」という視点が、下請け専門の職人・工務店にとっての判断基準になります。事業計画にこの視点をどう盛り込むかが、審査で問われるポイントです。
法人と個人事業主、どちらが有利ということはない
建設業では、法人化していない一人親方や、個人事業主として営業している工務店も少なくありません。この補助金は法人・個人事業主のどちらでも申請できます。
- 個人事業主の一人親方:事業主本人はカウントに含まれないため、従業員を雇っていなければ「常時使用する従業員」は実質0人となり、20人以下の要件を余裕をもって満たします
- 法人化している工務店:役員はカウントに含まれませんが、常用の従業員は数える必要があります
法人化しているかどうかは、対象・対象外を分ける基準ではありません。 申請にあたって法人化を検討する必要はなく、現在の事業形態のまま申請を進められます。「一人親方だから」「まだ法人になっていないから」と最初から諦める必要はありません。
同じように誤解されやすいのが、建設業許可の有無です。この補助金は建設業許可を持っているかどうかを対象・対象外の判定に使っていません。500万円未満の軽微な工事しか請け負わない、許可を取っていない小規模な工務店・一人親方でも、従業員数の要件さえ満たせば申請できます。「うちは許可を持っていないから、こういう公的な制度は無理だろう」という思い込みで検討自体をやめてしまうのは、もったいない判断です。逆に、建設業許可を持つ中堅の総合建設業者であっても、対象になるかどうかを分けるのは許可の有無ではなく、あくまで常時使用する従業員数と、事業計画が販路開拓の趣旨に沿っているかどうかです。専任技術者や経営業務管理責任者の在籍状況も、この補助金の審査項目には含まれません。
いくらもらえる?上限250万円の中身は
「上限250万円」は無条件ではありません。基本額に特例を足して、上限が上がる仕組みです。
| 区分 | 補助上限額 |
|---|---|
| 基本 | 50万円 |
| +インボイス特例 | 100万円(基本50万円+50万円) |
| +賃金引上げ特例 | 200万円(基本50万円+150万円) |
| +両特例併用 | 250万円(最大) |
特例の中身は次のとおりです。
- インボイス特例:免税事業者から適格請求書発行事業者に新たに登録した場合の特例。元請けとの取引のためにインボイス登録した一人親方・個人事業の工務店が当てはまります
- 賃金引上げ特例:事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる計画がある場合の特例
補助率は通常2/3です。賃金引上げ特例を利用する事業者のうち、赤字事業者は3/4に引き上がります。
事業者タイプ別・シミュレーション
同じ上限でも、会社の規模とやりたいことで使い方は変わります。3つの事業者タイプで、投資額と補助額を見てみましょう。補助額は「対象経費×2/3」を、枠の上限まで受け取れる考え方です。
① 一人親方の工務店(基本枠・上限50万円) これまで知人の紹介と元請けからの下請け仕事だけでやってきたが、自分の名前で直接エンド顧客から仕事を取りたい。施工事例を載せた自社ホームページの制作と、現場に立てる自社看板の作成の見積もりは75万円。 → 75万円 × 2/3 = 50万円の補助(基本枠の上限に到達)。自己負担25万円で、自社の名前を出して営業できる土台が作れます。一人親方でも、法人と同じ条件で申請できます。
② インボイス登録した数名のリフォーム会社(インボイス特例・上限100万円) リフォームの相談を気軽に受けられる小規模なショールームを設営し、見積作成から工程管理までのシステムも導入したい。見積もりは150万円(ショールームの内装・什器費+システム導入費)。汎用的なパソコン単体の購入費は対象外です。 → 150万円 × 2/3 = 100万円の補助。基本枠(上限50万円)のままだと、ショールーム設営だけで枠を使い切ってしまいます。インボイス特例で枠が+50万円に広がると、同じ申請でショールームに加えて見積・工程管理システムまで一度に手が届くのです。これも、元請け依存から抜け出すための投資として位置づけられます。
③ 賃上げに取り組む内装専門業者(両特例併用・上限250万円) 施工事例集(カタログ)を制作して工務店・設計事務所への営業を強化し、あわせて職人採用につながる求人ページと会社案内パンフレットも作りたい。見積もりは375万円。 → 375万円 × 2/3 = 250万円の補助(両特例併用の上限に到達)。賃金引上げ特例(+150万円)まで使えると、営業用の施工事例集だけで終わらず、採用のための発信まで同時に実現できます。職人の賃上げと採用強化を一度に進めたい会社に向いています。
第20回のスケジュール(申請受付開始・締切)
