この補助金で最初に締切が来るのは、申請書ではありません。補助金の公募の締切より1か月前までに、伝産法にもとづく計画の申請(または認定)を済ませておく必要があるからです。順番を間違えると、事業計画書を書き上げても出せません。
経済産業省の伝統的工芸品産業支援補助金は、経済産業大臣が指定した伝統的工芸品の組合・団体・事業者などが、後継者の育成、原材料の確保、展示会での販路開拓などに使う費用の1/2〜2/3(原則上限2,000万円)を国が補助する制度です。令和8年度分の公募は、2026年1月7日から1月29日で終わっています。次回の公募に応募したい場合は、公募が始まる前に計画の申請を済ませておく必要があります。
伝統的工芸品産業支援補助金の要点まとめ
正式名:伝統的工芸品産業支援補助金(災害復興事業を除く)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・組合・団体)
- 対象業種
- 経済産業大臣が指定した伝統的工芸品の製造・販売・支援に関わる組合・団体・事業者
- 利用目的
- 後継者育成、技術の記録保存、原材料確保、需要開拓、意匠開発
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(組合・団体単位の申請が中心)
いくら
- 補助上限額
- 原則2,000万円(下限は原則50万円)
- 補助率
- 事業により1/2以内または2/3以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年1月7日〜2026年1月29日(令和8年度分・受付終了)
- 事業の完了
- 交付決定日から令和9年3月31日まで(令和8年度分)
自分の団体は対象になる?
伝産法とは、経済産業大臣が伝統的工芸品を指定し、産地の組合や事業者が立てる振興計画などを認定する法律です。補助を受けるには、この法律にもとづく計画の認定が土台になります。次の4つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
次のどちらかに当たると対象外です。
- ✕ 指定されていない工芸品の事業
- ✕ 締切の1か月前までに計画を出していない
認定を受けていない場合は、公募締切日の1か月前までに計画の申請を出していれば応募できます。令和7年度に新しく指定された事業者だけは、受付期間内の申請で構いません。
計画の種類で、補助を受けられる人が変わります。
| 計画 | 補助を受けられる人 |
|---|---|
| 振興計画(伝産法第4条) | 特定製造協同組合等 |
| 共同振興計画(第7条) | 特定製造協同組合等、販売事業者・販売協同組合等 |
| 活性化計画(第9条) | 製造事業者またはそのグループ、製造協同組合等 |
| 連携活性化計画(第11条) | 他産地や他業種と共同する製造事業者、製造協同組合等 |
| 支援計画(第13条) | 産地の支援事業をする事業者・団体(学校法人、NPO法人、デザイナーなど) |
特定製造協同組合等とは、指定された産地で、製造事業者の1/2を超える人が直接または間接に構成員になっている組合のことです。個人の職人が単独で出す場合は、活性化計画の「製造事業者」として出せるかを、経済産業局に先に相談する手があります。
いくら戻ってくる?
補助率は事業ごとに決まっています。
| 事業 | 補助率 |
|---|---|
| 若年層等後継者創出育成事業 | 2/3以内 |
| 後継者・従事者育成事業 | 1/2以内(従事者60名以下または企業20社以下の産地は2/3以内) |
| 技術・技法の記録収集・保存、原材料等確保対策、需要開拓、意匠開発 | 2/3以内 |
| 活性化事業、連携活性化事業 | 2/3以内 |
| 人材育成・交流支援、産地プロデューサー | 1/2以内 |
交付額の上限は原則2,000万円、下限は原則50万円です。補助率2/3なら、補助対象経費が75万円以上なければ下限に届きません。申請額が50万円以下でも、十分な理由があれば検討されるので、経済産業局に先に相談します。
- 産地の展示会出展と会場設営に900万円:900万円 × 2/3 = 600万円
- 従事者70名の産地で、研修に600万円:600万円 × 1/2 = 300万円
- 従事者60名以下の産地で、同じ研修に600万円:600万円 × 2/3 = 400万円
- 複数産地の連携事業に4,500万円:4,500万円 × 2/3 = 3,000万円 → 上限の2,000万円
補助対象経費が3,000万円を超えても、国の補助は2,000万円までです。支払いは原則、事業が終わったあとの精算払いなので、事業中の資金は自分で立て替えます。
何に使える?
