主KW: 持続化補助金 飲食店
飲食店が小規模事業者持続化補助金を使うとき、最初に確認すべきは従業員数です。飲食店は「商業・サービス業」に入るので、基準は5人以下。製造業の20人以下ではありません。ただし、この5人は在籍している全員を数えるわけではないので、実際にはもっと多くの店が対象に入ります。
買えるものにも独特の線引きがあります。厨房機器は買えますが、同じものへの入れ替えだけでは落ちます。チラシとホームページは、それだけでは申請できません。タブレット端末は、対象外だと公募要領に名指しされています。
この記事は、飲食店として判断が分かれるところだけを扱います。制度そのものの全体像(補助上限の積み上げ方、申請の流れ、GビズID)は小規模事業者持続化補助金の記事にまとめてあるので、あわせてご覧ください。
飲食店は「5人以下」。ただしパートは数え方が違います
公募要領は業種を3つに分けています。
| 業種 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 ← 飲食店はここ |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
飲食店は商業・サービス業なので、5人以下です。旅館やホテルの中の食事処であれば宿泊業として20人以下になりますが、街の飲食店は5人以下で判断します。
「うちはパートを入れたら10人はいる」と思った方、ここからが本題です。公募要領の「常時使用する従業員」には、次の人を含めません。
- 事業主本人(個人事業主)・会社役員
- 同居の親族従業員
- 日雇労働者
- 2か月以内の期間を定めて使用される者
- 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
- 試用期間中の者
定義としては、労働基準法第20条の「解雇の予告を必要とする者」です。通常の従業員より勤務時間が短いパート・アルバイトは、これに当たらなければ数に入りません。
実際の店で数えてみます。
居酒屋(店主は個人事業主。妻が調理を担当。社員1人+学生アルバイト6人) 店主本人は数えません。同居の妻も、同居の親族従業員なので数えません。学生アルバイトが週2〜3日の短時間勤務なら、常時使用する従業員には当たりません。数えるのは社員1人だけ。5人以下なので対象です。
カフェ(法人。代表者+フルタイム社員4人+パート3人) 代表者は役員なので数えません。社員4人は数えます。パート3人が短時間勤務なら数えません。4人で対象です。ただしパートがフルタイムに近い勤務であれば数に入り、7人になって対象外になります。
ラーメン店3店舗(法人。代表者+店長3人+社員4人) 数えるのは店長3人と社員4人で7人。5人を超えるので、この補助金の対象外です。店舗数ではなく、事業者としての人数で判断します。
本人・同居家族・短時間パートを外すと、5人以下に収まる店は思ったより多くなります。「人数が多いから無理」と決める前に、一度この定義で数え直してください。判断に迷うなら、商工会議所・商工会の窓口で確認できます。
厨房機器の買い替えは「取替え更新」だと落ちます
飲食店でいちばん多い使い道が厨房機器ですが、ここには明確な条件があります。公募要領は機械装置等費について、こう書いています。
通常の事業活動のための費用、単なる取替え更新の機械装置等の購入は補助対象外です。
対象外の例にも「単なる取替え更新であって新たな販路開拓につながらない機械装置等」が挙げられています。
つまり、古くなったから同じものに買い替える、は対象外です。同じ冷蔵庫を買う場合でも、次のように分かれます。
| 内容 | 判定 |
|---|---|
| 10年使った冷蔵庫が古くなったので、同型の新品に入れ替える | 対象外になりやすい |
| 容量の大きい冷蔵庫に替えて仕込み量を増やし、作り置き商品のテイクアウト販売を始める | 販路開拓として説明できる |
| 故障した製氷機を同じ能力のものに交換する | 対象外になりやすい |
| 製氷能力を上げて、夏季限定のかき氷メニューを新設する | 販路開拓として説明できる |
判断されているのは設備そのものではなく、その設備で何が新しくできるようになるかです。公募要領が例示している対象になる経費にも、この考え方が表れています。
- 高齢者・乳幼児連れ家族の集客力向上のための高齢者向け椅子・ベビーチェア
- 衛生向上や省スペース化のためのショーケース
- 生産販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫
