「住宅ローン控除でいくら戻るのか」を調べると、多くの記事が借入限度額の表を出します。長期優良住宅なら5,000万円、ZEH水準なら4,500万円——という表です。
ですが、その表を見ても自分がいくらもらえるかは分かりません。 借入限度額は3つある上限のうちの1つでしかないからです。
住宅ローン控除の額は、次の3つのうち最も小さい額で決まります。
① 年末のローン残高 × 0.7%
② 借入限度額 × 0.7% ← 多くの記事が出している表
③ その年に納めた所得税額 + 住民税からの控除上限(97,500円)
借入限度額が5,000万円でも、残高が3,000万円なら控除額は21万円です。さらに納めた税金が15万円しかなければ、実際に戻るのは15万円までです。「最大35万円」といった数字を見て期待していた額と、実際の額が大きくずれるのはこの構造のためです。
正式名称は住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除・住宅ローン減税)で、控除率は年末残高等×0.7%、控除期間は新築の認定住宅等で13年(その他の住宅は10年)です。合計所得金額2,000万円以下、床面積原則50㎡以上(一定の場合は40㎡以上)などの要件もあります。この記事では、実際に戻る額を決める3つの上限を1つずつ見ていきます。住宅の補助金(みらいエコ住宅2026事業など)との関係は住宅ローンで使える補助金と減税で扱っています。
上限① 年末のローン残高 × 0.7%
いちばん基本の計算です。その年の12月31日時点のローン残高に0.7%をかけます。
| 年末残高 | 0.7%をかけた額 |
|---|---|
| 1,000万円 | 7万円 |
| 2,000万円 | 14万円 |
| 3,000万円 | 21万円 |
| 4,000万円 | 28万円 |
| 5,000万円 | 35万円 |
ここで押さえておくことが3つあります。
1つ目、残高は毎年減ります。 返済が進むほど控除額も減ります。3,000万円を35年で借りた場合、1年目の年末残高は約2,930万円ですが、13年目には約2,000万円まで下がります。控除額も20.5万円から14万円へと減っていきます。「毎年35万円が13年間」ではありません。
2つ目、繰上返済をすると控除額が減ります。 残高が減れば控除も減るので、控除期間中の繰上返済は、利息の削減額と控除の減少額を比べて判断する必要があります。
3つ目、土地の代金も残高に含められます。 国土交通省の資料には「住宅とその土地等をともに取得する場合、借入金額には当該土地等の金額を含むことができます」と記載があります。土地から買った方は、土地の借入分も残高に入ります。
上限② 借入限度額 × 0.7%
残高がいくら多くても、控除の計算に使える残高には上限があります。これが借入限度額です。
ここが年によって変わっており、混乱の原因になっています。 令和7年入居分と令和8年入居分では数字が違います。
令和6年・令和7年に入居した場合(国税庁 No.1211-1)
国税庁のタックスアンサーは、令和4年1月1日から令和7年12月31日までに居住の用に供した場合の数字を掲載しています(令和7年4月1日現在法令等)。
| 住宅の区分 | 控除期間 | 各年の控除限度額 | 特例対象個人の場合 |
|---|---|---|---|
| 認定住宅(長期優良・低炭素) | 13年 | 31.5万円 | 35万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 13年 | 24.5万円 | 31.5万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 13年 | 21万円 | 28万円 |
| その他の住宅 | 0年 | 0円 | — |
「控除限度額」は、借入限度額に0.7%をかけた額です。31.5万円なら借入限度額4,500万円、35万円なら5,000万円にあたります。
「その他の住宅」(省エネ基準を満たさない住宅)は、令和6年・令和7年入居では控除期間が0年、つまり控除を受けられません。ただし例外があり、令和5年12月31日までに建築確認を受けたもの、または令和6年6月30日までに建築されたものは、借入限度額2,000万円・控除限度額14万円で10年間の控除が受けられます。
令和8年に入居する場合(国土交通省)
国土交通省の住宅ローン減税のページによれば、適用期限が5年間延長され、入居日が令和8年1月1日から令和12年12月31日までが対象になりました。同省の新築住宅向けページに掲載されている借入限度額は次のとおりです。
