高校無償化について「年収がいくらまでなら対象か」を調べている方に、まず結論をお伝えします。令和8年度(2026年度)から、高等学校等就学支援金の所得制限は完全に撤廃されました。 つまり、世帯年収がいくらであっても、公立・私立を問わず就学支援金の対象になります。
以前は「年収約910万円」という基準がよく話題になっていましたが、この基準はすでに過去のものです。この記事では、旧基準がどう機能していたか、年収帯別に「以前ならどうだったか・今はどうか」を比較し、高所得世帯が気をつけるべき点(都道府県独自助成の年収要件)まで解説します。
高校無償化の「年収」は、もう気にしなくてよい
令和8年4月に施行された改正法により、高等学校等就学支援金の所得制限は撤廃されました。これにより、保護者の年収にかかわらず、公立高校は年11万8,800円、私立高校は年45万7,200円を上限に支給されることになりました。
制度の変遷や所得制限撤廃の詳しい経緯・判定式については、高校無償化と所得制限の記事で詳しく解説しています。この記事では、年収というテーマに絞って、旧基準との違いを具体的に見ていきます。
旧基準(年収約910万円)はどう判定されていたか
令和7年度まで使われていた所得制限は、単純な「額面年収」ではなく、住民税の課税標準額をもとにした判定式で計算されていました。目安として「年収約910万円未満」と説明されることが多いのは、この判定式を一般的な会社員のモデル世帯(夫婦・子2人)に当てはめた場合の概算です。
- 判定に使われるのは、保護者の住民税課税標準額(所得から各種控除を差し引いた金額)をもとにした式
- 「年収910万円」はあくまで目安であり、扶養家族の人数や他の控除の有無によって、実際に対象になるかどうかの年収ラインは前後する
- 共働き世帯の場合は、原則として双方の所得を合算して判定される
この判定式の詳しい計算方法は所得制限の記事で解説しています。 ここで押さえておくべきは、「年収910万円」という数字が絶対的な線引きではなく、あくまで目安だったという点です。
年収帯別に見る「以前ならどうだったか・今はどうか」
年収帯ごとに、令和7年度までの扱いと令和8年度からの扱いを比較すると、次のようになります。
| 世帯年収の目安 | 令和7年度まで | 令和8年度から |
|---|---|---|
| 300万円 | 対象(公立・私立とも支給あり) | 対象(変更なし) |
| 500万円 | 対象(公立・私立とも支給あり) | 対象(変更なし) |
| 800万円 | 世帯構成によっては対象外になる可能性があった | 対象(世帯構成に関わらず支給) |
| 910万円前後 | 対象・対象外の境界線。わずかな差で結果が変わることがあった | 対象(境界線自体が無くなった) |
| 1,200万円 | 対象外(私立高校向けの就学支援金は原則支給なし) | 対象(新たに支給対象になった) |
表からも分かるとおり、影響が大きいのは年収800万円を超える世帯、特に私立高校に通う(通わせる予定の)家庭です。 令和7年度までは対象外だった年収帯が、令和8年度から新たに支給対象に加わったためです。年収300万〜500万円程度の世帯にとっては、もともと対象だったので、支給額そのものに変化はありません。
令和7年度の「高校生等臨時支援金」との違いに注意
高所得世帯の中には、令和7年度に「高校生等臨時支援金」という制度で一時的な支援を受けた方もいるかもしれません。これは物価高騰対策として、年収約910万円以上の世帯も含めて臨時的に支給された、令和7年度限りの制度です。
この臨時支援金と、令和8年度から始まった恒久的な所得制限撤廃は別の制度です。 「去年ももらったから今年も同じ金額だろう」と考えると、実際の支給額や手続きの流れが違う場合があるため、令和8年度は就学支援金の通常の申請手続き(学校を通じた「e-Shien」での手続き)が必要になる点を確認しておいてください。
私立高校の年収帯別・実質負担のイメージ
年収にかかわらず私立高校向けの就学支援金の上限額(年45万7,200円)が支給されるようになったことで、私立高校の学費負担がどう変わるかを具体的にイメージしてみます。
- 私立高校の平均的な年間授業料が45万円程度の学校に通う場合、就学支援金の上限額でほぼ授業料が賄える計算になります
- 授業料が45万7,200円を超える学校(都市部の難関私立高校等に多い)では、超過分は自己負担が残ります。年収にかかわらず、この自己負担は変わりません
- 授業料以外の入学金・施設費・修学旅行費等は就学支援金の対象外です。これらは別制度(高校生等奨学給付金等、住民税非課税世帯が対象)でカバーされる部分があります