- 新たなサービス提供のための製造・試作機械
いずれも「○○のための」という目的が付いています。同じ冷凍冷蔵庫でも、「生産販売拡大のため」という説明が立つかどうかが分かれ目です。
飲食店の使い道を、対象・対象外で仕分ける
飲食店でよくある投資を、公募要領の記載にもとづいて仕分けます。
| やりたいこと | 費目 | 判定 |
|---|---|---|
| 客席のレイアウト変更、テーブル・椅子の入れ替え | 機械装置等費 | 集客・回転率の改善として説明できれば対象 |
| ベビーチェア、高齢者向け椅子の導入 | 機械装置等費 | 公募要領が例示。対象 |
| ショーケースの設置 | 機械装置等費 | 公募要領が例示。対象 |
| 容量を増やす冷凍冷蔵庫・オーブン | 機械装置等費 | 生産販売拡大が説明できれば対象 |
| テイクアウト用の什器・包装機 | 機械装置等費 | 新しい販売形態なので対象になりやすい |
| 看板の設置・付け替え | 広報費 | 対象。ただし単独申請不可・上限30万円 |
| チラシ・メニュー表の制作、SNS広告 | 広報費 | 同上 |
| ホームページ・予約ページの制作 | ウェブサイト関連費 | 対象。ただし単独申請不可・上限30万円 |
| ECサイトでの通販開始 | ウェブサイト関連費 | 同上 |
| 新メニューの試作 | 新商品開発費 | 対象 |
| 物産展・商談会への出展 | 展示会等出展費 | 対象 |
| タブレット端末・パソコン | ― | 対象外(公募要領が名指し) |
| 仕入れ代・食材費 | ― | 対象外(運転資金) |
| 家賃・水道光熱費・人件費 | ― | 対象外 |
| 営業車・配達用バイク | ― | 対象外(機械及び装置に該当する車両を除く) |
| 古い厨房機器の撤去・廃棄費用 | ― | 対象外(明記あり) |
チラシとホームページは、それだけでは申請できません
飲食店の使い道として真っ先に思い浮かぶのがチラシと看板、そしてホームページです。ところが、この2費目には共通の制限があります。
②広報費(パンフレット・ポスター・チラシ・インターネット広告・SNS広告等)
- 広報費のみによる申請はできません。必ず他の経費と一緒に申請してください
- 補助金の交付申請額の上限は30万円(税込)
③ウェブサイト関連費(ウェブサイト・ECサイト・システムの開発、構築、更新、改修、運用)
- ウェブサイト関連費のみによる申請はできません
- 補助金の交付申請額の上限は30万円(税込)
どちらも公募要領に明記されています。「ホームページを作りたいから申請する」「チラシを撒きたいから申請する」という組み立てはできず、厨房機器の購入や展示会出展などと組み合わせる必要があります。
広報費にはもう1つ条件があります。対象になるのは補助事業計画にもとづく商品・サービスの広報であって、単なる会社のPRや営業活動は対象外です。公募要領は「販路開拓に繋がる商品・サービスの名称や宣伝文句および事業者名等が付記されていないもの」を対象外の例として挙げています。店名だけを大きく載せたイメージ広告ではなく、何を売るのかが分かる広報にしてください。
自社ホームページやECサイトで使う動画・写真の制作費は、広報費ではなくウェブサイト関連費で計上します。飲食店は料理写真の撮影費が発生しやすいので、ここは間違えやすいところです。
なお、ウェブサイトやシステムを50万円(税抜)以上で作成・更新すると「処分制限財産」に該当し、通常5年間は処分(補助事業目的外での使用、譲渡、廃棄等)が制限されます。サイトを作り直すこと自体は改良にあたるので問題ありませんが、閉店してサイトを畳むような場面では事務局への確認が要ります。
券売機・モバイルオーダー・タブレットの線引き
デジタル化に関する投資は、飲食店でいちばん判断が難しいところです。
タブレット端末は対象外です。 公募要領は対象とならない経費の例に「自転車・文房具等・パソコン・事務用プリンター・複合機・タブレット端末・WEBカメラ・ウェアラブル端末・PC周辺機器(ハードディスク・LAN・Wi-Fi・サーバー・モニター・スキャナー・ルーター、ヘッドセット・イヤホン等)・電話機・家庭用電気機械器具・その他汎用性が高く目的外使用になりえるもの」を明記しています。
モバイルオーダーを入れたくても、卓上のタブレット端末そのものはこの補助金では買えません。理由は、業務以外にも使えてしまう汎用品だからです。
