社用車を更新するタイミングで「補助金は使えないか」と考える経営者は多いはずです。結論から言うと、車種と用途によって使える制度がまったく変わります。 EVにするのか、既存の車両を延命するのか、充電設備まで含めて考えるのかで、当てはめる制度が分かれます。1台だけの更新なのか、複数台の一斉導入なのかによっても、確認すべきポイントが変わってきます。
この記事では、法人・個人事業主が社用車を導入・更新する際に使える主な補助金を、車種横断で整理します。あわせて、資金繰りや複数台導入時の実務上の注意点も紹介します。
社用車の補助金の要点まとめ(まずは全体像を把握)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| EV社用車(普通車・軽自動車) | CEV補助金(国)+自治体の上乗せが基本形 |
| 商用の軽バンEV | CEV補助金の対象。ただし自動車検査証が「自家用」であることが条件 |
| 充電設備 | 車両とは別枠の補助金(NEV補助金等)が用意されている |
| 産業車両(フォークリフト等) | 別制度(脱炭素関連の補助金)が対象になる場合がある |
| 事業用ナンバー(緑ナンバー) | CEV補助金は対象外。バス・タクシー等は別の制度(LEVO補助金・JATA補助金等)が用意されている場合がある |
| 中小企業の定義 | 中小企業基本法第2条第1項の中小企業者(業種ごとに資本金・従業員数の上限があり、製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下等、いずれか一方を満たせば該当) |
| 併給の可否 | 国と自治体の補助金は原則として併給できる場合が多いが、制度ごとに要確認 |
社用車の補助金は「1つの窓口で全部そろう」わけではありません。 車両本体・充電設備・産業車両で執行団体が分かれているため、目的ごとに制度を組み合わせる発想が必要です。
まず車種を分けて考える
社用車の補助金を探すとき、最初につまずくのが「何を探せばいいか分からない」という点です。ここは目的別に分けると整理しやすくなります。
- 乗用のEV社用車を1〜数台導入したい→CEV補助金+自治体上乗せ
- 配送用の軽バンをEV化したい→CEV補助金(商用軽自動車区分)
- トラック・バスをEV化したい→CEV補助金に加え、事業用車両向けの別制度(LEVO補助金等)が対象になる場合がある
- フォークリフト等の産業車両を更新したい→脱炭素関連の別の補助金を探す必要がある
- 自宅・事業所に充電設備を作りたい→車両とは別枠のNEV補助金等
「社用車」とひとくくりにせず、車種と用途で検索し直すことが遠回りに見えて一番早いというのが実務上の結論です。まずは自社が導入したい車種を明確にすることから始めましょう。
EV社用車の基本形:CEV補助金
法人・個人事業主が社用車としてEVを導入する場合も、CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の対象になります。個人と共通する要件に加えて、法人ならではの注意点がいくつかあります。
「自家用」であることが条件
CEV補助金のFAQには、対象外になるケースとして次が明記されています。
「自動車検査証」の「自家用・事業用の別」の欄が「事業用」の車両。
自社の営業・配送に使う車両であっても、登録上のナンバー区分が事業用(緑ナンバー等)になっている場合は対象外です。自社の商品配送を目的にした車両であっても、この区分だけで判定される点に注意が必要です。
法人の確認書類が個人と異なる
法人が申請する場合、商業登記簿・役員名簿(様式8)等の提出が必要になります。役員名簿は各省庁共通の様式で、商業登記簿には記載のない生年月日の確認のために必須とされています。 個人申請より書類の準備に手間がかかる点は見込んでおく必要があります。担当者を早めに決め、必要書類を洗い出しておくと申請直前に慌てずに済みます。
法人番号は13桁を記入する
商業登記簿の会社法人等番号は12桁ですが、CEV補助金の申請書には国税庁の法人番号公表サイトで確認できる13桁の法人番号を記入する必要があります。桁数の違いに気づかず申請書を提出すると、不備として差し戻される原因になります。
個人事業主が申請する場合の注意点
個人事業主が社用車としてEVを導入する場合、CEV補助金の申請区分は「個人」ではなく「事業者」に近い扱いになることがあります。屋号での契約か個人名義での契約かによって、必要書類や記入方法が変わるため、契約前に販売店・センターの双方に確認しておく価値があります。
