「ひとり親 給付金」と検索する方の多くが実際に探しているのは、毎月の児童扶養手当ではなく、資格取得や進学のときに受け取れる一時金・訓練給付金です。代表的なものが、看護師や保育士を目指す間の生活費を支える高等職業訓練促進給付金と、講座費用の一部が戻る自立支援教育訓練給付金です。どちらも母子家庭・父子家庭を問わず対象になります。
毎月の児童扶養手当・児童手当を合わせた総額のシミュレーションは「母子家庭の手当はいくら」の記事で解説しています。この記事は、資格取得・進学に関わる一時金に絞り、一次情報にもとづいて整理します。
ひとり親が使える「一時金・訓練給付」は主に3つ
| 制度 | 何のための給付か | 母子・父子の別 |
|---|---|---|
| 高等職業訓練促進給付金 | 資格取得のための養成機関在学中の生活費を支援 | どちらも対象 |
| 自立支援教育訓練給付金 | 職業訓練講座を受講した費用の一部を支給 | どちらも対象 |
| 母子父子寡婦福祉資金貸付金(就学支度資金・修学資金等) | 進学・就職に伴う一時的な費用の貸付 | どちらも対象 |
「ひとり親家庭=母子家庭」ではありません。 父子家庭も、児童扶養手当だけでなくこれらの給付金・貸付金の対象です。制度名に「母子」が入っているものも多いですが、実際の運用では父子家庭も母子家庭と同様に申請できます。
高等職業訓練促進給付金:資格取得中の生活費
看護師・保育士・介護福祉士など、就職に有利な資格を取るために養成機関(専門学校等)で学ぶ間、生活費相当額が毎月支給される制度です。
- 対象資格: 看護師、准看護師、保育士、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、調理師、製菓衛生師等の国家資格のほか、シスコシステムズ認定資格・LPI認定資格等のデジタル分野の民間資格も対象
- 修業期間の条件: 養成機関で6か月以上のカリキュラムを修業すること
支給額
| 区分 | 月額(通常期間) | 修業最後の12か月間 | 修了支援給付金(卒業時) |
|---|---|---|---|
| 市町村民税非課税世帯 | 100,000円 | +40,000円加算(月14万円) | 50,000円 |
| 市町村民税課税世帯 | 70,500円 | +40,000円加算(月11.05万円) | 25,000円 |
修業期間の最後の1年間は月4万円増額される設計になっています。資格取得の総仕上げの時期にもっとも生活費がかさむことを踏まえた仕組みで、卒業直前に息切れしないよう配慮されています。卒業時にはさらに修了支援給付金(非課税世帯5万円・課税世帯2.5万円)が上乗せされます。
具体例:非課税世帯の親が2年課程の准看護学校に通う場合
- 1年目(12か月): 月10万円×12か月=120万円
- 2年目(12か月、修業最後の期間として増額対象): 月14万円×12か月=168万円
- 修了支援給付金: 5万円
- 合計: 約293万円(2年間の在学期間を通じた給付総額の目安)
この金額は生活費すべてをまかなうものではありませんが、養成機関に通いながら働けない期間の収入減を補う、大きな支えになります。 資格取得後は看護師・保育士等の需要が安定している職種に就くことが多く、修業期間中の給付を「将来の安定収入への投資期間」として位置づける考え方もできます。
自立支援教育訓練給付金:講座費用の一部が戻る
雇用保険の教育訓練給付制度で指定されている講座(またはお住まいの都道府県等が独自に指定する講座)を受講し修了した場合、受講費用の一部が支給されます。
| 区分 | 給付率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練給付対象講座 | 経費の60%(最低支給額1万2,001円) | 最大20万円 |
| 専門実践教育訓練給付対象講座 | 経費の60% | 修学年数×40万円(最大160万円) |
| 専門実践教育訓練給付対象講座(修了後1年以内に資格取得・就職した場合) | 経費の85% | 修学年数×60万円(最大240万円) |
高等職業訓練促進給付金が「生活費」の支援なのに対し、こちらは「受講料そのもの」の一部を補う制度です。6か月以上の養成機関に通うほどではないが、資格取得やスキルアップのための短期講座を受けたい、という方に向いています。雇用保険の教育訓練給付金と併用する場合は、その差額が支給される調整の仕組みがあり、二重に受け取れるわけではない点に留意してください。対象になる講座は雇用保険のウェブサイトで検索できるため、受講を検討している講座が指定を受けているか、申し込み前に確認しておくとよいでしょう。
