主KW: 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金の第20回は、補助率2/3・補助上限50万円が基本です。ここにインボイス特例(+50万円)と賃金引上げ特例(+150万円)を積み上げて、最大250万円になります。申請の受付は2026年11月5日から12月15日17時まで。ただし、その前に12月4日という別の期限があります。
「250万円」という数字だけを見て動くと、ほぼ確実に外します。基本の上限は50万円で、そこから先は条件を満たした人だけが積み上げられる設計だからです。しかも積み上げのうち大きいほう(150万円)は、従業員を雇っていない事業者には構造上使えません。
この記事では、第20回の公募要領(第8版)に書かれていることだけを使って、「自分はいくらまで狙えるのか」「何が買えるのか」を順番に確認していきます。
「250万円」に届く人と、届かない人
上限は4段階に分かれます。基本の50万円に、2つの特例が乗る形です。
| 使える特例 | 補助上限額 | 補助率 | 上限に届く投資額の目安 |
|---|---|---|---|
| なし(基本) | 50万円 | 2/3 | 75万円 |
| インボイス特例のみ | 100万円 | 2/3 | 150万円 |
| 賃金引上げ特例のみ | 200万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 300万円(3/4なら約267万円) |
| 両方 | 250万円 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 375万円(3/4なら約334万円) |
右端の列が、実務でいちばん効きます。補助率が2/3なので、上限50万円を丸ごと使うには75万円の投資が要るという関係です。50万円の投資しかしないなら、戻ってくるのは約33万円です。
2つの特例の中身は次のとおりです。
- インボイス特例(+50万円):2021年9月30日から2023年9月30日までの間に免税事業者だった、または2023年10月1日以降に創業した事業者で、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合に使えます。すでにインボイス登録済みなら、多くの小規模事業者が当てはまります
- 賃金引上げ特例(+150万円):補助事業の実施期限日(2028年3月31日)を終点とする12か月と、その前年同月の12か月を比べて、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増やすことを約束する特例です
金額の大きさで言えば、賃金引上げ特例が本命です。しかし、これには前提があります。
賃金引上げ特例は、従業員がいないと使えません
公募要領は、賃金引上げ特例の「従業員」を申請要件の「常時使用する従業員」とは別物として定義しています。こちらの従業員には非常勤も含みますが、代表者・役員・専従者は含めません。
そのうえで、公募要領には次の注記があります。
賃金引上げの比較対象期間(補助事業実施期限日を終点とする12か月およびその前年同月の12か月)の各期間にて、いずれかの月で算定対象となる従業員が存在しない場合は、1人あたり給与支給総額を算出できないため、本特例の対象外となります。
つまり、代表者ひとりだけの事業者は、賃金引上げ特例を使えません。割る対象がゼロなので、1人あたりの給与支給総額という数字がそもそも計算できないからです。
これは金額に直接響きます。従業員を雇っていない個人事業主・一人社長の場合、インボイス特例までしか積めないので、実質的な上限は100万円です。250万円を前提に事業計画を組んでいたなら、ここで組み直しになります。
さらに注意が要る点があります。申請時点では従業員がいても、実績報告までに退職して算定できなくなると、補助金は交付されません。パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して数えるので(1日7時間の会社で1日3時間勤務なら0.42人)、少人数の事業者ほど1人の増減で計算が揺れます。
なお、賃金引上げ特例を使う事業者のうち、直近1期または直近1年間が赤字の事業者は、補助率が2/3から3/4に上がり、あわせて赤字賃上げ加点による優先採択の対象になります。赤字であることが不利にならない、珍しい設計です。
自分は「小規模事業者」に入るのか
対象になるのは「小規模事業者」です。判定は業種ごとの従業員数だけで行います。
| 業種 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