対象にならないもの
- 交付決定日より前に発注・契約した経費
- 不動産の購入、生産のための設備、パソコン・サーバの購入費
- 事務所の家賃、保証金、敷金、仲介手数料
- 振込手数料、消費税・地方消費税
- グリーン車・ビジネスクラスの料金、海外渡航保険料
- 外国からバイヤーなどを招く旅費
- 伝統的工芸品産業振興協会が主催する展示の参加費、「伝統工芸 青山スクエア」を使う展示事業
- 同じ事業で国の他の制度を使っている部分
対象になるもの
- 研修の講師謝金・旅費、教材費、研修室の借り賃
- 記録の映像・文書の作成費、専門家謝金
- 原材料の調査費、報告書作成費
- 展示会の出展旅費・会場費・設営費・運送費・通訳翻訳費
- 新商品開発のデザイン費・試作費、求評会の開催費
- ポスター・パンフレット・ウェブサイトなどの広報費
展示会は工芸の展示会に限らず、食の展示会など、伝統的工芸品の需要開拓に役立つものも出展できます。ECサイトなどウェブ上の事業も対象です。
消費税は対象外ですが、非課税・免税事業者などは対象にできる場合があります。該当するかは、経済産業局の担当窓口に聞いてください。
申請の流れ
- 計画を申請する(組合・事業者→自治体。公募締切の1か月前まで)
- GビズIDを取る(事業者。国の電子申請に共通のIDで、発行に2〜3週間かかる)
- 事業計画書を出す(事業者→経済産業局。Jグランツ・メール・郵送のいずれか。公募締切日の17時必着)
- 審査と採択の通知を待つ(経済産業局・本省→事業者。外部有識者を含む委員会が審査する)
- 交付申請をして、交付決定を受ける(事業者→経済産業局。決定の前に発注しない)
- 事業をして、実績を報告する(事業者。交付決定日から年度末の令和9年3月31日まで)
- 金額が確定したら請求する(事業者→経済産業局。支払いは精算払い)
実績報告は、事業の完了日から30日以内か、翌年度4月10日のいずれか早い日までに出します。
必要な書類
準備できた 0 / 8
組合は定款か登記事項証明書と構成員名簿、企業は会社概要・役員名簿・従業員数と資本金のわかる資料を出します。事業報告書・決算書は、なければ直近1年間の事業内容の概要で代えられます。旅費・謝金の規程は、あれば添付します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 計画との整合性と実施体制が足りない:この2つを満たさない事業は、ほかの項目の評価にかかわらず採択されません。
- 交付決定の前に発注した:請求書の発行日や支払日が交付決定日より前だと、対象外です。出展申込を決定前に済ませても、支払義務がまだ生じていなければ対象にできます。
- 現金で払った:支払いは原則、銀行口座への振込です。やむを得ない場合は、事前に経済産業局へ相談し、理由書を出します。
- 事業で利益が出すぎた:補助事業で生じた利益が自己負担額を上回ると、上回った額が確定額から引かれます。
- 希望額から減額された:事業内容や全体の予算の都合で、希望した金額が減ることがあります。
活性化計画などの加点・併用・事業後の報告
活性化計画・連携活性化計画・支援計画で応募する場合は、①②の基準を満たしたうえで、加点の対象になる取組があります。中小企業の賃上げ表明(給与総額を1.5%以上増やす旨を従業員に表明し、誓約書を出す)、パートナーシップ構築宣言、えるぼし・くるみん・ユースエールなどの認定がそれです。賃上げを表明して、正当な理由なく誓約した水準に届かなかった場合は、企業名が公表されます。
単価50万円以上で取得した財産は、一定の期間、処分に制限がかかります。期間内に処分するときは、事前に経済産業局長の承認が要ります。事業が終わった年度と翌年度以降の5年間は、毎年度終了後30日以内に、成果(KPIの達成状況)を報告します。帳簿などの証拠書類は、事業の終了後5年間保存します。
被災地向けの災害復興事業は別枠で、この記事の対象に含みません。採択された事業は、事業者名などが公表されます。
よくある質問
次の公募はいつ始まりますか?
例年1月ごろに募集が始まります。令和8年度分は2026年1月7日から1月29日でした。ただし日程は年度ごとに変わるため、確定した時期は経済産業省の公募情報で確かめてください。計画の認定は、補助金の応募締切の1か月前までに済ませておく必要があります。計画の申請は自治体を通すので、公募が出てから動くと間に合いません。年末までに計画の準備を進めておく発想が、現実的です。
自分の工芸品が対象かどうかはどう確認しますか?