また、個人事業主の場合も、車両が「自家用」登録であることが前提です。開業届を出している個人事業主であっても、車両検査証の区分が事業用(緑ナンバー等)になっていれば対象外になる点は法人と同じです。
申請から交付までのスケジュール感
社用車の導入は、事業の稼働に直結するため、補助金の申請スケジュールを事前に把握しておくことが重要です。申請書類の到着から交付決定までは概ね3〜4か月程度かかる見込みとされています。不備があればさらに時間がかかるため、余裕をもったスケジュールで動く必要があります。
車両の登録日を基準に申請期限が決まる仕組みのため、「補助金の交付を待ってから納車する」のではなく、「先に車両代金を支払い、登録を済ませたうえで申請する」という順序になります。事業計画の中でこの順序を織り込んでおくことが実務上のポイントです。
車種別の補助額は姉妹記事で確認する
CEV補助金の具体的な補助額は車種によって大きく異なります。
- 軽自動車の乗用EV(サクラ・eKクロスEV等)は軽EVの補助金
- 配送用の軽バンEV(クリッパーEV・MINICAB EV等)は軽自動車のEV補助金(商用車向け)
- 中古車を検討している場合は中古EVの補助金(結論としてCEV補助金は中古車を対象外にしています)
普通車のEV社用車(bZ4X・リーフ等)を検討している場合は、それぞれの車種別記事も参考にしてください。
充電設備は車両とは別の制度
社用車をEV化する際、事業所への充電設備の設置は車両本体とは別の補助金を使います。執行団体が異なるケースもあるため、車両側の申請と充電設備側の申請は別々に進める必要があります。
複数台の社用車をEV化する計画がある場合、充電設備の容量(同時に何台まで充電できるか)を先に検討しておくと、後から設備を増設する手間が省けます。夜間にまとめて充電する運用にすれば、電力契約のプランによっては電気料金を抑えられることもあります。
補助額はどう決まるのか(評価点方式)
CEV補助金の車両補助額は、単純に車両価格の一定割合で決まるわけではありません。次世代自動車振興センターによると、令和6年度から、車両の性能評価に加え、自動車分野のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に必要な要素を総合的に評価して補助額を決定する方式になっています。
社用車として導入する車両も、この評価方式が適用されます。メーカーの充電インフラ整備への取り組みや、車両のライフサイクル全体での環境負荷の抑制状況なども評価対象とされているため、同じクラスの車でもメーカーによって補助額に差が出ます。複数の候補車種がある場合、最終決定前に最新の交付額を比較する価値があります。
保有義務(処分制限期間)を理解しておく
社用車としてCEV補助金を受けた車両には、一定期間の保有義務(処分制限期間)があります。乗用車は自家用で4年が目安とされており、この期間内に売却・廃車すると、原則として補助金の返還が必要になります。
事業の状況によっては、想定より早く車両を入れ替えたくなることもあります。社用車の更新サイクルを検討する際は、この保有義務の年数を織り込んでおく必要があります。なお、地震・豪雨等の災害でやむを得ず処分することになった場合は、り災証明書等の提出により返納が免除される仕組みもあります。
産業車両・フォークリフトは別の制度を探す
配送センターや工場で使うフォークリフト等の産業車両は、CEV補助金の対象外です。脱炭素・省エネ関連の別の補助金制度が対象になる場合がありますが、これはCEV補助金とは別の執行団体・別の公募スケジュールで動いています。フォークリフトのEV化・水素化を検討する場合は、産業車両に特化した制度を個別に探す必要があります。
補助金の申請を誰が担当するか(社内の体制)
中小企業が社用車の補助金を申請する場合、総務・経理担当者が申請書類を準備することが多いですが、必要書類には商業登記簿・役員名簿・法人番号など、複数の部署にまたがる情報が必要になります。申請の担当者を早めに決め、必要書類のリストを社内で共有しておくことで、申請直前に慌てることを防げます。
また、行政書士に手続きの代行を依頼することもできますが、CEV補助金の手続代行は、原則として車両販売会社かセンターが認めた者に限られるという制約があります。代行を検討する場合は、依頼先がセンターに認められているかを確認する必要があります。
トラック・バスは別の制度がある
