省力化補助金の中心は、国の「中小企業省力化投資補助金」です。人手不足に悩む中小企業や個人事業主がロボットやIoT機器を入れる費用の一部を補助する制度で、カタログから製品を選ぶ「カタログ注文型」は最大1,500万円、現場に合わせて設備を組む「一般型」は最大1億円が上限です。補助率は原則2分の1で、一般型では小規模事業者などが3分の2になります。
この国の制度とは別に、都道府県と市区町村も省力化の補助を出しています。国の補助で残った自己負担を軽くする「上乗せ」の制度もあり、大分県・熊本県・高知県などが国の採択を受けた事業者向けに設けています。
この記事では、2つの型の違いと額の決まり方・賃上げの要件・公募回とスケジュール・採択率・製造業での使い方を先に整理しました。そのあとに代表的な補助金の金額と締切の暦、多くの制度に共通する注意点と都道府県ごとの一覧を載せています。自分の地域の制度は、一覧から各制度の記事へ進めます。
省力化補助金の概要
省力化補助金は、お金を出す側で国・都道府県・市区町村の3つに分かれます。いちばん額が大きいのは国の中小企業省力化投資補助金で、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が事務局を通じて実施しています。都道府県と市区町村の制度は、国の制度より上限が小さいかわりに汎用の機器やソフトにも使える制度や国の補助に上乗せする制度があります。
事務局の一般型の公募要領は制度の目的を、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術を使った設備を入れる費用の一部を補助し、付加価値額や生産性を上げて賃上げにつなげることとしています。設備を入れること自体が目的ではないため、どちらの型も「労働生産性を毎年何%上げるか」という計画と、型によっては賃上げの計画を出す仕組みになっています。
カタログ注文型と一般型の違いと選び方
国の制度には2つの型があり、申請の窓口も審査のしかたも違います。事務局のトップページは、カタログ注文型を「簡易で即効性がある省力化投資」、一般型を「オーダーメイド性のある多様な省力化投資」と説明しています。
| カタログ注文型 | 一般型 | |
|---|---|---|
| 対象 | 事務局のカタログに登録された汎用製品 | 現場や業務に合わせて設計した設備・システム(オーダーメイド設備) |
| 補助上限額 | 従業員数で500万〜1,000万円(賃上げで最大1,500万円) | 従業員数で750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例で最大1億円) |
| 補助率 | 1/2以下 | 中小企業1/2(特例で2/3)、小規模事業者・再生事業者2/3 |
| 受付 | 随時(受付は令和9年3月末頃まで) | 公募回ごとに締切がある |
| 申請 | 製品の販売事業者と共同で申請 | 事業者が自分で事業計画を作り申請 |
| 審査と交付決定 | 採択と同時に交付決定 | 採択のあと交付申請をして交付決定 |
| 労働生産性の目標 | 年平均3.0%以上 | 年平均4.0%以上 |
| 補助事業の期間 | 交付決定から原則12か月以内 | 第8回は交付決定から17か月以内 |
選び方は、入れたい機器がカタログに載っているかで決まります。載っていれば、カタログ注文型のほうが手続きが短く済みます。一般型の公募要領も申請の前にカタログ注文型の製品カタログを必ず確認するよう求めていて、カタログの製品は国が省力化効果を認めたもので申請が迅速かつ簡易だと書いています。
カタログに無い設備を自社の工程に合わせて組む場合や、複数の機器とシステムをつないで工程ごと自動化する場合は一般型を選びます。一般型はカタログ注文型より審査の項目が多く、省力化の効果や投資の回収期間を数字で示す事業計画が要ります。カタログに載っている製品をそのまま入れるだけの計画は一般型の対象になりません。周辺機器や機器の数、機能を現場に合わせて変える場合と、汎用の設備を組み合わせて高い効果を出す場合に限って一般型で申請できます。
2つの型の細かい要件は、カタログ注文型の記事と一般型の記事にまとめています。
補助上限額と補助率:いくらもらえるか
一般型の補助上限額は、常勤の従業員の数で5段階に分かれます。カッコ内は大幅賃上げ特例を使ったときの上限です。
| 従業員数 | 一般型の補助上限額 | 大幅賃上げ特例のとき |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
