新しい機械を入れたい。小ロットにも対応できる生産ラインにしたい。でも見積もりを見て、手が止まる。よくある話です。セントラルキッチンを立ち上げたい飲食チェーンも、受発注をシステム化したい店舗も、悩みの中身は同じ。投資額の大きさです。
この投資、半分から3分の2を国が負担してくれる制度があります。これまで「ものづくり補助金」と呼ばれてきた制度です。2026年度は「中小企業新事業進出補助金」と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という名称になりました。枠は3つ。補助上限は枠・従業員規模・賃上げ特例の組み合わせで、最大9,000万円まで広がります。補助率は1/2〜2/3。
申請受付は2026年9月30日開始、締切は10月30日18:00です。何に使えて、いくらもらえて、自分の会社が対象になるのか。順番に見ていきましょう。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募・旧「ものづくり補助金」+「新事業進出補助金」統合) |
| 対象業種 | 全業種 |
| 利用目的 | 新たな事業を行いたい/設備整備・IT導入をしたい/販路拡大・海外展開をしたい(グローバル枠) |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業者(業種により資本金額・従業員数で判定。目安300人以下) |
| 補助上限額 | 最大9,000万円(枠・従業員規模・賃上げ特例で変動。内訳は本文表を参照) |
| 補助率 | 1/2〜2/3(枠・要件で変動) |
| 申請受付 | 2026年9月30日(水)〜10月30日(金)18:00 |
| 公式サイト | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト |
図: ものづくり補助金の全体像(名称統合後)。詳しくは本文で解説します
ものづくり補助金は何に使える?【3つの申請枠に統合されました】
「ものづくり補助金」は、新しい制度の中の1つの枠として引き継がれました。旧名称で検索して出てくる上限額や締切は、そのまま使えません。まずは3つの枠で何ができるかを押さえましょう。
革新的新製品・サービス枠(旧「ものづくり補助金」に近い枠)
新しい製品・サービスの開発につながる設備投資やシステム構築が対象です。機械装置・システム構築費は必須経費で、そのほか運搬費・技術導入費・専門家経費・クラウドサービス利用費なども対象になります。
新事業進出枠(旧「新事業進出補助金」に近い枠)
今の事業とは異なる新しい市場・高付加価値な事業への進出が対象です。機械装置費または建物費のいずれかが必須経費で、店舗や工場の新設・改修を伴う投資にも使えます。
グローバル枠(新設)
海外市場開拓(輸出)に向けて、国内の輸出体制を強化するための投資が対象です。海外旅費・通訳翻訳費まで対象経費に含まれるのが特徴です。
図: 3つの枠でそれぞれ対象になりやすい使い道の例
対象にならないものの例
- 仕入れ代・家賃・人件費など、日々の営業を回すための「単なる運転資金」
- パソコン・タブレットなど、業務以外にも使える汎用品の購入費
- 交付決定より前に発注・契約してしまった費用(フライング発注)
- 新製品開発や新事業進出、生産性向上と関係のない支出
じつは、古くなった設備の入れ替えが対象になるかどうかは、はっきり白黒つくものばかりではありません。同じ「新しい機械の導入」でも、それが新製品・新サービスの開発や新事業への進出にどうつながるのかを事業計画のなかで具体的に示せるかどうかで、対象と認められるかどうかが変わります(あくまで、実際に技術的な革新性や新事業への進出につながる投資であることが前提です)。
いくらもらえる?枠・従業員規模別の上限額
「上限4,000万円」という単純な数字では実態を捉えきれません。上限額は枠と従業員規模の組み合わせで決まるので、まずは内訳を正確に押さえておきましょう。
| 枠 | 従業員規模 | 基本の補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 1〜5人 | 750万円 | 850万円 |
| 革新的新製品・サービス枠 | 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 革新的新製品・サービス枠 | 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 革新的新製品・サービス枠 | 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
| 新事業進出枠/グローバル枠 | 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 新事業進出枠/グローバル枠 | 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 新事業進出枠/グローバル枠 | 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 新事業進出枠/グローバル枠 | 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助率はいくら?