高等職業訓練促進給付金には「入学準備金・就職準備金」の貸付もある
高等職業訓練促進給付金の対象者には、月々の生活費に加えて、入学時・就職時にまとまった費用がかかるタイミングを支える貸付制度も用意されています。
- 入学準備金: 養成機関に入学する際の費用(入学金・教材費等)にあてるための貸付。1人あたり50万円が目安
- 就職準備金: 資格取得後、実際に就職する際にかかる費用(通勤用の準備等)にあてるための貸付。1人あたり20万円が目安
この2つは給付金ではなく貸付ですが、条件を満たせば返済が免除される仕組みになっています。 取得した資格を生かして5年間継続して就労すると、原則として償還(返済)が免除されます。資格を取って終わりではなく、実際に5年間働き続けることが、実質的に「無料で借りられる」ための条件になっている点は、申請前に理解しておく必要があります。5年以内に離職すると、原則として返済義務が生じるため、資格取得後にどのくらいの期間働き続けられそうか、就職先の見通しも含めて検討しておくことが大切です。
高等職業訓練促進給付金は資格の種類で支給期間が変わる
高等職業訓練促進給付金は、修業期間の長さによって支給される期間が変わります。
| 資格・コースの例 | 修業期間の目安 | 支給期間 |
|---|---|---|
| 准看護師 | 2年 | 修業期間全体 |
| 看護師・保育士・介護福祉士 | 2〜4年 | 修業期間全体 |
| 理学療法士・作業療法士 | 3〜4年 | 修業期間全体 |
修業期間が長い資格ほど、給付金を受け取れる期間も長くなり、総支給額も大きくなります。 一方で、その分だけ就労を開始できる時期も遅くなるため、資格取得までの生活費の見通しを、養成機関に入学する前の段階で具体的に立てておくことが重要です。市区町村の窓口では、資格ごとの支給期間の目安や、実際の受給者の体験談を聞ける相談会を実施している場合もあります。修業期間が短い資格を選ぶか、時間をかけてでも需要の高い資格を選ぶかは、その後の就労の安定性も踏まえて判断する価値があります。
母子・父子自立支援員に相談するのが最初のステップ
これらの給付金・貸付金は、いずれも申請前の相談が前提になっている制度が多く、窓口となるのが「母子・父子自立支援員」です。
- 都道府県・市区町村の福祉事務所等に配置されている、ひとり親家庭の生活全般を相談できる専門職員
- 高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金の対象になるかどうかの事前確認だけでなく、どの資格を目指すのが自分の状況に合っているかといった相談にも対応
- 児童扶養手当の相談とあわせて、同じ窓口・同じ担当者に相談できることが多い
「まだ資格を決めていないから相談するのは早い」と考える必要はありません。 むしろ、資格を決める前の段階で相談したほうが、対象になる制度の組み合わせ、支給期間中の生活費の見通しなど、より具体的なアドバイスを受けられます。
自治体独自の一時金もあわせて確認する
高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金といった国の制度に加えて、市区町村が独自に実施している一時金がある場合があります。
- 入学祝金・卒業祝金: 子の小学校・中学校入学時等に、一時金を支給する自治体がある
- ひとり親家庭のための家賃補助: 民間賃貸住宅に住むひとり親家庭に、月数千円〜1万円程度の家賃補助を行う自治体がある
- 就学奨励金: 学用品費の一部を独自に上乗せする自治体がある
これらは実施の有無・金額が自治体によって大きく異なり、実施していない自治体も少なくありません。 お住まいの市区町村の「ひとり親家庭支援」のページ、または母子・父子自立支援員への相談を通じて、国の制度と自治体独自の制度をまとめて確認しておくことをおすすめします。
自治体独自の制度は、広報誌やホームページの目立たない場所に掲載されていることも多く、自分から積極的に探しに行かないと見つからないという性質があります。「うちの市にはどんな支援があるのか」を、児童扶養手当の現況届の提出時期など、年に一度は窓口で確認する機会を作っておくと、見落としを防ぎやすくなります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金:進学・就職の一時的な費用を借りる