「最大1億円」は101人以上の事業者が大幅賃上げ特例を使ったときの額で、特例を使わなければ101人以上でも8,000万円が上限です。補助率は中小企業が2分の1、小規模事業者と再生事業者が3分の2です。中小企業でも、最低賃金に近い賃金で働く従業員が多い事業者は「最低賃金引き上げ特例」で3分の2に上がります。
一般型の小規模事業者は、常勤の従業員が製造業その他・宿泊業・娯楽業で20人以下、卸売業・小売業・サービス業で5人以下の会社と個人事業主です。採択のあとに従業員が増えてこの範囲を外れると、補助率は3分の2から2分の1に変わります。
一般型の額は「補助対象経費×補助率」と補助上限額のどちらか低いほうです。たとえば従業員15人の製造業の会社(小規模事業者)が税抜き2,400万円の設備を入れると、2,400万円×3分の2で1,600万円になり、上限の1,500万円で止まります。従業員30人の中小企業が同じ設備を入れると2,400万円×2分の1で1,200万円です。補助が出るのは消費税を除いた額で、消費税分は自己負担になります。
カタログ注文型の上限は3段階です。2026年3月19日の制度改定で、20人以下の上限が上がりました。
| 従業員数 | カタログ注文型の補助上限額 | 賃上げの目標を満たすとき |
|---|---|---|
| 5人以下 | 500万円 | 750万円 |
| 6〜20人 | 750万円 | 1,000万円 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
カタログ注文型の補助率は2分の1以下です。製品ごとに補助額の上限が登録されていて、製品の価格がその上限の2倍を超えると補助率は2分の1より下がります。補助額が25万円に届かない申請はできません。2回目以降の申請もでき、累計の上限は各申請の時点の補助上限額の2倍です。
中小機構の補助金活用ナビには、一般型の補助率を「1,500万円まで1/2、1,500万円を超える部分1/3」と書いた表があります。事務局が公開している第8回の公募要領にはこの段階の決まりは無く、補助率は中小企業2分の1(特例で3分の2)、小規模事業者3分の2とだけ書かれています。ほかのサイトで段階式の説明を見たときは、申請する回の公募要領で確かめてください。
対象になる事業者:中小企業・小規模事業者・個人事業主
対象は日本国内で事業を営む中小企業等で、個人事業主も含みます。一般型の公募要領は中小企業者・小規模企業者・小規模事業者のほか、特定事業者の一部・特定非営利活動法人・社会福祉法人・歯科医業を営む医療法人を挙げています。中小企業者の範囲は業種で決まり、製造業・建設業・運輸業なら資本金3億円以下か常勤従業員300人以下、小売業なら資本金5,000万円以下か50人以下です。
どちらの型にも共通する条件がいくつかあります。
- 応募の時点で従業員が0人の事業者は、一般型に申請できない(カタログ注文型は常勤従業員がいない場合に追加の審査がある)
- 大企業が株式の半分以上を持つ会社など「みなし大企業」は対象外
- 親会社と議決権の50%超を持つ子会社は同じ法人とみなされ、1社しか申請できない
- 一般型はこの事業に申請中の事業者と、交付決定を受けて補助金の支払いが済んでいない事業者は申請できない
- 一般型はものづくり補助金・事業再構築補助金・新事業進出補助金の交付決定を受けて支払いが済んでいない事業者と、過去3年にこれらの交付決定を合わせて2回以上受けた事業者は申請できない
カタログ注文型には、人手不足の状態にあることを示す要件があります。公募要領は次の4つから当てはまるものを1つ選ぶ形です。
- 直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている
- 整理解雇によらない退職で、従業員が前年度より5%以上減った
- 求人を出したが、人が埋まらなかった
- その他、省力化を進める必要に迫られている
4つ目を選ぶと審査が厳しくなり、結果の通知が大きく遅れることがあると書かれています。
どんな設備に使えるか:導入例と、対象にならない投資
カタログ注文型の対象商品は、製品カタログに業種ごとのカテゴリで並んでいます。中小機構は例として、店舗や施設の券売機・自動精算機・自動チェックイン機と、厨房のスチームコンベクションオーブン(スチコン)・自動フライヤーを挙げています。事務局のカタログの更新履歴を見ると、製造業向けのカテゴリも多く、プレスブレーキ用ロボットシステム・アーク溶接ロボット・AI外観検査用画像処理システム・パレタイズロボット・バラ積みピッキングロボットシステム・無人フォークリフト(AGF)などが追加されています。
