研修に出した日の日当にも、助成金は出るのか。出ます。建設労働者技能実習コースは、実習の費用(経費助成)と受講した日の賃金(賃金助成)の2本立てで、1事業所あたり年度で500万円まで支給されます。ただし労働者を雇っていない一人親方は対象外で、同居の親族だけを雇う事業主も使えません。
もう1つ、順番の線があります。多くの実習は、始める3か月前から原則1週間前までに「計画届」を労働局へ出しておく必要があります。登録教習機関などで実習の全部を受ける場合だけ、この届は要りません。
建設労働者技能実習コースの要点まとめ
正式名:人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(中小建設事業主・建設事業主団体)
- 対象業種
- 建設業(建設労働者を雇用する事業主・団体)
- 利用目的
- 建設労働者の技能実習の経費と、受講日の賃金
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(20人以下か21人以上かで助成額が変わる)
いくら
- 補助上限額
- 1事業所・年度あたり500万円
- 補助率
- 経費は9/20〜4/5、賃金は日額8,550〜10,450円
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(実習の3か月前〜原則1週間前に計画届)
うちの会社は対象になる?
次の4つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
次のどちらかに当たると対象外です。
- ✕ 一人親方(労働者を雇っていない)
- ✕ 同居の親族だけを使っている
雇用管理責任者は、建設労働者の雇用管理の改善を担当する人です。事業主が選びます。中小企業は、資本金か従業員数のどちらか一方が基準以下であれば該当します。建設業の基準は資本金3億円以下または従業員300人以下です(厚生労働省の共通要領で、建設業は「その他の業種」に当たります)。
雇用保険の保険料率の区分によっては、受講者の勤務先などに追加の条件が付きます。「建設の事業」の料率を納めていない建設業許可業者は、申請の前に管轄の労働局へ確かめてください。助成金の支給は、雇用保険の適用事業所ごとに判断されます。
建設事業主団体(事業協同組合や商工組合、職業訓練法人など)も申請できます。構成員の3分の2以上が中小建設事業主であることが条件です。
対象の実習と、対象外の実習
線引きの理由は、助成の目的にあります。建設労働者の育成と技能継承のための制度なので、仕事の片手間の実習や営業のための実習は外れます。
| 論点 | 対象になる | 対象にならない |
|---|---|---|
| 実習の中身 | 建設工事の作業に直接関連する実習。特別教育、技能検定の事前講習、登録基幹技能者講習など | 営業活動の一環の実習。職場で仕事をさせたまま行う実習 |
| 技能講習・教習 | 登録教習機関(国に登録された、技能講習などを行う機関)が実施する講座 | 自社で実施した技能講習 |
| 時間 | 合計10時間以上、1日1時間以上、期間は6か月以内 | 10時間に届かない実習。特別教育などは例外あり |
| 実技・試験 | 対面(通学)で行う実技と実技試験 | 非対面で行う実技・修了試験 |
| 通信・eラーニング | 質疑応答がある通信制、eラーニング、同時双方向の通信訓練 | 教材を送るだけで質疑応答がないもの |
| 受講料 | 受講者に負担させない実習 | 受講者から費用を取る実習 |
実技は1時間以上の実施が必要です。学科がない実習なら、実技だけで10時間以上になります。
経費で使えるもの、使えないもの
対象にならないものから先に確認してください。
- 自社の役員・従業員(部内指導員)への指導員謝金
- 建設機械の運搬費
- 都道府県の職業能力開発施設・JEEDの施設で受ける訓練の受講料や教科書代
- 委託費に含まれる宿泊費
- 認定訓練コースの助成を受けられる訓練課程の受講料
- 受講者から集めた費用(その分は差し引かれます)
なお、都道府県の職業能力開発施設・JEEDの施設で受ける訓練でも、受講日の賃金助成は対象になります(厚生労働省のQ&A)。
対象になるのは、実習に直接必要な実費です。
- 外部の講師に直接払った指導員謝金
- 指導員の交通費(社内の指導員も対象)
- 実習会場の借上料
- 建設機械・クレーン・高所作業車などの借上料
- 教科書・教材・消耗品の費用(教科書は受講者数と指導員数の合計まで)
- 所属団体や登録教習機関に払う委託費・受講料
消費税相当額も対象経費に含まれます。
いくら戻ってくる?
