新潟県上越市の「サテライトオフィス等家賃補助金」は、IT企業等が市内に新設するオフィスの家賃を最大3年間・最大384万円まで補助する制度です。2026年度からは1年目の補助率が家賃全額(10割)に拡充され、開設直後の資金繰り負担が大きく軽くなりました。

なぜ上越市はこの補助金を用意しているのか

上越市は合併から20年で人口が約3万人減少し、2026年時点で18万人を割り込んでいます。人口減少への対策として、市は移住促進や子育て支援と並び、若者が働ける場としてIT企業などのサテライトオフィス誘致に力を入れています。

この制度は2020年度に始まり、これまでに14社が市内にサテライトオフィスを開設しました。当初は3年間・年間120万円を上限に家賃の半額を補助する仕組みでしたが、2026年度に1年目に限り家賃全額(上限144万円)を補助する内容へ拡充されています。市の産業立地課は「他自治体にはない手厚い支援で差別化を図る」としており、進出直後は従業員1〜2人程度の小規模拠点が多く、家賃負担がネックになっていたことへの対応だという背景があります。

立地面でも上越市には強みがあります。北陸新幹線の上越妙高駅から東京駅までは最短1時間46分。首都圏の本社機能を維持したまま地方に開発拠点やコールセンター拠点を置く「サテライトオフィス」の運用がしやすい距離感です。実際、上越妙高駅前にはIT企業がコワーキング型オフィスを構えるなど、進出事例も生まれています。

対象になる事業者・要件を具体例で見る

補助対象になるのは、上越市内に新たに開設するオフィスで、次のいずれかの事業を行う事業者です。

  • 通信業
  • 情報サービス業
  • インターネット附随サービス業
  • 映像情報制作・配給業
  • デザイン業
  • 広告業(インターネット広告に限る)
  • 通信販売・訪問販売小売業(インターネット販売に限る)
  • コールセンター業
  • その他、市長が特に必要と認める事業

起業・創業として申請する場合は、市外から上越市に転入して1年以内の者による起業・創業であることが条件です。すでに市内に住んで1年を超えている人の起業や、もともと市内で事業を営んでいる事業者の追加開業は対象外になります。

具体的にどんなケースが当てはまるか、3パターンで見てみます。

  • 都市部の受託開発会社が上越に開発拠点を新設: 東京の情報サービス業の企業が、上越市内に社員2名が常駐する開発拠点を開設。家賃15万円のオフィスなら、1年目は上限12万円/月まで、2〜3年目は家賃の半額(上限10万円/月)まで補助される
  • 移住して起業するフリーランスエンジニア: 東京から上越市に転入して半年後、情報サービス業として個人事務所(家賃6万円)を開設。転入1年以内の起業に該当するため対象になり得る(法人・個人の別を問わない可能性が高いが、個人事業主としての申請可否は産業立地課への確認が必要)
  • 首都圏企業のコールセンター拠点: 通信販売企業がインターネット注文対応のコールセンター業務のために上越市内にオフィス(家賃20万円)を開設。家賃が高めでも、補助額は上限額(月12万円→10万円)で頭打ちになる

補助額のシミュレーション:家賃によって3年間の総額はここまで変わる

補助対象経費はオフィスの家賃のみ(敷金・権利金その他これらに類する経費、および消費税は対象外)。補助率・上限額は年次で変わります。

対象年度補助率補助上限額(月額)
1年目10分の1012万円
2〜3年目2分の110万円

家賃の水準ごとに3年間の補助総額を試算すると、次のようになります。

月額家賃1年目(年間)2〜3年目(各年)3年間合計
8万円96万円(家賃全額)48万円(家賃の1/2)192万円
12万円144万円(家賃全額・上限)72万円(家賃の1/2)288万円
20万円以上144万円(上限12万円×12ヶ月)120万円(上限10万円×12ヶ月)384万円(上限)

つまり家賃20万円以上のオフィスを借りると、3年間で上限いっぱいの384万円まで補助されます。逆に家賃が8万円程度の小さな拠点であれば、3年合計は192万円ほどが目安です。自分たちが借りたい・借りている物件の家賃を当てはめて、どのゾーンに入るかを確認しておくと資金計画が立てやすくなります。

2026年度の拡充で1年目の補助上限が年間120万円→144万円に増えた分(月あたり2万円)は、開設直後にかかりがちな採用活動費や通信環境の整備費など、家賃以外の初期コストに回せる資金的な余裕として効いてきます(補助対象経費そのものはあくまで家賃のみである点に注意)。