- 革新的新製品・サービス枠:中小企業者1/2(一定条件を満たすと2/3)、小規模事業者・再生事業者は2/3(常時使用する従業員が20人以下、商業・サービス業は5人以下)
- 新事業進出枠:1/2(一定条件を満たすと2/3)
- グローバル枠:2/3
業種別・シミュレーション
同じ「上限」でも、業種とやりたいことで使い方はまったく変わります。3つの業種を例に、いくら投資すると補助がいくらになるかを見てみましょう(以下は基本の補助率1/2で計算した例です。条件を満たせば2/3に引き上がる場合もあります)。
図: 業種別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」。枠が上がるほど一度にできることが広がります
① 金属加工業(従業員21〜50人・革新的新製品・サービス枠、基本上限1,500万円) 今のプレス機では対応できない小ロット多品種の新製品ラインを立ち上げたく、新型のレーザー加工機を導入したい。見積もりは3,000万円。 → 3,000万円 × 1/2 = 1,500万円の補助(基本上限に到達)。自己負担1,500万円で、新製品ラインの立ち上げに着手できます。 賃上げ特例を使うと上限は2,500万円に広がります。同じ計画に検査工程の自動計測装置(追加見積もり2,000万円)まで組み合わせても、合計5,000万円 × 1/2 = 2,500万円(新しい上限に到達)で、レーザー加工機の導入と検査工程の自動化を同時に実現できます。
② 飲食チェーン運営会社(従業員21〜50人・新事業進出枠、基本上限4,000万円) 店舗ごとにバラバラだった仕込みを一括で行うセントラルキッチンを新設し、惣菜製造・卸売という新しい事業に進出したい。建物の改修と厨房設備一式の見積もりは8,000万円。 → 8,000万円 × 1/2 = 4,000万円の補助(基本上限に到達)。自己負担4,000万円で、新業態への進出に踏み出せます。 賃上げ特例を使うと上限は5,000万円に広がります。卸売先への配送用の保冷車両(追加見積もり2,000万円)まで導入計画に含めても、合計1億円 × 1/2 = 5,000万円(新しい上限に到達)で、セントラルキッチンと配送体制を同時に整えられます。
③ 美容室3店舗運営(従業員6〜20人・革新的新製品・サービス枠、基本上限1,000万円) 店舗ごとに電話とLINEでバラバラに受けていた予約・カルテ管理を、3店舗で共有できる独自の予約・受発注システムに一本化したい。開発・クラウド構築費の見積もりは2,000万円。 → 2,000万円 × 1/2 = 1,000万円の補助(基本上限に到達)。自己負担1,000万円で、3店舗共通の予約・受発注システムを構築できます。
まずは自分の会社がどの枠に近いか、従業員規模がどの帯に入るかを確認してみましょう。
改装や省力化など、やりたいことによっては別の補助金のほうが自社に合っているケースもあります。この補助金だけで判断がつかないと感じたら、他に使える補助金がないか探してみるのも有益です。
締切はいつ?「9月30日」は受付開始日です
第1回公募の申請受付は2026年9月30日(水)に始まります。申請締切は2026年10月30日(金)18:00です。当初は「8月31日開始・9月30日締切」でしたが、2026年7月17日に1か月後ろ倒しされました。古い記事の「9月30日締切」は誤りです。
図: 申請から着金までのスケジュール。9/30と10/30の違いもあわせて確認できます
採択発表は2027年1月頃の予定です(こちらも当初の2026年12月予定から後ろ倒しになっています)。補助事業の実施期間は交付決定日から、革新的新製品・サービス枠は10か月以内、新事業進出枠・グローバル枠は14か月以内が目安です。補助金は経費を立て替えて支払った後に交付される「精算払い」のため、着金は実績報告のあとになります。着金までの資金繰りに不安がある場合は、早い段階で金融機関に相談しておくと安心です。
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。着金までの主なタイミングと、その時点で必要になるものは次のとおりです。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 投資を決めたらすぐ | GビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請にはこのIDが必須) | マイナンバーカード(あれば即日)または印鑑証明書等(郵送申請は審査に最大1か月ほど) |