ここで多くの人がつまずくのが、「常時使用する従業員」に全員を数えるわけではないという点です。公募要領は、中小企業基本法上の常時使用する従業員(労働基準法第20条の解雇の予告を必要とする者)と定義したうえで、次の人を含めないとしています。
- 事業主本人(個人事業主)・会社役員
- 同居の親族従業員
- 日雇労働者
- 2か月以内の期間を定めて使用される者
- 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
- 試用期間中の者
自分のお店に当てはめてみます。
美容室(店主は個人事業主。フルタイム2人+短時間パート2人) 店主本人は数えません。短時間のパート2人も、解雇の予告を必要とする者に当たらなければ数に入りません。数えるのはフルタイムの2人だけ。商業・サービス業の5人以下に収まるので、対象です。
食品加工の会社(代表者+フルタイム社員15人+継続雇用のパート5人) 代表者は役員なので数えません。社員15人とパート5人で20人。製造業その他の「20人以下」にちょうど収まるので、対象です。
小売店(フルタイム社員3人+業務委託のデザイナー+スポットワーカーを随時活用) 業務委託は雇用関係にないので、常時使用する従業員には当たりません。単発のスポットワークも、日雇労働者に近い働き方であれば同様と考えられます。数えるのは社員3人だけです。ただし業務委託・スポットワークの数え方を明記した記載は第20回の公募要領では確認できませんでした。判断が微妙なら、商工会議所・商工会の窓口で個別に確認してください。
事業主本人・家族・短時間パートを外していくと、人数は思ったより少なくなります。「うちは人数が多いから無理」と諦めていた事業者が、数え直すと入っていることは珍しくありません。
何に使えるか。8費目と、単独では申請できない2費目
第20回の対象経費は、次の8費目です。
| 費目 | 中身 | 単独申請 | 上限 |
|---|---|---|---|
| ①機械装置等費 | 補助事業に必要な機械装置等の購入 | できる | ― |
| ②広報費 | パンフレット・ポスター・チラシ・インターネット広告・SNS広告等 | できない | 30万円(税込) |
| ③ウェブサイト関連費 | ウェブサイト・ECサイト・システムの開発、構築、更新、改修、運用 | できない | 30万円(税込) |
| ④展示会等出展費 | 展示会・見本市への出展(オンライン含む) | できる | ― |
| ⑤旅費 | 販路開拓のための旅費 | できる | ― |
| ⑥新商品開発費 | 試作品の製作等 | できる | ― |
| ⑦借料 | 機器・設備のリース料、イベント会場の賃借料 | できる | ― |
| ⑧委託・外注費 | 外部への委託・外注 | できる | ― |
②広報費と③ウェブサイト関連費は、それだけでは申請できません。 公募要領に「〜のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください」と明記されています。しかも、それぞれ補助金の交付申請額の上限が30万円(税込)です。
これは、この補助金でいちばん多い誤解です。「ホームページを作りたい」「チラシを撒きたい」という理由だけで申請することはできません。機械装置の購入や展示会出展など、他の費目と組み合わせる必要があります。
もう1つ、広報費には中身の条件があります。補助の対象になるのは補助事業計画にもとづく商品・サービスの広報であって、単なる会社のPRや営業活動は対象外です。商品・サービスの名称や宣伝文句、事業者名が載っていないものは認められません。
自社ホームページやECサイトで使う動画・写真の制作費は、②広報費ではなく③ウェブサイト関連費で計上します。
対象にならないのは「汎用品」と「単なる取替え」
対象外になるものには、はっきりした共通点が2つあります。
1つめは、業務以外にも使える汎用品です。 公募要領は次を対象外として名指ししています。
- 自転車、文房具
- パソコン・タブレット端末・WEBカメラ・ウェアラブル端末
- 事務用プリンター・複合機
- PC周辺機器(ハードディスク、LAN、Wi-Fi、サーバー、モニター、スキャナー、ルーター、ヘッドセット、イヤホン等)
- 電話機、家庭用電気機械器具
- その他、汎用性が高く目的外使用になりえるもの
パソコンが買えない、というのは覚えておいてください。同じデジタル化でも、パソコン本体が要るならデジタル化・AI導入補助金のインボイス枠のほうが向いています。
車両も原則として対象外ですが、例外があります。「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の「機械及び装置」区分に該当するもの——ブルドーザー、パワーショベルその他の自走式作業用機械設備——は対象になります。ナンバーの付いた営業車・トラックは対象外です。
