東京都の家庭用蓄電池の助成は、令和8年度(2026年度)から新設が単価10万円/kWh・上限120万円/戸に変わりました。 対象は都内の住宅に設置する個人(法人・管理組合も対象になりますが、この記事は住宅設置向けです)。DR実証への参加で+10万円/件、IoT機器で5万円/台の上乗せがあります。事前申込は令和8年5月29日開始、交付申請兼実績報告は令和8年6月30日開始で、窓口はクール・ネット東京「令和8年度 家庭における蓄電池導入促進事業」です。
「東京都は蓄電池の補助が手厚い」と聞いて調べ始めると、まず金額の情報がバラバラで戸惑うはずです。12万円/kWhと書いてあるページもあれば、10万円/kWhと書いてあるページもある。上限120万円という数字も、去年までの記事には出てきません。
理由ははっきりしています。令和8年度(2026年度)から、東京都の蓄電池助成は単価と上限の両方が変わりました。 単価は下がり、代わりに上限額が新しく設けられ、DR実証への参加に対する上乗せが厚くなっています。さらに国の家庭用蓄電池の補助金は、2026年5月29日に予算上限に達して受付を終えています。
この記事では、東京都環境局と東京都環境公社が公表している令和8年度の事業概要資料をもとに、いま実際にいくら受け取れるのか、何を先にやらなければいけないのかを整理します。
年度をまたいだ制度全体の動きや、国の補助金がなぜ閉じたのかは蓄電池の補助金2026年度版にまとめています。
令和8年度でここが変わった(去年の記事の数字は使えません)
まず差分だけを先に押さえてください。東京都は令和8年2月18日に令和8年度事業の概要を公表しており、蓄電池については「見直し」と「拡充」の両方が入っています。
| 項目 | 令和7年度まで | 令和8年度(2026年度) |
|---|---|---|
| 新設の単価 | 12万円/kWh | 10万円/kWh |
| 新設の上限 | 上限の定めなし | 120万円/戸(DR実証に参加しない場合) |
| 増設の単価 | — | 6万円/kWh |
| 増設の上限 | — | 72万円/戸(DR実証に参加しない場合) |
| DR実証参加の上乗せ | — | +10万円/件 |
| IoT機器 | — | 5万円/台 |
※上表は東京都環境局・東京都環境公社「令和7年度事業の受付期間及び令和8年度事業の概要・今後の予定について」(令和8年2月18日公表)の別紙2にもとづきます。
「単価が下がったから損になった」と読みたくなりますが、そう単純ではありません。これまで上限が無かったところに120万円という枠ができたので、影響を受けるのは大容量を入れる人だけです。
たとえば10kWhの蓄電池なら、令和7年度は12万円×10=120万円、令和8年度は10万円×10=100万円。ここは20万円の差が出ます。一方で16kWhなら、令和7年度は192万円だったところ、令和8年度は上限に当たって120万円です。容量が大きいほど差が開く設計になっています。
そして単価の見直しと同時に、DR実証への参加で+10万円/件、IoT機器で5万円/台の上乗せが用意されました。 どちらも新設・増設のときに参加すれば付くもので、両方を取れば15万円が戻ってきます。
いくらもらえるのか(容量別の試算)
自分の場合いくらになるのかは、蓄電容量から逆算するのが早いです。新設の場合、10万円/kWhを掛けて、120万円で頭打ちになる、という2ステップです。
| 蓄電容量 | 単価分(10万円/kWh) | 上限適用後 | DR実証+IoT機器を足すと |
|---|---|---|---|
| 5.0kWh | 50万円 | 50万円 | 65万円 |
| 7.0kWh | 70万円 | 70万円 | 85万円 |
| 9.8kWh | 98万円 | 98万円 | 113万円 |
| 12.0kWh | 120万円 | 120万円 | 135万円 |
| 16.4kWh | 164万円 | 120万円(上限) | 135万円 |
※DR実証参加+10万円、IoT機器5万円/台を1台ぶん加えた場合です。 ※助成額は助成対象経費(税抜)が上限になります。単価で計算した額が工事費込みの税抜金額を超える場合は、税抜金額のほうが助成額になります。
ここで見落としやすいのが最後の注記です。単価で計算した額が、実際に払った税抜の金額を超えることはありません。 「10kWhだから必ず100万円」ではなく、「10kWhで、かつ税抜の契約金額が100万円以上なら100万円」という読み方が正確です。相見積もりで極端に安い工事にした場合、助成額もそれに合わせて下がります。
12kWhでちょうど上限に届くので、12kWhを超える容量を検討している方は、助成額が増えない領域に入っていることを踏まえて容量を決めることになります。
増設は単価も上限も別枠(6万円/kWh・72万円/戸)
すでに蓄電池を持っていて、蓄電ユニットだけを足す場合は別の区分になります。
- 単価: 6万円/kWh
- 上限: 72万円/戸(DR実証に参加しない場合)
- 要件: 太陽光パネルが設置済であること