「無償化」という言葉から、私立高校に通わせても一切自己負担がないと誤解しがちですが、授業料以外の費用や、授業料が上限額を超える学校では自己負担が残る点に注意してください。志望校を検討する段階で、学校のホームページ等に掲載されている年間授業料と、就学支援金の上限額を照らし合わせておくと、入学後の自己負担額をあらかじめ見積もることができます。
都道府県独自の上乗せ助成には、年収要件が残る場合がある
国の就学支援金の所得制限は撤廃されましたが、多くの都道府県が独自に設けている上乗せ助成には、まだ年収要件が残っているケースがあります。
- 都道府県によっては、国の支給額に加えて独自の助成を上乗せしており、その助成部分に所得制限を設けている場合があります
- 東京都のように、国の改正にあわせて独自助成の所得制限も撤廃した自治体がある一方、財政規模や私立高校の在籍率が異なる自治体では、見直しの時期・内容が異なることがあります
- 「国の制度で年収の壁が無くなったから、都道府県の上乗せ助成も同じはず」と思い込むと、実際の受給額を見誤ることがあります
自分の住む都道府県の上乗せ助成に所得要件があるかどうかは、都道府県の私学財団や教育委員会の公式ページで個別に確認する必要があります。特に私立高校への進学を検討している家庭は、国の就学支援金だけでなく、都道府県独自の助成額を含めた総額で実質負担額を試算しておくと、進学後の家計計画がより立てやすくなります。
世帯年収の考え方(共働き・扶養家族の影響)
令和8年度から所得制限自体が撤廃されたため、就学支援金そのものについては世帯年収を気にする必要がなくなりました。ただし、都道府県独自の上乗せ助成でまだ所得要件が残っている場合、判定に使われる「世帯年収」の考え方には注意が必要です。
- 共働き世帯は、原則として保護者双方の所得を合算して判定されます
- 扶養家族の人数(兄弟姉妹の人数等)によって、控除額が変わり、実質的な判定基準が変わることがあります
- ひとり親世帯には、別途の控除や加算が設けられている自治体もあります
自治体独自の助成を申請する際は、国の就学支援金の申請時に使う課税情報とは別に、自治体独自の様式で所得を申告する必要がある場合があるため、案内をよく確認してください。
世帯モデル別シミュレーション: 年収による違いを具体的に見る
「結局、自分の家庭ではどう変わるのか」を、3つの世帯モデルで具体的に見てみます。
モデル1: 会社員(年収500万円)・子どもが公立高校に通うケース
令和7年度も令和8年度も、この年収帯は所得制限の対象外(=支給対象)でした。公立高校の授業料相当額(年11万8,800円)が引き続き支給されるため、この世帯にとって令和8年度の改正による直接的な変化はありません。 ただし、都道府県が独自の上乗せ助成を実施している場合、その対象になるかどうかは別途確認が必要です。
モデル2: 共働き世帯(世帯年収950万円)・子どもが私立高校に通うケース
令和7年度までは、この年収帯は所得制限の対象外(=支給対象外)でした。私立高校の年間授業料が仮に50万円だった場合、就学支援金なしで全額を自己負担していたことになります。令和8年度からは所得制限が撤廃されたため、上限額の45万7,200円が新たに支給されるようになりました。年間の実質負担は、単純計算で約45万円軽くなる計算です。
モデル3: 自営業(年収1,200万円)・子ども2人が私立高校に通うケース
令和7年度までは対象外でした。子どもが2人とも私立高校に通っている場合、令和7年度までは2人分・年間90万円以上の授業料を全額自己負担していた可能性があります。令和8年度からは、2人分あわせて最大91万4,400円(45万7,200円×2人)が新たに支給されることになり、家計への影響は非常に大きくなります。
このように、年収が高い世帯ほど、また私立高校に通う子どもの人数が多い世帯ほど、令和8年度の改正による恩恵は大きくなります。 逆に、もともと所得制限の対象外だった年収帯(おおむね910万円未満)の世帯は、支給額そのものに変化はありません。3つのモデルはあくまで目安であり、実際の授業料や扶養家族の構成によって金額は変わるため、自分の家庭に近いケースで試算し直すことをおすすめします。
扶養控除の見直しとあわせて確認したいこと
高校無償化の議論と同時期に、16歳から18歳の子どもを扶養する場合の「扶養控除」の仕組みも見直しが進んでいます。 これは就学支援金とは別の税制上の制度で、所得税・住民税を計算する際に、扶養家族がいる場合に一定額を所得から差し引く仕組みです。
- 高校無償化の対象拡大にあわせて、扶養控除の縮小・見直しが議論されてきた経緯があります
- 就学支援金(授業料の直接支援)と扶養控除(税負担の軽減)は、目的も仕組みも異なる別々の制度です
- 「就学支援金は増えたが扶養控除が減った」という場合、世帯全体の手取りへの影響は両方をあわせて確認する必要があります
