主KW: 省力化投資補助金 一般型
「中小企業省力化投資補助金〈一般型〉」は、自社専用に設計する自動化設備・システムが対象です。既製品では対応しきれない、現場ならではの投資に向いている制度です。投資額の1/2から最大2/3、上限は従業員規模に応じて最大1億円まで国が補助してくれます。対象は、中小企業者・小規模事業者などです。
現行の第8回は、2026年8月18日に公募が始まりました。 申請受付は2026年9月中旬、締切は2026年10月中旬を予定していますが、いずれも本記事作成時点(2026年9月9日)では確定していません。詳細は確定次第、公式サイトで更新されます。
同じ省力化投資補助金でも、カタログ製品を選ぶ「カタログ注文型」とは別枠。一般型は事業計画の自由度が高い分、準備に時間がかかります。何に使えて、いくらもらえるのか。順番に見ていきましょう。
人手不足を「人を増やす」ではなく「今いる人数で回す」発想で解決したい――そう考える中小企業にとって、一般型は最も投資規模の大きい選択肢です。生産ラインの自動化、独自の搬送システム、複数工程を一体で構築するプロジェクトなど、カタログ製品では実現できない投資に向いています。一方で、審査は事業計画書の内容そのものが対象になるため、締切までの準備には相応の時間がかかります。
一般型は何に使える?カタログ注文型との違い
一般型の対象は、「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」。既製品の組み合わせでは対応できない、自社専用の自動化ライン・搬送システム・検査工程などが典型例です。まずは対象になる経費の範囲から確認していきましょう。
対象経費
- 機械装置・システム構築費(必須):専用設備の設計・製造・設置にかかる費用
- 技術導入費:導入に必要な知的財産権の使用料など
- 専門家経費:導入にあたって専門家に依頼した場合の費用
- 運搬費:設備の運搬にかかる費用
- クラウドサービス利用費:事業に必要なクラウドサービスの利用料
- 外注費:専門的な業務を外部に委託する費用
- 知的財産権等関連経費:特許権など知的財産権の導入にかかる費用
対象経費のうち「機械装置・システム構築費」は必須項目で、これを含まない申請はできません。他の経費(技術導入費・専門家経費・運搬費・クラウドサービス利用費・外注費・知的財産権等関連経費)は、事業内容に応じて組み合わせます。単なる汎用品の購入や、既存設備の維持管理費用は対象になりません。 あくまで「省力化を実現するための新規の設備投資・システム構築」が対象の中心です。
一般型とカタログ注文型、何が違う?
| 比較項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
|---|---|---|
| 対象になる設備・製品 | 現場に合わせたオーダーメイドの設備・システム | 事務局の製品カタログに登録済みの汎用IoT・ロボット等 |
| 審査の中心 | 事業計画書の内容(省力化効果の定量化・実現可能性等) | 対象製品・対象経費の該当性確認が中心 |
| 締切の仕組み | 回次ごとに締切が設定される公募 | 随時受付(締切なし) |
| 申請〜採択の目安 | 応募申請から採択まで約3か月 | 概ね1〜2か月 |
| 補助上限額の目安 | 最大1億円(従業員規模・賃上げ特例で変動) | 最大1,000万円(従業員規模・賃上げで変動) |
| 補助率 | 1/2(賃上げ特例で2/3。小規模企業者は基本2/3) | 1/2以下(固定。賃上げは上限額のみ上昇) |
| 事業実施期間 | 交付決定日から原則18か月以内 | 交付決定日から原則12か月以内 |
「カタログに載っている既製品で足りるか、それとも現場専用に作り込む必要があるか」が、どちらの型を検討するかの分かれ目です。自社の工程に合わせて個別に設計する投資(生産ラインの自動化、独自の搬送・仕分けシステムなど)は一般型を検討しましょう。締切のない随時受付を優先したいなら、まずカタログ注文型で足りないかどうかを先に確認するという進め方もあります。
いくらもらえる?従業員規模別の補助上限額と補助率
「最大1億円」は無条件ではありません。上限額は従業員規模によって5段階に分かれています。まずは自社の従業員数がどの区分に該当するかを確認しましょう。