給付金ではなく貸付金ですが、ひとり親家庭が使える経済的支援としてよく検討されます。
- 就学支度資金: 子の入学・就職にあたって必要な被服費等の一時的な費用を貸し付け
- 修学資金: 子が高校・大学等に進学する際の授業料等を貸し付け
- 技能習得資金: 親自身が就職に必要な知識・技能を習得するための費用を貸し付け
無利子または低利子で借りられ、一定の条件(貸付の目的どおりに使う、返済計画に従う等)を満たせば返済の負担を抑えられます。 給付金と違って返済が前提の制度のため、給付金でまかなえない部分を補う位置づけで検討するのが一般的です。窓口はお住まいの都道府県・市区町村(福祉事務所を設置している自治体)です。子どもの人数が多い世帯ほど、進学や就職のタイミングが重なりやすいため、早めに資金計画を立てておくと安心です。
併用できるか
高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金は、児童扶養手当と併用できます。 資格取得を目指す期間中も児童扶養手当は通常どおり受給しながら、生活費・受講費用の支援を上乗せで受けられる設計です。
- 高等職業訓練促進給付金と自立支援教育訓練給付金は、対象になる講座・養成機関が異なるため、状況によってはどちらか一方しか使えない場合があります(例: 6か月以上の看護学校であれば高等職業訓練促進給付金、数か月の短期講座であれば自立支援教育訓練給付金)
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金は、これらの給付金と併用して借りることができる場合が多く、給付金だけでは足りない生活費・受講費用を補う形で利用されています
- 児童手当も、児童扶養手当・高等職業訓練促進給付金とは別に受け取れるため、複数の支援を組み合わせて資格取得期間の生活を支えることができます
具体例:母子家庭の母が保育士資格を取得する場合
実際の給付イメージをつかむために、住民税非課税世帯の母親が2年課程の保育士養成校に通うケースで、受け取れる給付の全体像を確認します。
- 入学準備金(貸付): 入学時に50万円を借り入れ(5年間の就労継続で返済免除の対象)
- 高等職業訓練促進給付金(1年目): 月10万円×12か月=120万円
- 高等職業訓練促進給付金(2年目・修業最後の期間): 月14万円×12か月=168万円
- 修了支援給付金: 卒業時に5万円
- 就職準備金(貸付): 卒業後の就職時に20万円を借り入れ(5年間の就労継続で返済免除の対象)
給付金だけの合計は約293万円、貸付金を含めると70万円分の借入枠も別途利用できます。 貸付金は5年間就労を継続すれば返済が免除されるため、資格を生かして働き続ける前提であれば、実質的にはさらに手厚い支援を受けられる計算になります。
ただし、この金額は生活費のすべてをまかなえるものではありません。 家賃・食費・子どもの教育費等を含めた生活全体の収支を、養成機関に入学する前の段階でシミュレーションしておくことが重要です。母子・父子自立支援員に相談すれば、世帯の状況に応じた見通しを一緒に確認してもらえます。
対象になるための基本的な要件
これらの給付金に共通する、代表的な対象要件は次のとおりです。
- 児童扶養手当を受給している、または同等の所得水準にあること(自治体によって所得基準の運用が異なる場合がある)
- 20歳未満の子を扶養しているひとり親であること
- 申請前に事前相談・受講開始前の事前届出が必要な場合が多い(高等職業訓練促進給付金は、養成機関に入学する前に市区町村への相談が必要)
講座を受講し始めてから申請しても、対象にならないことがあります。 「資格を取ろう」と決めた時点で、まず市区町村のひとり親家庭支援担当窓口に相談することが、給付を受け損ねないための最初のステップです。
離婚協議中でも申請できるか
「離婚がまだ成立していないから、ひとり親向けの給付金は対象外」と考えて相談自体をあきらめてしまうケースがあります。しかし、次のような事情がある場合は、離婚成立前でも対象になることがあります。
- 配偶者からの暴力(DV)等により、事実上父または母と生計を別にしている状態が一定期間続いている場合
- 児童扶養手当の受給要件を満たしている、または見込みがある場合
児童扶養手当を受給できる状態であれば、高等職業訓練促進給付金等もあわせて対象になる可能性が高いため、離婚の話し合いと並行して、資格取得の準備を進めたい場合は、早めに市区町村の窓口や配偶者暴力相談支援センター等へ相談することをおすすめします。個々の事情によって判断が分かれる部分が大きいため、書類の準備を進める前に、まず相談だけでも済ませておくことが遠回りに見えて実は近道になります。