経済産業大臣が伝産法にもとづいて指定した伝統的工芸品かどうかで決まります。指定の有無と計画認定の手続きは、各経済産業局の伝統的工芸品担当部局か、経済産業省の伝統的工芸品産業室に問い合わせると確かめられます。指定されていない工芸品の事業は対象外なので、書類を作り始める前に、最初に確認しておくと手戻りがありません。
個人の職人でも申請できますか?
補助対象者は事業によって違います。振興計画や共同振興計画は特定製造協同組合等が中心で、活性化計画は「製造事業者またはそのグループ」が対象です。Jグランツの説明にも個人事業主の記載があり、申請自体は想定されています。ただし、計画の認定が前提です。個人で出せるかは経済産業局の担当窓口に相談してください。
展示会は工芸の展示会でなければいけませんか?
いいえ。工芸に関する展示会に限らず、食に関する展示会なども出展できます。伝統的工芸品の需要開拓に役立つものであることが条件です。国内外の大消費地での出展も対象です。ただし、伝統的工芸品産業振興協会が主催する展示の参加費と、「伝統工芸 青山スクエア」を使った展示事業は対象外です。
設備や機械の購入に使えますか?
使えません。不動産の購入や生産のための設備購入費、パソコンやサーバの購入費は対象外です。事務所の家賃や保証金、敷金も対象になりません。対象になるのは、研修、記録の作成、原材料の調査、展示会、意匠開発といった事業にかかる費用です。生産設備の入れ替えを考えている場合は、別の制度を探す必要があります。
補助金はいつ振り込まれますか?
原則として、事業が終わったあとの精算払いです。実績報告書を出し、補助金の額が確定してから請求します。報告書は、事業の完了日から30日以内か翌年度の4月10日のいずれか早い日までに出します。事業の途中で受け取るものではないため、研修の講師謝金や展示会の出展料などは、いったん自団体で立て替える必要があります。
採択されたら申請した金額が全額出ますか?
出るとは限りません。採択にあたって、事業内容や全体の予算の都合から、希望した金額が減額される場合があります。一方で、交付決定後に物価上昇などが客観的に証明できれば、計画変更の手続きで増額が認められる場合もあります。申請するときは、実施の見込みが確実な内容と経費を、最低賃金の改定による上昇分も含めて積算します。
補助事業期間はいつからいつまでですか?
交付決定日から、その年度の末までです。令和8年度分は令和9年3月31日までです。交付決定より前に行った事業は対象になりません。交付決定の通知が来るまで、発注や契約は控えます。事業の完了が年度末に近づくほど、報告書の作成や支払いの準備の時間が短くなるため、スケジュールは余裕をもって組むのが現実的です。
災害復興事業とは別の補助金ですか?
別枠です。この記事で扱うのは、災害復興事業を除いた通常の公募です。被災地向けの災害復興事業は、別に案内されています。同じ名前の補助金なので、公募の案内ページで「災害復興事業を除く」の表記を見て、どちらに応募するのかを確かめます。両方の公募情報は、経済産業省のサイトに掲載されます。
申請はどの方法で出しますか?
Jグランツ(補助金の電子申請システム)、電子メール、郵送のいずれかです。Jグランツを使うにはGビズIDが要り、発行に2〜3週間かかります。登記された法人や個人事業主以外の組合や実行委員会は、GビズIDが取れないため、代表の法人を決めて、その法人番号で申請します。メールは公募締切日の17時までに届いたもの、郵送は17時必着です。
事業が終わったあとにも義務はありますか?
あります。事業の完了した年度と翌年度以降の5年間、毎年度終了後30日以内に、成果(KPIの達成状況)を報告します。帳簿と証拠書類は、事業の終了後5年間保存します。単価50万円以上で取得した財産は、一定期間、処分に制限があります。会計検査院の実地検査が入ることもあるので、経費の領収書や振込の記録は整理して残します。
問い合わせ先はどこですか?
経済産業省の商務・サービスグループ文化創造産業課 伝統的工芸品産業室(電話 03-3501-1511、内線3651〜3652)です。申請書の提出先は、各経済産業局です。たとえば中部経済産業局は052-951-0597、近畿経済産業局は06-6966-6022です。所轄の都道府県は公募要領の一覧で確かめられます。
