「大企業の脱炭素目標のために、取引先の中小企業が設備投資をする」——そう聞くと自分には縁がない話に思えるかもしれません。しかし実際には、取引先である中小企業が設備投資をする際の費用の半分を、国が補助する制度です。自社が大企業の"バリューチェーン"に組み込まれている事業者にとっては、見逃せない補助金です。
実施主体は環境省(執行団体:一般社団法人地域循環共生社会連携協会)。補助率は中小企業が1/2、大企業が1/3(一定の要件を満たすと1/2)で、上限は設備導入事業者ごとに15億円(最大3カ年)です。ただし、代表企業1社だけでは申請できません。取引先企業との間で、事業実施後のCO2排出量について事前に合意しておく必要があります。令和8年度の公募は2026年7月30日〜11月13日17時必着(第1期9月4日・第2期10月9日・最終11月13日の3回締切)で受け付けています。
Scope3省CO2設備投資促進事業の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(代表企業とその連携先の中小企業等) |
| 制度名 | Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業 |
| 対象業種 | 業種指定なし(代表企業のバリューチェーンに含まれる中小企業等) |
| 利用目的 | 取引先企業との連携による省CO2設備の導入(Scope3排出量削減) |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 規定なし(中小企業・中堅企業・大企業で補助率が変わる) |
| 補助上限額 | 設備導入事業者(1事業者)ごとに15億円、最大3カ年 |
| 補助率 | 中小企業:1/2/大企業:1/3(「GX率先実行宣言」を行い、かつCO2排出量を年3,000t-CO2以上削減する場合は1/2) |
| 申請受付 | 2026年7月30日〜11月13日17時必着(第1期9月4日・第2期10月9日・最終11月13日の3回締切) |
| 公式サイト | 一般社団法人地域循環共生社会連携協会「令和8年度 Scope3事業 公募」 |

申請するのは「代表企業」。取引先だけでは動けない
この補助金でまず押さえておきたいのは、申請の主体は「代表企業」だという点です。代表企業は、「GX率先実行宣言」(脱炭素経営への取り組みを対外的に宣言する制度)を行っていることが前提条件になります。
その上で、代表企業がバリューチェーン内の取引先(中小企業等)と連携し、設備を導入します。取引先の中小企業が単独で申請することはできません。 まずは取引先の大企業・中堅企業が「GX率先実行宣言」を行い、代表企業として動く必要があります。
自社がすでに取引先の大企業から脱炭素の取り組みを求められている場合は、その企業がこの制度の対象になっていないか確認してみる価値があります。
満たすべき2つの要件(両方とも必須)
環境省の事業概要資料によると、支給には次の2つの要件を両方満たす必要があります。
- 代表企業が「GX率先実行宣言」を行っていること
- 代表企業のScope3削減目標を踏まえて、代表企業と連携企業が、事業実施後の連携企業のCO2排出量について事前に合意していること
- 代表企業が大企業の場合は連携企業2者以上との合意が必要
- 代表企業が中堅・中小企業の場合は連携企業1者以上との合意が必要
つまり、代表企業になろうとする会社が「うちも申請したい」と思い立っても、GX率先実行宣言を済ませ、なおかつ取引先と排出量の合意まで取り付けていなければ申請できません。準備には一定の時間がかかることを見込んでおく必要があります。
いくらもらえるか
補助率は、企業の規模によって次のように分かれています。
- 中小企業:1/2
- 大企業:1/3。ただし「GX率先実行宣言」を行い、かつ対策によりCO2排出量を年3,000t-CO2以上削減する見込みの場合は1/2に上がります
- 中堅企業の補助率は、環境省の事業概要資料に個別の記載がありません。事務局にご確認ください
補助上限額・事業期間は、設備を導入する事業者(1事業者)ごとに15億円、最大3カ年です。
制度全体の規模としては、令和8年度予算額は15億円(前年度は20億円)で、3年間で総額50億円の国庫債務負担が組まれています。事業形態は間接補助事業(実施団体を通じて交付される補助金)で、実施期間は令和7年度からとされています。
対象になる設備の条件
対象になるのは、現在の設備に対して30%以上の省CO2効果が見込める設備の導入です。ただし、この30%は「本事業で導入する設備全体」で満たせばよいとされており、連携企業(取引先)の規模によって、個社ごとに満たすべき削減効果の目安が次のように分かれています。
- 大企業:30%以上
- 中堅企業:20%以上
- 中小企業:10%以上
「省エネ設備に入れ替えれば何でも対象になる」わけではなく、削減効果を数値で示せる計画になっているかが申請の出発点になります。
対象外になる可能性がある取り組み・追加の要件
執行団体(一般社団法人地域循環共生社会連携協会)の公募ページによると、次の2点は読者の判断に直接関わるため、あわせて確認しておく必要があります。
- Scope3のカテゴリー11(販売した製品の使用)は対象外になる見込みです。この変更にあわせて、説明資料・説明動画が2026年6月25日に修正されています。古い版の資料を見ている場合は最新版を確認してください
- 助成を受ける事業者に対して、「GXフューチャー・リーグ」への参画が要件化される見込みが公表されています。参加を希望する場合は、GXフューチャー・リーグ事務局へ「意向確認書」の提出が必要です。ただし、中小企業基本法に規定する「中小企業」に該当する企業は、この参画要件の対象外になる見込みとされています
11月13日までに何をすべきか
締切は3段階に分かれています。
| 締切 | 内容 |
|---|---|
| 第1期:2026年9月4日 | 早期に計画が固まった案件向け |
| 第2期:2026年10月9日 | 中間の締切 |
| 最終:2026年11月13日17時必着 | 最終締切 |
申請はGビズID(国の電子申請システムで共通に使うID。発行に2〜3週間かかることがあります)を使ってJグランツシステムで行います。代表企業側でのGビズID取得や社内合意に時間がかかる場合は、早い締切での申請を目指した方が安全です。
よくある質問
中小企業が単独で申請できますか?
できません。 申請主体は「GX率先実行宣言」を行った代表企業(多くは大企業・中堅企業)で、連携する中小企業等はその取引先として設備導入を行う立場になります。
自社が対象になっているかはどう確認しますか?
まずは取引がある大企業・中堅企業に、この制度の代表企業として動く予定があるかを確認することになります。公式ページには具体的な確認方法の記載はないため、実施団体(一般社団法人地域循環共生社会連携協会)への問い合わせが確実です。
補助率は中小企業なら必ず1/2ですか?
制度上は中小企業の補助率が1/2とされていますが、対象設備のCO2削減効果など個別要件を満たす必要があります。詳細は公募要領でご確認ください。
制度そのものについて問い合わせたいときは?
環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室(電話:0570-028-341)が問い合わせ先として案内されています。個別の申請手続きに関する質問は、執行団体の一般社団法人地域循環共生社会連携協会へお問い合わせください。
