検品や梱包、部材の搬送に人手を取られて、増産したくても人が足りない。ベテラン作業者の目視検品や勘に頼った工程が、その人が休むと止まってしまう――。そんな製造現場の「人手がかかる工程」を自動化する投資の1/2を、国が上限1,500万円まで補助してくれるのが「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」です。

この補助金の最大の特徴は、あらかじめ登録された「省力化製品カタログ」の中から製品を選んで導入する仕組みであること。特注の生産ラインを一から設計する(=別枠の「一般型」の領域)のではなく、カタログに載っているIoT・ロボットなどの汎用製品を選ぶだけなので、手続きがシンプルで、しかも締切のない通年・随時受付。「繁忙期を過ぎたら申請しよう」「見積もりが揃ったタイミングで出そう」というように、自社のペースで動けるのが強みです。製造業の現場で何に使えて、いくらもらえるのか、順番に見ていきましょう。

図: 省力化投資補助金(カタログ注文型)が製造業でどう使えるかの全体像

カタログ注文型は製造業の何に使える?

対象になるのは、事務局の「省力化製品カタログ」に登録済みの、生産性向上に効果的なIoT・ロボット等の汎用製品です。自社専用に設計する特注設備ではなく、"型番のある既製品"をカタログから選ぶイメージで捉えると分かりやすいです。

対象製品の具体例

  • 検品・測定機器:外観検査カメラ、寸法・重量測定装置など、目視検品を自動化する機器
  • 無人搬送車(AGV):部材・完成品を工程間で自動搬送する車両
  • 協働ロボット:組立・ピッキング・機械への部材投入などを人と並んで行うロボットアーム
  • 自動梱包機:箱詰め・封函・ラベル貼付を自動化する機器
  • 自動倉庫:部材・製品の保管と出し入れを自動化する保管システム

これらはあくまで例で、カタログに登録された製品であれば他のIoT・ロボット等も対象になります。製品本体価格(機械装置・工具器具・専用ソフトウェア等の購入経費)に加えて、設置費・運搬費・動作確認費・導入設定費用といった導入経費も対象です。

図: カタログ注文型で製造業が導入しやすい製品カテゴリの例

「うちの工程に合う特注設備」はカタログ注文型の対象外

生産ラインの配置に合わせて溶接ロボットのアームや搬送コンベアを個別に設計・構築するような、現場に合わせたオーダーメイドの設備・システムは、カタログ注文型ではなく別枠の「一般型」の対象です。一般型は事業計画の自由度が高い一方、申請から交付決定までの期間が長く、締切も回次ごとに設定されています。「カタログに載っている既製品で足りるか、現場専用に作り込む必要があるか」が、どちらの型を検討するかの分かれ目です。

いくらもらえる?上限1,500万円の中身

「最大1,500万円」は無条件ではありません。上限額は従業員規模によって段階的に決まり、賃上げに取り組むとさらに引き上がる仕組みです。

従業員数補助上限額(通常)補助上限額(賃上げ達成時)補助率
5人以下500万円750万円1/2以下
6〜20人750万円1,000万円1/2以下
21人以上1,000万円1,500万円1/2以下

※2026年3月19日の制度改定後の数値です。補助率は1/2以下で固定され、事業場内最低賃金を3.0%以上引き上げる等の賃上げ要件を満たすと、補助率ではなく上限額が引き上がります。

製造業内・事業者タイプ別シミュレーション

同じ「上限」でも、工場の規模とやりたいことで使い方はまったく変わります。製造業の中でも異なる3つの事業者タイプを例に、いくら投資するといくら補助になるかを見てみましょう。

図: 製造業のタイプ別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」

① 食品加工の小規模工場(従業員4人) 手作業だった重量選別と梱包に人手を取られている。自動計量・選別機と自動梱包機をあわせて導入する見積もりは1,000万円(従業員4人は「5人以下」区分)。 → 1,000万円 × 1/2 = 500万円の補助(上限500万円ぴったり)。 賃上げ要件を満たすと上限額が500万円から750万円に引き上がるため、投資額を1,500万円まで拡大しても750万円の補助を受けられます(新しい上限750万円ぴったり)。増えた500万円の投資枠で、金属検出機の追加導入まで対応できます。

② 金属部品加工業(従業員12人) 熟練者頼みだった外観検査と、部材の工程間搬送を自動化したい。協働ロボットによる検品支援とAGVをあわせて導入する見積もりは1,500万円(従業員12人は「6〜20人」区分)。 → 1,500万円 × 1/2 = 750万円の補助(上限750万円ぴったり)。 賃上げ要件を満たすと上限額が750万円から1,000万円に引き上がるため、投資額を2,000万円まで拡大しても1,000万円の補助を受けられます(新しい上限1,000万円ぴったり)。増えた500万円の投資枠で、検品用の測定機器まで追加導入できます。

③ 組立製造業(従業員45人) 部材の保管・出し入れと、完成品の工程間搬送を自動化したい。自動倉庫とAGVをあわせて導入する見積もりは2,000万円(従業員45人は「21人以上」区分)。 → 2,000万円 × 1/2 = 1,000万円の補助(上限1,000万円ぴったり)。 賃上げ要件を満たすと上限額が1,000万円から1,500万円に引き上がるため、投資額を3,000万円まで拡大しても1,500万円の補助を受けられます(新しい上限1,500万円ぴったり)。増えた1,000万円の投資枠で、入出庫管理システムとの連携まで実現できます。