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅賃上げ特例時) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | 1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3) |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 | 1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3) |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 | 1/2(大幅賃上げ特例達成で2/3) |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 | 1/2(大幅賃上げ特例達成で2/3) |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 | 1/2(大幅賃上げ特例達成で2/3) |
「小規模企業者・小規模事業者」は、常時使用する従業員が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、それ以外の業種で20人以下の事業者です。この場合、大幅賃上げ特例を満たさなくても補助率は基本2/3になります。
一般型に採択されるための「基本要件」
一般型では、補助対象になるために事業計画で以下の基本要件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると審査の対象外になります。
- 労働生産性の年平均成長率が+4.0%以上((営業利益+人件費+減価償却費)÷年間総労働時間)
- 1人当たり給与支給総額の年平均成長率が+3.5%以上
- 事業所内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
- 常時使用する従業員が21人以上の場合は、育成支援関連の行動計画の策定・公表が必須
3つ目の「+30円以上」は、時給の話です。地域別最低賃金が1,000円の地域なら、自社でいちばん時給の低い人を1,030円以上にします。2つ目の給与支給総額+3.5%は、人数が変わらなければ月給30万円の社員を毎年1万500円ずつ上げる計算です。設備で人手を浮かせて、その分を賃金に回すという組み立てになります。
さらに、年平均成長率+6.0%以上かつ事業所内最低賃金+50円以上を達成する「大幅賃上げ特例」を満たすと、補助上限額が250万〜2,000万円上乗せされます。
カタログ注文型は「対象製品を選ぶ」仕組みです。一般型は事業計画そのものが審査の対象です。審査で見られるのは省力化効果の定量化と、事業の実現可能性。賃上げや事業承継・M&A実施など、複数の加点項目もあると案内されています。
基本要件を満たせなかった場合はどうなるか
基本要件のうち、特に給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上は、事業実施後に達成できなかった場合、補助金の一部返還を求められることがあります。ただし、賃上げの努力を行ったにもかかわらず、自社の責によらない正当な理由で目標未達となった場合には、返還が免除される制度も用意されています。事業計画を立てる段階で、無理のない賃上げ計画を組み込んでおくことが重要です。
加点項目にはどんなものがあるか
基本要件を満たしたうえで、審査ではさらに加点項目が評価されます。公式に案内されている加点項目の例には、事業承継・M&Aの実施、賃上げ目標のさらなる上積み、地域における労働生産性向上への貢献などが含まれます。加点項目をどう事業計画に盛り込むかによって、採択の可能性が変わってくると考えられます。
業種横断・シミュレーション
同じ「一般型」でも、業種と現場の課題によってオーダーメイド設備の中身はまったく変わります。ここでは3つの業種を例に、いくら投資するといくら補助になるかを見てみましょう。
① 総菜・食品加工業(従業員12人・小規模企業者・「6〜20人」区分) 手作業に頼っていた総菜の充填・計量・パック詰め工程を、自社の生産ラインに合わせて自動化したい。専用の充填ライン構築の見積もりは2,250万円。 → 従業員12人は小規模企業者に該当し、基本要件を満たせば補助率は基本2/3。2,250万円 × 2/3 = 1,500万円の補助(上限1,500万円ぴったり)。 大幅賃上げ特例を満たすと上限額が2,000万円に上がるため、投資額を3,000万円まで拡大しても2,000万円の補助を受けられます(3,000万円 × 2/3 = 2,000万円ちょうど)。増えた750万円の投資枠で、金属探知機や自動ラベラーまで追加導入できます。
