大分市の補助金には、ひとつの名称のもとに複数の支援メニューをまとめているものがあります。中小企業者経営力強化促進補助金も、その一つです。
対象は大分市内の中小企業者で、知的財産権の出願・BCP策定・事業承継・人材育成という4つのメニューから、自社の課題に合うものを選んで使えます。それぞれ費用の一部が補助され、受付は通年ですが予算額に達した時点で締め切られます。
この補助金で何ができるか(4メニューの全体像)
大分市が用意しているのは、次の4つの支援メニューです。
- 知的財産権取得促進事業: 特許権・実用新案権・意匠権・商標権の出願費用を補助
- BCP等策定等支援事業: 事業継続計画(BCP)・事業継続力強化計画の策定や訓練の費用を補助
- 事業承継等支援事業: 会社や事業を譲渡・譲受する際の専門家費用を補助
- 人材育成応援事業: 社員研修・DX研修の費用を補助
いずれも対象者の基本要件は共通で、大分市内に住所・事業所(法人は本社または支社等)を有し、市税を滞納しておらず、市内で継続して1年以上事業を営んでいる中小企業者であることが条件です(暴力団関係者でないことも要件)。
4メニューの補助率・上限額を比較する
自社がどのメニューを使えそうか、まずは全体像を表で比較します。
| メニュー | 対象経費の例 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 知的財産権取得促進事業 | 出願料・弁理士報酬など | 2分の1 | 特許権・実用新案権: 20万円/件/意匠権・商標権: 10万円/件 |
| BCP等策定等支援事業 | 謝金・手数料・訓練の会場借上料等 | 3分の2 | BCP策定・改定: 30万円/事業継続力強化計画: 5万円/机上訓練・実動訓練: 各15万円 |
| 事業承継等支援事業 | 譲渡・譲受にかかる業務委託費 | 3分の2 | 50万円 |
| 人材育成応援事業 | 研修費・講師謝礼・受講料等 | 2分の1(DX研修は3分の2) | 研修対象者1人あたり10万円(1事業者30万円まで) |
重要なのは、4メニューとも予算額に達した時点で受付を締め切るという点です。申請期間は「通年」となっていますが、先着順に近い運用になるため、使いたいメニューが決まったら早めに動くのが安全です。
メニュー①知的財産権取得促進事業:特許・実用新案・意匠・商標の出願費用
対象経費は、特許権・意匠権・商標権であれば出願料・電子化手数料・弁理士報酬、実用新案権であればこれに登録料(3年間分のみ)が加わります。消費税・源泉徴収税は対象外で、1取引10万円(税抜)を超える現金払いも原則対象外です。
異なる業態で費用感をシミュレーションすると、次のようになります。
- 製造業が新製品の特許を出願: 出願料・電子化手数料・弁理士報酬の合計が約31.6万円だった場合、補助率2分の1で15.8万円が補助されます(上限20万円以内のため全額対象)
- 雑貨・アパレル小売業が商品デザインの意匠登録: 弁理士報酬15万円+出願料1.6万円で合計16.6万円の場合、補助額は8.3万円
- 飲食チェーンが屋号のロゴを商標登録: 出願料1.2万円+弁理士報酬10万円で合計11.2万円の場合、補助額は5.6万円
出願手続きそのものは弁理士が担う専門領域のため、この補助金はあくまで弁理士に依頼した費用の一部を補助する制度という位置づけです。
メニュー②BCP等策定等支援事業:策定から訓練まで段階別に補助
BCP等策定等支援事業は、計画づくりから訓練実施まで4つの区分に分かれて上限額が設定されています。補助率はいずれも3分の2です。
- BCP(事業継続計画)の策定・改定: 上限30万円
- 事業継続力強化計画の策定・改定: 上限5万円
- 机上訓練の実施: 上限15万円
- 実動訓練の実施: 上限15万円
例えば、コンサルタントの招へい謝金や資料の製本費など合計45万円をかけてBCPを策定した場合、補助率3分の2を掛けた30万円がちょうど上限に達し、30万円が補助されます。事業継続力強化計画の認定を目指す場合は、申請代行手数料も対象経費に含まれますが上限5万円のため、支出が7.5万円を超えた分は自己負担になります。
メニュー③事業承継等支援事業:譲渡・譲受双方の専門家費用を補助