では券売機はどうか。券売機は汎用品の列挙に入っておらず、飲食店専用の機器なので、機械装置等費として対象になる余地があります。ただし、単なる取替え更新は対象外という条件は同じようにかかります。「現金しか使えなかった券売機をキャッシュレス対応に替えて、待ち時間を短縮し回転率を上げる」といった変化が要ります。
モバイルオーダーのシステム側(アプリ・注文システムの開発費)は、ウェブサイト関連費で計上できる可能性があります。ただし上限30万円で、単独申請はできません。
端末が要るデジタル化は、この補助金では組みにくいというのが実際のところです。パソコンやタブレットが必要なら、デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)を検討してください。こちらではPC・タブレット等が上限10万円、レジ・券売機等が上限20万円で対象になります。詳しくはデジタル化・AI導入補助金のITツールにまとめました。
いくら投資すると、いくら返ってくるか
補助率は2/3です。上限は基本50万円で、そこにインボイス特例(+50万円)と賃金引上げ特例(+150万円)が積み上がります。
カフェ(基本枠・上限50万円) 高齢のお客様が増えてきたので、座り心地のよい椅子とベビーチェアを入れ、テイクアウト用のショーケースを設置したい。あわせて新メニューの案内チラシを作る。見積は75万円(機械装置等費60万円+広報費15万円)。 → 75万円 × 2/3 = 50万円。基本枠の上限に届きます。自己負担は25万円です。
居酒屋(インボイス特例・上限100万円) ランチ営業を始めるため、大型の炊飯設備とショーケースを導入し、テイクアウト用の包装機も入れたい。あわせて予約ページを作る。見積は150万円(機械装置等費120万円+ウェブサイト関連費30万円)。 → 150万円 × 2/3 = 100万円。インボイス特例の上限に届きます。 基本枠のままだと機械装置だけで枠を使い切るので、特例で広がったぶんが予約ページに回る形です。
そば店(両特例併用・上限250万円) 店内飲食に加えて、地元産のそば粉を使った乾麺を開発して物産展で売り出したい。製麺機と包装機を導入し、試作を重ね、物産展にも出展する。見積は375万円。 → 375万円 × 2/3 = 250万円。両特例併用の上限に届きます。
250万円に届く飲食店・届かない飲食店
3つめの例まで届く店は、実は多くありません。賃金引上げ特例(+150万円)に条件があるからです。
この特例は、補助事業の実施期限日(2028年3月31日)を終点とする12か月と、その前年同月の12か月を比べて、従業員1人あたりの給与支給総額を年平均3.0%以上増やすというものです。ここでの従業員には非常勤を含みますが、代表者・役員・専従者は含みません。
公募要領には、次の注記があります。
各期間にて、いずれかの月で算定対象となる従業員が存在しない場合は、1人あたり給与支給総額を算出できないため、本特例の対象外となります。
店主と家族だけでやっている店は、この特例を使えません。役員と専従者を外すと、割る対象がゼロになるからです。この場合、インボイス特例までしか積めないので実質的な上限は100万円になります。
飲食店は家族経営が多いので、ここは影響が大きい条件です。従業員を雇っている店でも、パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して人数を出すため(1日7時間の店で1日3時間勤務なら0.42人)、少人数だと1人の入退社で数字が動きます。申請時に従業員がいても、実績報告までに退職して算定できなくなると補助金は交付されません。
なお、賃金引上げ特例を使う事業者のうち、直近1期または直近1年間が赤字の事業者は補助率が2/3から3/4に上がり、赤字賃上げ加点による優先採択の対象にもなります。
12月4日という隠れ期限
第20回の申請締切は2026年12月15日(火)17時ですが、その前に済ませておくものがあります。
| いつまで | やること |
|---|---|
| 2026年12月4日(金) | 商工会議所・商工会で事業支援計画書(様式4)を発行してもらう |
| 2026年12月15日(火)17:00 | 電子申請(GビズIDプライムが必要) |
| 2027年3月頃 | 採択発表 → 交付決定 |
| 交付決定日〜2028年3月31日 | 事業の実施(発注・契約・支払い) |
| 事業終了後 | 実績報告 → 入金 |
様式4の発行締切は申請締切の11日前です。年末は商工会議所・商工会の相談枠が混み合うので、公募が始まったらすぐ予約してください。GビズIDプライムの発行にも2〜3週間かかります。