② 印刷会社(従業員35人・「21〜50人」区分) 断裁・丁合・製本・梱包という後工程を、既存の印刷ラインの配置に合わせて一体で自動化したい。専用ライン構築の見積もりは6,000万円。 → 6,000万円 × 1/2 = 3,000万円の補助(上限3,000万円ぴったり)。 大幅賃上げ特例を満たすと補助率は2/3に上がり、6,000万円 × 2/3 = 4,000万円(新しい上限4,000万円ぴったり)。浮いた1,000万円分の補助で、断裁後の自動検品・出荷仕分けシステムまで追加導入できます。
③ 物流倉庫・配送センター(従業員80人・「51〜100人」区分) 既存の倉庫レイアウトに合わせて、入庫から仕分け・出庫までを一体で自動化する専用の搬送コンベア・仕分けシステムを構築したい。見積もりは9,000万円。 → 9,000万円 × 1/2 = 4,500万円の補助(上限5,000万円の範囲内)。 大幅賃上げ特例を満たすと補助率は2/3に上がり、9,000万円 × 2/3 = 6,000万円(新しい上限6,500万円の範囲内)。増えた1,500万円分の補助で、ピッキング支援用の自律走行ロボット(AMR)や音声ピッキングシステムまで追加導入できます。
まずは自社の従業員規模がどの区分に入るか、小規模企業者・小規模事業者に該当するかを確認しましょう。区分によって上限額が大きく変わるため、投資計画を立てる前に自社の位置づけを把握しておくことが最初のステップです。
人手不足の解消以外にも、販路開拓や新分野展開など、やりたいことによっては別の補助金のほうが自社に合っているケースも十分あります。この補助金だけで判断がつかないと感じたら、他に使える補助金がないか、あわせて探してみるのも有益です。
締切はいつ?第8回のスケジュール
一般型は回次ごとに締切が設定される公募です。過去の実績を見ると、公募開始から締切までは約1〜1.5か月、締切から採択発表までは約3〜4か月というペースで回っており、年間を通じて複数回のチャンスがあります。
| 回次 | 公募開始 | 申請受付開始 | 締切 | 採択発表 |
|---|---|---|---|---|
| 第7回 | 2026年6月5日(金) | 2026年7月1日(水) | 2026年7月31日(金)17:00 | 2026年11月中旬(予定) |
| 第8回 | 2026年8月18日(火) | 2026年9月中旬(予定) | 2026年10月中旬(予定) | 2027年2月上旬(予定) |
公式サイトでは「公募回は年3〜4回を予定」と案内されています。第8回の詳細な日程は、確定し次第、公式サイトで更新されます。
第8回の締切に間に合わない場合でも、カタログ掲載製品で足りる投資であれば、締切のない随時受付の「カタログ注文型」を検討するという選択肢があります。また、応募申請中や交付決定後で補助金の支払いが完了していない事業者は、新たな申請ができない点にも注意しましょう(交付決定とは、採択の後に届く「補助金を出します」という正式な通知のことです。この通知より前に発注・契約した費用は対象外になります)。
事業実施期間は、交付決定日から原則18か月以内(採択発表日から20か月後までが上限)です。補助金は経費を立て替えて支払った後に実績報告を経て交付される仕組みのため、着金までの資金繰りに不安がある場合は、早い段階で金融機関に相談しておくと安心です。
過去7回の実績を見ると、公募開始から締切まではおおむね1〜1.5か月と短めです。事業計画書の作成には、省力化効果の定量化や基本要件の充足状況の整理など、一定の準備期間が必要になります。公募開始を待ってから準備を始めるのではなく、公募の気配を感じた段階(前回締切から2〜3か月後あたり)で計画づくりに着手しておくと、短い準備期間に慌てずに済みます。
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を先に押さえておくほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 導入を決めたらすぐ | GビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請に必須。取得に時間を要する場合がある) | マイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類 |
| 申請前 | 導入したいデジタル技術活用設備(ICT・IoT・AI・ロボット等)を選定し、事業計画書を作成する | 事業計画書、決算書等 |
| 〜締切(第8回は2026年10月中旬予定) | 電子申請システムで応募申請 | 事業計画書、決算書、その他必要書類 |