この2つの制度は別々のタイミングで見直しが行われることがあるため、「高校無償化で年収を気にしなくてよくなった」と思っても、税制面での変更点は別途確認しておくことをおすすめします。 具体的な扶養控除の見直し内容は、国税庁・総務省の公式ページで最新情報を確認してください。年末調整や確定申告の時期には、勤務先や税務署からの案内にもあわせて目を通しておくと安心です。
高校無償化以外にも年収で変わる教育関連の支援がある
高校無償化の所得制限は撤廃されましたが、教育関連の他の支援制度には、依然として所得要件が残っているものがあります。 混同しないよう整理しておきます。
- 高校生等奨学給付金: 授業料以外の教材費・修学旅行費等を支援する制度で、住民税非課税世帯を中心とした所得基準が残っています。就学支援金とは別の制度です
- 大学等における修学支援制度(高等教育の修学支援新制度): 大学・短大・専門学校向けの授業料減免・給付型奨学金の制度で、こちらは住民税非課税世帯を中心とした3段階の所得基準があります。高校無償化とは対象が異なります
- 国民年金の学生納付特例: 20歳以上の大学生等が対象で、学生本人の所得を基準に判定されます。保護者の年収ではなく、学生本人の所得が基準になる点が高校無償化と異なります。詳しくは学生納付特例の記事で解説しています
「高校無償化で年収を気にしなくてよくなったから、教育費全般で年収は関係ない」と考えるのは早計です。 高校卒業後の進学を見据えている家庭は、これらの制度の所得基準も別途確認しておくとよいでしょう。
制度の予算規模から見る、所得制限撤廃のインパクト
高校無償化の所得制限撤廃は、国の予算規模から見ても大きな変更です。文部科学省の令和8年度予算では、高等学校等就学支援金等に5,824億円が計上されており、前年度予算額の4,074億円から1,750億円の増額となっています。この増額分の多くが、これまで所得制限で対象外だった高所得世帯・私立高校在学者への新規支給に充てられていると考えられます。
文部科学省の試算では、この改正により新たに支給または増額の対象となる生徒は約80万人にのぼるとされています。これは、これまで「年収の壁」によって支援を受けられなかった、あるいは減額されていた家庭が、全国で数十万世帯規模で存在していたことを示す数字でもあります。「うちは年収が高いから対象外だろう」と思い込んでいた家庭こそ、令和8年度の変更を見落とさないようにする必要があります。 情報が古いまま止まっている家庭ほど、この機会に一度、学校からの案内や公式ページを見直しておくとよいでしょう。
費用負担の仕組みも変わった(国と都道府県の分担)
所得制限の撤廃にあわせて、就学支援金の費用負担の仕組みも見直されています。公立・私立高校等については、国が4分の3、都道府県が4分の1を負担する形になりました(国立高校等は国が全額を負担)。従来は国が全額を負担していた部分に、都道府県負担が新たに組み込まれています。
この費用負担の見直しは、直接的に保護者の年収要件に影響するものではありませんが、都道府県の財政状況によっては、独自の上乗せ助成の見直しにつながる可能性があります。国の制度の年収要件が撤廃されたからといって、都道府県独自の助成まで安泰とは限らない点は、前述のとおり注意が必要です。今後の予算編成の動向によっては、都道府県ごとの対応に差が出てくることも十分に考えられます。
申請時に年収(所得)の証明はどう行うか
所得制限が撤廃されたとはいえ、就学支援金の申請時には、引き続き保護者の所得情報の確認手続きが必要です。これは、都道府県の上乗せ助成や、将来的な制度見直しに備えて、行政が所得情報を把握しておく必要があるためです。
- 申請はオンラインシステム「e-Shien」を通じて行い、マイナンバーを用いて課税情報を照会する仕組みが一般的です
- マイナンバーの提供に同意しない場合は、課税証明書等の書類を別途提出する必要があります
- 保護者の就労状況が変わった場合(転職・退職・起業等)、課税情報の反映にタイムラグが生じることがあるため、学校を通じて早めに相談することをおすすめします
また、離婚・再婚等で保護者の構成が変わった場合や、単身赴任等で住民票の世帯が分かれている場合など、家庭の状況が一般的なモデルと異なるケースでは、所得の合算方法や申請者の扱いが変わることがあります。このような事情がある家庭は、学校の担当窓口または都道府県の私学財団に、早めに個別相談することをおすすめします。 令和8年度から所得制限自体は撤廃されましたが、申請の手続き自体は簡略化されたわけではなく、引き続き丁寧な確認が必要です。分からないことを自己判断で済ませず、必ず窓口に問い合わせるようにしてください。
よくある質問
年収1,000万円でも高校無償化の対象になりますか?