事業承継等支援事業は、会社や事業を譲渡する側・譲受する側の双方が対象になり得るメニューです。対象経費は、初期診断・企業価値算定・契約書作成・デューデリジェンス(譲受側)など、事業承継やM&Aに伴う業務委託費です。補助率3分の2、上限50万円で、譲受側が中小企業者でない個人の場合は大分県後継者人材バンクへの登録が条件になります。
例えば、専門家への企業価値算定・仲介手数料などで合計100万円を支出した場合、補助率どおりなら66.7万円になりますが、上限50万円が適用され補助額は50万円にとどまります。
事業承継の法務・税務にかかわる実務(契約書の内容確定や登記手続きなど)は各士業の専門領域であり、この補助金は費用の一部を補助する制度である点に注意してください。
国にも事業承継を支援する補助金があります。あわせてこちらの記事で解説しています。
メニュー④人材育成応援事業:社員研修・DX研修の費用を補助
自主研修(社内で企画する研修)と外部研修(外部機関が実施する研修への参加)のどちらも対象です。補助率は2分の1ですが、DX研修は3分の2に引き上げられます。上限額は「研修対象者1人あたり10万円(1事業者につき30万円まで)」という2段階の設計です。
例えば、社員3名にDX研修(1人あたり15万円、合計45万円)を受けさせた場合、1人あたりの補助率3分の2を掛けると10万円となり上限に一致、3名分で30万円が補助されます。これは1事業者あたりの上限30万円にもちょうど達する水準です。
申請の流れとタイミング:契約・研修開始「14日前」が隠れ期限
4メニューとも基本の流れは共通で、「交付申請(事前申請)→ 交付決定 → 事業実施 → 実績報告」という順序で進みます。オンライン申請システムか、窓口持参・郵送のいずれかで手続きします。
- 事前申請: 出願・研修・訓練・業務委託などの開始予定日の14日前までに申請するのが原則です
- 事後申請: 知的財産権取得促進事業・人材育成応援事業・BCP等策定等支援事業の事業継続力強化計画は、事業完了日から30日以内(または令和9年3月31日のいずれか早い日)までの事後申請も選べます
- 事前申請のみ: BCPの策定・訓練、事業承継等支援事業は事前申請だけで、事後申請の仕組みがありません
さらに重要なのは、対象経費の契約や研修の申し込みを先に進めてしまうと、交付決定前の支出として補助対象から外れるおそれがあることです。特許出願や研修申込を検討し始めた時点で、まず創業経営支援課に相談し、事前申請の段取りを確認してから契約に進むのが安全です。
他にも使える補助金がないか気になる場合は、3分でできる補助金診断で全国型・県型の制度もあわせて確認できます。
4メニューのどれが自社に合うか、対象経費の整理や申請書類の準備に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
大分市外に本社がある企業でも対象になりますか?
対象は「大分市内に住所・事業所(法人は本社または支社等)を有すること」が要件です。大分市内に支社や事業所があれば、本社が市外にあっても対象になり得ますが、詳細な判定は創業経営支援課への確認をおすすめします。
4つのメニューは同時に申請できますか?
各メニューはそれぞれ独立した対象経費・上限額で設計されているため、例えば知的財産権の出願と人材育成の研修を同じ年度に別々に申請すること自体は制度上想定されていると考えられます。
通年受付とありますが、いつ申請しても大丈夫ですか?
いずれのメニューも予算額に達した時点で受付を終了します。受付期間は「4月1日〜翌年3月17日または3月31日」と長めに設定されていますが、先着順に近い運用のため、使う予定が固まったら早めに事前申請するのが安全です。
※補助率・補助上限額・申請要件などの制度内容は、年度ごとの予算や公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず大分市公式ページで最新情報をご確認ください。
出典(一次情報): 大分市公式サイト「令和8年度大分市中小企業者経営力強化促進補助金について」/大分市公式サイト「知的財産権取得促進事業」/大分市公式サイト「BCP等策定等支援事業」/大分市公式サイト「事業承継等支援事業」/大分市公式サイト「人材育成応援事業」
問い合わせ先: 大分市 商工労働観光部 創業経営支援課(電話: 097-537-5875)