助成は3種類あり、組み合わせて受けられます。年度(支給申請日の属する4月1日〜翌年3月31日)の合計が、1事業所あたり500万円までです。メニューごとに500万円ではありません。
| 助成の種類 | 支給額 |
|---|---|
| 経費助成 | 実習の費用 × 助成率。20人以下は3/4。21人以上は35歳未満が7/10、35歳以上が9/20。団体は4/5。1人1実習あたり10万円まで |
| 賃金助成 | 受講日数 × 日額。20人以下は9,500円、21人以上は8,550円。建設キャリアアップシステム登録者は10,450円・9,405円。1人1実習あたり20日分まで |
| 賃金向上助成・資格等手当助成 | 実習後1年以内に賃金を5%以上上げる(資格等手当なら3%以上)と上乗せ。経費助成の3/20(1人2万円まで)。賃金助成なら1日2,000円(20人以下)、1,750円(21人以上) |
20人以下・21人以上は、実習を始める日時点の雇用保険の被保険者数(企業全体)で数えます。建設キャリアアップシステムは、技能者の資格や就業履歴を登録する仕組みです。
計算例を3つ挙げます。
- 20人以下の工務店で、新人3人が登録教習機関の技能講習を5日間受講(受講料は1人10万円):経費は10万円 × 3/4 × 3人 = 22.5万円。賃金は9,500円 × 5日 × 3人 = 14.25万円。合計36.75万円
- 21人以上の会社で、35歳未満の1人が受講料20万円の実習を受講:20万円 × 7/10 = 14万円 → 上限の10万円
- 21人以上の会社で、建設キャリアアップシステム登録済みの職長が10日間受講:9,405円 × 10日 = 9.405万円(賃金助成)
賃金助成の対象日は、その日の実習が3時間以上の日だけです。2時間45分以上なら3時間とみなされます。
申請の流れ
- 実習を決める(事業主。対象の実習かを、支給要領の別表で確かめる)
- 計画届を出す(事業主→管轄の労働局。実習を始める3か月前〜原則1週間前)
- 実習を実施し、賃金を払う(事業主。受講日の通常の賃金以上)
- 支給申請書を出す(事業主→管轄の労働局。実習が終わった翌日から2か月以内)
- 賃金向上助成を申請する(賃上げをした事業主→労働局。賃上げ後3か月目の支払日の翌日から5か月以内)
計画届は、実習を始める前に出すものです。実習のあとから出す方法はありません。登録教習機関などが実施する実習だけを受ける場合は不要ですが、一部でも自社で実施するなら全部を書いた計画届が要ります。
管轄の労働局は、雇用保険の適用事業所の所在地で決まります。電子申請は雇用関係助成金ポータルから行います。
必要な書類
準備できた 0 / 11
カリキュラムは、実施日ごとの科目と時間が分かるものです。領収書は自社で実習をした場合、受講申込書は登録教習機関などで受けた場合に出します。通信制・eラーニングは、賃金台帳などの代わりに修了証を出します。自社で実習をするときは、指導員・担当科目表と指導員の職務経歴書が要ります。技能者情報の書面は、建設キャリアアップシステム登録者の高い日額で賃金助成を受ける場合に出します。下請の労働者を受講させるなら、下請建設事業主名簿と、下請分の賃金台帳なども必要です。賃金向上助成は、別に確認シートと、賃上げの前後3か月の賃金台帳などを出します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 計画届を出さずに始めた:計画届が要る実習は、届け出ることが前提です。出さずに始めた実習は助成されません。
- 受講日の賃金を下げた:本人の合意があっても、通常の賃金とは認められません。賃金を減らした実習は、賃金助成の対象外です。
- 賃金の未払いがある:訓練期間の一部でも未払いがあると、期間中の全日が賃金助成の対象外になります。
- 実習の途中で休んだ:経費助成は、受講時間が総訓練時間の7割以上の人だけが算定されます。
- 年次有給休暇を使って受けさせた:1つの実習のうち、一部の期間でも年次有給休暇で受講させると、その実習の期間中の全日が賃金助成の対象外です。
- 申請が遅れた:実習が終わった翌日から2か月を過ぎると申請できません。
- 事業主都合で離職者を出した:賃金向上助成は、訓練開始の6か月前から申請日までに、事業主都合で被保険者を離職させていないことが条件です。
よく誤解されるポイント
登録教習機関に出せば、必ず計画届は不要
不要になるのは、実習のすべてを登録教習機関などが実施する場合に限ります。自社で実施する部分が少しでもあれば、登録教習機関で受ける分も含めて計画届に書きます。
賃金向上助成は別枠の500万円
別枠ではありません。経費助成・賃金助成・賃金向上助成の合計が、年度で500万円までです。
古い日額をそのまま使える
賃金助成の日額は、年度の支給要領で変わります。令和8年度の要領(令和8年4月8日改正)では、20人以下が9,500円、21人以上が8,550円です。令和7年度の要領(令和7年4月1日版)に載っていた8,550円・7,600円で試算すると、金額が少なく出ます。
よくある質問
一人親方でも使えますか?
使えません。労働者を雇わずに自分で建設業を営む一人親方は、事業主として扱われず支給の対象外です。生計を一にする同居の親族だけを使っている事業主も同じです。親族は原則として労働者に数えません。労働者を1人でも雇用し、雇用保険に加入していれば対象になり得ます。まずは雇用保険の加入状況と、雇っている人が同居の親族でないかを確かめてください。
外国人技能実習生も対象になりますか?
