介護に関する補助金を探している方の多くが実際に使うのは、「補助金」ではなく介護保険の「保険給付」です。 手すりの設置や段差解消の工事、ポータブルトイレなどの福祉用具の購入、介護サービス費の自己負担が高額になったときの払い戻しまで、いずれも介護保険という保険の仕組みから支払われます。
住宅改修費は上限20万円、福祉用具購入費は年度ごとに上限10万円、高額介護サービス費は所得区分に応じて月額4万4,400円〜14万100円が払い戻されます。いずれも要介護・要支援認定を受けていることが前提で、窓口はお住まいの市区町村の介護保険担当課です。この記事では、介護でお金の負担を軽くできる代表的な制度を、一次情報にもとづいて整理します。
介護で使える制度の全体像
介護でお金の負担を軽くする制度は、大きく3つに分かれます。
- 住宅改修費: 手すりの設置や段差解消など、自宅をバリアフリー化する工事の費用を補助
- 福祉用具購入費: ポータブルトイレや入浴補助用具など、レンタルになじまない福祉用具の購入費用を補助
- 高額介護サービス費: 介護サービスの自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される
いずれも介護保険法にもとづく給付であり、要介護認定(要支援1〜要介護5)を受けていることが前提です。
自己負担割合(1割・2割・3割)はどう決まるか
住宅改修費・福祉用具購入費・高額介護サービス費、いずれも自己負担割合が1〜3割のどこに当たるかで実際の負担額が変わります。自己負担割合は「本人の所得」だけでなく「世帯内の65歳以上の人の年金収入等」も合わせて判定されるため、本人の所得だけで自己判断すると誤ることがあります。
| 判定 | 基準 |
|---|---|
| 3割負担 | 本人の合計所得金額が220万円以上、かつ「合計所得金額+年金収入等」が単身340万円以上(65歳以上が2人以上いる世帯は463万円以上) |
| 2割負担 | 本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満で「合計所得金額+年金収入等」が単身280万円以上(複数世帯346万円以上)/または本人の合計所得金額が220万円以上で「合計所得金額+年金収入等」が3割の基準に届かない場合 |
| 1割負担 | 上記のいずれにも当てはまらない場合、40〜64歳の方(第2号被保険者)、住民税非課税の方、生活保護受給者 |
負担割合は市区町村が前年の所得をもとに毎年判定し、「介護保険負担割合証」として交付されます。 自分がどの割合になるかは、この証明書で確認できます。年金収入が増減した年や退職した年などは負担割合が変わることがあるため、証明書が届いたら必ず確認してください。
【介護保険の給付】住宅改修費(上限20万円)
自宅に手すりを付けたり、段差を解消したりする工事にかかった費用の一部が支給されます。支給限度基準額は20万円で、要介護度に関わらず一律です。
- 対象工事: 手すりの設置、段差解消(スロープ設置等)、床材の変更(滑り防止等)、扉の取り替え(引き戸への変更等)、洋式便器への便器交換、これらに付帯する工事
- 自己負担割合: 所得に応じて1割・2割・3割。例えば20万円の工事で1割負担なら自己負担は2万円、2割負担なら4万円
- 利用回数: 原則1人1回。ただし20万円の枠内であれば複数回に分けて利用できます。また転居した場合や、要介護状態区分が3段階以上重くなった場合は、改めて20万円の枠を利用できます
着工前に市区町村への事前申請が必須です。事前申請をせずに工事を始めると、給付の対象外になることがあります。 「まず工事を頼んでから」ではなく、「先に申請、それから着工」の順番を守る必要があります。
【介護保険の給付】福祉用具購入費(上限10万円)
レンタルになじまない性質の福祉用具(直接肌に触れるもの等)を購入したときの費用の一部が支給されます。支給限度基準額は年度(4月〜翌年3月)ごとに10万円です。
対象になる主な品目は次のとおりです。
- 腰掛け便座(ポータブルトイレ等)
- 自動排せつ処理装置の交換可能部品
- 入浴補助用具(入浴用いす、浴室内すのこ等)
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具
- 歩行補助つえ(一部の種類に限る)
- 自己負担割合: 住宅改修費と同じく1割・2割・3割