2つめは、単なる取替え更新です。 公募要領には「通常の事業活動のための費用、単なる取替え更新の機械装置等の購入は補助対象外」とあり、対象外の例にも「単なる取替え更新であって新たな販路開拓につながらない機械装置等」が挙がっています。
ここが判断の分かれ目です。古くなった冷蔵庫を同じ型の新品に入れ替えるだけなら対象外。同じ冷蔵庫でも、容量を増やして作り置きの商品を新しく売り出す計画とセットなら、販路開拓につながる投資として説明できます。設備そのものではなく、その設備で何が新しくできるようになるかが見られます。
このほか、対象外として明記されているものに、船舶、動植物、古い機械装置の撤去・廃棄費用、顧客に貸与する事業運営(駐車場経営・貸倉庫経営・コインランドリー事業等)の機械装置、有償で貸与することを目的とした機械装置があります。
見積書が2者要る金額を、先に知っておく
金額のラインが3つあります。申請の準備量が変わるので、先に確認しておくと動きやすくなります。
| 金額のライン | 何が起きるか |
|---|---|
| 発注総額(1件あたり)が50万円(税込)超 | 価格の妥当性を確認するため、2者以上からの見積が必要 |
| 単価50万円(税抜)以上の機械装置 | 「処分制限財産」に該当。原則5年間、譲渡・廃棄等が制限される |
| ウェブサイト・システムを50万円(税抜)以上で作成・更新 | 同じく処分制限財産になる |
| 中古品の購入 | 金額にかかわらずすべて2者以上の見積が必要。単価50万円(税抜)未満に限る |
中古品には条件が多めです。個人からの購入やインターネットオークションでの購入は認められません。中古品販売事業者2者以上から同等品の見積を取る必要があり、理由書を出して随意契約にすることは一切認められません。修理費用も対象外です。
処分制限財産になったものは、期間内に処分する場合、必ず事務局の承認が要ります。承認を得ずに処分すると、交付規程違反として補助金の交付取消・返還命令(加算金付き)の対象になります。
いくら投資すると、いくら返ってくるか
補助率2/3で計算します。3つの業態で見てみます。
個人経営の雑貨小売店(基本枠・上限50万円) 陳列棚を主力商品が目に留まる動線に組み替え、あわせてネット販売を始めたい。什器の入れ替えとECサイト構築で見積は75万円。 → 75万円 × 2/3 = 50万円。基本枠の上限にちょうど届きます。自己負担25万円です。 なお、ECサイトの構築費はウェブサイト関連費(上限30万円)に入るので、ECだけで75万円を組むことはできません。什器(機械装置等費)と組み合わせる形になります。
学習塾(インボイス特例・上限100万円) 電話とメモで管理していた予約を予約管理システムに一本化し、古いホームページも作り直したい。見積は150万円。 → 150万円 × 2/3 = 100万円。インボイス特例の上限に届きます。 基本枠のままだと、予約システムだけで50万円の枠を使い切ります。特例で枠が広がることで、ホームページのリニューアルまで同じ申請に載せられます。ただしホームページ側はウェブサイト関連費なので、補助金の交付申請額としては30万円までです。
食品加工の小さな工場(両特例併用・上限250万円) 新しい取引先を開拓するため展示会に出展し、あわせて試作品の製作と多言語カタログを用意したい。見積は375万円。 → 375万円 × 2/3 = 250万円。両特例併用の上限に届きます。 ここまで来るには従業員がいて、給与支給総額を年平均3.0%以上増やす約束ができることが前提です。
12月4日という隠れ期限
申請の締切は12月15日17時ですが、その前に動かないと間に合わないものがあります。
| いつまで | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 2026年12月4日(金) | 商工会議所・商工会に事業支援計画書(様式4)を発行してもらう | 経営計画書・補助事業計画書の下書き(相談で使う) |
| 2026年12月15日(火)17:00 | 電子申請(GビズIDプライムが必要) | 経営計画書、補助事業計画書、見積書、様式4 |
| 2027年3月頃 | 採択発表 → 交付決定 | ― |
| 交付決定日〜2028年3月31日 | 事業の実施(発注・契約・支払い) | 契約書・請求書・領収書を保管 |
| 事業終了後 | 実績報告 → 入金 | 実績報告書、支払いを証明する証憑 |
様式4の発行締切は12月4日で、申請締切の11日前です。発行には商工会議所・商工会での相談と手続きが要ります。締切が近づくほど相談枠は埋まるので、公募が始まったらすぐ予約してください。