そして、交付決定より前に発注・契約した経費は対象になりません。採択発表と交付決定は別のタイミングです。厨房機器は納期がかかるので早く発注したくなりますが、ここを飛ばすと全額が自己負担になります。見積を取るところまではセーフ、契約するとアウトです。
入金は事業が終わって実績報告を出した後の精算払いです。工事代金や機器代金は、いったん自己資金か借入で用意する必要があります。
店舗の工事をするなら、見積の取り方に条件があります
内装工事やレイアウト変更は飲食店でよくある使い道ですが、金額によって手続きが変わります。
| 金額のライン | 何が必要になるか |
|---|---|
| 発注総額(1件あたり)が50万円(税込)超 | 価格の妥当性を確認するため、2者以上からの見積が必要 |
| 単価50万円(税抜)以上の機械装置 | 「処分制限財産」に該当。原則5年間、譲渡・廃棄等が制限される |
| 中古品の購入 | 金額にかかわらずすべて2者以上の見積が必要。単価50万円(税抜)未満に限る |
厨房機器は中古で揃える店も多いので、中古品の条件は押さえておいてください。公募要領は、中古品について個人からの購入とインターネットオークションでの購入を認めていません。中古品販売事業者2者以上から同等品の見積を取る必要があり、理由書を出して随意契約にすることは一切認められません。修理費用も対象外で、購入した中古品が故障して使えなかった場合も対象から外れます。
処分制限財産になった設備は、期間内に売却・廃棄する場合、必ず事務局の承認が要ります。承認を得ずに処分すると、交付規程違反として補助金の交付取消・返還命令(加算金付き)の対象になります。閉店や移転の可能性がある店は、この点を頭に入れておいてください。
内装工事そのものは対象になるのか
「店舗改装に使える」と紹介されることが多い補助金ですが、公募要領の8費目に「工事費」という項目はありません。飲食店の改装は、その中身によって費目が分かれます。
- 厨房機器・空調・ショーケース・什器の購入と、それに伴う設置費 → 機械装置等費
- 内装デザインや施工を外部に委託する部分 → 委託・外注費
- 看板の製作・設置 → 広報費(単独申請不可・上限30万円)
建物そのものの改修(躯体・不動産の取得や増築)は、この補助金の想定する範囲ではありません。設備を入れることで何が新しくできるようになるかという組み立てにすると、費目に収まりやすくなります。改装の規模が大きい場合は、様式4を発行してもらう相談の段階で、どこまでが対象になるかを窓口に確認しておくと手戻りが減ります。
よくある質問
飲食店は従業員5人以下と20人以下、どちらですか?
5人以下です。飲食店は「商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)」に分類されます。20人以下が適用されるのは、宿泊業・娯楽業と製造業その他です。ただし事業主本人・同居の親族従業員・役員・短時間のパートアルバイトは人数に含めないため、実際に数える人数は在籍者より少なくなります。
古くなった厨房機器の入れ替えに使えますか?
同じ性能のものへの単純な入れ替えは対象外です。公募要領は「単なる取替え更新であって新たな販路開拓につながらない機械装置等」を対象外と明記しています。容量を増やして新しい商品を売り出す、新しい調理法に対応するなど、その設備で何ができるようになるかを事業計画で示せるかどうかで分かれます。
ホームページの制作費だけで申請できますか?
できません。ウェブサイト関連費は単独申請が認められておらず、必ず他の費目と組み合わせる必要があります。また、この費目の補助金交付申請額は30万円(税込)が上限です。チラシや看板などの広報費も同じ扱いです。
モバイルオーダー用のタブレットは買えますか?
買えません。タブレット端末は「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」として、公募要領の対象外リストに名指しされています。注文システム側の開発費はウェブサイト関連費で計上できる可能性がありますが、端末そのものは対象外です。端末が必要な場合はデジタル化・AI導入補助金のインボイス枠をご検討ください。
夫婦だけでやっている店でも250万円もらえますか?
もらえません。250万円に届くには賃金引上げ特例が必要ですが、この特例の従業員には代表者・役員・専従者を含めないため、夫婦だけの店では1人あたり給与支給総額を算出できず対象外になります。インボイス特例までなので、実質的な上限は100万円です。