対象になります。厚生労働省のQ&Aに、外国人技能実習生も助成の対象と書かれています。ただし、対象労働者の技能実習計画と今回の受講内容にずれがないか、留意するよう求められています。受講させる前に内容が実習計画と合うかを社内で確認し、不安があれば管轄の労働局へ問い合わせてください。
eラーニングで受講させても対象ですか?
経費助成は対象になります。eラーニング、通信制、同時双方向の通信訓練のどれかであることが条件です。教材を送るだけで質疑応答がない形は対象外です。賃金助成は、通学制と同時双方向の通信訓練で1日3時間以上受けた日が対象です。eラーニングと通信制の受講日は賃金助成に含まれません。非対面で行う実技や修了試験も、助成の対象になりません。
自社の職長が講師をした場合、謝金は出ますか?
指導員謝金は出ません。謝金の対象は、自社の役員・従業員以外の外部講師に、直接払ったものだけです。ただし、指導員の交通費は社内の指導員の分も対象になります。外部講師を頼むときは、謝金を本人へ直接払ってください。領収書には実施した日と担当した時間数、1時間あたりの額、所得税の控除額を書いてもらいます。この領収書は支給申請で提出します。
休日に実習を受けさせた場合、賃金はどう払いますか?
労働基準法に定める割増賃金の支払いが必要です。所定労働日以外の休日に実習を受けさせた場合は、受講時間分の賃金を払えば助成の対象にできますが、割増の支払いが条件です。法定労働時間の外や深夜に受けさせた実習も、割増後の賃金以上を払う必要があります。所定労働時間内に実習を受けさせ、同じ日の所定労働時間外に働かせた場合も、その時間外労働に割増を付けて払います。扱いに迷う場合は、実習の前に管轄の労働局へ確かめてください。
受講日の賃金を減らす合意をしても対象ですか?
対象になりません。受講した日の賃金を本人との合意で減らして払っても、助成の条件になっている「通常の賃金」を払ったことにはなりません。賃金助成だけでなく、実習を受けさせた日に通常の賃金以上を払うことが制度全体の条件です。受講日は所定労働時間分の賃金を満額で払い、受講日だけ減額する規程は作らないでください。未払いが一部でもあると、訓練期間の全日が賃金助成の対象外になります。
修了試験に落ちて修了証が出なかった場合は?
助成の対象にできます。算定の対象になるのは、雇用保険の被保険者で、実際に受けた時間が受講時間の7割以上の人です。修了証が出たかどうかは条件ではありません。ただし訓練の途中で長く休んで7割に届かなかった人は、経費助成の算定から外れます。出席簿やタイムカードを実習のたびに残しておくと、受講時間を示しやすくなります。
年間500万円の上限は何の合計ですか?
経費助成、賃金助成、賃金向上助成・資格等手当助成の3つの合計です。年度は、支給申請をした日の属する4月1日から翌年3月31日までで数えます。実習をした日ではなく申請日で決まります。3月に実習をして4月に申請すると翌年度の枠に入ります。複数の事業所があれば、事業所ごとに500万円が上限です。年度の途中で申請が重なる場合は、合計が上限を超えないか見ておきます。
支給申請はいつまでにしますか?
実習が終わった日の翌日から2か月以内です。ただし実習期間の賃金の支払日から申請期限までが2週間に満たない場合は、賃金の支払日から2週間以内になります。賃金向上助成は、賃上げ後3か月目の支払日の翌日から5か月以内です。期限を過ぎると申請できません。実習の終了日と賃金の支払日の両方から締切を逆算して、予定を組んでおきます。
大企業の事業主は対象になりますか?
原則は対象外ですが、女性建設労働者の実習は例外です。中小建設事業主以外の建設事業主も、雇用する女性建設労働者に技能実習を行う場合は経費助成の対象になり、助成率は3/5です。賃金助成は中小建設事業主が対象のため、大企業は受けられません。男女を分けて経費を出しにくい場合は、経費の総額を人数で按分して女性の分だけを算出します。
申請先はどこですか?
雇用保険の適用事業所の所在地を管轄する都道府県労働局です。建設事業主団体は、管轄の労働局が窓口になります。計画届も支給申請書も同じ窓口で、電子申請は雇用関係助成金ポータルから行えます。事業所が複数ある会社は、事業所ごとの管轄に提出します。書き方で迷うときは提出前に労働局へ電話で確かめておくと、書類の差し戻しを減らせます。
登録基幹技能者講習は自社で開催できますか?
自社では開催できません。登録基幹技能者講習は、登録基幹技能者講習実施機関が実施するものを受けた場合が対象です。技能講習も同じで、登録教習機関が実施する講座を受けた場合に限ります。自社で実施できるのは建設工事の作業に直接関連する実習や特別教育、技能検定の事前講習などです。どの実習をどの方法で受けられるかは、支給要領の表で確かめられます。
