ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)の採択率は、直近4回の公募で33.6%〜37.5%の間で推移しています。 「3割前後」という水準が定着しており、以前のように半数近くが採択される時期ではなくなっています。
この記事では、中小企業庁の公式発表と、ものづくり補助金総合サイト(事務局の公式ページ)の採択結果ページに掲載された実数だけを使い、推測を交えずに整理します。 一次情報で確認できなかった回次(第19次以前)は、断定的な数字として扱いません。
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上のための革新的な設備投資等を行う際に活用できる、国内でも申請件数が多い補助金の一つです。それだけに「実際どのくらいの確率で通るのか」という採択率への関心は高く、事業計画を立てる段階で必ず押さえておきたい数字だといえます。
ものづくり補助金の公募は年3〜4回のペース
ものづくり補助金は、年に3〜4回、締切ごとに公募が行われる制度です。第20次(令和7年4月25日〜7月25日)、第21次(令和7年7月25日〜10月24日)、第22次、第23次(令和8年2月6日〜5月8日)と、おおむね3か月おきに次の公募期間が設定されています。
一度不採択になっても、次の締切に向けて計画を練り直し、再チャレンジする事業者が多いのはこのためです。「今回ダメだったら終わり」ではなく、次の公募回に向けた継続的な取組として捉えるのが現実的な向き合い方です。
2つの申請枠、それぞれの狙いの違い
ものづくり補助金には、性格の異なる2つの申請枠があります。
- 製品・サービス高付加価値化枠: 革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善に取り組む、国内向けの設備投資が中心。申請件数の9割前後を占める主力の枠
- グローバル枠: 海外市場開拓や、海外子会社との連携等、海外展開を伴う事業計画が対象。申請件数は少ないが、対象経費の範囲や補助上限額が製品・サービス高付加価値化枠と異なる
グローバル枠は申請件数が少ない分、応募する事業者の計画の質も高い水準になりやすく、単純に「枠が違えば採択されやすい」という話ではありません。 実際、直近の採択率もグローバル枠のほうが低い傾向にあることは前述のとおりです。自社の事業計画が海外展開を主眼にしているかどうかで、どちらの枠に応募すべきかが決まります。
なお、第20次公募要領によれば、製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)の補助上限額は従業員数の区分で段階的に設定されており(5人以下750万円、6〜20人1,000万円、21〜50人1,500万円、51人以上2,500万円が目安)、補助率は原則1/2ですが、従業員20人以下の小規模企業・小規模事業者は補助率2/3が適用されます。さらに最低賃金引き上げに取り組む事業者には、補助率を1/2から2/3に引き上げる特例もあります。金額面の詳細は採択率とは別軸の話になるため、この記事では概要のみに触れています。
補助率が高くなる(自己負担が減る)ことと、採択率が上がることは別の話です。 補助率の特例はあくまで採択後に受け取れる金額の計算に関わるものであり、審査そのものを有利にする加点項目とは区別して理解しておく必要があります。
第20次〜第23次の採択率一覧
一次情報で確認できた直近4回の採択結果です。
| 公募回 | 公表日 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 第20次 | 令和7年10月27日 | 2,453者 | 825者 | 33.6% |
| 第21次 | 令和8年1月23日 | 1,872者 | 638者 | 34.1% |
| 第22次 | 令和8年4月30日 | 1,552者 | 582者 | 37.5% |
| 第23次 | 令和8年8月7日 | 1,275者 | 448者 | 35.1% |
各回の公募期間もあわせて確認しておくと、公募のペースがつかみやすくなります。
- 第20次: 令和7年4月25日〜7月25日
- 第21次: 令和7年7月25日〜10月24日
- 第23次: 令和8年2月6日〜5月8日(公表は令和8年8月7日)