| 応募申請〜採択:約3〜4か月 | 審査(事業計画書の内容が審査対象) | ― |
| 採択後・交付申請時 | 導入する設備・システムについて原則2者以上から同一条件の見積もりを取得する | 相見積書、発注先選定の妥当性資料 |
| 交付決定日〜事業実施期間終了(原則18か月以内・採択発表日から20か月後まで) | 事業実施(設備の発注・導入・支払い) | 契約書・見積書・請求書・領収書などを保管 |
| 事業完了後30日以内(または事業完了期限日のいずれか早い日) | 実績報告 → 補助額確定・請求 → 入金 | 実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など) |
| 事業計画期間1年目終了後〜5年間、毎年 | 効果報告(省力化効果の達成状況) | 稼働状況・生産性向上の達成状況に関する報告 |
特に注意したいのが、交付決定より前に設備を発注・契約してしまうと補助対象外になること。「見積もりが取れたから」「早く導入したいから」と焦って先に発注してしまうと、その経費は補助されません。相見積もり(原則2者以上・同一条件)は採択後の交付申請時に必要になりますが、発注そのものは交付決定を待ってから行いましょう。
「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方
対象になるのは、中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人等です。順番に、自社がどこに当てはまるかを確認していきましょう。
中小企業者にあたるかどうかは、資本金または常時使用する従業員数のいずれかが、業種ごとの基準以下であることで判断されます。両方を満たす必要はなく、どちらか一方で構いません。
| 業種 | 資本金の基準 | 従業員数の基準 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業(ソフトウェア業を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
このほか、常時使用する従業員数が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、それ以外の業種で20人以下の事業者は「小規模企業者・小規模事業者」に該当し、一般型では大幅賃上げ特例なしでも補助率が2/3になります。
例:フルタイム社員6人+パート4人の食品加工業(法人) → 製造業の基準は「資本金3億円以下または従業員300人以下」。従業員10人・資本金がこの基準以下であれば中小企業者として対象です。さらに従業員10人は「20人以下」の小規模企業者の基準も満たすため、大幅賃上げ特例を達成しなくても補助率2/3が適用される見込みです(基本要件は別途満たす必要があります)。
自社が中小企業者・小規模企業者のどちらにあたるか、基本要件を満たせそうかの最終判断に迷う場合は、公式サイトで確認するか、専門家に相談すると確実です。特に労働生産性の年平均成長率+4.0%以上という基本要件は、現状の数値を把握していないと達成可能かどうかの見込みが立てにくいため、まずは自社の直近の決算数値をもとに試算してみることをおすすめします。
よくある質問
一般型とカタログ注文型、どちらに申請すればいいですか?
カタログに載っている既製のIoT・ロボット等で足りる投資であればカタログ注文型、自社の現場に合わせて個別に設計・構築する必要がある投資であれば一般型を検討するのが基本の考え方です。自社の投資内容がどちらの型にも当てはまりそうな場合は、事務局や専門家に事前に相談することをおすすめします。
第8回はいつ申請できますか?
第8回は2026年8月18日に公募が始まりました。申請受付開始は2026年9月中旬、締切は2026年10月中旬を予定していますが、いずれも本記事作成時点(2026年9月9日)で確定していません。詳細は公式サイトで確認してください。
交付決定前に設備を発注してしまっても大丈夫ですか?
いいえ、交付決定より前に発注・契約してしまうと、その経費は補助対象外になります。事業計画書の作成・応募申請までは進めてよいですが、実際の発注は交付決定の通知を受けてから行う必要があります。
基本要件の給与支給総額の目標を達成できなかったらどうなりますか?
補助金の一部返還を求められる場合があります。ただし、賃上げの努力を行ったにもかかわらず自社の責によらない正当な理由で未達となった場合には、返還が免除される制度も用意されています。事業計画を立てる段階で、無理のない賃上げ計画を組み込んでおくことが重要です。