はい、令和8年度からは対象になります。所得制限が撤廃されたため、年収にかかわらず就学支援金の申請ができます。ただし、お住まいの都道府県独自の上乗せ助成については、所得要件が残っている場合があるため、あわせて確認してください。
年収の申告は毎年必要ですか?
就学支援金自体は所得制限が無くなったため、以前のように毎年の所得審査で対象外になる心配はなくなりました。ただし、制度上は引き続き課税情報の確認が必要な場合があり、進級時に現況届の提出を求められることがあります。学校からの案内に従って手続きしてください。
私立高校なら誰でも学費が実質無料になりますか?
いいえ、そうとは限りません。就学支援金の上限額(年45万7,200円)を超える授業料を設定している私立高校では、超過分の自己負担が残ります。また、入学金や施設費、修学旅行費等は就学支援金の対象外です。
令和7年度にもらった臨時支援金は令和8年度も続きますか?
いいえ、高校生等臨時支援金は令和7年度限りの制度です。令和8年度からは、恒久的な仕組みとして所得制限が撤廃された就学支援金の通常の枠組みで支給されます。手続きの方法が異なる場合があるため、学校からの案内を確認してください。
通信制高校や高専でも年収に関わらず対象になりますか?
はい、就学支援金は高校の全日制・定時制・通信制、高等専門学校(1〜3年)、特別支援学校の高等部、専修学校の高等課程等、幅広い学校種別が対象です。所得制限が撤廃されたことで、これらの学校種別も年収にかかわらず支給対象になります。ただし、学校種別ごとに上限額が異なるため、通う予定の学校がどの区分に該当するかは事前に確認してください。
年の途中で転職して年収が大きく変わった場合はどうなりますか?
就学支援金の判定に使われる所得情報は、原則として前年の課税情報にもとづきます。ただし所得制限自体が撤廃されているため、年収が大きく変動しても支給の可否には影響しません。都道府県独自の上乗せ助成に所得要件がある場合は、その基準における取り扱いを個別に確認する必要があります。
世帯年収が高いと私立高校の入学金も補助されますか?
いいえ、就学支援金は授業料に充てるための支援であり、入学金や施設費、制服代、修学旅行費等は対象外です。これらの費用は、住民税非課税世帯を中心とした高校生等奨学給付金など、別の制度でカバーされる部分があります。世帯年収が高い場合、入学金等の初期費用は原則として自己負担になります。
兄弟姉妹が同時に高校に通っている場合、年収の判定は変わりますか?
就学支援金そのものの所得制限は撤廃されているため、兄弟姉妹の人数によって支給の可否が変わることはありません。ただし、都道府県独自の上乗せ助成や、高校生等奨学給付金など所得基準が残る他の制度では、扶養家族の人数によって判定基準が変わる場合があります。複数の子どもが同時に高校に通う家庭は、こうした別制度もあわせて確認しておくと、活用できる支援を見落としにくくなります。
免責事項: 本記事の内容は2026年9月時点で確認できた情報にもとづきます。国の就学支援金の制度、および都道府県独自の上乗せ助成の内容・年収要件は変更される場合があるため、申請前に必ず文部科学省・お住まいの都道府県の公式ページで最新の内容をご確認ください。特に都道府県独自の助成は自治体ごとに内容・条件が大きく異なるため、他の家庭の話をそのまま自分の家庭に当てはめないよう注意してください。