| 住宅の区分(新築) | 借入限度額 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年間 |
| 低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 | 13年間 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年間 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 | 13年間 |
| その他住宅(2023年末までに建築確認) | 2,000万円 | — | 10年間 |
既存住宅(中古)を取得する場合も、同省のページに数字が示されています。
| 住宅の区分(既存) | 借入限度額 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 長期優良住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年間 |
| 低炭素住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年間 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年間 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 | 13年間 |
| その他住宅 | 2,000万円 | — | 10年間 |
令和7年入居と令和8年入居では、同じ「長期優良住宅」でも借入限度額が違います。 自分がどちらの年に入居する(した)かで見る表が変わるので、必ず年を確認してください。
なお、省エネ基準適合住宅については、国土交通省のページに「令和10(2028)年以降は適用対象外。ただし2027年末までに建築確認を受けた住宅又は2028年6月30日までに建築された住宅は2000万円」という注記があります。
「子育て世帯・若者夫婦世帯」=国税庁でいう「特例対象個人」
上乗せの対象になるのは誰か。呼び方が資料によって違いますが、中身は同じです。
国税庁は「特例対象個人」として、次のように定義しています。
個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者または年齢19歳未満の扶養親族を有する者をいいます。
3つのパターンのどれかに当てはまればよいということです。
| パターン | 内容 |
|---|---|
| ① | 本人が40歳未満で、配偶者がいる |
| ② | 本人が40歳以上で、40歳未満の配偶者がいる |
| ③ | 19歳未満の扶養親族がいる(本人の年齢は問わない) |
③に当てはまれば、本人が何歳でも対象です。中学生の子どもがいる45歳の方も、この上乗せを受けられます。
判定の時点も決まっています。国税庁の注記に「年齢または配偶者もしくは扶養親族に該当するかどうかの判定は、居住年の12月31日(これらの方が年の途中で死亡した場合には、その死亡の時)の現状によります」とあります。入居時点ではなく、その年の年末時点です。
上限③ その年に納めた税額
3つ目の上限が、最も見落とされます。住宅ローン控除は税額控除なので、そもそも納めた税金がなければ引くものがありません。
計算した控除額が20万円でも、その年に納めた所得税が12万円なら、所得税から引けるのは12万円までです。
引ききれなかった分は住民税から引ける(ただし上限あり)
所得税から引ききれなかった分は、翌年度の個人住民税から引けます。総務省の説明はこうです。
平成21年から令和12年12月31日までの間に居住し、所得税の住宅ローン減税制度(住宅借入金等特別控除)を受けた方で、所得税において控除しきれなかった金額がある場合は、翌年度の個人住民税において住宅ローン控除が適用されます。
ただし、ここに上限があります。
(注)上記の式で算出された控除額が、「前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円を限度)」を超えた場合には、控除額は当該金額になります。
つまり、住民税から引ける額は最大でも97,500円です。
過去には、消費税率10%で取得した住宅を令和元年10月1日から令和3年12月31日までに居住の用に供した場合など、一定の条件下で「課税総所得金額等の7%(136,500円を限度)」が適用される期間がありました。ただし令和4年1月から令和7年12月までに入居した場合は、5%・97,500円が上限です。
