国民年金保険料の免除制度の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度 |
| 対象者 | 個人(国民年金第1号被保険者。学生を除く20歳以上60歳未満の方) |
| 対象地域 | 全国 |
| 免除の段階 | 全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4種類(別途、納付猶予制度もあり) |
| 令和8年度の月額保険料(全額納付時) | 17,920円 |
| 4分の3免除の納付額(令和8年度) | 4,480円 |
| 半額免除の納付額(令和8年度) | 8,960円 |
| 4分の1免除の納付額(令和8年度) | 13,440円 |
| 年金額への反映(全額免除) | 満額の2分の1 |
| 申請窓口 | 住民票のある市区町村役場、または年金事務所 |
| 公式サイト | 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」 |
国民年金保険料は「払えないなら未納のまま」にしてしまいがちですが、それは将来の年金額にとっても、万一の障害・遺族年金にとっても最も不利な選択です。免除制度を使えば、保険料の負担を最大でゼロにしながら、老齢基礎年金の受給資格期間としてカウントされ続けます。この記事では、免除の4段階と、それぞれの所得基準・将来もらえる年金額への影響を解説します。
免除の4段階と納付猶予
国民年金の免除制度は、所得に応じて次の4段階に分かれています。
- 全額免除: 保険料の全額が免除される
- 4分の3免除: 保険料の4分の1だけを納める
- 半額免除: 保険料の半分を納める
- 4分の1免除: 保険料の4分の3を納める
このほかに、50歳未満の方が対象の「納付猶予制度」があります。納付猶予は保険料の納付そのものを先送りする仕組みで、免除と違い年金額には反映されません(受給資格期間には算入されます)。
いくら納めればよいか(令和8年度の金額)
| 区分 | 令和8年度の月額納付額 | 全額納付時と比べた負担 |
|---|---|---|
| 全額納付 | 17,920円 | 100% |
| 4分の1免除 | 13,440円 | 75% |
| 半額免除 | 8,960円 | 50% |
| 4分の3免除 | 4,480円 | 25% |
| 全額免除 | 0円 | 0% |
どれに当てはまるか(所得基準の早見表)
免除の判定は、前年の所得(申請する年の1月〜6月の申請は前々年の所得)をもとに、本人・配偶者・世帯主それぞれの所得で行われます。基準となる所得額の計算式は次のとおりです。
| 免除段階 | 所得基準の計算式 |
|---|---|
| 全額免除・納付猶予 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
扶養親族の数が多いほど、また社会保険料控除額(健康保険料等の支払実績)が多いほど、基準額は上がり免除を受けやすくなります。「独身・扶養なし」を例にすると、全額免除の基準は32万円+35万円=67万円程度が目安になりますが、実際の判定は控除額を含めた計算になるため、正確な所得は市区町村や年金事務所で確認するのが確実です。
具体例で確認する
- Dさん(独身・扶養親族なし、前年所得67万円以下): 全額免除の対象になり得ます
- Eさん(配偶者を扶養、社会保険料控除等を含めて所得130万円程度): 半額免除の対象になり得ます
- Fさん(子2人を扶養、社会保険料控除等を含めて所得170万円程度): 4分の1免除の対象になり得ます
免除を受けると将来の年金額はどうなるか
免除された期間も、保険料を全額納めた場合と比べて、一定割合が老齢基礎年金の額に反映されます。 これは国庫負担(税金)が保険料の一部を補っているためです。
| 免除段階 | 年金額への反映割合(全額納付時を1とした場合) |
|---|---|
| 全額免除 | 2分の1 |
| 4分の3免除 | 8分の5 |
| 半額免除 | 8分の6 |
| 4分の1免除 | 8分の7 |
| 納付猶予 | 反映なし(受給資格期間には算入) |
つまり、全額免除の期間は「保険料を払わなかった分がゼロになる」のではなく、「満額の半分は年金額に残る」という考え方です。一方で納付猶予は、猶予された期間そのものは年金額に一切反映されません。「免除」と「納付猶予」は将来の年金額への影響が大きく異なるため、どちらの制度を利用しているか把握しておくことが重要です。
学生納付特例制度との違い
20歳以上の学生は、通常の免除制度とは別枠の学生納付特例制度の対象になります。次の点が通常の免除と異なります。
- 所得基準は本人の所得のみで判定され、世帯主・配偶者の所得は問われません(通常の免除は世帯主・配偶者の所得も見られます)
