先に結論を伝えます。「コンプレッサーの補助金」という名前の専用制度はありません。 使えるのは、省エネ設備の更新を対象にした国の制度と、既存事業の生産性向上を対象にした制度、そして一部自治体の設備更新補助金です。制度ごとに向き不向きがはっきり分かれるので、この記事で整理します。
私は経営していた会社で、古い設備の電気代に頭を悩ませたことがあります。「動いているから」で設備を使い続けると、電気代という見えにくいコストが毎月積み重なります。 コンプレッサーは工場・整備工場・クリーニング店など、稼働時間の長い現場で電力を食う設備の代表格です。更新のタイミングで補助金を調べておく価値は十分にあります。
コンプレッサーの補助金でまず知っておきたい前提
コンプレッサーの更新で使える制度は、性格の違う3つに分かれます。
- 省エネ・非化石転換補助金〈設備単位型〉(経済産業省・環境共創イニシアチブ):省エネ性能の高いコンプレッサーへの更新が対象。ただし予算規模が大きく、中小企業には少しハードルが高い面がある
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金):新製品・新事業に関連する設備投資の一環として、コンプレッサーが対象経費に含まれる場合がある
- 自治体独自の省エネ設備更新補助金:都道府県・市区町村が独自に、中小企業の省エネ設備更新を支援する制度
「更新したいだけ」なら省エネ補助金、「新しい製品・事業のために必要」ならものづくり補助金、という切り分けがまず必要です。
省エネ・非化石転換補助金〈設備単位型〉
この補助金は、工場・事業場で使う汎用的な設備(15区分)の省エネ性能を上げるための更新費用を補助する制度です。コンプレッサーは、エアコンプレッサで発生する「圧縮熱」を回収し、その排熱を活用できる熱回収機能を搭載したものが対象設備に含まれます(トップ性能枠・産業用モータ区分に該当)。
補助率は事業タイプによって異なります。
| 事業タイプ | 補助率 |
|---|---|
| 従来枠・メーカー強化枠 | 1/3以内 |
| トップ性能枠(既存設備の更新) | 1/2以内 |
| トップ性能枠(新設) | 1/5以内 |
補助上限額は従来枠が1事業全体で1億円、メーカー強化枠・トップ性能枠が3億円と、中小企業1社の設備更新としては大きすぎる規模感です。一方で下限額は30万円から申請できるため、単体のコンプレッサー更新でも申請自体は可能です。ただし審査・実績報告に必要な事務量は投資規模に関わらず一定程度かかるため、小規模な更新では労力に見合うかを事前に見極める必要があります。
熱回収機能を持たない一般的な省エネ型コンプレッサーへの単純な更新は、この制度の対象設備区分に該当しない場合があります。導入前に、メーカー・販売店に「この機種がSII指定設備リストに載っているか」を必ず確認してください。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金でのコンプレッサー
ものづくり補助金(2026年度から新事業進出補助金と統合され、この名称になりました)では、新しい製品・サービスの開発や新事業への進出に必要な設備投資が対象です。コンプレッサーそのものが主役になることは少ないですが、新しい生産ラインの一部として、圧縮空気を必要とする工程がある場合は対象経費に含められます。
補助上限額は枠・従業員規模の組み合わせで変わり、革新的新製品・サービス枠で最大2,500万円(賃上げ特例時3,500万円)、新事業進出枠で最大7,000万円(同9,000万円)です。補助率は1/2〜2/3。単体のコンプレッサー更新だけでは「新製品・新事業」の要件を満たしにくいため、生産ライン全体の刷新計画の一部として位置づける必要があります。 制度全体の内容はものづくり補助金の内容と申請のコツにまとめています。
自治体独自の省エネ設備更新補助金
都道府県・市区町村の中には、中小企業の省エネ設備更新を独自に支援している自治体があります。国の省エネ補助金より上限額は小さい代わりに、審査がシンプルで、下限額が低く設定されていることが多いのが特徴です。「〇〇市 省エネ設備 補助金」「〇〇県 中小企業 設備更新 補助金」で検索し、事業所のある自治体の制度を確認してください。
制度は年度ごとに変わる。申請前に必ず最新情報を確認する
補助金は年度ごと、公募回ごとに内容が見直されます。この記事に書かれている補助率・上限額・対象設備の要件も、公募回が変われば変わる可能性があります。 特に次のような変化が起きやすい点に注意してください。