このように、工場の規模や自動化したい工程が違っても「投資額の1/2を国が補助する」という考え方は共通です。まずは自社の従業員規模がどの区分に当てはまるかを確認してみましょう。

自社の投資がカタログ注文型・一般型のどちらに合うか、対象製品の選び方や事業計画の書き方に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの方法です。専門家に無料相談する

締切はいつ?通年・随時受付という強み

カタログ注文型は、2024年8月9日以降、回次制ではなく随時受付に移行しています。「◯月◯日までに申請しないと」という締切に追われることがなく(システムのメンテナンス期間を除く)、カタログから製品を選び、販売事業者と事業計画を固められたタイミングで申請できるのが実務上のメリットです。申請から交付決定までは概ね1〜2か月というスピード感も特徴です。

図: カタログ注文型は「随時受付」。締切を気にせず、準備が整ったタイミングで申請できる

事業実施期間は、交付決定日から原則12か月以内です。補助金は経費を立て替えて支払った後に実績報告を経て交付される仕組みのため、設備の発注前に資金繰りの見通しを立てておくと安心です。

承認までの重要なタイミングと必要書類

「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。

タイミングやること必要になるもの
導入を決めたらすぐGビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請に必須)マイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類
申請前製品カタログから対象製品を選び、その製品の「販売事業者一覧」から販売事業者を選定。販売事業者と共同で事業計画を策定する共同事業計画、製品・販売事業者の選定資料
準備が整い次第・随時販売事業者と共同で電子申請システムから応募・交付申請共同事業計画、見積書等
申請から概ね1〜2か月後交付決定
交付決定日〜事業実施期間終了(原則12か月以内)事業実施(設備の発注・導入・支払い)契約書・見積書・請求書・領収書などを保管
事業終了後実績報告 → 補助金の入金実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など)
事業終了後3年間(毎年度)効果報告稼働状況・生産性向上の達成状況に関する報告

図: いつ・何が必要になるか。製品選定と販売事業者との共同事業計画づくりが申請前の最初の山場

特に注意したいのが、交付決定より前に設備を発注・契約してしまうと補助対象外になること。販売事業者との共同事業計画の策定は、申請前に済ませておくべきステップです。

「うちの工場でも対象?」対象事業者の考え方

対象になるのは中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人等です。加えて「人手不足の状態にある中小企業等」という要件も明記されています。

製造業が中小企業者にあたるかどうかは、資本金または常時使用する従業員数のいずれかが基準以下であることで判断されます。

  • 製造業:資本金3億円以下、または常時使用する従業員数300人以下

例:フルタイム社員10人+パート5人の金属加工業(法人) → 製造業の基準は「資本金3億円以下または従業員300人以下」。従業員15人・資本金がこの基準以下であれば中小企業者として対象です。従業員規模の区分は「6〜20人」にあたるため、補助上限額は750万円(賃上げ達成時1,000万円)が当てはまります。

自社が対象に入るかの最終判断に迷う場合は、公式サイトで確認するか、認定経営革新等支援機関に相談すると確実です。

よくある質問

カタログに載っていない特注の検品ラインは対象になりますか?

カタログ注文型の対象は、事務局の製品カタログに登録済みの汎用製品です。自社専用に設計する特注の検品ラインは、別枠の「一般型」で検討する対象になります。

締切はいつですか?

カタログ注文型に締切という概念はなく、通年・随時受付です(システムのメンテナンス期間を除く)。製品選定と販売事業者との共同事業計画が整ったタイミングで申請できます。

補助上限は本当に1,500万円ですか?

1,500万円は、従業員21人以上・賃上げ要件を達成した場合の上限です。従業員規模や賃上げ達成の有無によって上限額は異なり、無条件で1,500万円がもらえるわけではありません。

対象になるのは中小企業だけですか?

製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下が中小企業者の基準です。加えて「人手不足の状態にある中小企業等」という要件も明記されています。該当するか判断に迷う場合は認定経営革新等支援機関にご確認ください。

※補助上限額・補助率・締切などの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

出典(一次情報): 中小企業省力化投資補助金 公式サイト(中小機構)カタログ注文型・制度概要カタログ注文型・スケジュールカタログ注文型・申請の流れカタログ注文型・2026年3月19日制度改定


採択される事業計画には“書き方の型”があります

同じ設備投資でも、事業計画の書き方ひとつで採択・不採択は変わります。審査で見られるポイントや、そのまま使える記入例は、一般には出回っていません。

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この補助金の概要(早見表)

検索項目内容
制度名中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
対象業種全業種(製造業を含む)
利用目的設備整備・IT導入をしたい
対象地域全国
従業員数中小企業・小規模事業者(製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下)
補助上限額最大1,500万円(従業員規模・賃上げで変動。内訳は本文表を参照)
補助率1/2以下(固定)
申請受付随時受付中(締切なし)
公式サイトカタログ注文型 公式サイト

※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。