新設の10万円/kWhより単価が低く、上限も低い設定です。増設は既存の設備を活かすぶん、新設ほど費用がかからないという前提で組まれています。
増設でもDR実証に参加すれば+10万円/件、IoT機器は5万円/台が付きます。
太陽光が無いと使えないのか(ここでつまずく人が多い)
蓄電池だけを入れたい、という相談は多いのですが、東京都の助成には次の要件があります。
新設の場合: 太陽光パネルが設置済または同時設置であること。太陽光パネルがない場合は、再生可能エネルギー電力メニューに契約すること。
つまり太陽光が無くても道は残っています。 再エネ電力メニュー(電力会社が提供する、再生可能エネルギー由来をうたった料金プラン)に契約すれば、太陽光を設置しなくても対象になります。マンションや賃貸で屋根に載せられない方、屋根の形状や日射条件で太陽光を諦めた方は、この経路を検討することになります。
増設の場合: 太陽光パネル設置済であることが要件です。増設には再エネ電力メニューの代替経路がありません。ここが新設と違う点です。
機器そのものにも条件があります。SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)の登録機器であることが求められます。加えて、令和8年10月1日以降に事前申込をする場合は、国の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(戸建・集合住宅ZEH化等支援事業)」の補助対象機器としてSIIの令和8年度登録機器一覧に載っているものだけが対象になります。
年度の途中で対象機器の範囲が絞られるということなので、10月1日をまたいで検討している方は、選んだ機種が新しい一覧に載っているかを施工業者に確認してください。
順序を間違えると受けられません(事前申込が先)
東京都の助成でいちばん多い失敗は、金額の勘違いではなく順序です。
① 事前申込(令和8年5月29日〜)
② 契約
③ 工事・設置
④ 交付申請兼実績報告(令和8年6月30日〜)
⑤ 交付決定・振込
原則として、助成対象機器の契約締結前に事前申込が必要です。 契約してから「そういえば補助金があった」と気づいても、そこから遡って申請することは原則できません。
ただし例外の扱いが1つ公表されています。令和8年4月1日から令和8年度事業の事前申込受付開始日までの受付停止期間に契約締結または契約・工事完了した事業については、過去に事前申込をしていない場合に限り、各助成要件への適合を前提として令和8年度事業の助成対象とする予定である、とされています。年度の切り替えで受付が止まる期間があるための救済です。
もう1つ、どの年度の助成内容が適用されるかは「クール・ネット東京が事前申込を受け付けた日」で決まります。 令和7年度中に事前申込を済ませていれば令和7年度の条件(12万円/kWh・上限なし)が適用され、令和8年度に事前申込をすれば令和8年度の条件になります。工事の日でも契約の日でもなく、事前申込の受付日が基準です。
令和8年度から支払い方法に条件が付きました
これは制度の中身の変更ではありませんが、実務では致命的になりうるので独立して書きます。
令和8年度に事前申込を受け付けた申請から、実績報告の提出時に「金融機関発行の証明書等」の提出が必須になりました。 不正防止対策の一環です。
現金の受け渡しによる取引は、助成の対象外になります。
認められる証明書の例として、都は次を挙げています。
- ローン契約明細書(支払計画明細など)
- ATM口座振込明細
- ATM現金振込明細(送金明細)
- 金融機関窓口での振込明細
- ネットバンキングの振込履歴画面の印刷・スクリーンショット
- クレジットカードの利用明細
- 電子マネー・デビットカード等の支払明細
工事代金を現金で手渡す慣行が残っている場合、それだけで助成が受けられなくなります。契約の段階で支払い方法を振込かカードに決めておいてください。
国の補助金との併用は、いまは考えなくてよい
「国の補助金と都の助成を両方もらう」という話をよく見かけますが、2026年度に関しては、国の家庭用蓄電池の補助金は既に受付を終えています。
国の制度は「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」(実施:一般社団法人環境共創イニシアチブ)で、上限は1申請あたり60万円でした。
- 交付申請受付開始: 2026年3月24日
- 当初の受付終了予定: 2026年12月10日
- 実際の終了: 2026年5月29日(交付申請額の合計が予算に達したため公募終了)
- 予算: 54億円程度
当初12月10日までの予定だった受付が、開始から約2か月で閉じています。 そのため、いまから蓄電池の導入を検討する方が使えるのは、実質的に東京都の助成と、お住まいの区市町村の制度です。
国の制度の推移と、次年度に向けた考え方は蓄電池の補助金2026年度版で詳しく扱っています。
区市町村の上乗せはどう調べるか
東京都内では、都の助成に加えて区市町村が独自に上乗せしている場合があります。ただし区市町村の制度は年度ごとに募集の有無・予算枠・金額が変わり、年度途中で締め切られることも珍しくありません。