第20回の申請受付は2026年11月5日(木)に始まり、申請締切は2026年12月15日(火)17:00です。採択発表は2027年3月頃、事業の実施期間は交付決定日から2028年3月31日までが予定されています。この2つの日付を取り違えないようにしてください。
補助金は、経費を立て替えて支払った後に交付される「精算払い」です。着金は実績報告のあと。ホームページ制作費やショールーム設営費は、いったん自己資金や借入で用意します。資金繰りに不安があるなら、早めに金融機関や商工会議所・商工会へ相談を。特に内装工事を伴うショールーム設営は、支払いのタイミングが工程ごとに複数回発生することもあるため、事前の資金計画が重要です。
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。着金までの主なタイミングと、その時点で必要になる書類は次のとおりです。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 〜2026年12月4日(金) | 商工会議所・商工会に相談し「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらう | 経営計画書・補助事業計画書の下書き(相談時に使う) |
| 〜2026年12月15日(火)17:00 | 電子申請(GビズIDが必要) | 経営計画書、補助事業計画書、見積書、事業支援計画書(様式4) |
| 2027年3月頃 | 採択発表 → 交付決定 | ― |
| 交付決定日〜2028年3月31日 | 事業実施(発注・制作・支払い) | 契約書・請求書・領収書などを保管 |
| 事業終了後 | 実績報告 → 補助金の入金 | 実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など) |
特に注意したいのが、事業支援計画書(様式4)の発行締切が申請締切の11日前=2026年12月4日(金)にあること。発行には商工会議所・商工会での相談・手続きが要ります。申請締切ぎりぎりに動き始めると、間に合いません。現場が忙しい時期こそ、逆算して早めに窓口へ動き出すことをおすすめします。
商工会議所・商工会への相談は必須?
この補助金では、商工会議所・商工会の支援を受けて事業計画を作ります。窓口は、事業所の所在地が「商工会議所地区」か「商工会地区」かで決まります。同一事業者が両方に申請することはできません。まずは自分の会社がどちらの地区に属しているかを、はっきりさせておく必要があります。
相談枠は、申請締切が近づくほど混み合います。様式4の発行にも時間がかかるので、公募が始まったらすぐ予約を取ります。一人親方・業務委託職人の扱いのように、公式資料に明記がない判断も、この窓口で個別に確認するのが確実です。現場の合間を縫って相談日程を組む必要があるため、早めの動き出しが結果的に負担を軽くします。
よくある質問
一人親方や業務委託の職人が多い工務店は対象外ですか?
対象外とは限りません。雇用関係にない一人親方・業務委託契約の職人は、「常時使用する従業員」には含まれない見込みです。ただしこの扱いを明記した公式資料は確認できていないため、該当する場合は商工会議所・商工会に個別に確認してください。
締切は2026年11月5日ですか?
いいえ。2026年11月5日は申請受付の開始日です。第20回の申請締切は2026年12月15日(火)17:00です。あわせて、事業支援計画書(様式4)の発行締切(2026年12月4日)にも注意してください。
重機の買い替えは対象になりますか?
単なる性能維持のための買い替えは対象になりにくいです。新しい重機によって新しい受注(新規顧客・新しい工事種別)につながることを事業計画で具体的に示せる場合は、対象と認められる可能性があります。人手不足解消が目的の場合は、省力化投資補助金の対象要件も確認してみてください。
従業員が20人を超える建設業は対象外ですか?
建設業は「製造業その他」の区分で、常時使用する従業員20人以下が要件です。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下。判断に迷う場合は商工会議所・商工会にご確認ください。
下請け専門の工務店でも「販路開拓」の投資として認められますか?
元請け依存から抜け出し、エンドユーザーや別の元請けから直接仕事を受けられるようにする取組は、典型的な販路開拓として対象になりやすいです。既存の元請け1社との関係維持だけを目的にした投資は、新しい販路の開拓とは言いにくく、対象になりにくくなります。
個人事業主の一人親方でも法人化しないと不利になりますか?
いいえ。法人化しているかどうかは対象・対象外を分ける基準ではありません。個人事業主の一人親方は事業主本人がカウントに含まれないため、多くの場合、従業員数の要件は余裕をもって満たします。