- 利用回数: 同一年度内に同じ種目の福祉用具は原則1回まで。10万円の枠内であれば複数回・複数品目に分けて利用できます
福祉用具は「レンタル」と「購入」の2つの制度に分かれている点も押さえておく必要があります。車いす・介護ベッド・歩行器など多くの品目は原則レンタル(貸与)が対象で、レンタル費用も自己負担割合に応じた保険給付があります。一方、直接肌に触れるポータブルトイレや入浴用いすなどは、衛生上の理由からレンタルになじまないとされ、購入費が支給される仕組みです。同じ「福祉用具」でも品目によって窓口の手続きが違うため、ケアマネジャーに相談する際は「レンタルか購入か」も確認しておくと手続きがスムーズです。
介護サービスそのものの月額上限(区分支給限度基準額)
住宅改修費・福祉用具購入費とは別に、訪問介護・デイサービスなど「介護サービス」そのものにも、要介護度ごとに1か月に利用できる上限額(区分支給限度基準額)が決まっています。 この上限を超えてサービスを利用すると、超えた分は全額自己負担になります。
| 要介護度 | 支給限度基準額(単位) |
|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 |
| 要支援2 | 10,531単位 |
| 要介護1 | 16,765単位 |
| 要介護2 | 19,705単位 |
| 要介護3 | 27,048単位 |
| 要介護4 | 30,938単位 |
| 要介護5 | 36,217単位 |
単位は円に直接換算できるものではなく、サービスの種類・地域ごとに1単位あたりの単価が異なります(目安としてはおおむね10円/単位ですが、正確な単価はお住まいの地域とサービスの種類によります)。要介護度が重くなるほど、利用できるサービスの月額上限も大きくなる設計です。 ケアマネジャーがケアプランを作成する際、この上限内に収まるようサービスを組み合わせるのが一般的な進め方です。
【介護保険の給付】高額介護サービス費
介護サービス(訪問介護・デイサービス等)の自己負担額が、1か月の上限額を超えた場合、超えた分が申請により払い戻されます。上限額は所得区分によって5段階に分かれています。
| 所得区分 | 月額上限(世帯) |
|---|---|
| 課税所得690万円以上 | 14万100円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 9万3,000円 |
| 課税所得380万円未満(一般) | 4万4,400円 |
| 住民税非課税世帯 | 2万4,600円 |
| 住民税非課税世帯(年金収入等80万9,000円以下等)・生活保護受給者 | 1万5,000円(個人) |
福祉用具購入費・住宅改修費・食費・居住費・日常生活費は高額介護サービス費の対象に含まれません。 サービス利用料そのものが対象で、実費でかかる費用は別枠です。
家族が介護のために仕事を休むときの給付金(介護休業給付金)
介護保険の給付とは別に、家族の介護のために仕事を休んだ場合、雇用保険から「介護休業給付金」が支給される制度もあります。 出産・育児の育児休業給付金と対になる、介護版の休業給付とイメージすると分かりやすくなります。
- 対象家族:厚生労働省の資料では、配偶者(事実婚を含む)・父母(養父母含む)・子(養子含む)・配偶者の父母(養父母含む)・祖父母・兄弟姉妹・孫が対象とされています
- 対象になる「介護が必要な状態」:負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にあることが要件です
- 申請の期限:介護休業終了後、終了日の翌日から2か月を経過する日が属する月の末日までに、支給申請書を提出する必要があります
- 支給率・日数:賃金の一定割合(一般的には67%とされています)が、対象家族1人につき通算93日まで(3回を上限に分割取得可)支給されるとされています
「2週間以上の常時介護」という要件がポイントです。 短期の入院付き添いなど、2週間に満たない介護では対象になりません。正確な支給率・日数、申請手続きの詳細は、お勤め先の人事担当者またはハローワークにご確認ください。
【自治体独自の制度】上乗せ助成(東京都の実例)
介護保険の給付は全国共通の仕組みですが、自己負担分をさらに軽減する独自の上乗せ助成を実施している市区町村もあります。 東京都内の一部区市町村では、次のような実例が確認できます(2025年8月時点の情報)。
- 住宅改修費の自己負担分(1〜3割部分)の一部をさらに助成する制度