- 学生納付特例期間は、納付猶予と同じく年金額には反映されません(受給資格期間には算入されます)
- 対象となる学校は、大学・大学院・短期大学・高等専門学校・専修学校等で、夜間・定時制課程や通信制課程の学生も含まれます
学生であっても、通常の免除制度と学生納付特例のどちらを申請するかで、将来の年金額への反映が変わります。在学中に一定の所得がある方は、どちらが有利か窓口で相談するとよいでしょう。
免除・猶予・未納・追納で将来の年金額はどう変わるか
同じ「保険料を納めなかった1年間」でも、その扱い方によって将来の老齢基礎年金の年額は変わります。令和8年度の満額(847,300円、40年満期の場合の年額)をもとにした、1年間ぶんの影響の目安です。
| 扱い | その1年が年金額に反映される割合 | 1年あたりの年金額への影響(目安) |
|---|---|---|
| 全額納付・追納 | 満額どおり | 影響なし(満額に算入) |
| 全額免除のまま | 2分の1 | 満額の1年分よりおよそ半分減 |
| 納付猶予・学生納付特例のまま | 反映なし | 満額の1年分がまるごと減 |
| 未納のまま放置 | 反映なし、かつ受給資格期間にも算入されない | 年金額が減るだけでなく、受給資格そのものに影響する場合がある |
「免除」と「未納」はどちらも保険料を払わない点は同じですが、将来の年金額・受給資格への影響はまったく違います。免除申請さえしておけば、少なくとも老齢基礎年金の受給資格期間としては認められ、年金額の一部も残ります。
自分はどれに当てはまるか(早見の場合分け)
所得基準の計算式を追う前に、自分の状況に近い行を探したほうが早いこともあります。
| あなたの状況 | 見るべき制度 | 目安 |
|---|---|---|
| 独身・扶養家族なしで、前年所得がおおむね67万円以下 | 全額免除 | 月17,920円が0円に |
| 配偶者を扶養していて、前年所得がおおむね130万円程度 | 半額免除 | 月17,920円が8,960円に |
| 20歳以上の学生で、本人の所得が一定以下 | 学生納付特例(通常の免除とは別枠) | 世帯主・配偶者の所得は問われない |
| 出産予定日または出産日がある | 産前産後期間の免除 | 所得に関係なく全員対象。満額扱い |
| 直近で失業した(離職票・雇用保険受給資格者証がある) | 失業による特例免除 | 前年所得を「無かったもの」として審査 |
| 収入が少しあるが基準に近い | まず市区町村役場・年金事務所へ相談 | 扶養親族数・社会保険料控除で基準額は個人ごとに変わる |
「所得が高いから対象外だろう」と自己判断で諦めないことが重要です。 扶養親族の数や社会保険料控除額によって基準額は個人ごとに変わるため、実際に申請してみないと結果は分かりません。
未納から免除に切り替えるとどう変わるか(具体的な計算例)
すでに未納が続いている方が「今から免除に切り替えるとどう変わるか」を、1年間放置した場合と比べてみます。令和8年度の月額保険料は17,920円です。
| 状態 | 1年間の負担額 | その1年の年金額への反映 | 受給資格期間への算入 |
|---|---|---|---|
| 未納のまま1年放置 | 0円 | 反映なし | 算入されない |
| 全額免除を申請して1年経過 | 0円 | 満額の2分の1(老齢基礎年金の年額に約1万円弱の上乗せ相当) | 算入される |
| 半額免除を申請して1年納付 | 約10.8万円(月8,960円×12か月) | 満額の8分の6 | 算入される |
| 全額納付 | 約21.5万円(月17,920円×12か月) | 満額どおり | 算入される |
負担額はどちらも0円なのに、「未納」と「全額免除」では将来の年金額と受給資格の扱いがまったく違います。 未納のまま放置するより、まず免除の申請だけでも済ませておく方が、あとから追納するにしても選択肢が残ります。
産前産後期間・失業時の特例
産前産後期間の免除
出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は3か月前から6か月間)、国民年金保険料が免除されます。この産前産後免除の期間は、所得に関係なく全員が対象で、しかも将来の年金額には全額納付したものとして扱われる点が、通常の免除と大きく異なります。届出は出産予定日の6か月前から可能です。
失業等による特例免除
失業した場合は、前年の所得にかかわらず免除・納付猶予を申請できる特例があります。判定の際、本人の所得は「無かったもの」として扱われる仕組みです。申請には雇用保険受給資格者証や離職票の写しなど、失業の事実が確認できる書類が必要です。
追納の具体的な計算例
免除を受けた期間は、あとから追納することで満額の年金額に近づけられます。追納の金額イメージをつかむため、全額免除を1年間受けた場合の追納額の目安を示します。