| 〜2026年10月30日(金)18:00 | 電子申請システム(jGrants)で申請 | 事業計画書、決算書、その他申請枠に応じた添付書類 |
| 2027年1月頃 | 採択発表 → 交付決定 | ― |
| 交付決定日〜(枠により10か月/14か月以内) | 事業実施(設備の発注・契約・支払い) | 契約書・見積書・請求書・領収書などを保管 |
| 事業終了後 | 実績報告 → 補助金の入金 | 実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など) |
図: いつ・何が必要になるか。電子申請のみの受付のため、GビズIDプライムの取得が最初の一歩です
特に注意したいのが、GビズIDプライムアカウントがなければ申請できないこと。受付は電子申請のみです。マイナンバーカードがあれば最短即日。郵送だと審査に最大1か月かかります。投資を決めた時点で取得しておきましょう。なお、認定経営革新等支援機関の確認は推奨であって、必須ではありません(国が認定した中小企業の支援機関で、商工会議所・金融機関・税理士などが登録しています)。
「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方
対象になるのは、日本国内に本社・事業実施場所を持つ中小企業等です。次にあてはまる場合は対象外になります。
- 従業員が0名の事業者
- 資本金額や株主構成から「みなし大企業」と判定される事業者(大企業が株式の一定割合を保有するなどで対象外になる会社)
- 創業1年未満の事業者(新事業進出枠のみ対象外)
注意したいのは、表の「従業員規模」が上限額を決める区分であって、対象になるかどうかの基準ではない点です。対象かどうかは、業種ごとの資本金額または従業員数で決まります(例:製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下)。
補助上限額を左右する「従業員規模」も、単純な在籍人数ではなく「常時使用する従業員」の数で数えます。次の人は人数に含みません。
- 日々雇い入れられる人(日雇い)
- 2か月以内の期間を定めて雇われている人
- 季節的業務で4か月以内の期間を定めて雇われている人
- 試用期間中の人
- 代表者・役員
例:フルタイム社員15人+パート5人の食品加工業(法人) → 代表者を除くフルタイム社員15人と、日雇い・季節雇用ではなく継続的に雇っているパート5人を合わせて、従業員規模の目安は20人程度。革新的新製品・サービス枠なら「6〜20人」の帯(基本上限1,000万円)にあたる見込みです。中小企業者としての要件(資本金額または従業員数の上限)も満たしていれば対象になります。
従業員数の正確な数え方や、自社が「中小企業者」にあたるかの最終判断に迷う場合は、公募要領で確認するか、認定経営革新等支援機関に相談すると確実です。
なお、事業計画では3〜5年の目標へのコミットも求められます。付加価値額は年平均4.0%以上、一人当たり給与支給総額は年平均3.5%以上の伸びです。月給30万円の社員なら、毎年1万500円ずつ上げていく計算になります。最終年度に給与の目標が未達だと、未達成率に応じて補助金の一部返還を求められることがあります。
よくある質問
締切は2026年9月30日ですか?
いいえ。2026年9月30日は申請受付の開始日です。第1回公募の申請締切は2026年10月30日(金)18:00です。
「ものづくり補助金」はもうなくなったのですか?
なくなったわけではありません。「中小企業新事業進出補助金」と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という名称になりました。これまでの「ものづくり補助金」は、新制度の「革新的新製品・サービス枠」にほぼ相当します。
補助上限は本当に9,000万円ですか?
9,000万円は、新事業進出枠・グローバル枠で従業員101人以上かつ賃上げ特例を適用した場合の最大額です。枠や従業員規模によって上限額は異なり、無条件で9,000万円がもらえるわけではありません。
認定経営革新等支援機関に依頼しないと申請できませんか?
依頼しなくても申請は可能です。認定経営革新等支援機関による事業計画の確認は、内容をブラッシュアップする手段として推奨されていますが、必須要件ではありません。