窓口は、事業所の所在地が「商工会議所地区」か「商工会地区」かで分かれます。両方に申請することはできません。まず自分の事業所がどちらの地区かを確認してください。
もう1つ、時間がかかるのがGビズIDプライムです。発行までに2〜3週間かかることがあるので、持っていないなら今すぐ申請してください。
交付決定より前に発注すると、全額が自己負担になります
対象になるのは、交付決定日以降に発生し、補助事業期間中に支払いが完了した経費です。
採択発表と交付決定は別のタイミングです。採択されただけでは発注できません。交付決定の通知が届く前に契約・発注した経費は、どれだけ計画どおりでも対象外になります。
見積を取るところまではセーフです。契約するとアウトです。急いでいる時期ほどここを飛ばしがちなので、日付が入る書類(契約書・注文書)は交付決定を待ってから出してください。
お金が入るのは、支払いが全部終わったあと
この補助金は精算払いです。事業を実施して、自分で全額を支払って、実績報告を出して、確認が終わってから入金されます。
第20回のスケジュールで言えば、2026年12月に申請して、採択発表が2027年3月頃、事業の実施期限が2028年3月31日。入金はそのさらに後になります。投資費用は、いったん自己資金か借入で用意する必要があります。
資金繰りに不安があるなら、様式4の相談をする段階で商工会議所・商工会か取引金融機関にも話しておくと、つなぎ資金の相談が早く進みます。
申請してから採択されなかった場合
不採択でも、費用は発生しません。申請そのものに手数料はかかりませんし、様式4の発行も商工会議所・商工会の支援の一環です。かかったのは準備の時間だけ、ということになります。
次の回に再挑戦することもできます。持続化補助金は回次を重ねて公募されてきた制度で、第20回も過去回の続きです。ただし、公募要領は回ごとに改定されます。前回の要領で作った計画をそのまま出すのではなく、新しい要領で費目の上限や特例の要件が変わっていないかを確認してから出し直してください。
もう1つ、採択された後にも条件が残ります。公募要領は「補助対象者は事業終了まで小規模事業者であることが必要」としています。事業がうまくいって人を増やし、実施期間中に人数の基準を超えると、要件から外れることになります。
ただし、これには逆向きの選択肢が用意されています。小規模事業者卒業加点です。あえて「補助事業の終了時点で従業員数が小規模事業者の枠を超えていること」を約束すると加点され、審査で有利になります。商業・サービス業なら6人以上、宿泊業・娯楽業と製造業その他なら21人以上が目標値です。ただし約束した以上、達成できなければ交付決定後であっても補助金は交付されません。採用を伴う拡大計画があるなら、こちらを検討する余地があります。
業種別の使い道は、こちらにまとめています
業種によって、対象になりやすい使い道と迷いやすいポイントが変わります。
- 飲食店の使い道(厨房機器の入れ替え、券売機、テイクアウト)→ 持続化補助金は飲食店の何に使える?
- 従業員を雇っていない一人親方の場合 → 一人親方が使える補助金は?
- パソコンやITツールを入れたい場合 → デジタル化・AI導入補助金のITツール
よくある質問
締切は2026年11月5日ですか?
いいえ。11月5日は申請受付の開始日です。第20回の申請締切は2026年12月15日(火)17時です。あわせて、事業支援計画書(様式4)の発行締切が2026年12月4日(金)である点にご注意ください。
従業員がいなくても250万円もらえますか?
もらえません。250万円に届くには賃金引上げ特例(+150万円)が必要ですが、この特例は従業員1人あたりの給与支給総額を計算できることが前提です。代表者だけの事業者は算定できないため対象外になります。インボイス特例までなら使えるので、実質的な上限は100万円です。
ホームページの制作費だけで申請できますか?
できません。ウェブサイト関連費は単独での申請が認められておらず、他の費目と組み合わせる必要があります。また、この費目の補助金交付申請額は30万円(税込)が上限です。広報費も同じ扱いです。
パソコンは買えますか?
買えません。パソコン・タブレット端末・モニター・プリンター等は「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」として対象外に明記されています。パソコン本体が必要なら、デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)のほうが対象になります(上限10万円・補助率1/2)。
商工会議所と商工会、どちらに相談すればいいですか?
事業所の所在地で決まります。「商工会議所地区」か「商工会地区」かで窓口が分かれ、両方への申請はできません。地区が分からない場合は、最寄りの商工会議所か商工会に電話で確認するのが早いです。