申請件数そのものが右肩下がりで減っています。 第20次の2,453者から第23次の1,275者まで、約半年で申請数がほぼ半減しました。採択率が33〜37%台で安定しているのは、採択件数も申請件数の減少にあわせて絞られているためです。
申請件数が減っているにもかかわらず、採択率が劇的に上昇していない点も注目に値します。申請件数が減れば採択率が自動的に上がるわけではなく、事務局側が一定の採択基準(審査を通過する水準)を保ったまま運用していることがうかがえます。「応募が少ない時期を狙えば通りやすい」という単純な話ではないということが分かります。
なぜ採択率が3割台まで下がっているのか
かつてのものづくり補助金は、公募回によって採択率が50%を超えていた時期もあったとされます。直近4回が33.6%〜37.5%という水準で安定していることは、制度の運用方針が「より厳選する」方向にシフトしている可能性を示唆しています。 この傾向は今後の公募でも続く可能性があります。
公式発表の文言を見ると、第20次では「数から質へ」という言葉が使われる場面が増えており、申請件数自体の減少(第20次2,453者→第23次1,275者)と合わせて考えると、事業者側も「とりあえず出す」から「じっくり計画を練り込んでから出す」という行動に変わってきている可能性があります。ただし、これは申請件数と採択率の推移から読み取れる傾向であり、公式に明言された理由ではない点に留意してください。
枠別の採択率(製品・サービス高付加価値化枠/グローバル枠)
ものづくり補助金には主に2つの申請枠があり、枠によって採択率が異なります。
第20次の枠別内訳
- 製品・サービス高付加価値化枠: 申請2,276者/採択784者(採択率約34.4%)
- グローバル枠: 申請177者/採択41者(採択率約23.2%)
第21次の枠別内訳
- 製品・サービス高付加価値化枠: 申請1,767者/採択615者(採択率約34.8%)
- グローバル枠: 申請105者/採択23者(採択率約21.9%)
第23次の枠別内訳
- 製品・サービス高付加価値化枠: 申請1,169者/採択418者(採択率約35.8%)
- グローバル枠: 申請106者/採択30者(採択率約28.3%)
グローバル枠は製品・サービス高付加価値化枠より採択率が低い傾向が、直近3回続けて確認できます。 海外展開を伴う投資計画は、審査の観点がより厳しく設定されている可能性がありますが、公式発表に理由の説明はなく、この点は推測にとどまります。
第20次には「関税加点」の対象者がいた
第20次・第21次の公式発表には、「米国の追加関税措置により影響を受けた事業者に対する優先採択(審査上の加点)」の対象者数が明記されています。
- 第20次: 加点対象者272者
- 第21次: 加点対象者199者
この加点措置は、特定の事情を抱える事業者の採択を後押しする臨時的な仕組みです。自社が加点の対象になり得るかどうかは、公募要領の加点項目を確認する必要があります(本記事では制度の存在のみを紹介し、加点を得るための書き方には踏み込みません)。第22次以降の発表にこの項目の記載があるかどうかは、そのつど公募要領で確認してください。
申請前に済ませておくべき準備(電子申請の前提)
ものづくり補助金は電子申請のみで受け付けられており、申請にはGビズIDプライム(国の電子申請システムに共通で使うアカウント)の取得が必須です。GビズIDプライムは、印鑑証明書等の書類を用意して申請してから、発行までに2〜3週間程度かかります。
「公募締切の直前にGビズIDを申請しようとしたら、発行が間に合わず応募自体ができなかった」という事態を避けるため、公募が始まる前の段階で取得を済ませておくことが重要です。特に事業継続力強化計画の認定とあわせて準備する場合は、さらに時間がかかることを見込んでおく必要があります。GビズIDプライムは一度取得すれば他の補助金・行政手続きでも使い回せるため、早めに取得しておいて損はありません。
過去の採択率(参考情報)
第18次・第19次についても報道・二次情報では次のような数字が伝えられていますが、公式ページへの直接アクセスができず一次情報での裏取りができなかったため、参考情報として扱います。
- 第18次(公募期間: 令和6年1月31日〜3月27日): 申請5,777者に対し採択2,070者、と伝えられている
- 第19次(公募期間: 令和7年2月14日〜4月25日): 申請5,336者に対し採択1,698者、と伝えられている