ここで一覧を並べても、読んだ時点で古くなっている可能性が高いので、確認の手順だけ書きます。
- お住まいの区市町村名+「蓄電池 助成」「省エネ設備 補助」で公式サイト(
.lg.jp)を検索する - 今年度(令和8年度)の案内があるかを見る。 前年度の案内しか無いなら、募集していないか、まだ開始していない可能性があります
- 受付期間と予算枠の残りを確認する。「予算がなくなり次第終了」と書かれている制度は、期限より先に閉まります
- 都の助成と併給できるかを窓口に確認する。 都の助成と区市町村の助成は別制度なので併用できることが多いのですが、区市町村側で「他の助成を受けている場合は対象外」としているケースもあります
なお東京都の助成事業どうしの重複受給は禁止されています。 都および公社の同種助成金との重複受給はできません。
太陽光・V2H・エコキュートも同じ枠組みの中にあります
東京都の「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」は、蓄電池だけの事業ではありません。令和8年度は次の6事業が並んでいます。
| 事業 | 主な助成内容(令和8年度) |
|---|---|
| 家庭における蓄電池導入促進事業 | 新設10万円/kWh・上限120万円/戸 |
| 家庭における太陽光発電導入促進事業 | 新築3.6kW以下 12万円/kW(上限36万円)、既存3.75kW以下 15万円/kW(上限45万円) |
| 戸建住宅におけるV2H普及促進事業 | 1/2(上限50万円)。太陽光・EV/PHV・V2Hが揃う場合は10/10(上限100万円) |
| 既存住宅における省エネ改修促進事業 | 高断熱窓・ドア(サイズ×性能の単価制)、断熱材1/3(上限100万円/戸)、高断熱浴槽9.5万円/戸 |
| 熱と電気の有効利用促進事業 | エコキュート等 太陽光連携14万円/台、再エネ電力契約5万円/台、DR実証参加8万円/台 ほか |
| 分譲マンション省エネ型給湯機器導入促進事業 | エコジョーズ・エコフィールへの交換 追い焚きあり7万円/台、なし5万円/台 ほか |
蓄電池と太陽光を同時に入れる、V2Hも一緒に検討する、といった組み合わせは制度上想定されています。V2Hについては、太陽光発電設備・EVまたはPHV・V2Hの3つが揃う場合に補助率10/10(上限100万円)という強い条件があります。EVを持っている、または買う予定がある方は、蓄電池とV2Hのどちらを先に入れるかで受け取れる額が変わります。
太陽光の詳細は東京都の太陽光補助金、窓や断熱材は断熱リフォームの補助金にまとめています。
対象外になりやすいケース
助成が受けられない、あるいは減額されるパターンを整理します。
| 状況 | どうなるか |
|---|---|
| 事前申込より前に契約した | 原則として対象外。年度の受付停止期間には例外の扱いがあります |
| 現金で工事代金を支払った | 対象外(令和8年度から金融機関発行の証明書等が必須) |
| SII登録機器でない蓄電池を選んだ | 対象外 |
| 太陽光が無く、再エネ電力メニューにも契約していない(新設の場合) | 対象外 |
| 太陽光が無い状態で増設だけしようとした | 対象外(増設は太陽光設置済が要件) |
| 都・公社の同種助成金を既に受けている | 重複受給は不可 |
| 税抜の契約金額が単価の計算額より少ない | 助成額は税抜の契約金額まで |
| 都外の住宅に設置した | 対象外(都内の住宅への新規設置が要件) |
このほか、機器の設置にあたって各種ガイドラインの準拠と、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」で定める日常生活の騒音・振動の基準の遵守が、申請時の誓約事項になっています。蓄電池の室外機は稼働音があるので、隣家との距離が近い都内の住宅では設置場所の相談が実務上の論点になります。
申請の実務でつまずきやすいところ
助成金の申請そのものは施工業者が代行することが多いのですが、代行を頼む場合も含めて、施主側で押さえておくべき点があります。
手続代行者に任せきりにしない。 東京都は令和8年7月10日に「手続代行者への措置等について」を公表しており、代行者に関する注意喚起を出しています。誰が申請するにせよ、事前申込がいつ受け付けられたか(=どの年度の条件が適用されるか)は、施主自身が把握しておいてください。
書類は工事の前後で発生する。 事前申込の段階では見積書や設置予定の機器情報、実績報告の段階では領収書・振込明細・設置写真などが必要になります。とくに支払いの証明は後から作れません。 現金払いにしてしまってから証明書を用意することは不可能です。
交付決定と振込には時間がかかる。 交付申請兼実績報告の受付開始が令和8年6月30日で、そこから審査が入ります。工事代金は先に全額を支払い、助成金は後から戻ってくる仕組みなので、資金繰りはその前提で組んでください。
よくある質問
東京都の蓄電池助成はいくらもらえますか?