- おむつ代の助成(在宅で介護をしている高齢者向け)
- 家族介護慰労金(一定期間、介護サービスを利用せず家族が在宅介護をしている世帯向け)
これらは介護保険の給付とは別枠の、市区町村の独自予算による制度です。 実施の有無・金額は自治体ごとに大きく異なり、東京都以外にお住まいの方は、まずお住まいの市区町村で同種の制度がないか確認する必要があります。
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費の両方がかかる世帯向けに、1年間(8月〜翌年7月)の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、基準額を超えた分が払い戻される制度もあります。
- 高額介護サービス費・高額療養費(医療保険側の同様の制度)を適用した後の自己負担額が対象
- 基準額は所得区分によって異なり、高額介護サービス費よりもさらに高い基準で設定されています
- 医療・介護のどちらか一方だけでは高額にならなくても、両方を合算すると基準額を超えるケースで活用できます
高齢の親を介護しながら、本人も医療費がかさんでいる世帯では、この制度の対象になっている可能性があります。 医療保険(協会けんぽ・国民健康保険等)の窓口に相談してください。
いくらもらえるか(試算)
自己負担割合(1〜3割)によって、実際の負担額は大きく変わります。同じ工事内容でも場合分けして比較します。
住宅改修(浴室に手すりを設置し、玄関の段差をスロープで解消・工事費18万円)
| 自己負担割合 | 保険給付 | 自己負担額 |
|---|---|---|
| 1割 | 18万円×9割=16万2,000円 | 1万8,000円 |
| 2割 | 18万円×8割=14万4,000円 | 3万6,000円 |
| 3割 | 18万円×7割=12万6,000円 | 5万4,000円 |
同じ工事内容でも、負担割合が1割か3割かで自己負担額は3倍変わります。 自分の負担割合を「介護保険負担割合証」で確認してから予算を立てることが重要です。
福祉用具購入(ポータブルトイレと入浴用いすを購入・合計6万円)
- 自己負担割合1割の場合:保険給付は6万円×9割=5万4,000円、自己負担は6,000円。年度内の残り枠は4万円分
- 自己負担割合3割の場合:保険給付は6万円×7割=4万2,000円、自己負担は1万8,000円
高額介護サービス費(1か月の介護サービス利用料が自己負担割合1割で6万円だった場合)
| 所得区分 | 月額上限 | 払い戻される額 |
|---|---|---|
| 一般(課税所得380万円未満) | 4万4,400円 | 6万円-4万4,400円=1万5,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 2万4,600円 | 6万円-2万4,600円=3万5,400円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 9万3,000円 | 上限に届かないため払い戻しなし |
所得区分が低いほど、高額介護サービス費で戻ってくる金額は大きくなります。 逆に課税所得が高い区分では、この例の利用料6万円では上限に届かず払い戻しが発生しない点に注意してください。
併用できるか
- 住宅改修費・福祉用具購入費・高額介護サービス費は、それぞれ別枠の制度のため併用できます
- 自治体独自の上乗せ制度(住宅改修費の自己負担分をさらに助成する等)を用意している市区町村もあります。これは介護保険の給付とは別枠で併用できる場合が多いですが、自治体ごとに規定が異なります
- 高額医療・高額介護合算療養費制度は、高額介護サービス費・高額療養費を適用した後の残りの自己負担にさらに適用されるため、制度をまたいで併用する形になります
ケアマネジャーへの相談が第一歩になる理由
介護保険のさまざまな給付は、要介護認定を受けたあと、担当のケアマネジャーが作成する「ケアプラン」に組み込まれる形で利用が進みます。 住宅改修や福祉用具の購入も、ケアマネジャーが本人の状態やご自宅の状況を踏まえて提案してくれることが一般的です。
- 「まずは自分で調べてから」ではなく、要介護認定を受けたらすぐにケアマネジャーへ相談するのが、制度を漏れなく使うための近道です
- ケアマネジャーがいない場合(要支援の場合等)は、地域包括支援センターが窓口になります
- 住宅改修の事前申請に必要な「理由書」は、ケアマネジャー等の専門職が作成するのが一般的です
申請の流れ(住宅改修費の場合)
- ケアマネジャー等に相談し、改修内容を検討する
- 着工前に市区町村へ事前申請(工事内容の見積書・理由書等を提出)する
- 市区町村の審査(事前確認)を経て着工する
- 工事完了後、領収書等を添えて市区町村へ支給申請する
- 審査を経て、保険給付分が支給される(利用者が費用を一旦全額支払い、後日払い戻される「償還払い」が一般的。自治体によっては自己負担分のみの支払いで済む「受領委任払い」に対応している場合もあります)
注意点(対象外になるケース)
- 住宅改修費は、着工前の事前申請をしないと給付の対象外になります
- 要介護認定を受けていない場合は、いずれの給付も対象外です
- 福祉用具購入費は、同一年度内に同じ種目を重複して購入すると、2回目以降は対象外になることがあります
- 高額介護サービス費は、食費・居住費・福祉用具購入費・住宅改修費には適用されません
お住まいの自治体で探す方法
- お住まいの市区町村の介護保険担当窓口(介護保険課等)に相談する
- 担当のケアマネジャーがいる場合は、まずケアマネジャーに相談すると手続きがスムーズです
- 自治体独自の上乗せ制度がないか、「(市区町村名) 介護 住宅改修 助成」等で検索する
よくある質問
住宅改修費はどのくらいの工事にいくら出るのか?
支給限度基準額は20万円です。自己負担割合(1〜3割)に応じて、費用の7〜9割が保険から支給されます。
住宅改修費は何度でも使えるのか?
原則1人1回ですが、20万円の枠内であれば分割して利用できます。転居した場合や要介護状態が3段階以上重くなった場合は、改めて20万円分を利用できます。
福祉用具はレンタルと購入、どちらが対象になるのか?
車いすやベッドなど多くの福祉用具はレンタル(貸与)が基本です。ポータブルトイレや入浴用いすなど、直接肌に触れる性質のものは購入が対象になり、福祉用具購入費が使えます。
高額介護サービス費は自分で申請しないともらえないのか?
はい。多くの市区町村で、対象になる月の数か月後に案内・申請書が届く仕組みになっていますが、届かない場合は自分から市区町村に確認する必要があります。
介護保険の対象にならない費用もあるのか?
食費・居住費(施設利用時)・日常生活費は保険給付や高額介護サービス費の対象外で、原則自己負担です。
東京都に住んでいれば住宅改修費の自己負担分もさらに助成されるのか?
自治体によります。東京都内でも上乗せ助成を実施している区市町村は一部にとどまり、全ての自治体で実施されているわけではありません。お住まいの自治体の介護保険担当窓口で確認してください。
医療費と介護費、両方がかさんでいる場合に使える制度はあるか?
高額医療・高額介護合算療養費制度があります。1年間の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、基準額を超えた分が払い戻されます。医療保険(協会けんぽ・国民健康保険等)の窓口に相談してください。
要介護認定を受けていない場合は何も使えないのか?
はい。住宅改修費・福祉用具購入費・高額介護サービス費はいずれも要介護・要支援認定を受けていることが前提です。まずはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で認定申請をしてください。
ケアマネジャーがいない場合はどこに相談すればよいか?
要支援の方や、まだ要介護認定を受けていない方は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談してください。
介護サービスにも月々の利用上限はあるのか?
あります。要介護度ごとに「区分支給限度基準額」という月額上限が単位数で定められており、要支援1の5,032単位から要介護5の36,217単位まで段階があります。この上限を超えて利用したサービス分は全額自己負担になります。
家族の介護で仕事を休む場合、給付金はもらえるのか?
雇用保険から「介護休業給付金」が支給される制度があります。配偶者・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫などが2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にあることが要件です。支給率・日数の詳細はハローワークにご確認ください。