申請実務のコツ:オフィス契約"前"の認定申請が最重要ポイント

補助金は「認定申請」→「交付申請」→「実績報告」の3段階で進みます。ここで最も重要なのは、オフィスの賃貸借契約を結ぶ前に、まず認定申請から動き出すという順番です。契約を先に済ませてしまうと、認定申請の要件を満たせなくなる可能性があります(いわゆる「フライング契約」の失敗パターン)。物件を決めたら、契約書にサインする前に産業立地課へ相談するのが安全です。

タイミング別に必要な書類を整理すると、次のとおりです。

  1. 認定申請(契約前): 第1号様式(認定申請書)、賃貸借契約書の写し、施設の配置図・平面図、常時勤務者の住民票の写し、第2号様式(誓約書)、法人の場合は登記事項証明書等、第3号様式(納税状況調査承諾書)
  2. 交付申請: 第5号様式(交付申請書)、賃貸借契約書の写し、第3号様式(納税状況調査承諾書)
  3. 実績報告: 第8号様式(事業報告書兼請求書)、賃借料の支払を証する書類の写し

認定申請の時点で「賃貸借契約書の写し」の提出が求められているため、実務上は物件を仮押さえ・条件交渉まで進めたうえで、契約締結の直前〜直後のタイミングで産業立地課に認定申請の段取りを確認しながら進める事業者が多いと考えられます。各様式は上越市公式ページからPDF・Word形式でダウンロードできます。

他制度との組み合わせ(併用イメージ)

上越市は家賃補助のほかにも、サテライトオフィス開設の各段階に対応した支援制度を用意しています。

制度名対象になる段階・経費補助内容
サテライトオフィス等家賃補助金開設後の家賃3年間で最大384万円(本記事の制度)
サテライトオフィス等視察費用補助金開設を検討する視察段階の宿泊費・交通費宿泊等は1人1万円・1事業者2万円上限、交通費は1事業者5万円上限
サテライトオフィス等リフォーム等補助金オフィスの購入費・内装改修費補助率3分の2・上限200万円
上越市創業スタートアップ支援補助金市内での創業に係る経費全般
上越市移住・就業支援金東京23区等からの移住者本人への支援金

視察→開設→家賃補助という時系列で見ると、**検討段階(視察費用補助金)→物件確保・内装(リフォーム等補助金)→運用開始後(家賃補助金)**という形で、開設プロセス全体を上越市の制度でカバーできる設計になっています。あわせて、市外から転入して起業する場合は移住支援金や創業スタートアップ支援補助金の対象にもなり得ます(各制度の併用可否・要件は必ず最新の公募要領で確認してください)。

また、業務のデジタル化やITツール導入にあたっては、国のIT導入補助金など全国型の補助金と組み合わせられる可能性もあります。国の制度は毎年公募内容が変わるため、上越市の担当窓口だけでなく、自社の状況に合う全国型の補助金がないかもあわせて確認しておくと選択肢が広がります。

サテライトオフィス関連の補助金以外にも、自分の事業が対象になる補助金・助成金が他にないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。

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複数制度の併用や、認定申請のタイミング設計など、実務の進め方に迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。

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よくある質問

個人事業主(フリーランス)でも対象になりますか?

制度上、対象業種を法人に限定する記載はなく、個人事業主として起業する場合も対象になり得ると考えられます。ただし公式ページに個人事業主可否の明言はないため、申請前に産業立地課へ確認するのが確実です。

既存企業が上越市内で拠点を拡張する場合も対象ですか?

対象は「市内に新たに開設するオフィス」です。市外の企業が新たに上越市内へオフィスを開設する場合は対象になりますが、すでに市内に拠点を持つ企業が別の新オフィスを追加開設する場合の扱いは公式ページに明記がありません。

家賃以外の費用(内装費・什器費・通信費)は対象になりますか?

家賃補助金の対象経費はオフィスの家賃のみで、敷金・権利金・消費税は対象外です。内装改修やオフィス購入にかかる費用は、別制度の「サテライトオフィス等リフォーム等補助金」(補助率3分の2・上限200万円)が対象になる場合があります。


免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・補助率・対象経費・申請要件・関連制度の内容は変更される場合があるため、申請前に必ず上越市の公式ページおよび最新の公募要領で内容をご確認ください。

出典: