私立高校無償化(国の高等学校等就学支援金)は、令和8年度から世帯年収にかかわらず、私立高校の全日制で年45万7,200円が上限です。 授業料がこの額を超える分と、入学金・施設費は国の支援の外にあり、そこを都道府県が補助金でどこまで見るかで家庭の負担が変わります。
大阪府は国の分と合わせて授業料を年63万円まで、東京都は年50万1,000円まで、神奈川県は年48万円まで見ています。埼玉県と愛知県は授業料の上乗せよりも入学金の補助に厚みがあります。同じ「私立高校無償化」でも、住んでいる都道府県と通う学校の所在地で受け取れる額が別物になります。
この記事では、国の支援の中身を先に押さえ、5つの都府県の上乗せを同じ物差しで並べます。県外の学校に通う場合、申請と返金の時期、授業料以外の支援もあわせて扱います。
私立高校無償化とは:国の就学支援金が年45万7,200円まで
文部科学省は「高校無償化」という呼び方について、的確な表現は授業料を支援する「高等学校等就学支援金」だと説明しています。私立高校無償化と呼ばれているものの中心は、この国の制度です。わかりやすく言うと、私立高校の授業料のうち年45万7,200円までを国が学校に払い、家庭の負担を減らす仕組みです。
高等学校等就学支援金の支給に関する法律の改正法案は、令和8年2月27日に閣議決定され、第221回国会で審議されました。3月31日に参議院本会議で可決・成立し、4月1日に施行されています。私立高校の所得制限撤廃は令和8年4月からで、それまでの年収制限がなくなり、私立高校の支給上限額も引き上げられました。
| 学校の種類 | 支給上限額(年額) | 月額にすると |
|---|---|---|
| 私立高校(全日制・定時制) | 45万7,200円 | 3万8,100円 |
| 私立高校(通信制) | 33万7,200円 | 2万8,100円 |
| 公立高校(全日制) | 11万8,800円 | 9,900円 |
| 国立高校(全日制) | 11万5,200円 | 9,600円 |
45万7,200円は、文部科学省の資料で「私立高校の平均授業料を勘案した水準」とされています。月3万8,100円の12か月分で、毎月1日に在学している学校の授業料に対して支給されます。支給期間は原則36月(定時制・通信制は48月)までです。
お金は家庭に振り込まれるものではありません。学校の設置者(学校法人など)が生徒に代わって受け取り、授業料に充てます。授業料と就学支援金の差額は、保護者が学校に払います。
令和8年度予算の資料では、事業費は5,824億円で前年度の4,074億円から増えています。公立・私立の高校等は国が4分の3、都道府県が4分の1を負担する形に変わりました。国の制度でも、都道府県の財布が関わる仕組みになっています。
対象になる学校と、ならない費用
対象は高等学校(全日制・定時制・通信制)、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部、高等専門学校の1〜3年、専修学校の高等課程などです。通信制高校と別に通うサポート校は対象外だと、文部科学省のQ&Aに書かれています。
すでに高校を卒業した人や、全日制で36月を超えて在学している人も対象外です。
令和7年度までとの違い:年収910万円・590万円の線が消えた
旧制度では、私立高校の支援額は世帯年収で3段階に分かれていました。文部科学省の概要資料に載っている令和2〜7年度の上限額は次のとおりです。年収は両親・高校生・中学生の4人家族で片方が働くモデル世帯の目安で、私立高校の全日制の数字です。
| 世帯年収の目安 | 令和7年度まで | 令和8年度から |
|---|---|---|
| 590万円未満 | 39万6,000円 | 45万7,200円 |
| 590万円以上910万円未満 | 11万8,800円 | 45万7,200円 |
| 910万円以上 | 就学支援金は支給なし(令和7年度のみ臨時支援金で上限11万8,800円) | 45万7,200円 |
年収590万円以上の世帯にとって、授業料の支援が11万8,800円から45万7,200円に増えたのが今回の変更でいちばん大きな点です。910万円以上の世帯は、就学支援金そのものが支給されませんでした。令和7年度だけは、国の臨時支援金(国公私立共通で年11万8,800円が上限)が出ていて、これも令和7年度限りの措置です。
所得の判定方法や、旧制度の対象者がどう扱われるかは高校無償化の所得制限は撤廃?就学支援金の判定式で、制度がいつ何から変わったかは高校無償化はいつから?変更の時系列と申請時期で詳しく扱っています。
