ガソリンスタンドの経営支援というと、複数店舗を構える大手チェーンの話だと思っていませんか。この制度は逆です。対象になるのは、従業員5人以下の小さな給油所だけ。会社の規模が小さいことが、むしろ申請の条件になっています。
「経営再建支援事業(小規模事業者用)」は、全国石油商業組合連合会(全石連)が実施する制度です。ガソリンの税率廃止で収益への影響を受ける小規模なSS(サービスステーション)を対象に、計量機検定や危険物取扱者の資格取得費用など、安全にかかわる経費を1SSあたり上限100万円で支援します。
経営再建支援事業(小規模事業者用)の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(品質確保法第3条にもとづき経済産業大臣の登録を受けている揮発油販売業者) |
| 制度名 | 経営再建支援事業(小規模事業者申請用)令和7年度補正 |
| 対象業種 | 揮発油販売業(ガソリンスタンド運営事業者) |
| 利用目的 | 安全検査対応・業務安全対策・安全対策研修にかかる経費の一部支給 |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 商業・サービス業として常時使用する従業員5人以下(常勤役員を除く。アルバイト・パートを含めて5人以下であることが条件) |
| 補助上限額 | 1SSあたり合計100万円(①〜③の合計)。②業務安全対策は1つの設備・備品あたり1万円以上50万円未満(税抜)、③安全対策等研修は20万円が上限 |
| 補助率 | ①安全検査対応・②業務安全対策は3分の2(SS過疎地等は4分の3)、③安全対策等研修は全額支給 |
| 申請受付 | 2026年3月31日〜9月30日(1次申請期間3月31日〜5月29日、2次申請期間7月1日〜9月30日。予算残高により変更あり) |
| 公式サイト | 全国石油商業組合連合会「経営再建支援事業(小規模事業者申請用)」 |

何から始めればいい?──まず「従業員5人以下」を証明する
この制度で最初につまずきやすいのが、対象になるかどうかの証明です。従業員数5人以下の小規模事業者であることを示すため、次のいずれかの書類を用意します。
- 直近の確定申告書、または法人事業概況説明書(「期末従業員等の状況」欄で常勤役員を除く従業員数5人以下を確認するもの)
- 直近の確定申告書、または青色申告決算書・白色申告用収支内訳書の写し(「給与賃金の内訳」欄等で確認するもの)
- 給与所得等の所得税領収書の写し
アルバイト・パートがいる場合は、その人数も含めて5人以下である必要があります。「常勤役員を除いて何人働いているか」を先に数えておくと、書類集めがスムーズです。
自分のSSは対象になる?
対象になるのは、次の2条件をどちらも満たす揮発油販売業者です。
- 品質確保法(揮発油等の品質の確保等に関する法律)第3条にもとづき、経済産業大臣の登録を受けている揮発油販売業者であること
- 中小企業基本法第2条第5項に規定する小規模事業者であること(商業・サービス業の場合、常勤役員を除く常時使用する従業員数がおおむね5人以下)
申請はSSごとに行います。複数のSSを運営している事業者は、店舗の数だけ申請する必要があります(1申請=1SS)。
いくら戻ってくる?──3つの支援メニュー
支援の中身は3つに分かれます。それぞれ対象になる経費と補助率が違います。
| メニュー | 対象経費の例 | 補助率 |
|---|---|---|
| ①安全検査対応 | 計量機検定、地下タンク・地下埋設配管の漏洩検査、移動タンク(ローリー)の圧力検査、揮発油分析委託料(年3〜6回実施する1年分析のみ) | 通常地域3分の2、SS過疎地等4分の3 |
| ②業務安全対策 | 空調設備(エアコン・スポットクーラー等)、熱中症対策用設備(防爆空調服・冷蔵庫・扇風機等)、防寒対策用設備(融雪マット・電熱ベスト等)、洗濯機、除雪機、AED、LED照明、消火設備、情報通信機器(無停電電源装置) | 通常地域3分の2、SS過疎地等4分の3 |
| ③安全対策等研修 | 乙種危険物取扱者(第4類)の受講費・受験費用、自動車整備に関する安全研修、タイヤ整備・安全点検に関する安全研修 | 全額支給(上限20万円) |
3つの合計は1SSあたり100万円が上限です。申請は1SSにつき3回まで可能で、1〜3回目の合計が100万円に収まる範囲で使えます。
具体的な計算で見てみる
通常地域のSS(補助率3分の2)が、1回目の申請で①安全検査対応80万円、②業務安全対策20万円を計上した場合を考えます。
- ①80万円×3分の2=53.3万円
- ②20万円×3分の2=13.3万円
- 合計 66.6万円(1回目の申請上限額に到達)
別のパターンとして、①安全検査対応80万円、③安全対策等研修20万円を組み合わせた場合はどうなるでしょうか。
- ①80万円×3分の2=53.3万円
- ③20万円×全額支給=20万円
- 合計 73.3万円
③の研修費用は全額戻ってくるぶん、①②より効率よく上限に近づきます。乙種危険物取扱者の資格取得をまだ社員に取らせていない場合、このメニューから使うと支援額を最大化しやすい計算です。
つまずきやすいのは「発注の順番」
この制度でいちばん多い失敗は、金額の計算ミスではなく、発注のタイミングです。
申請の流れは「見積→交付申請書→交付決定通知→発注・実施→代金支払→実績報告・支払請求→補助金額確定通知→補助金振込」の順です。交付決定通知書が届く前に発注・契約してしまうと、その経費は対象外になります。「見積を取るところまでは事前でよいが、発注はもっと後」という順番を守る必要があります。
申請期間は2つに分かれています。
- 1次申請期間:2026年3月31日〜5月29日
- 2次申請期間:2026年7月1日〜9月30日
ただし①安全検査対応にかかる申請は、1次・2次の申請期間にかかわらず、申請の都度、交付決定が行われます。②業務安全対策・③安全対策等研修は、他の申請と同様に申請期間終了後にまとめて交付決定される点が異なります。
実績報告書の提出期限は、代金の支払いが完了してから30日以内(締切日は2027年2月10日必着)です。年度末に慌てて発注すると、この30日という期限に間に合わなくなるおそれがあります。
よくある質問
従業員がアルバイトばかりでも申請できますか?
できます。ただし、正社員・アルバイト・パートを合わせた人数で5人以下である必要があります。常勤役員は人数に含めません。
すでに導入済みの設備を後から申請できますか?
できません。交付決定通知書が届く前に発注・契約した経費は対象外です。エアコンや消火設備の入れ替えを検討している場合は、先に交付申請書を提出し、交付決定を待ってから発注してください。
1つの会社で複数のSSを運営している場合、1回の申請でまとめられますか?
まとめられません。申請はSSごとに行う必要があります。複数店舗を運営している場合は、店舗の数だけ申請書を作成します。
