親子間の承継は、この補助金では特別扱いされません。むしろ、主要な対象の一つです。
事業承継・M&A補助金の4つの枠のうち、親族内承継・従業員承継の後継者を想定しているのが事業承継促進枠です。補助上限800万円(賃上げ要件を満たすと1,000万円)、補助率1/2以内(小規模事業者は2/3以内)。M&Aで第三者から会社を譲り受ける場合と、同じ制度の中で扱いが分かれています。
親子間の承継は対象になる(結論)
事業承継促進枠は、承継の相手が親族かどうかを問いません。親から子へ、親族から従業員へ、いずれも対象です。
対象経費は、設備費・産業財産権等関連経費・謝金・旅費・外注費・委託費など。承継した後継者が、新しい設備投資や取組にかかる費用として使えます。
「継ぐだけ」では対象にならない可能性がある理由
ここで注意したいのが、承継そのものではなく、承継後の取組が審査対象という点です。
事業承継促進枠には、「承継後の取組が経営革新に資すること」という要件があります。認定経営革新等支援機関から、この確認書を取得する必要があります。
単に古い設備を同じものに置き換えるだけでは、経営革新とは評価されにくくなります。新しい商品・サービス・生産方式・顧客層への展開など、承継を機にした変化が計画に組み込まれているかが見られます。
この要件は今回に限った話ではありません。前身の制度でも、承継後の取組に対する審査は同じような考え方で行われてきました。「継ぐ」こと自体は目的ではなく、その先で何を変えるかが問われるという設計は、名称が変わる前から一貫しています。
いくらもらえるか(親子承継のシミュレーション)
食堂(従業員8人・親から子へ承継し、厨房設備とPOSレジを更新) 子どもが後を継ぐことになり、老朽化した厨房設備とPOSレジ、空調を一新したい。新メニューの開発や非対面決済の導入もあわせて計画し、見積もりは300万円(事業承継促進枠)。 → 300万円 × 1/2 = 150万円の補助(上限800万円の範囲内)。
工務店(従業員15人・親族内承継+施工管理システムの導入) 先代から息子へ承継し、紙の図面管理から施工管理システムへ切り替える計画。あわせて新しい工法の研修も実施する予定で、見積もりは450万円。 → 450万円 × 1/2 = 225万円の補助(上限800万円の範囲内)。賃上げ要件を満たせば上限は1,000万円まで広がります。
対象になる設備投資・ならない投資
- 対象になる例:厨房設備の更新にあわせて、新メニュー開発とキャッシュレス決済を導入する投資
- 対象になる例:紙管理からシステム化への切り替えで、新しい受注方式に対応する投資
- 対象外になりやすい例:同じ性能・同じ用途の設備を、そのまま入れ替えるだけの投資
同じ金額の設備投資でも、計画に「変化」が書かれているかどうかで評価が変わります。
認定経営革新等支援機関という関門
事業承継促進枠を申請するには、認定経営革新等支援機関(税理士・商工会議所等)から確認書を取得する必要があります。
- 承継後の取組内容を、支援機関に相談する
- 「経営革新に資する取組」であることの確認書を発行してもらう
- 確認書を添えて電子申請システム(Jグランツ)で申請する
公式に明記があるのはここまでです。個別の投資が経営革新に当たるかどうかの最終的な判断は、支援機関との相談の中で固まります。早めに相談を始めるほど、計画を練り直す時間を確保できます。
税務・法務の話は補助金と別
親子間の承継では、株式の贈与・相続、税務上の扱いが気になる場面が出てきます。これは補助金の対象・対象外とは別の話です。
補助金が見ているのは、承継後にどんな設備投資・取組を行うかという事業計画の中身です。株式の移転方法や税負担の判断は、税理士に相談する領域になります。
締切と申請の流れ
| タイミング | やること |
|---|---|
| 承継の方向性が固まったら | GビズIDプライムを取得する(発行に2〜3週間) |
| 承継後の取組を考え始めたら | 認定経営革新等支援機関に相談し、確認書の発行を依頼する |
| 公募期間中 | 電子申請システム(Jグランツ)で申請 |
| 採択発表後 | 交付決定(契約・発注はここから) |
| 事業実施後 | 実績報告 → 入金 |
直近の第15次公募は、2026年7月24日17:00に受付を終えています。次回(16次)の公募は本稿執筆時点で未発表です。確認書の取得には時間がかかるため、次の公募を待つ間に支援機関への相談を進めておくと動きやすくなります。
よくある質問
親子間の承継だと補助率は下がりますか?
いいえ。補助率は承継の相手が親族かどうかではなく、事業規模(小規模事業者に該当するか)で決まります。小規模事業者に該当すれば、補助率は2/3まで上がります。
何もせず、そのまま継ぐだけでは使えませんか?
その場合は対象になりにくいと考えたほうが安全です。事業承継促進枠は、承継後の取組が「経営革新に資すること」を要件としています。設備を入れ替えるだけでなく、新しい商品・サービス・顧客層への展開などをあわせて計画に盛り込む必要があります。
相続や贈与の税金についても相談できますか?
補助金の申請とは別に、税理士への相談をおすすめします。この記事で扱っているのは、あくまで補助金の対象になるかどうかという範囲です。
「経営革新に資する取組かどうか」は、投資内容によって判断が分かれる実体判断です。どう位置づけて事業計画に書けば伝わりやすいかは、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、記入例とあわせて紹介しています。
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この補助金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠/専門家活用枠/PMI推進枠/廃業・再チャレンジ枠) |
| 対象業種 | 全業種 |
| 利用目的 | 事業を引き継ぎたい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業・小規模事業者(業種により資本金・従業員数で判定。目安300人以下) |
| 補助上限額 | 事業承継促進枠は800万円(賃上げ要件で1,000万円)。特例で最大2,000万円 |
| 補助率 | 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) |
| 申請受付 | 第15次公募は2026年7月24日(金)17:00に終了。次回(16次)は公式サイトで随時発表 |
| 公式サイト | 事業承継・M&A補助金 公式サイト |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。
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経営革新の該当性や、税務・相続の判断に迷う場合は、専門家に無料相談するのも一つの方法です。
※補助上限額・補助率・公募スケジュールなどの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
出典(一次情報): 事業承継・M&A補助金 公式サイト/令和7年度補正予算(15次公募)/中小機構「補助金活用ナビ」事業承継・M&A補助金のご案内