所得制限を超えた場合はどうなるか
高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金には、児童扶養手当と同様の所得基準が設けられていることが一般的です。
- 所得が基準を超えると、非課税世帯向けの高い給付額ではなく、課税世帯向けの給付額が適用される
- さらに所得が高い場合は、給付そのものの対象外になることがある
- 年度の途中で所得が変わった場合、次の判定時期(多くは市区町村民税の課税状況が確定するタイミング)から適用区分が変わることがある
「非課税世帯だから月10万円もらえるはず」と見込んで資格取得の計画を立てていても、養成機関に通っている間にパート収入が増えて課税世帯に切り替わる、ということも起こり得ます。 就労と両立しながら資格取得を目指す場合は、収入の見込みが変わりそうなタイミングで、市区町村の窓口に区分の見直しについて確認しておくと安心です。養成機関に通いながらアルバイト等で収入を得ること自体は妨げられていないため、生活費の不足分をどう補うかは、入学前に具体的な収支計画として立てておくことをおすすめします。
父子家庭が申請する場合の注意点
父子家庭でこれらの給付金を検討する場合、次の点を確認しておくと申請がスムーズです。
- 窓口・申請書類は母子家庭と共通であることがほとんどですが、自治体によっては「母子父子自立支援員」という同じ担当者が両方の相談を受けています
- 対象資格・給付額の区分(非課税世帯か課税世帯か)は、父子家庭でも同じ基準で判定されます
- 「母子家庭向けの制度」という印象から申請をためらうケースがありますが、制度の名称に関わらず父子家庭も対象です
父子家庭は、母子家庭に比べて経済的に安定していると見られがちですが、実際には育児と仕事の両立に苦労し、収入が不安定になっているケースも少なくありません。「父子家庭だから制度の対象外だろう」という思い込みだけで相談自体をあきらめず、まずは窓口で状況を伝えてみることが、使える支援を見つける近道になります。母子・父子自立支援員は、父子家庭からの相談にも同じように対応しています。
よくある質問
ひとり親の給付金は母子家庭しか対象になりませんか?
いいえ、父子家庭も対象になります。高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金・母子父子寡婦福祉資金貸付金は、いずれも母子家庭・父子家庭を問わず申請できます。
高等職業訓練促進給付金と自立支援教育訓練給付金は両方もらえますか?
対象になる講座・養成機関の種類が異なるため、状況によって使い分けが必要です。看護師・保育士等の資格取得で6か月以上の養成機関に通う場合は高等職業訓練促進給付金、短期の教育訓練講座を受講する場合は自立支援教育訓練給付金が対象になります。詳しくは市区町村の窓口で確認してください。
給付金と児童扶養手当は同時に受け取れますか?
はい、併用できます。資格取得を目指す期間中も、児童扶養手当は通常どおり受給しながら、生活費・受講費用の給付を上乗せで受けられます。
講座を受講し始めてから申請しても間に合いますか?
制度によっては、受講開始前の事前相談・事前届出が必須とされています。受講後の申請では対象外になる場合があるため、資格取得や講座受講を検討し始めた時点で、早めに市区町村のひとり親家庭支援担当窓口に相談することをおすすめします。
母子父子寡婦福祉資金貸付金は返済が必要ですか?
はい、給付金ではなく貸付金のため、原則として返済が必要です。無利子または低利子で借りられる場合が多く、進学・就職にともなう一時的な費用の負担を分散させる目的で利用されています。
入学準備金・就職準備金は返さなくてよいのですか?
高等職業訓練促進給付金の対象者が利用できる入学準備金・就職準備金は貸付金ですが、取得した資格を生かして5年間継続して就労すると、原則として返済が免除されます。 5年以内に離職した場合は、原則として返済義務が生じるため、資格取得後の就労計画とあわせて検討することをおすすめします。
離婚がまだ成立していませんが、相談してもよいですか?
はい、相談できます。配偶者からの暴力(DV)等により、事実上ひとり親家庭と同様の状態が一定期間続いている場合は、離婚成立前でも対象になることがあります。資格取得の準備を進めたい場合は、早めに市区町村の窓口や配偶者暴力相談支援センター等へ相談することをおすすめします。