新設なら蓄電容量1kWhあたり10万円で、上限は1戸あたり120万円です(DR実証に参加しない場合)。既設蓄電池への蓄電ユニット増設は1kWhあたり6万円、上限72万円/戸です。DR実証に参加すると+10万円/件、IoT機器を設置すると5万円/台が上乗せされます。ただし助成額は助成対象経費(税抜)が上限なので、単価で計算した額が実際の税抜金額を超えることはありません。
令和7年度に事前申込をしていれば、12万円/kWhのままですか?
はい。東京都は「クール・ネット東京が事前申込を受け付けた日の年度における助成内容を適用する」としています。令和7年度事業の事前申込の受付は令和8年3月31日(火)17時に停止しているので、それまでに受け付けられていれば令和7年度の内容が適用されます。工事や契約の日ではなく、事前申込の受付日が基準になる点にご注意ください。
太陽光が無くても蓄電池の助成は受けられますか?
新設であれば受けられる可能性があります。太陽光パネルが設置済または同時設置であることが原則ですが、太陽光パネルがない場合は再生可能エネルギー電力メニューに契約することが代替の要件として示されています。ただし既設蓄電池への蓄電ユニット増設は「太陽光パネル設置済であること」が要件で、この代替経路はありません。
国の補助金と併用できますか?
2026年度については、国の家庭用蓄電池の補助金である「令和7年度補正 DR家庭用蓄電池事業」が2026年5月29日に予算到達で公募を終えているため、これから申請することはできません。当初は2026年12月10日までの予定でしたが、開始から約2か月で締め切られています。区市町村の助成については、都の助成と併用できる場合が多い一方、区市町村側で制限を設けていることもあるため、お住まいの自治体の窓口にご確認ください。
工事代金を現金で払っても大丈夫ですか?
いいえ、令和8年度に事前申込を受け付けた申請からは対象外になります。不正防止対策として、実績報告の提出時に「金融機関発行の証明書等」の提出が必須になりました。振込明細、ネットバンキングの履歴、クレジットカードの利用明細、ローン契約明細書などが認められる例として挙げられています。契約の段階で支払い方法を決めておいてください。
12kWhより大きい蓄電池を入れる意味はありますか?
助成金だけを見れば、12kWhで上限120万円に到達するため、それ以上の容量を入れても助成額は増えません。ただし助成額と設備の適正容量は別の話です。日中の発電量、夜間の使用量、停電時に何時間持たせたいかによって必要な容量は変わります。助成の上限に合わせて容量を決めるのではなく、必要な容量を決めたうえで助成がいくらになるかを計算する、という順序をおすすめします。
申請してから振り込まれるまでどれくらいかかりますか?
東京都の公式資料では、蓄電池事業について具体的な審査期間の日数は示されていません。交付申請兼実績報告の受付が令和8年6月30日から始まり、そこから審査が行われます。工事代金は先に全額支払う必要があるため、助成金の入金を工事代金の支払いに充てる計画は立てないでください。具体的な見通しは、クール・ネット東京の蓄電池システム担当(03-6258-1510)にお問い合わせいただくのが確実です。