- 補助率・上限額の見直し
- 対象設備区分(15区分)の追加・見直し
- 省エネ要件(省エネ率・省エネ量の基準)の変更
- 公募スケジュール自体の変更
「以前調べたときは対象設備に入っていなかった」という情報のまま止まっている場合、現在の制度で改めて確認する価値があります。 環境共創イニシアチブの公式サイトで、指定設備リストを定期的にチェックすることをおすすめします。
相談先に迷ったらどこに聞けばよいか
コンプレッサーの補助金は制度が複数にまたがるため、どこに相談すればよいか迷う事業者も多くいます。目的別に相談先を整理しておきます。
- 省エネ・非化石転換補助金の対象設備かどうか:機種の販売店・メーカーに、SII指定設備リストに載っているかを確認する
- ものづくり補助金として計画できるか:認定経営革新等支援機関(商工会議所・金融機関・税理士等)に事業計画の相談をする
- 自治体独自の省エネ補助金があるか:事業所を管轄する自治体の産業振興課・環境政策課に問い合わせる
- 資金繰り全般の相談:日本政策金融公庫や取引金融機関に、補助金と融資を組み合わせた資金計画を相談する
1か所だけに相談して終わらせず、複数の窓口を回ることで、より自社に合った制度が見つかることがあります。 特に商工会議所は、複数の補助金を横断的に比較してアドバイスしてくれることが多く、最初の相談先として有効です。準備には時間がかかるため、更新を検討し始めた段階で早めに動くことをおすすめします。
コンプレッサー更新のタイミングをどう見極めるか
補助金の有無にかかわらず、コンプレッサーの更新タイミングは経営判断として重要です。次のような兆候が出てきたら、更新を検討する時期といえます。
- 修理費用が年々増加している(部品の生産終了で調達費が高騰することがあります)
- 稼働音・振動が以前より大きくなっている
- 電気代が、生産量が変わらないのに上昇している
- メーカーの保守部品供給期限が近づいている
「まだ動いているから」で更新を先延ばしにすると、突然の故障で緊急対応が必要になり、補助金を使う余裕がなくなります。 兆候が出た段階で、補助金の公募スケジュールと照らし合わせながら計画的に更新時期を決めることをおすすめします。更新計画は半年〜1年程度の余裕を持って立てておくと、複数の補助金を比較検討する時間的な余裕も生まれます。
審査で評価されやすい書き方
コンプレッサー更新の事業計画では、「古くなったから」という理由だけでなく、次のような要素を数字で示すと審査での説明力が増します。
- 現状の電力消費量と、更新後の見込み削減量(メーカーのカタログ値・省エネ診断の結果などを根拠にする)
- 稼働時間・稼働率の実績(間欠稼働が多いほど、インバーター制御付き機種の効果を説明しやすくなります)
- エア漏れ点検の実施状況(配管全体の見直しまで含めた計画であることを示す)
- メンテナンスコストの変化(古い機種は部品調達が難しくなり、修理費がかさむ傾向があります)
「壊れそうだから交換する」ではなく「これだけの電気代・修理費が浮く」という説明に組み立て直すことで、審査担当者にとって判断しやすい事業計画になります。
コンプレッサーの補助金でよくある勘違い
コンプレッサーの補助金を調べる過程で、次のような勘違いが起きやすいので整理しておきます。
- 「省エネ補助金=どんな省エネ設備にも使える」という勘違い:実際には対象設備区分(15区分)に該当する機種でなければ使えません。コンプレッサーは熱回収機能付きの産業用モータ区分に限られます
- 「ものづくり補助金=どんな設備投資にも使える」という勘違い:新製品・新事業への進出という要件があり、単純な設備更新だけでは対象になりにくいです
- 「下限額30万円=小規模でも気軽に申請できる」という勘違い:下限額は満たしていても、審査・実績報告の事務量は投資規模に関わらず一定程度かかるため、労力に見合うかは別途検討が必要です
- 「省エネ効果があれば必ず採択される」という勘違い:予算に限りがあるため、省エネ率・省エネ量の水準が高い申請から優先的に採択される傾向があります。基準ぎりぎりの申請は不採択になる可能性も念頭に置いてください
コンプレッサーの種類で変わる補助金の狙い方
コンプレッサーは用途によって種類が分かれ、それぞれ補助金との相性が変わります。
| 種類 | 主な用途 | 補助金との相性 |
|---|---|---|