上限③で頭打ちになるケース
この上限がどれくらい効くのか、具体的に見てみます。
例:年末残高4,000万円・長期優良住宅・所得税15万円・課税総所得金額等300万円の場合
① 年末残高 4,000万円 × 0.7% = 28万円
② 借入限度額 4,500万円 × 0.7% = 31.5万円
③ 所得税15万円 + 住民税の上限9.75万円 = 24.75万円
最も小さいのは③の24.75万円です。計算上は28万円の控除枠があるのに、納めた税金が足りず3.25万円は使いきれません。
このケースで「使いきれない」が起きるのは、住民税の上限が97,500円で止まるからです。住民税の課税所得が300万円あれば住民税の所得割は30万円程度になりますが、そこから引けるのは97,500円までです。
同じ住宅を買っても、年収が低いほど控除を使いきれません。 借入限度額の表だけを見て「35万円もらえる」と考えると、実際との差が大きくなります。
使いきれるかどうかの目安
所得税と住民税の上限を合わせて、控除枠を使いきるのに必要なおよその税額はこうなります。
| 控除額(年) | 必要な所得税額の目安 |
|---|---|
| 14万円(残高2,000万円) | 約4.2万円以上 |
| 21万円(残高3,000万円) | 約11.3万円以上 |
| 28万円(残高4,000万円) | 約18.3万円以上 |
| 35万円(残高5,000万円) | 約25.3万円以上 |
※住民税から97,500円満額引ける場合の目安です。課税総所得金額等が195万円を下回ると住民税側の上限も5%で頭打ちになるため、必要な所得税額はさらに増えます。
13年間の合計はいくらになるか(試算)
年ごとの控除額を13年分足すと、実際にどれくらいになるのか。残高は毎年減っていくことを踏まえて試算します。
試算例1:長期優良住宅・借入4,000万円・35年返済・金利1.0%
| 年 | 年末残高のおよその額 | 控除額(残高×0.7%) |
|---|---|---|
| 1年目 | 約3,910万円 | 約27.3万円 |
| 5年目 | 約3,530万円 | 約24.7万円 |
| 10年目 | 約3,040万円 | 約21.2万円 |
| 13年目 | 約2,730万円 | 約19.1万円 |
13年間の合計はおよそ290万円台になります。「最大31.5万円×13年=409万円」ではありません。残高が減るぶん、実際は3割ほど少なくなります。
試算例2:ZEH水準省エネ住宅・借入3,000万円・35年返済・金利1.0%
| 年 | 年末残高のおよその額 | 控除額(残高×0.7%) |
|---|---|---|
| 1年目 | 約2,930万円 | 約20.5万円 |
| 5年目 | 約2,650万円 | 約18.5万円 |
| 10年目 | 約2,280万円 | 約15.9万円 |
| 13年目 | 約2,050万円 | 約14.3万円 |
13年間の合計はおよそ220万円前後です。この場合、借入限度額(令和8年入居なら3,500万円)に残高が届いていないので、上限②は効きません。上限①と③だけで決まります。
※試算は元利均等返済・ボーナス返済なし・繰上返済なしを前提とした概算です。実際の残高は借入条件によって変わるので、金融機関の返済予定表でご確認ください。
金額以外の要件(ここを満たさないと0円)
いくら計算しても、要件を満たさなければ控除は受けられません。国税庁と国土交通省が挙げている主な要件はこれです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 合計所得金額 | 2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の特例を使う場合は1,000万円以下) |
| 床面積 | 原則50㎡以上。一定の場合は40㎡以上(国土交通省は令和8年入居分について、合計所得金額1,000万円超の方や子育て世帯等への上乗せ措置を使う方は50㎡以上と案内) |
| 居住 | 減税を受ける方が主として居住する家屋であること |
| 入居の時期 | 引き渡しまたは工事完了から6か月以内に入居し、その年の12月31日まで引き続き居住していること |
| 返済期間 | 借入金の償還期間が10年以上であること |
| 併用住宅 | 店舗等併用住宅の場合、床面積の1/2以上が居住用であること |
床面積は「登記簿表示上」で判定します。パンフレットに書かれた面積と登記簿の面積が違うことがあるので、40〜50㎡台の物件では必ず登記簿を確認してください。