建設業向けには墨出しロボット・ICT機能付ブルドーザ・鉄筋自動曲装置があり、測量ではGNSS測量機(RTK)や地上型3Dレーザースキャナー・写真測量用ドローンが載っています。物流ではデジタルピッキングシステム(DPS)や移動ラック、クリーニング店向けにはクリーニング受渡機があります。カテゴリは数週間おきに増えているので、目当ての機器が見当たらないときも時期を置いて検索し直す価値があります。
カテゴリの中には名前の似たものもあります。更新履歴にある「エアコンシステム内自動洗浄装置」はエアコンの洗浄の作業を自動にする機器で、業務用エアコン本体のカテゴリは、2026年10月1日分までの更新履歴では確認できませんでした。レジも、自動精算機や入出金機のカテゴリはありますが、通常のレジがどう扱われるかはカテゴリ一覧と製品の登録内容で確かめます。
一般型は事業者ごとの業務に合わせて専用に設計した機械装置やシステムが対象です。公募要領はICT・IoT・AI・ロボット・センサーなどを使い、外部のシステムインテグレータ(SIer)と組んで1つか複数の生産工程を自動にする設備と定めています。中小機構は例として、通信販売の事業者が自動梱包機と倉庫管理システムをオーダーメイドで開発する事業と、自動車部品の製造事業者がAIを使った自動外観検査装置を入れる事業を挙げています。
一般型の補助対象経費は、機械装置・システム構築費(必須)・運搬費・技術導入費・知的財産権等関連経費・外注費・専門家経費・クラウドサービス利用費です。単価50万円(税抜き)以上の機械装置等を1つ以上入れることが必須で、機械装置・システム構築費以外の経費は合計500万円(税抜き)までです。リースやレンタルの費用は交付決定のあとに契約し、補助事業の期間に入る分だけが対象になります。
対象にならない投資もはっきり決まっています。一般型の公募要領に書かれている主なものは次のとおりです。
- 汎用設備やパッケージソフトなど、オーダーメイド性の無い設備・システムを単体で入れる事業
- 事務用のパソコン・プリンタ・スマートフォン・タブレット端末・カメラ・キュービクル・乗用エレベータ・家具など、目的外に使えるものの購入費
- 土地・建物の取得費、ビニールハウスやコンテナなどの簡易建物、設置場所の整備工事や基礎工事
- 太陽光発電のソーラーパネルなど再生エネルギーの発電設備
- 自動車などの車両・船舶・航空機(「機械及び装置」に当たるものは除く)
- 中古品、既にあるシステムのバージョンアップや改修
- 交付決定の前に発生した経費
カタログ注文型ではすでに持っている製品を同じカテゴリの製品に置き換えるだけで省力化の効果が出ない事業は対象外です。置き換えが認められるのは、新しい製品が多言語対応やキャッシュレス決済など「置き換えが可能となる機能・性能」を1つ以上新しく持つ場合です。農業・林業・漁業などの1次産業の事業も、カタログ注文型の公募要領で対象外とされています。
要件:労働生産性と賃上げ、守れなかったときの返還
一般型では3〜5年の事業計画で次の基本要件をすべて満たす必要があります。
- 労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす
- 1人当たり給与支給総額を年平均3.5%以上伸ばす
- 事業場内最低賃金を、事業を行う都道府県の最低賃金より30円以上高くする
- 従業員21人以上の場合、次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表する
労働生産性は、営業利益と人件費と減価償却費を足した付加価値額を、従業員と役員の人数で割った値です。このほか省力化指数(業務の時間がどれだけ減るか)と投資回収期間を根拠とともに示し、付加価値額が増える計画を作ることも求められます。
要件を守れなかったときの返還も決まっています。1人当たり給与支給総額の目標が未達なら、達成率に応じて補助金を返します。伸び率が0かマイナスなら全額の返還です。事業場内最低賃金の要件が毎年3月末の時点で未達なら、補助金額を計画年数で割った額を返します。ただし付加価値額が増えておらず、会社全体で事業計画期間の過半数が営業赤字の場合や、天災など事業者の責任でない理由のときは返還を求めないとしています。
大幅賃上げ特例を使うと、上限額が従業員数に応じて250万〜2,000万円上がります。条件は1人当たり給与支給総額を年平均6.0%以上伸ばすことと、事業場内最低賃金を地域の最低賃金より50円以上高くすることです。どちらかが未達なら、上乗せした分を返します。最低賃金引き上げ特例は、2024年10月から2025年9月までのうち、地域の最低賃金以上で2025年度改定後の最低賃金未満の賃金で雇う従業員が全体の30%以上だった月が3か月以上ある事業者が対象です。
カタログ注文型の基本要件は、補助事業が終わってから3年間、労働生産性を年平均3.0%以上伸ばす計画です。上限を引き上げる賃上げの目標は、事業場内最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6%以上増やすことで、達成できなければ引き上げなかった場合の額まで減らされます。
賃上げの要件は、設備の値段より重く効くことがあります。編集部としては、上限額を見る前に、3〜5年の賃上げを自社の決算の数字で続けられるかを先に試算することを勧めます。
スケジュール:一般型は公募回、カタログ注文型は随時
一般型は公募回ごとに締切がある「公募回制」です。事務局のスケジュールページには、各回の日程が次のように載っています。
| 公募回 | 公募開始 | 申請受付開始 | 締切 | 採択発表 |
|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 2025年1月30日 | 2025年3月19日 | 2025年3月31日 | 2025年6月16日 |
| 第2回 | 2025年4月15日 | 2025年4月25日 | 2025年5月30日 | 2025年8月8日 |
| 第3回 | 2025年6月27日 | 2025年8月4日 | 2025年8月29日 | 2025年11月28日 |
| 第4回 | 2025年9月19日 | 2025年11月4日 | 2025年11月27日 | 2026年3月6日 |
| 第5回 | 2025年12月19日 | 2026年2月2日 | 2026年2月27日 | 2026年6月5日 |
| 第6回 | 2026年3月13日 | 2026年4月15日 | 2026年5月15日 | 2026年8月28日 |
| 第7回 | 2026年6月5日 | 2026年7月1日 | 2026年7月31日 | 2026年11月中旬(予定) |
| 第8回 | 2026年8月18日 | 2026年9月18日 | 2026年10月16日 | 2027年2月上旬(予定) |
| 第9回 | 2026年11月上旬(予定) | 2026年12月上旬(予定) | 2026年12月下旬(予定) | 後日お知らせ |
締切はどの回も17:00です。同じページには「公募回は年3~4回を予定しています。」と書かれています。上位のサイトには「年2〜3回」「年3〜4回」と食い違う説明がありますが、事務局の案内は年3〜4回です。公募開始から締切までは2か月ほどで、締切から採択発表までは約3か月かかっています。公募回ごとの予算額や採択件数の予定は、第8回の公募要領にも事務局のページにも書かれていません。採択数は各回の結果の発表で分かります。
カタログ注文型は締切の無い随時の受付で、公募要領は令和9年3月末頃まで申請を受け付けるとしています。予算の状況で日程が変わることもあるので、申請の前に事務局のトップページのお知らせを確かめます。
GビズIDプライムアカウントは、どちらの型でも申請に必須です。事務局は取得には一定の期間がかかるので早めに手続きするよう案内しています。一般型の従業員21人以上の事業者が出す一般事業主行動計画も、「両立支援のひろば」への掲載に2週間程度かかります。
申請方法と流れ
申請の流れは型で違います。一般型の事務局ページは、次の順番を示しています。
- GビズIDプライムアカウントを取る
- 事業計画書を作り、入れる機械装置やシステムを選ぶ
- 公募の期間内に応募申請を出す(採択まで3か月程度)
- 採択されたら、発注先を選んで見積もりを取る(50万円以上は原則2者以上の相見積もり)
- 交付申請を出し、交付決定を受ける(期限は原則として採択発表日から2か月後の日)
- 交付決定のあとに発注・納品・支払いをする
- 事業の完了から30日を経過した日か事業完了期限日の早いほうまでに実績報告を出す
- 補助額が確定したあと、支払いの請求をして補助金を受け取る
- 事業計画の1年目が終わったあとの最初の4月から5年間、毎年効果を報告する
カタログ注文型はカタログから製品と販売事業者を選び、販売事業者と共同で申請します。中小企業は販売事業者からの招待を受けて申請の画面に入る仕組みで、事務局のサイトに申請の入口はありません。採択と同時に交付決定が出て、原則12か月以内に導入と実績報告を済ませ、そのあと3年間の効果報告が続きます。
どちらの型も補助金は事業が終わって実績報告を出し、額が確定したあとに支払われる後払いです。設備の代金はいったん全額を払う前提で資金を用意します。各型の書類と手順の細かいところは、一般型の記事とカタログ注文型の記事で確かめてください。
申請に要る書類
書類は型で違い、法人か個人事業主かでも変わります。一般型の第8回の公募要領が応募のときに挙げている主な書類は次のとおりです。
- 全事業者:損益計算書と貸借対照表の直近2期分、事業計画書(その1・その2は参考様式、その3は指定様式)、50万円以上の機械装置やシステムの仕様と積算根拠が分かる書類(参考見積書・カタログ・仕様書など)
- 法人:履歴事項全部証明書(発行から3か月以内)、納税証明書(その2)直近3期分、法人事業概況説明書、役員名簿、株主・出資者名簿
- 個人事業主:確定申告書の控え(第一表)、納税証明書(その2)直近1年分、青色申告決算書か白色申告の収支内訳書
- 該当するとき:事業実施場所リスト、最低賃金引き上げ特例の要件確認書、他の助成制度の利用実績確認書、金融機関確認書(借入れで資金を用意する場合)、加点の根拠の書類
参考見積書を取るときも、発注や契約に当たる行為をすると事前着手になるので注意するよう公募要領は書いています。採択のあとの交付申請では、見積依頼書と見積書・賃金引き上げ計画の表明書・設備を置く場所の登記事項証明書か賃貸借契約書・研修動画の修了証を出します。採択された事業者は研修動画を見て確認テストを受ける決まりで、見ないと採択は無効になります。
カタログ注文型の書類は従業員名簿と損益計算書・貸借対照表(前期・前々期)で、法人なら履歴事項全部証明書と法人税の納税証明書(その2)直近3期分、個人事業主なら確定申告書の控えと所得税の納税証明書(その2)です。人手不足の要件を示す書類として、時間外労働時間の様式・従業員減少の確認用の様式・求人募集を出したことを示す書類のうち選んだ要件に合う1つを付けます。賃上げで上限を引き上げるなら最低賃金で働く人の賃金台帳、省力化の効果を示す省力化効果判定シートは販売事業者が添付します。
事務局のサイトには、カタログ注文型の提出書類をまとめたチェックシートと、一般型の事業計画書作成の参考ガイドが載っています。中小機構も概要をまとめたチラシ(リーフレット)を公開しているので、社内で検討するときの資料に使えます。
製品のメーカー・販売店として登録するには
カタログ注文型の製品は、メーカーが自由に載せられるわけではありません。公募要領によると、まず工業会などが製品カテゴリの登録を中小企業庁に申請し、そのカテゴリの省力化の基準が決まります。そのうえでメーカーが製品を申請し、工業会と事務局の審査を経て中小企業庁が認めた製品がカタログに載ります。
販売店も製品の説明や導入・運用の相談を受けられる事業者として事務局に登録申請をして審査を通る必要があります。メーカーが販売事業者を兼ねることもできます。登録された販売事業者は中小企業と共同で申請し、事業の実施に連帯して責任を負います。共同申請した事業者の多くで労働生産性の目標が大きく未達になると、販売事業者の登録が取り消されることもあります。
製品と販売事業者の登録の有効期間は、公募要領で令和9年9月末までとされています。カタログへの登録の相談は事務局のカタログ登録サポートセンターが受けています。中小のメーカーの製品を一般型の審査を通じてカタログに登録しやすくする「イノベーション製品応援プログラム」もあり、一般型でこのプログラムの製品を入れる事業者は審査で考慮され、相見積もりも不要になると事務局は案内しています。
採択率と審査で見られる点
一般型の採択の結果は、中小機構が公表しています。第5回は申請2,035者のうち1,251者、第6回は申請1,841者のうち1,176者が採択されました。計算すると第5回が約61%、第6回が約64%で、申請のおよそ3分の1以上は採択されていません。採択された事業者の名前・所在地(市区町村まで・個人事業主は都道府県まで)・事業計画名・支援機関名は事務局のホームページで公表されます。
第8回の公募要領は書面審査の観点を4つに分けています。
- 補助対象事業としての適格性(対象事業・対象者・要件を満たすか)
- 技術面(省力化指数・投資回収期間・付加価値額・オーダーメイド設備の4点)
- 計画面(実施体制と財務、成果とスケジュールの妥当さ、賃上げの目標と実現の見込み、会社全体への効果)
- 政策面(地域経済への貢献、事業承継、先端技術やロボットの活用、米国の追加関税の影響への対策など)
計画面では、設備の導入を待たずに行う「足下の賃上げ」も評価されます。応募の直近の決算期から基準年度までの1人当たり給与支給総額の伸びが物価の上昇を下回る計画は、審査で大幅に不利になると書かれています。ソフトウェアやシステム開発など書面で分かりにくい案件は、オンラインの口頭審査に呼ばれることがあり、事業計画書の作成を手伝った人やコンサルタントの同席は認められません。
加点の項目もあります。事業継続力強化計画の認定・成長加速マッチングサービスへの登録・えるぼし認定・くるみん認定・健康経営優良法人2026の認定・中小機構の「省力化ナビ」の活用・よろず支援拠点の中にある生産性向上支援センターの支援を受けた計画書などです。準備に時間のかからない項目から取りにいくと、計画書の中身に時間を回せます。
都道府県・市区町村の省力化補助と、国への上乗せ
自治体の省力化の補助には2つの形があります。1つは自治体が独自に出す補助で、国の制度より上限は小さいものの、カタログに無い汎用の機器や小さな投資にも使える制度があります。山口市の省人化・省力化機器の導入の補助や、江東区の省人化・省力化機器の導入の補助がその例です。もう1つは、国の省力化投資補助金の採択を受けた事業者の自己負担を軽くする上乗せの制度です。
中小機構の補助金活用ナビは、上乗せの例として3県の制度を紹介しています。
| 県 | 制度 | 上乗せの決まり方 |
|---|---|---|
| 大分県 | 大分県省力化・生産性向上支援補助金 | 国と県を合わせて補助対象経費の4分の3(県が4分の1)。一般型は国と県の合計で最大1億750万円 |
| 熊本県 | 熊本県中小・小規模事業者生産性・売上げ向上後押し事業補助金 | 自己負担額を最大10分の1まで軽減、1件最大200万円 |
| 高知県 | 高知県賃金向上環境整備事業費補助金 | 対象の従業員1人あたり10万円、1社1,000万円まで |
上乗せの制度は、国の補助金の額の確定や交付決定を受けていることが条件になるものが多く、県への事前の登録が要る制度もあります。大分県の制度は大分県の省力化・生産性向上補助金の記事で詳しく見られます。自治体の制度はこの記事の下の全国一覧に県ごとに並べています。
ほかの補助金との違い・併用
省力化の設備には、省力化投資補助金のほかにも使える国の制度があります。目的と対象が違うので、入れたいものから選びます。
| 制度 | 主な目的 | 向いている投資 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 中小企業省力化投資補助金 | 人手不足の解消と省力化 | ロボット・自動化設備・省力化機器 | 中小機構(事務局) |
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | 革新的な新製品・サービスや新しい市場への進出 | 新製品の開発や新事業のための設備(設備導入のみは不可の枠あり) | 中小機構 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 業務のデジタル化・AIの導入 | 業務ソフト・クラウドサービス | 中小機構 |
| 業務改善助成金 | 事業場内最低賃金の引き上げ | 生産性を上げる設備投資と賃上げを同時に行う場合 | 厚生労働省(都道府県労働局) |
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小機構の案内では革新的新製品・サービス枠が最大3,500万円、新事業進出枠が最大9,000万円です。既存の業務を省力化するだけなら省力化投資補助金、新しい製品やサービスのための投資なら新事業進出・ものづくり補助金という分け方になります。ソフトやクラウドだけを入れるならデジタル化・AI導入補助金の記事、賃上げと小さな設備投資を組み合わせるなら業務改善助成金の記事が参考になります。