| レシプロ式(往復動式) | 小規模な工場・整備工場のエア工具用 | 熱回収機能付き機種でなければ省エネ補助金の対象になりにくい |
| スクリュー式 | 中〜大規模工場の連続稼働ライン用 | 熱回収機能付きの高効率機種が対象設備に含まれやすい |
| オイルフリー式 | 食品・医薬品工場など油分を嫌う現場用 | 省エネ性能の高い機種が多く対象になりやすい傾向 |
古いレシプロ式コンプレッサーを、熱回収機能付きのスクリュー式に更新するというのが、省エネ補助金の対象になりやすい典型的なパターンです。単純に同じ種類・同じ性能の機種に交換するだけでは、省エネ効果を示しにくく対象外になりやすい点に注意してください。
圧縮空気ライン全体で考える省エネ効果
コンプレッサー単体の性能だけでなく、圧縮空気を送る配管・エア漏れの有無まで含めて省エネ効果を計算すると、審査での説明力が増します。
- 配管の老朽化によるエア漏れは、コンプレッサーの稼働率を無駄に高める要因になります
- 圧力設定の見直し(必要以上に高い圧力で運転していないか)だけでも、電力消費を抑えられる場合があります
- インバーター制御付きの機種は、負荷変動に応じて出力を調整できるため、間欠稼働が多い現場ほど省エネ効果が出やすくなります
「コンプレッサー本体を替えるだけ」ではなく「圧縮空気システム全体を見直す」という視点を事業計画に盛り込むと、省エネ率の数字を説明しやすくなります。
複数台のコンプレッサーをまとめて更新する場合
工場によっては、用途の異なる複数台のコンプレッサーを稼働させています。まとめて更新する場合の考え方を整理します。
- 省エネ・非化石転換補助金は、1つの事業計画の中で複数台の更新をまとめて申請できます。ただし対象設備リストに載っている機種に限られます
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、生産ライン全体の刷新計画に複数台のコンプレッサーを含める形で申請します
- 段階的に更新する場合、1回目の申請で使い切った予算枠は、同一年度内に再度使えないことがあるため、更新順序を計画段階で決めておくとスムーズです
業種別のシミュレーション
自動車整備工場(従業員6名)
エア工具用の古いコンプレッサーを、熱回収機能付きの高効率機種に更新するケース。設備費300万円のうち、省エネ・非化石転換補助金〈設備単位型〉トップ性能枠(更新・補助率1/2)を使えば、150万円が補助されます。自己負担は150万円まで下がり、電気代の削減効果も見込めます。
食品工場(従業員25名・新製品ライン立ち上げ)
新しい包装ラインに合わせて圧縮空気の供給能力を増強するケース。ライン全体の設備投資4,000万円の一部にコンプレッサー増設費500万円を含め、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(革新的新製品・サービス枠・補助率1/2)で計画全体に対し2,000万円が補助されます(従業員規模21〜50人の基本上限に到達)。コンプレッサー単体でなく、ライン刷新全体として計画したことで補助対象に含められた例です。
クリーニング店(従業員3名)
プレス機用の古いコンプレッサーを更新するケース。設備費80万円で、自治体独自の省エネ設備更新補助金(補助率1/3・上限50万円)を使えば、約27万円が補助されます。国の省エネ補助金は下限額30万円を上回るため申請可能ですが、審査の手間を考えると自治体の制度のほうが取り組みやすい規模です。
印刷業(従業員10名・生産ライン増強)
インクジェット印刷ラインの圧縮空気供給を増強するため、インバーター制御付きのスクリュー式コンプレッサー(350万円)に更新するケース。省エネ・非化石転換補助金〈設備単位型〉トップ性能枠(更新・補助率1/2)を使えば、175万円が補助されます。エア漏れの改善もあわせて実施すれば、電力消費の削減効果はさらに大きくなります。
補助金がおりるまでの資金繰りも考えておく
省エネ・非化石転換補助金もものづくり補助金も、経費を立て替えて支払った後に交付される精算払いの仕組みです。コンプレッサーの導入から補助金が実際に振り込まれるまで、半年〜1年程度かかることも珍しくありません。 投資規模が数百万円〜数千万円になることもあるため、資金繰りへの影響は事前に見積もっておく必要があります。
- 日本政策金融公庫や取引金融機関の設備資金融資を、つなぎ融資として活用する事業者が多くいます