手続き(1年目と2年目以降で違う)
住宅ローン控除は、1年目だけ自分で確定申告をします。2年目以降は会社員なら年末調整で処理できます。
| 1年目 | 2年目以降 | |
|---|---|---|
| 手続き | 確定申告 | 会社員は年末調整/個人事業主は確定申告 |
| 時期 | 入居した年の翌年(還付申告なら1月1日から可能) | 毎年の年末調整 |
| 主な書類 | 確定申告書、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書、登記事項証明書、売買契約書等の写し、住宅ローンの年末残高等証明書、性能証明書類 | 年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書、住宅ローンの年末残高等証明書 |
性能証明書類は、住宅の区分によって変わります。長期優良住宅なら長期優良住宅認定通知書の写しなど、ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅なら住宅省エネルギー性能証明書または建設住宅性能評価書が必要です。これらは建築・設計を行う事業者に依頼して取得するもので、後から自分で用意することが難しい書類です。契約時点で事業者に確認しておいてください。
なお、住民税からの控除は別途申告する必要はありません。確定申告または年末調整の情報が市区町村へ送られ、翌年度の住民税に反映されます。
控除が受けられない・減る要因
- 合計所得金額が2,000万円を超えた。 その年は控除を受けられません。翌年に2,000万円以下に戻れば、その年からまた受けられます
- 床面積が50㎡未満だった。 40〜50㎡未満の特例には所得や建築確認の時期の条件が付きます
- 入居が引き渡しから6か月を超えた。 転勤などで入居が遅れると要件を満たしません
- 返済期間を10年未満に短縮した。 繰上返済で返済期間が当初契約から10年未満になると、その時点で対象外になります
- 性能証明書類が用意できなかった。 認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合として申告するには証明書類が必須です。ないと「その他の住宅」の扱いになります
- 納めた税額が少なく、控除枠を使いきれなかった。 住民税からの控除も97,500円で頭打ちになります
- 1年目の確定申告を忘れた。 還付申告として5年以内なら遡って申告できます
よくある質問
借入限度額が5,000万円なら、毎年35万円もらえますか
いいえ。控除額は「年末のローン残高×0.7%」が基本で、借入限度額はその上限にすぎません。残高が3,000万円なら控除額は21万円です。さらに残高は毎年減るので、控除額も年々小さくなります。加えて、その年に納めた所得税額と住民税からの控除上限(97,500円)を超えて戻ることはありません。3つの上限のうち最も小さい額が実際の控除額です。
住民税からはいくらまで引けますか
前年分の所得税の課税総所得金額等の5%が上限で、97,500円が限度です(令和4年1月〜令和7年12月入居分・総務省)。所得税から引ききれなかった分がこの範囲で住民税から引かれます。住民税は振り込まれるのではなく、翌年6月以降の税額が下がる形で効きます。
令和7年に入居した場合と令和8年に入居した場合で何が違いますか
借入限度額が変わります。国税庁のタックスアンサー(令和7年4月1日現在法令等)は令和4〜7年入居分として認定住宅の控除限度額31.5万円(特例対象個人は35万円)を示しており、国土交通省の現行ページは令和8年入居分の新築の長期優良住宅について借入限度額4,500万円(子育て世帯等は5,000万円)を示しています。また、国土交通省は適用期限が令和12年12月31日まで5年間延長されたことも案内しています。自分の入居年に対応する資料をご確認ください。
子育て世帯の上乗せは何歳の子どもが対象ですか
国税庁の「特例対象個人」の定義では、19歳未満の扶養親族がいる場合が該当します。ほかに、本人が40歳未満で配偶者がいる場合、本人が40歳以上で40歳未満の配偶者がいる場合も対象です。判定は居住年の12月31日時点の状況で行います。
繰上返済すると控除が減りますか
減ります。控除額は年末のローン残高で計算するため、繰上返済で残高が減れば控除額も減ります。また、期間短縮型の繰上返済で返済期間が当初契約から10年未満になると、その時点で控除の対象外になります。控除期間中の繰上返済は、削減できる利息と減る控除額を比べて判断してください。