併用には決まりがあります。一般型の公募要領は国(独立行政法人を含む)の補助金と補助対象経費が重なる事業を対象外にしています。同じ事業を複数の補助金に応募して両方に採択されたときは、1つを選んで交付申請します。カタログ注文型は経費が重ならなくてもIT導入補助金と同じ業務プロセスに製品を入れる事業を重複として扱います。経費を分けて別々の設備に申請することはできますが、過去と申請中の補助金はすべて申請の画面に書く決まりで、書かずにいると虚偽として不採択になります。宿泊業では観光庁の「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」(令和8年度)なども使われますが、この事業や令和7年度の人材不足対策事業で設備投資の交付決定を受けてから10か月を経過していない事業者は、どちらの型にも申請できません。自治体の補助との併用は、自治体の要綱に国費が入っているかで変わるので、両方の要綱で確かめます。
製造業での使い方
製造業は、どちらの型でも対象の業種に入っています。以前は「カタログに製造業向けの製品が少ない」と言われましたが、カタログの更新履歴を見るとマシニングセンタやNC旋盤への自動ワーク交換装置・プレスブレーキの金型自動交換装置・溶接の協働ロボットシステム・AI外観検査・パレタイズロボットなど工程ごとのカテゴリが増えています。
カタログ注文型を使えるかは、製品のカテゴリに紐づいた業種に自社の業種が入っているかで決まります。公募要領は導入する製品に紐づいた業種の少なくとも1つが申請者の業種と合うことを要件にしています。工作機械の単体の更新であっても、自動のワーク交換などの機能を持つ製品としてカタログに載っていれば対象になりえます。
カタログに無い工程の自動化は一般型で考えます。検品・梱包・搬送のように複数の機器をつなぐ自動化や、現場のレイアウトに合わせたロボットシステムは、SIerと組んで設計する一般型の典型です。一般型の公募要領は事業計画書に設備導入による業務プロセスや配置のビフォーアフターを書くよう求めているので、今の工程で誰が何時間かけているかを先に測っておくと省力化指数の根拠が作れます。
一般型の事業計画で数字を示す省力化指数と投資回収期間は、公募要領に計算式があります。省力化指数は「設備で減る業務の時間から、設備を入れたあとに新しく生じる業務の時間を引き、減る業務の時間で割った値」です。投資回収期間は「投資額÷(削減工数×年間稼働日数×人件費単価+増加した付加価値額)」で求めます。
仮の数字で計算してみます。目視の検品に1日8時間かけていた工程に、AIの外観検査装置を2,000万円で入れ、検品の時間が1日2時間に減ったとします。装置の段取りと確認に新しく1日1時間かかるなら、省力化指数は(8時間−1時間)÷8時間で0.875です。減った工数を1日5時間(8時間−2時間−1時間)・年間の稼働日を240日・人件費の単価を1時間2,500円とすると、人件費の削減は年300万円です。浮いた人手で検品以外の仕事を増やし、付加価値額が年200万円増えるなら、投資回収期間は2,000万円÷500万円で4年になります。
審査は省力化指数が高く、投資回収期間が短い計画を評価します。数字は公募要領の書き方に合わせ、作業時間の記録や人件費の台帳など根拠の資料と結びつけて書きます。浮いた時間を何に使って付加価値を増やすかまで書かないと、会社全体への効果を見る計画面の評価が伸びません。
製造業の一般型で見落としやすいのは、建物と土台の工事です。機械の設置と一体の軽い据付けは対象ですが、設置場所の整備工事や基礎工事は対象外です。重い機械を入れる工場では、基礎の工事費を補助の外で見込んでおきます。
今後の見通し
中小企業庁がまとめた令和9年度(2027年度)の概算要求のポイントには、「省力化・デジタル化・AI 投資補助金」が入っています。人手不足や生産性の課題を抱える中小企業・小規模事業者に向けて、AIを含むデジタル技術の活用と省力化設備の導入を一体的に支援する内容です。概算要求は予算の要望の段階なので、制度の名前や上限、要件は予算が決まってから示されます。
省力化投資補助金の要件が、この記事で書いたままずっと続くとは限りません。設備の入れ替えの時期が決まっているなら、新しい制度を待つよりも、公募中の回の公募要領で計画を立てるほうが確実です。
省力化補助金の代表的な補助金の金額
国の制度と、上限の大きい都道府県の制度を上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。