- リース契約は多くの制度で対象外になるため、購入前提で資金計画を立てる必要があります
- 大型の省エネ・非化石転換補助金は交付決定から実績報告までの期間が長くなる傾向があるため、資金繰り計画は長めに見積もっておくと安心です
「補助金が出るから」と全額を借入なしで賄おうとすると、入金までの期間に資金が足りなくなることがあります。 早い段階で金融機関に相談しておくことをおすすめします。
中古コンプレッサー・リースの扱い
補助金は原則として新品の購入を前提としています。中古品の購入は多くの制度で対象外です。リース契約についても、省エネ・非化石転換補助金は原則リース会社を通じた申請が必要になるなど制度ごとに扱いが異なるため、導入前に必ず事務局に確認してください。
申請の流れとタイミング
- 「更新したいだけ」か「新製品・新事業に関連するか」で使う制度を決める
- 導入予定の機種が、対象設備リストに載っているか確認する
- GビズIDプライムを取得する
- 電子申請システムから申請し、審査結果を待つ
- 採択・交付決定の通知を受け取ってから、コンプレッサーを発注する
- 導入後、実績報告を提出する
- 実績報告の確認後、補助金が振り込まれる
交付決定前に発注・契約すると、その費用は補助対象外になります。 コンプレッサーの故障による緊急更新でも、この順序は変わりません。緊急時は補助金を使わずに更新し、次の設備投資で補助金を検討するという判断も選択肢に入れておいてください。
よくある質問
コンプレッサー単体でも省エネ補助金は申請できますか?
申請できます。省エネ・非化石転換補助金〈設備単位型〉は下限額30万円から申請可能で、コンプレッサー単体の更新でも対象になります。ただし対象設備リストに載っている機種(熱回収機能付き等)であることが条件です。
一般的な省エネ型コンプレッサー(熱回収機能なし)は対象になりませんか?
省エネ・非化石転換補助金の設備単位型では、指定された性能要件を満たす機種のみが対象です。熱回収機能を持たない一般的な省エネ型は、この制度の対象設備区分に該当しない場合があります。自治体独自の省エネ補助金であれば対象になる場合もあるため、あわせて確認してください。
個人事業主でもコンプレッサーの補助金は使えますか?
制度によります。省エネ・非化石転換補助金は法人・個人事業主のどちらも対象に含めていますが、投資規模が大きい制度のため、個人事業主の小規模な更新には自治体独自の補助金のほうが向いている場合があります。
複数のコンプレッサーメーカーから見積もりを取るべきですか?
おすすめします。メーカーによって熱回収機能の仕様や省エネ効果の試算値が異なるため、複数社から見積もりを取ることで、対象設備リストへの適合状況や補助額の試算を比較検討できます。 価格の妥当性を審査で説明する材料にもなるため、可能であれば2〜3社から見積もりを取り、性能・価格・納期を比較したうえで機種を決定することをおすすめします。
コンプレッサーが故障して急いで交換したい場合はどうすればよいですか?
補助金は交付決定前の発注・契約が対象外になるため、緊急交換には間に合いません。業務に支障が出る場合は補助金を使わずに更新し、次回の設備投資のタイミングで改めて補助金の活用を検討することをおすすめします。
コンプレッサーの設置場所の防音対策も補助金の対象になりますか?
制度によります。防音壁・防音室の設置費用が、コンプレッサー本体の設置に付随する工事として対象経費に含められる場合があります。導入前に、防音対策を含めた見積もりで申請できるか事務局に確認してください。近隣への騒音配慮は、住宅地に近い工場・整備工場ほど重要な検討事項になります。
自治体の省エネ設備更新補助金は、国の省エネ補助金と併用できますか?
原則として、同じ経費に対して複数の補助金を重複して受けることはできません。ただし複数台のコンプレッサーを更新する場合、1台目は国の制度、2台目は自治体の制度、というように対象設備を分ければ、それぞれ別の申請として扱える場合があります。事前に両方の事務局に確認してください。制度の重複についての判断は年度によって変わることもあるため、申請前の確認を怠らないようにしましょう。
コンプレッサーの排熱を利用する設備も一緒に導入すると補助額は変わりますか?
変わる場合があります。圧縮熱を回収して給湯や暖房に活用する設備まで含めて導入すると、省エネ効果がより大きく評価され、トップ性能枠の対象として認められやすくなることがあります。導入前に、排熱利用設備込みの計画で申請できるか事務局に確認してください。