物流用のEVトラックや、送迎用のEVバスを検討している場合、CEV補助金だけでなく、商用車と充電設備をセットで扱う制度(LEVO補助金等)や、タクシー・路線バス向けの制度(JATA補助金等)が用意されている場合があります。これらは執行団体が異なり、CEV補助金とは別の応募要領で動いています。 車両サイズが大きくなるほど、対象になる制度の選択肢も変わってくるため、導入予定の車種で個別に確認する必要があります。
事業規模が大きく、複数の車種(乗用車・軽バン・トラック等)を組み合わせて導入する場合、それぞれの車種で異なる制度を使うことになるため、社内で担当者を車種ごとに分けて申請を進めるという運用も検討に値します。
社用車を複数台まとめて導入する場合
事業拡大や車両の一斉更新で、社用車を複数台まとめて導入する事業者もいます。CEV補助金は台数分の優遇があるわけではなく、申請は1台ごとに必要です。台数が多いほど、商業登記簿・役員名簿等の書類は使い回せる一方、車両ごとの検査証・支払い証憑等は個別に準備する必要があり、事務作業の負荷が増えます。
複数台をまとめて導入する場合は、車種を統一することで見積もり比較や書類準備の手間を減らせるというメリットもあります。一方で、用途によって必要な車種が異なる場合(営業用の乗用車と配送用の軽バン等)は、車種ごとに補助額や要件が変わるため、それぞれ個別に確認する必要があります。
社用車導入時の資金繰りを考える
補助金は車両代金の支払いを完了させたあとに交付される仕組みのため、導入時にはいったん全額を自己資金または融資でまかなう必要があります。 申請から交付決定までは概ね3〜4か月程度かかる見込みのため、その間のキャッシュフローへの影響も考慮しておく必要があります。
複数台を同時に導入する場合、この立て替えの負担がまとまった金額になることもあります。資金繰りに不安がある場合は、リース契約を活用することで、初期費用を抑えながら導入するという選択肢もあります。リースの場合も補助金の対象になりますが、契約期間を処分制限期間以上に設定する必要があります。
自治体の上乗せもあわせて確認する
国のCEV補助金に加えて、都道府県・市区町村が独自の上乗せ補助を用意している場合があります。法人・個人事業主も対象にしている自治体は多く、国と自治体の補助金は原則として併給できるケースが目立ちます。ただし要件は自治体ごとに異なるため、事業所がある自治体の公式ページで個別に確認してください。
補助金と減価償却は別の話として整理する
社用車を経費として扱う際、補助金とは別に「減価償却」の考え方が関わってきます。補助金を受け取っても、車両の取得価額そのものが減価償却の基礎になる点は変わりません。 ただし、補助金を圧縮記帳する場合は取得価額から補助金相当額を差し引いて計算する処理があるため、経理担当者・税理士との確認が必要です。
車両の法定耐用年数は、国税庁の減価償却資産の耐用年数に関する省令で、普通自動車が6年、軽自動車が4年と定められています。社用車をEV化する場合も、この耐用年数の考え方はガソリン車と変わりません。 複数年にわたって経費計上することを前提に、資金計画を立てる必要があります。
リースと購入、どちらで補助金を申請するか
社用車の導入方法には「購入」と「リース」があり、CEV補助金はどちらの契約形態でも申請できます。 ただしリース契約で申請する場合、リース契約期間を処分制限期間(保有義務の年数)以上に設定する必要があります。リース期間が処分制限期間に満たない契約では、補助金が交付されません。 リース会社と契約を結ぶ前に、この点を確認しておく必要があります。
また、リース車両の補助金申請は「使用者(借りている法人・個人事業主)」が行う形に変更されており、以前のようにリース会社が代わりに申請する形式ではなくなっています。申請の主体が誰になるかは、リース契約を結ぶ段階で確認しておく価値があります。
中小企業の定義を確認しておく
自治体の補助金の中には、「中小企業者」を対象にすると明記しているものがあります。ここでいう中小企業者は、中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者を指すことが一般的です。業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっており、製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下で、どちらか一方を満たせば該当します。 自社がこの基準に当てはまるかを、申請前に確認しておく価値があります。
自社がこの基準を超えている、いわゆる「みなし大企業」に該当していないかも合わせて確認が必要です。大企業が株式の一定割合を持っている等の理由で、中小企業の規模であっても対象外になるケースがあります。