- 令和8年度の月額保険料は17,920円なので、1年間(12か月)の追納額はおよそ21万5,000円程度が基本になります(免除承認年度から3年以内に追納する場合。加算額はつきません)
- 免除承認から3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に一定の加算額が上乗せされます。早く追納するほど、上乗せなしの金額で満額に戻せます。
追納するかどうかは、他の資産運用や生活設計とのバランスで判断してよい部分ですが、「免除を受けたままにするか」「追納して満額に近づけるか」を選べること自体を知っておくと、老後の年金額の見通しが立てやすくなります。
追納は10年以内。3年度目以降は加算額がつく
追納には2つの期限があります。追納できるのは、免除・納付猶予が承認された月の前10年以内の期間だけです。10年を過ぎた分は、あとから納めたくても納められません。
もう1つが「加算額」です。免除・納付猶予が承認された年度の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。1・2年度目のうちに追納すれば、当時の保険料額そのままで済みます。
| 追納のタイミング | 納付額の目安 |
|---|---|
| 免除承認の翌年度・翌々年度中(2年度目まで) | 当時の保険料額のまま(加算額なし) |
| 3年度目以降 | 当時の保険料額+加算額(年数が経つほど増える) |
| 10年を経過 | 追納そのものができない |
「あとで追納すればいい」と後回しにするほど、同じ期間を満額に戻すための負担は大きくなります。 追納を考えている場合は、免除を受けた年度からできるだけ早く申し込むほうが有利です。申込書は年金事務所に提出し、承認されると納付書が送られてくる流れになります。
免除の未申請のまま放置すると「未納」扱いになる
免除は自動的には適用されません。 保険料を払わないまま何も手続きをしないと、免除ではなく単なる「未納」として扱われます。未納期間は老齢基礎年金の受給資格期間(原則10年以上)にも算入されず、障害基礎年金・遺族基礎年金の保険料納付要件でも不利になります。
「収入が少ないから払えない」と放置するのがいちばん損な選択です。免除・納付猶予の審査を受けて不承認になったとしても、少なくとも申請の記録は残り、あとから状況を年金事務所に説明する材料になります。まず申請すること自体に意味があります。
申請に必要な書類
免除・納付猶予の申請には、通常次の書類が必要です。
- 国民年金保険料免除・納付猶予申請書(市区町村役場・年金事務所で入手、または日本年金機構のサイトからダウンロード)
- マイナンバーカード等の本人確認書類
- 基礎年金番号が分かる書類(年金手帳・基礎年金番号通知書等)
- 失業による特例免除の場合: 雇用保険受給資格者証の写し、または離職票の写し等
マイナンバーが登録済みであれば、所得の証明書類を別途用意する必要はありません。市区町村が所得情報を確認できるため、添付書類を大幅に減らせます。
申請の流れとタイミング
- 保険料の納付が難しくなったら、早めに住民票のある市区町村役場または年金事務所へ相談する
- 免除・納付猶予申請書に必要事項を記入し、マイナンバーカード等の本人確認書類とあわせて提出する
- 失業による特例免除の場合は、雇用保険受給資格者証の写し等を添付する
- 審査の結果、免除段階(全額・4分の3・半額・4分の1)または不承認が決定し、通知される
- 免除が承認されなかった場合は、通常どおりの保険料を納付するか、追納を検討する
申請は保険料の納付期限から2年を経過していない期間にさかのぼって行えます。「未納のまま放置していた」という方も、2年以内であればさかのぼって免除申請できる可能性があるため、早めに窓口へ相談することが重要です。
免除が承認されない・不利になる要因
- 所得基準を超えている: 扶養親族の数や社会保険料控除額を正しく計算していないと、実際は基準内でも「超えている」と誤解してしまうことがあります
- 世帯主・配偶者の所得が高い: 免除の判定は本人だけでなく、世帯主・配偶者の所得も基準を満たす必要があります。本人の所得が低くても、同居する世帯主の所得が高いと不承認になることがあります
- 納付期限から2年を過ぎている: さかのぼっての免除申請ができるのは2年以内に限られるため、それ以前の未納期間は原則として免除の対象になりません
- 未納のまま放置する: 未納期間は老齢基礎年金の受給資格期間にも反映されず、障害基礎年金・遺族基礎年金の保険料納付要件でも不利になります。免除申請さえしておけば、これらの不利益を避けられます
- 納付猶予を免除と同じだと思い込む: 納付猶予期間は年金額に反映されないため、老後の年金額を増やしたい場合は追納を検討する必要があります
よくある質問
免除された期間の保険料は、あとから追納できますか?
原則として、承認された年度から10年以内であれば、追納により年金額への反映割合を全額納付時と同じ水準まで引き上げることができます。ただし免除承認から3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料に加算額がつく場合があります。詳しい金額は年金事務所で確認してください。
学生ですが、この免除制度は使えますか?
20歳以上の学生には別途「学生納付特例制度」があり、通常の免除制度とは所得基準・年金額への反映が異なります。学生の方はこちらの制度が優先的に案内されるため、市区町村役場・年金事務所で確認してください。
免除申請をしないまま滞納していますが、老齢基礎年金は将来もらえますか?
未納期間が長いと、老齢基礎年金の受給資格期間(原則10年以上)を満たせなくなる可能性があります。免除申請をしていれば受給資格期間には算入されるため、未納のまま放置するより、免除申請をしておくことが将来の受給権を守ることにつながります。
全額免除の期間は、障害基礎年金・遺族基礎年金にも影響しますか?
はい。障害基礎年金・遺族基礎年金の保険料納付要件(保険料納付済期間と免除期間の合計が加入期間の3分の2以上等)には、免除期間も納付済期間と同様に算入されます。未納期間はこの要件に算入されないため、万一の際の受給可否に直結します。
失業による特例免除は、退職した年の途中からでも申請できますか?
できます。失業日を含む月の前月から翌々年6月までの期間が対象となり、前年所得にかかわらず申請可能です。雇用保険受給資格者証の写し等、失業の事実を確認できる書類を持って市区町村役場・年金事務所へ相談してください。
学生納付特例を利用した期間は、あとから追納すれば満額の年金額に戻りますか?
追納すれば、その期間は全額納付した場合と同じ扱いになり、老齢基礎年金の額に満額反映されます。追納できるのは原則10年以内で、承認から3年度目以降に追納する場合は当時の保険料に加算額がつくことがあります。早めの追納が有利です。
免除の申請をしないまま数年放置してしまいました。今から申請できますか?
さかのぼって免除申請できるのは、原則として保険料の納付期限から2年を経過していない期間に限られます。2年より前の未納期間は、原則として免除の対象にはならず、未納のまま確定します。まだ2年以内の期間が残っているなら、今からでも市区町村役場・年金事務所へ相談することをおすすめします。
追納の加算額は具体的にどのくらいの負担増になりますか?
加算額は、免除・納付猶予が承認された年度から経過した年数に応じて設定されており、経過年数が長いほど大きくなります。具体的な加算額は年度ごとに日本年金機構が公表しており、2年度目までは加算がつきません。正確な金額は追納申込時に年金事務所から案内される納付書で確認できます。
全額免除と納付猶予は、どちらを選ぶべきですか?
将来の年金額を少しでも増やしたい場合は、可能であれば全額免除(所得基準を満たせば審査で決まる)を申請するほうが有利です。全額免除の期間は年金額に2分の1が反映されますが、納付猶予の期間は年金額に一切反映されません。ただし納付猶予は50歳未満の方が対象で、いずれ収入が増えて追納する見込みがある場合の選択肢として使われます。所得基準を満たすなら、まず全額免除(または一部免除)の審査を受けるのが基本です。
免除の申請は毎年繰り返す必要がありますか?
原則として、免除・納付猶予は申請した年度(7月〜翌年6月)ごとに判定されます。ただし全額免除・納付猶予の申請書で「継続申請を希望する」を選んでおくと、翌年度以降は改めて申請書を出さなくても、日本年金機構が所得情報を確認したうえで継続審査を行ってくれます。所得が上がって基準を外れた年度は不承認(未納扱い)になるため、収入が変わった場合は窓口や年金事務所に相談しておくと安心です。