無償化の対象は授業料だけ。入学金・施設費・制服は別
国の就学支援金は授業料に充てる支援金です。大阪府のページも「支援の対象となるのは授業料のみです(その他の納付金については支援の対象外です。)」と明記しています。
無償化のあとも私立高校でかかる費用は、授業料のほかに次のようなものがあります。
- 入学金(入学年度に1回)
- 施設費・施設整備費(毎年かかる学校が多い)
- 制服・指定かばん・体操服
- 教科書・副教材・タブレット端末
- 修学旅行の積立金
- 部活動費・PTA会費・後援会費
国の就学支援金だけを見ると、これらは全部が家庭の負担です。 一部の都道府県は入学金や施設費まで補助していて、ここも地域差の大きいところです。教科書代や学用品費は、所得の条件を満たす世帯なら別の国の制度(高校生等奨学給付金)で支援を受けられます。後の章で扱います。
授業料が45万7,200円を超える学校は差額が残る
国の上限は全国一律なので、授業料が高い学校ほど差額が大きくなります。差額は単純な引き算で出せます。
| 志望校の年間授業料 | 国の支援 | 国の支援だけのときの差額 |
|---|---|---|
| 40万円 | 40万円(授業料の額まで) | 0円 |
| 45万7,200円 | 45万7,200円 | 0円 |
| 50万円 | 45万7,200円 | 4万2,800円 |
| 60万円 | 45万7,200円 | 14万2,800円 |
| 70万円 | 45万7,200円 | 24万2,800円 |
授業料が上限より安い学校では、支援額は授業料の額までです。差額をお金で受け取れるわけではありません。
3年間で見ると、授業料60万円の学校なら差額は約43万円になります。この差額を都道府県の上乗せでどこまで埋められるかが、次の章の比較です。
都道府県の上乗せを比べる(大阪・東京・神奈川・埼玉・愛知)
都道府県の上乗せは国の制度とは別の、各都道府県の独自の制度です。名前も対象も違うので、同じ項目で並べました。金額はいずれも令和8年度の私立高校(全日制)の数字です。
| 項目 | 大阪府 | 東京都 | 神奈川県 | 埼玉県 | 愛知県 |
|---|---|---|---|---|---|
| 授業料の上限(国と合計) | 63万円 | 50万1,000円 | 48万円 | 45万7,200円(生活保護世帯などは全額) | 45万7,200円 |
| 授業料の上乗せの所得制限 | なし | なし | なし | 上乗せは生活保護・家計急変の世帯のみ | 国の分のみで上乗せなし |
| 施設費など | 経常的な納付金も対象 | 対象外 | 対象外 | 年収目安約500万円未満で20万円まで | 補助は授業料と入学納付金のみ |
| 入学金 | 対象外 | 対象外 | 非課税世帯まで21万2,000円、年収目安750万円未満は10万円 | 年収目安約500万円未満は22万3,000円、約609万円未満は10万円 | 20万円(所得制限なし) |
| 住所の要件 | 生徒・保護者が府内 | 生徒・保護者が都内 | 生徒・保護者が県内 | 生徒・保護者が県内 | なし(令和8年度に廃止) |
| 通う学校の要件 | 府が指定した就学支援推進校 | 都外の学校も可(通信制を除く) | 県内の私立高校 | 埼玉県が認可した学校 | 県内の私立高校 |
| 申請先 | 在学する学校 | 東京都私学財団(保護者がオンラインで申請) | 在学する学校 | 在学する学校 | 在学する学校 |
表の年収は各都府県が示すモデル世帯の目安です。実際の判定は保護者の住民税の額(課税標準額や所得割額)で行います。
大阪府:国と合わせて年63万円、超えた分は学校が負担
大阪府は国の就学支援金に府の「私立高等学校等授業料支援補助金」を重ね、全日制では標準授業料の年63万円を上限に補助します。所得や子どもの人数による制限はありません。
大阪府の制度の特徴は、63万円を超える授業料を学校が負担する点です。府のページには「大阪府内の対象校は保護者が授業料を納付する必要はありません」とあります。補助の対象には授業料のほか、全生徒が一律に納める施設整備費などの経常的な納付金も含まれます。入学金・教科書代・修学旅行費は対象外です。
受けるには、国の就学支援金を受給していること、受給する月の1日時点で、原則として生徒と保護者全員が府内に住んでいること、府教育長が指定する「就学支援推進校」に在学していることの3つが要ります。府内の私立高校がすべて自動的に推進校になるわけではないので、志望校が一覧に載っているかを先に確かめてください。
東京都:国の45万7,200円に4万3,800円を上乗せ
東京都は東京都私学財団を通じて「私立高等学校等授業料軽減助成金」を出しています。国の就学支援金と合わせて、都内私立高校の平均授業料まで助成する考え方です。令和8年度は都の助成の上限が年4万3,800円で、国の分と合わせて最大年50万1,000円になります。
所得の要件はなく、課税証明書も要りません。生徒と保護者が5月1日から申請時まで続けて都内に住んでいることが条件で、都外の私立高校に通う生徒も対象です。ただし都外の通信制課程は除かれます。助成額は実際に負担した授業料の額までで、施設費や積立費は含まれません。
東京都は申請の仕組みがほかの4府県と違います。国の就学支援金は学校経由、都の助成金は保護者が私学財団の申請受付サイトから別に申請します。両方を申請しないと最大額まで受け取れません。
神奈川県:授業料48万円に加えて入学金の補助がある
神奈川県は国の就学支援金に県の「学費補助金」を重ねます。令和8年度のリーフレットでは、授業料は国の45万7,200円に県の2万2,800円を足して最大48万円です。所得制限はありません。
神奈川県は入学金にも補助があります。入学年度の1回だけで、生活保護世帯と住民税非課税世帯は最大21万2,000円、年収目安270万円以上750万円未満(住民税の所得割額の合算が22万7,100円未満)の世帯は最大10万円です。年収目安750万円以上の世帯には入学金の補助はありません。入学金の補助は令和8年4月以降に入学した生徒が対象です。
横浜市・川崎市など県内のどの市町村に住んでいても県の制度の対象で、申請は在学する学校を通じて行います。対象は県内に設置された私立高校に限られます。県はQ&Aで、地元で学べる環境づくりと県内の私立高校の振興を図る観点から、県内在住かつ県内設置の学校に在学することを要件にしていると説明しています。
埼玉県:授業料より入学金と施設費を所得に応じて補助
埼玉県の「父母負担軽減事業補助金」は所得の要件があります。令和8年度の全日制向けリーフレットによると、授業料は国の45万7,200円が中心で、県が授業料に上乗せするのは生活保護世帯と家計急変世帯(授業料の全額まで)です。
そのかわり入学金と施設費等の納付金に補助があります。年収目安約500万円未満の世帯は入学金22万3,000円と施設費等20万円まで、約609万円未満の世帯は入学金10万円までです。1年生の合計の上限は、約500万円未満の世帯で88万200円、約609万円未満の世帯で55万7,200円と示されています。年収目安が約609万円以上の世帯は、国の就学支援金だけになります。
対象は埼玉県が認可した私立学校で、生徒と保護者がともに県内に住んでいることが条件です。
愛知県:授業料は国の上限まで、入学納付金を所得制限なしで20万円
愛知県は令和8年度から、授業料について所得制限を廃止して実質無償化すると発表しています。全日制の授業料の補助上限額は年45万7,200円で、国の就学支援金の上限と同じ額です。
愛知県の上乗せの中心は入学納付金で、全日制は20万円まで、所得制限なしで補助します。令和8年度から県内在住の要件をなくし、県内の私立高校に在籍していれば対象になりました。県外から愛知県の私立高校に通う生徒も含まれます。
都道府県で差が出る理由
国の就学支援金は法律で決まった全国一律の制度です。上乗せは都道府県が独自の予算で設計しているので、金額だけでなく、何を対象にするかの考え方が違います。
5都府県の公式の説明を並べると、設計の違いが見えます。
- 大阪府は、学校が63万円を超える授業料を負担する「就学支援推進校」の仕組みで、学校の協力を前提に保護者負担をなくしています
- 東京都は、都内私立高校の平均授業料に届くまで定額を足す設計です
- 神奈川県は、県内の私立高校の振興を目的に掲げ、県内校への入学金補助を設けています
- 埼玉県は、所得に応じて入学金と施設費を厚く補助します
- 愛知県は、入学納付金を所得に関係なく補助し、県外在住の生徒も対象にしました
在籍する学校が府県外にある場合の扱いも、この考え方の違いから分かれています。私立高校の授業料の水準も地域で違うので、上乗せの上限額だけで「どの都道府県が得か」は決まりません。志望校の授業料と照らして見る必要があります。
上乗せを受けるには、国の就学支援金とは別の申請が要る都道府県があります。東京都は保護者が私学財団に直接申請し、大阪府・神奈川県・埼玉県・愛知県は在学する学校を通じて申請します。
県外の私立高校に通う場合はどうなるか
国の就学支援金は、住んでいる都道府県と別の都道府県の学校に通っても対象になります。文部科学省のQ&Aに「国の制度ですので別の都道府県の学校に通う場合でも対象になります」とあります。
都道府県の上乗せは別です。表の「住所の要件」と「通う学校の要件」の組み合わせで決まります。
| 住んでいる所と通う学校 | 上乗せの扱い |
|---|---|
| 東京都に住み、神奈川県の私立高校に通う | 東京都の助成金の対象(都外の学校も可)。神奈川県の学費補助金は対象外 |
| 神奈川県に住み、東京都の私立高校に通う | 神奈川県の学費補助金は対象外(県内校のみ)。東京都の助成金も対象外(都内在住が条件) |
| 大阪府に住み、府外の私立高校に通う | その学校が大阪府の就学支援推進校に指定されていれば対象 |
| 愛知県外に住み、愛知県の私立高校に通う | 愛知県の授業料・入学納付金の補助の対象(県内在住要件を廃止) |
県境の近くに住んでいて隣の県の私立高校を考えている家庭は、上乗せが国の45万7,200円だけになる組み合わせがあります。志望校を決める前に、住んでいる都道府県と学校のある都道府県の両方の要件を確かめてください。 大阪府は府外の学校向けの資料も出していて、推進校の一覧に府外の学校が載ることがあります。
年度の途中で引っ越した場合は、上乗せの扱いが月単位で変わることがあります。大阪府は毎月1日時点で要件を満たす月に支給する仕組みで、府外へ転居したら学校へすぐ連絡するよう求めています。
申請方法と、授業料が返金される時期
国の就学支援金は、入学後に学校から案内が来ます。日本国籍の生徒はオンライン申請システム「e-Shien」から申請でき、学校から配られるログインID通知書を使います。書類での申請もできます。
文部科学省のQ&Aでは、支給は原則として申し込みをした月から始まるとされています。提出期日に遅れると、遅れた月の分を受け取れないおそれがあります。間に合わないときは学校か都道府県に相談してください。
いったん授業料を払う学校がある
学校によっては、就学支援金の支給が決まるまで授業料を全額集め、決まったあとに相当額を返す方法をとっています。文部科学省のQ&Aも、その還付の時期は学校に確認するよう案内しています。経済的に苦しい家庭は、授業料の徴収を猶予してもらえる場合があります。
都道府県の上乗せは時期がばらばらです。東京都の助成金は7月に申請し、都内の学校に通う場合は10月・12月・翌年3月、都外の学校は12月・翌年3月のいずれかに振り込まれます。神奈川県は学校が授業料から差し引く方法と、先に払って後から振り込む方法があり、学校ごとに違います。埼玉県も、学校が授業料を返す方法と、未納の授業料に充てる方法の2通りです。
春に授業料をまとめて払う学校に入る場合は、国と都道府県の分が戻るまでの数か月分を手元で用意しておく必要があります。入学手続きの説明会で、還付の時期を聞いておくことを勧めます。
外国籍の生徒は使える制度が分かれる
令和8年度の新しい就学支援金は、国籍と在留資格の要件が加わりました。対象は日本国内に住所があり、日本国籍、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、一定の定住者・家族滞在のいずれかに当たる生徒です。
対象から外れる生徒も、支援がなくなるわけではありません。令和8年3月31日以前から在籍する生徒は経過措置で、4月以降の新入生(在留資格「留学」を除く)は「高校生等・新修学支援」で、旧制度と同じ水準の支援を所得に応じて受けられます。この場合、私立高校の上限は年収目安590万円未満で39万6,000円、910万円以上で11万8,800円に戻ります。
都道府県の上乗せも、外国籍の生徒向けに別の基準を設けているところがあります。東京都・埼玉県・愛知県・神奈川県は、外国籍の生徒向けの案内を別に出しています。
授業料以外を支える制度:高校生等奨学給付金
教科書代や教材費など授業料以外の教育費には、国の「高校生等奨学給付金」があります。返す必要のない給付金で、就学支援金とは別に申し込みます。令和8年度から対象が年収目安490万円未満の世帯まで広がりました。
| 世帯の区分(年収目安) | 私立高校・全日制の年額 |
|---|---|
| 生活保護世帯(生業扶助を受給) | 5万2,600円 |