これらの数字が事実であれば、第18次・第19次の申請件数は5,000者を超えており、直近4回(1,275〜2,453者)と比べて申請件数自体が大きく減少していることになります。応募のハードルが上がった、あるいは「数を打つ」よりも計画の質を高めてから申請する事業者が増えた、という見方もありますが、これも推測であり公式な説明ではありません。
公募要領に明記されている賃上げ加点の中身
第20次公募要領には、賃上げに関する加点項目の具体的な数値基準が明記されています。
- 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、従業員・役員の給与支給総額の年平均成長率を4.0%以上増加させる目標を設定していること
- 事業所内最低賃金を、毎年3月時点で地域別最低賃金より+40円以上の水準にする目標を設定していること
- これらの目標を、交付決定までにすべての従業員(または従業員代表者)・役員に対して表明していること
「賃上げすれば加点になる」という漠然とした理解ではなく、給与総額の年平均成長率4.0%以上、事業所内最低賃金+40円以上という具体的な数値ラインが公募要領に定められている点を押さえておく必要があります。この基準を満たせるかどうかを、賃上げ計画を立てる前に人件費のシミュレーションとあわせて確認しておくことが重要です。
事業継続力強化計画による加点
もう一つの代表的な加点項目が、中小企業庁が認定する「事業継続力強化計画」の認定を受けていることです。
- 事業継続力強化計画は、自然災害等が発生した際の事業継続に向けた取組(防災・減災の対策等)を記載し、経済産業大臣(中小企業庁)の認定を受ける計画
- 認定を受けていることが、ものづくり補助金の加点項目の一つになる
- 申請にはGビズIDプライム(国の電子申請に共通で使うID。発行に2〜3週間かかる)が必要
ものづくり補助金への応募を決めてから事業継続力強化計画の認定を取ろうとすると、GビズIDプライムの発行だけで数週間かかるため、公募締切に間に合わないことがあります。加点を狙う場合は、公募の締切から逆算して、余裕を持って早めに準備を始める必要があります。
どのように審査されるのか(書面審査の仕組み)
ものづくり補助金の審査は、外部の審査委員による書面審査で行われます。事業者が対面でプレゼンテーションを行う機会は無く、提出した事業計画書とその添付資料のみで評価される点が特徴です。
- 審査項目は大きく「事業化点」(事業として実現可能か、収益性があるか)「技術面」(革新性があるか)「政策面」(賃上げ・DX・GX等の政策目的に合致するか)に分かれる
- 加点項目(賃上げ、事業継続力強化計画の認定等)は、あくまで審査項目の一部であり、加点だけで採択が決まるわけではない
書面のみで審査される以上、事業計画書に書かれていない取組は評価の対象になりません。 口頭で説明する機会が無いため、実際に取り組んでいる内容であっても、書面に明記されていなければ審査上は「無い」ものとして扱われます。
このため、事業計画書の作成にあたっては、認定経営革新等支援機関(国が認定した支援機関で、商工会議所・金融機関・税理士等が該当)に相談しながら進める事業者も少なくありません。支援機関の関与自体が加点になるわけではありませんが、審査項目に沿って計画を整理する手助けになります。
採択率を上げるために公式に示されていること
採択率そのものへの直接的な対策は公式には示されていませんが、公募要領には審査項目が明記されています。 大きくは「事業計画の妥当性」「政策面での加点」の2軸で審査される仕組みです。
- 事業計画の実現可能性・収益性が、審査項目の中心になっている
- 賃上げ計画、DX・GX(デジタル化・脱炭素化)への取組、事業継続力強化計画の認定など、公募要領に定められた加点項目を満たすと審査で有利になる場合がある
加点項目をどう事業計画に位置づけるかは、書き方によって審査の通りやすさが変わり得るグレーな領域です。 具体的な計画書の作り方・加点の取り方のコツは、この記事では扱いません。
経営革新計画の承認も加点項目の一つ
賃上げ・事業継続力強化計画のほかにも、都道府県知事の承認を受けた「経営革新計画」があることが加点項目に含まれる回があります。経営革新計画は、新商品・新サービスの開発や新しい生産方式の導入等、経営革新(新商品・新サービス・新しい生産方式・新しい顧客層への展開を伴うこと)に取り組む中小企業を都道府県が認定する制度になっています。
- 申請から承認までに一定の期間(自治体によって異なるが数週間〜数か月)がかかる