| 住民税非課税世帯(270万円未満) | 15万2,000円 |
| 270万円〜380万円未満 | 5万670円 |
| 380万円〜490万円未満 | 3万8,000円 |
申し込み先は住んでいる都道府県か学校です。新入生は4〜6月に一部を早めに受け取る申請ができます。仕組みと申請の時期は高校生等奨学給付金|令和8年度は年収490万円まで対象が広がったで詳しく扱っています。
都道府県や市区町村が独自に出す奨学金もあります。文部科学省は、日本学生支援機構のサイトで地方公共団体の奨学金を検索できると案内しています。
メリット・デメリットと「ずるい」「不公平」という声
私立高校無償化のメリットは、所得による線引きがなくなったことです。年収590万円以上910万円未満の世帯は国の支援が11万8,800円から45万7,200円に、910万円以上の世帯は就学支援金なしから45万7,200円になりました。文部科学省の手続きの資料でも、令和8年度の申請は「収入要件なし」と示されています。
デメリットや注意点は、この記事で見てきたとおりです。
- 支援は授業料だけで、入学金・施設費・制服などは国の対象外
- 授業料が45万7,200円を超える学校では差額が残る
- 都道府県の上乗せは住む場所と学校の所在地で大きく違う
- 学校によっては授業料をいったん払い、返金を待つ期間がある
- 外国籍の生徒は、在留資格によって旧制度の水準の支援になる
「高所得の世帯まで支援するのはずるい」「公立より私立の支援額が多いのはおかしい」「不公平だ」という声もあります。制度の仕組みを事実で並べると次のようになります。所得制限は公立高校についても撤廃されていて、公立は授業料相当の11万8,800円、私立は私立高校の平均授業料を勘案した45万7,200円が上限です。どちらも「授業料に充てる」という同じ考え方で、私立の額が大きいのは授業料そのものが高いためです。文部科学省は目的を、家庭の経済状況にかかわらず希望に応じた教育を受けられる環境を整えることとしています。
住む都道府県で受け取れる額が違うのは、国の制度ではなく都道府県の上乗せの差です。財源は国の予算(令和8年度は5,824億円)と、新たに導入された都道府県の4分の1の負担です。
制度の拡充を合意した政党は、自由民主党・公明党・日本維新の会の3党です。反対した政党や国会での賛否の内訳は、この記事では一次情報で確かめられなかったので書いていません。公立高校の志願者の動きなど制度の影響については、国が法の施行後3年以内に検証し、必要な見直しを行うとしています。
公立高校と比べたときに残る差
公立高校の授業料は年11万8,800円で、就学支援金で全額が賄われます。私立高校も国の上限45万7,200円以内の授業料なら、授業料の負担はなくなります。
それでも公立と私立の差がゼロになるわけではありません。入学金、施設費、制服や教材の費用は私立のほうが高い学校が多く、ここは学校ごとの金額で比べるしかありません。所得制限がなくなったことで「私立は無理」と考えていた世帯の選択肢は広がりましたが、3年間の総額で見ると差が残ります。年収ごとの家計の見え方は高校無償化に年収の壁は無くなった。令和8年度の実態でまとめています。
志望校を決める前に確かめること
進路を決める前に、次の項目を学校の入学案内と都道府県のページで確かめておくと、入学後に想定外の出費で慌てずに済みます。
- 志望校の年間授業料と、国の上限45万7,200円との差額
- 住んでいる都道府県の上乗せの上限額と、所得の条件
- 志望校が上乗せの対象校か(大阪府の就学支援推進校、県内校のみの県など)
- 入学金と施設費に補助があるか、あれば何年生のどの費用までか
- 授業料をいったん全額払うか、最初から差し引かれるか
- 国の分と都道府県の分を、それぞれどこに申請するか
- 高校生等奨学給付金の対象になるか
学校説明会で「国と都道府県の支援を受けたあとの年間の自己負担はいくらか」を聞くと、具体的な数字で答えてもらえることが多いです。
よくある質問
私立高校無償化で授業料は本当にゼロになりますか?
授業料が国の上限(全日制で年45万7,200円)以内の学校なら、授業料の負担はなくなります。授業料がそれを超える学校では、差額が自己負担として残ります。大阪府のように都道府県の上乗せで差額まで埋まる地域もあれば、国の分だけの地域もあります。入学金・施設費・制服代などは国の支援の対象外なので、授業料がゼロでも家計の負担はなくなりません。
年収が高くても私立高校無償化の対象になりますか?
対象になります。令和8年度からの新しい就学支援金には所得制限がなく、世帯年収にかかわらず私立高校の全日制で年45万7,200円が上限です。令和7年度までは年収910万円以上の世帯に就学支援金は出ず、令和7年度に限って臨時支援金で年11万8,800円が上限でした。ただし都道府県の上乗せには所得の条件がある県があり、埼玉県の入学金・施設費の補助は年収目安約609万円未満が対象です。
私立高校の入学金も無償化の対象ですか?
国の就学支援金は授業料だけなので、入学金は対象外です。都道府県によっては入学金を補助していて、令和8年度は愛知県が全日制で20万円まで(所得制限なし)、神奈川県が住民税非課税世帯まで21万2,000円・年収目安750万円未満は10万円、埼玉県が年収目安に応じて22万3,000円か10万円です。大阪府と東京都の授業料の上乗せは入学金を含みません。
授業料はいったん払う必要がありますか?
学校によります。就学支援金は学校が受け取って授業料と相殺するのが基本ですが、支給が決まるまで授業料を全額集め、後から相当額を返す学校もあると文部科学省が説明しています。大阪府の就学支援推進校に府内から通う場合は、保護者が授業料を納める必要はありません。入学手続きの際に学校に確認してください。
先に払った授業料はいつ返金されますか?いつ振り込まれますか?
国の就学支援金は保護者の口座に振り込まれるものではなく、学校が受け取って授業料に充てます。先に授業料を払った場合の返金の時期は学校が決めるので、学校に確認します。東京都の授業料軽減助成金は保護者の口座に振り込まれ、都内の学校は10月・12月・翌年3月、都外の学校は12月・翌年3月のいずれかです。
県外の私立高校に通っても無償化の対象ですか?
国の就学支援金は、県外の学校に通っても対象です。都道府県の上乗せは要件次第で、東京都は都外の学校も対象(通信制を除く)、神奈川県は県内の学校だけ、大阪府は府が指定した推進校だけが対象です。愛知県は県内在住の要件をなくし、県外から愛知県の私立高校に通う生徒も対象にしています。住む所と学校の所在地の両方で確認してください。
通信制高校も私立高校無償化の対象ですか?
対象です。私立の通信制高校の国の支給上限額は年33万7,200円です。単位ごとに授業料を決めている学校は、1単位あたりの上限で計算します。通信制高校と別に通うサポート校の費用は、文部科学省のQ&Aで対象外とされています。都道府県の上乗せは通信制に別の上限を設けていることが多く、東京都の授業料軽減助成金は都外の通信制を対象外にしています。
特待生で授業料が減免されている場合はどうなりますか?
文部科学省のQ&Aでは、学校が授業料を減免している場合、減免後に残った授業料に就学支援金が充てられると説明しています。授業料が全額免除なら、就学支援金を受け取る余地はありません。神奈川県の学費補助金も、全額免除なら補助なし、一部免除なら残額と補助上限額の少ないほうを補助すると定めています。
兄弟が同時に私立高校に通うと支援は増えますか?
国の就学支援金は、子どもの人数で上限額が変わりません。生徒1人ごとに年45万7,200円が上限で、兄弟がいればそれぞれが受けられます。都道府県の上乗せでは、埼玉県が所得要件の判定で扶養している子どもの人数を考慮する計算表を示しています。大阪府は子どもの人数による制限なく63万円まで補助します。
外国籍の生徒は私立高校無償化の対象外ですか?
国籍と在留資格によります。永住者や特別永住者などは新しい就学支援金の対象です。対象外になる生徒でも、令和8年3月以前からの在校生は経過措置、4月以降の新入生は「高校生等・新修学支援」で、旧制度と同じ水準の支援を所得に応じて受けられます。在留資格「留学」の新入生は対象になりません。
申請を忘れたらどうなりますか?
文部科学省のQ&Aでは、就学支援金の支給は原則として申し込みをした月から始まるとされています。申請が遅れると、その前の月の分を受け取れないおそれがあります。提出が遅れそうなときや遅れてしまったときは、すぐに学校か都道府県に相談してください。東京都の助成金は通常の申請期間のあと、1月上旬に特別申請の期間を設ける予定と案内しています。
私立高校無償化はなぜ始まったのですか?
文部科学省の資料では、家庭の経済状況にかかわらず希望に応じた教育を受けられる環境を整え、教育費の負担を軽くすることを目的に挙げています。令和7年の自由民主党・公明党・日本維新の会の三党合意を受けて制度が拡充され、令和8年3月31日に改正法が成立しました。施行後3年以内に制度の検証と見直しを行うとされています。