- ものづくり補助金の事業計画の内容と、経営革新計画の内容に一貫性が求められる
加点項目には、ものづくり補助金の申請直前に慌てて用意できないものが多く含まれています。 事業継続力強化計画・経営革新計画のいずれも、認定を受けるまでに一定の準備期間が必要なため、次回公募を見据えて早めに動き出すことが、結果的に採択率を左右する要素になります。
採択後に必要な手続きも見落とさない
採択率にばかり注目が集まりがちですが、採択されただけではお金は支払われません。 採択後には、交付申請・交付決定・事業実施・実績報告・補助金の請求という一連の手続きが続きます。
- 交付申請: 採択後、詳細な見積書等を添えて交付申請を行う
- 交付決定: 交付申請の内容が承認されて初めて、経費の発注・契約が可能になる
- 事業実施・実績報告: 事業実施後、実績報告書を提出し、事業内容と経費の実績が確認される
- 補助金の請求・入金: 実績報告の確認(確定検査)を経て、補助金が入金される
「採択=交付決定」ではなく、採択後に別途、交付申請の審査を通過する必要があるという点は見落とされがちです。交付決定前に発注・契約した経費は、原則として補助対象外になるため、採択の連絡を受けてすぐに発注してしまわないよう注意が必要です。これは補助がなくても実施したはずの経費を除外するための仕組みで、他の多くの補助金にも共通するルールです。
よくある質問
採択率が3割台なら、申請しても無駄ではないですか?
3割台という数字だけを見ると厳しく感じますが、裏を返せば3〜4社に1社は採択されているということでもあります。事業計画の完成度や加点項目の該当状況によって、個々の採択可能性は大きく変わるため、平均値だけで判断するのは早計です。
不採択だった場合、次回また申請できますか?
できます。ものづくり補助金は年に複数回、締切ごとに公募が行われる制度です。不採択の理由(多くは事務局から開示されるフィードバックコメント)を踏まえて計画を見直し、次回公募に再挑戦する事業者は珍しくなく、実際に再挑戦の末に採択された例も多く見られます。
採択率がもっとも高かった枠はどれですか?
一次情報で確認できた第20次・第21次・第23次では、いずれも製品・サービス高付加価値化枠がグローバル枠より高い採択率でした。ただし枠の性質上、応募する事業者の層自体が異なるため、単純に「有利な枠」とは言い切れません。
次の公募(第24次以降)の採択率はどうなりますか?
2026年9月時点では、第24次以降の採択結果はまだ公表されていません。採択率は公募回ごとの申請件数・審査状況によって変動するため、過去の実績(33.6%〜37.5%)を目安にはできますが、確定的な予測はできません。公式発表があり次第、必ず一次情報で確認することをおすすめします。
GビズIDプライムが無いと申請できませんか?
申請できません。ものづくり補助金は電子申請システム(jGrants)を通じた申請のみを受け付けており、GビズIDプライムのアカウントが無いと、そもそも申請フォームにアクセスできません。 発行までに2〜3週間かかるため、公募開始前の早い段階で余裕を持って取得しておく必要があります。
過去に不採択だった事業者は再申請で不利になりますか?
不利にはなりません。過去の不採択歴が新たな申請の審査に影響するという公式な説明はなく、毎回の公募でそのときの事業計画の内容にもとづいて改めて審査されます。事務局から開示される不採択理由のフィードバックを活かして計画を見直すことが、次回の採択につながる現実的な対策です。
採択率と交付決定率は同じですか?
異なります。採択は「補助金交付候補者」に選ばれた段階であり、その後の交付申請の審査を経て初めて交付決定に至ります。 採択されたものの、交付申請の内容に不備がある等の理由で交付決定に至らないケースもゼロではないため、採択後の手続きも気を抜かずに進める必要があります。
小規模事業者は採択されやすいですか?
採択率が優遇されるという公式な説明はありませんが、従業員20人以下の小規模事業者は補助率2/3が適用されるという金額面での優遇はあります。採択のしやすさそのものは、事業規模ではなく事業計画の内容そのもので決まる仕組みになっています。
免責事項: 本記事の内容は2026年9月時点で公式発表されている第20次〜第23次の情報にもとづきます。採択率は公募回ごとに変動するため、最新の情報は中小企業庁・ものづくり補助金総合サイトの公式ページでご確認ください。
