海外では、現地企業から知財の侵害を指摘される日本の中小企業が増えています。特許庁は、係争に必要な費用を用意できず、事業撤退や会社存続の危機に陥るおそれがあるとして、保険の掛金を補助しています。
補助されるのは保険の掛金で、訴訟費用そのものではありません。弁護士報酬は保険金で出ますが、損害賠償金は保険の対象外です。補助率は掛金の1/2で、2年目以降の更新は1/3になります。
海外知財訴訟保険事業の要点まとめ
正式名:海外知財訴訟保険事業(海外知財訴訟費用保険に対する補助)
だれが
- 申請者
- 商工会議所・商工会・中央会の会員の中小企業者
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 海外知財訴訟費用保険の掛金
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 業種ごとに上限あり(資本金か従業員数のどちらか)
いくら
- 補助上限額
- 公式ページに記載なし
- 補助率
- 掛金の1/2(2年目以降は1/3)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年7月1日〜2027年2月1日の始期分
補助額の上限は、公式の案内に書かれていません。掛金は補償内容と支払限度額で決まるため、金額は引受保険会社に見積を取って確かめます。
うちの会社は対象になる?
補助を受けるには、会員であることと中小企業であることの両方が必要です。次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ どの団体にも加入していない
- ✕ 資本金も従業員数も上限を超える
- ✕ 大企業の子会社などのみなし大企業
運営団体は、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会の3つです。自社が入っている団体の窓口から加入します。
中小企業者の基準は、業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっています。どちらか一方を満たせば該当します。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
みなし大企業とは、大企業が株式の1/2以上を持つなど、実質的に大企業の支配下にある中小企業のことです。パンフレットには、大企業の持株比率が2/3以上のもの、資本金5億円以上の法人に100%保有されているもの、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超えるものなど、5つの類型が挙がっています。
会員でなければ、保険に入る前に入会が必要です。入会の条件や会費は団体ごとに違うため、各団体に聞いてください。
いくら戻ってくる?
国が負担するのは、掛金の1/2です。2年目以降の更新では1/3になるため、自己負担は増えます。掛金の額を仮定した計算例です。
- 1年目の加入で掛金が30万円:30万円 × 1/2 = 15万円が国の補助で、自社の払い込みも15万円
- 2年目の更新で掛金が30万円:30万円 × 1/3 = 10万円が国の補助で、自社の払い込みは20万円
補助金は、掛金のうち自己負担分だけを払い込む形で受けます。中小企業と運営団体が、加入と補助の手続きを同時に進めます。
支払限度額(保険金の上限)は、1請求または1訴訟・保険期間中につき500万円、1,000万円、3,000万円、5,000万円から選びます。1請求または1訴訟ごとに10万円の免責金額(自己負担)があります。限度額を上げると掛金も上がります。
公募は2027年2月1日始期分までですが、予算がなくなり次第終了します。補助枠が上限に達すると補助は打ち切られるため、早めに加入するほうが安全です。
何に使える?
保険金が出ないもの
- 損害賠償金(判決金額、和解金、解決金、懲罰的賠償金など)
- 不当利得返還金、実施料
- 罰金、過料
- 自社や自社役職員の報酬・賞与・給料
- 自社の法務担当者が本来業務で動いたときの交通費・宿泊費
- 法令や裁判所の命令で必要になった分を除く通訳・翻訳費用
保険金が出るもの
- 弁護士報酬
- 鑑定費用
- その他の訴訟対応の費用(引受保険会社が事前に承認したもの)
保険は、自社の業務で第三者の知的財産権を侵害した、または侵害するおそれがあるとして、訴訟や仲裁を起こされた場合に、そのあとに負担した費用を払います。対象になる請求は、損害賠償請求、差止請求、信用回復措置請求、不当利得返還請求の4つです。
保険金の対象になるのは、保険期間中に訴訟を起こされた場合に限られます。起こされてから加入しても、その訴訟の費用は出ません。補償の対象地域は、アジア全域(日本、北朝鮮を除く)か全世界(同)から選びます。
申請の流れ
- 会員かどうかを確かめる(事業者→商工会議所・商工会・中央会。会員でなければ入会する)
- 補償内容を決める(事業者→保険代理店。対象地域と支払限度額を選ぶ)
- 加入依頼書と補助の書類を出す(事業者→運営団体。同時に出す)
- 自己負担分の掛金を払い込む(事業者→運営団体・保険会社。掛金の1/2が目安)
- 保険の開始日を迎える(毎月1日が始期。最終は2027年2月1日)
引受保険会社は、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社です。保険期間は2026年7月1日午前0時から2027年6月30日午後12時の予定で、途中加入は毎月1日の午前0時から同じ終了日までです。
中央会の案内では、加入依頼書と同時に、中小企業であることを確認する補助の書類(交付申請書・確認書・請求書)を出す形です。月ごとの申込締切は公式ページに書かれていません。始期の前に余裕をもって代理店に確かめてください。
必要な書類
準備できた 0 / 3
賃金引上げ計画の表明書は、審査の加点を希望するときだけ出します。表明するのは、申請後の1事業年度か1年で給与総額(または一人あたりの平均受給額)が2.5%以上増えることです。従業員代表の確認印も要ります。採択後は、法人事業概況説明書などで実績を示します。表明どおりに賃上げしないと、交付決定の取消しと補助金の返還になることがあります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 会員資格がない:商工会議所、商工会、中央会のいずれにも加入していない会社は、補助の対象外です。
- みなし大企業にあたる:資本金や従業員数が基準以内でも、大企業の持株比率などで外れることがあります。
- 補助枠が尽きた:補助枠が上限に達すると、補助は打ち切られます。年度の途中でも起こりえます。
- 最終の始期を過ぎた:補助を受けられる加入は、2027年2月1日始期分までです。それ以降の加入は対象外です。
更新・変更の可能性
補助は国の予算の成立が前提で、内容が変更される場合があると商工会議所の案内に書かれています。2年目以降の補助率は1/3に下がります。更新するたびに、掛金の自己負担が変わりうる点は、資金計画に入れておいてください。
保険の内容や掛金は、引受保険会社によって異なります。この記事では保険商品の比較はしていません。3社のパンフレットで、補償内容と掛金を見比べてください。
よくある質問
補助の対象になる会社は?
商工会議所か商工会の会員、または中央会の組合等に加入していて、中小企業基本法の中小企業者にあたり、みなし大企業ではない会社です。両方の条件を満たす必要があります。海外に拠点を持つことは、公式の応募資格に書かれていません。ただし保険が払うのは、自社や現地法人の製品・サービスの提供等で、海外の第三者の知財を侵害したとして訴えられた場合です。海外との取引が先の話なら、補償の範囲を取扱代理店に確かめてください。
会員でない会社は使えませんか?
使えません。応募資格は、各地の商工会議所・商工会の会員と、中小企業団体中央会の組合等に加入している者です。会員でない場合は、先に入会する必要があります。入会の条件や会費は団体ごとに異なるため、事業所の所在地の商工会議所か商工会、または加入できる組合を通じた中央会に問い合わせてください。
補助額の上限はいくらですか?
公式の案内には、補助額の上限は書かれていません。書かれているのは補助率で、掛金の1/2、2年目以降の更新は1/3です。実際の補助額は、選ぶ支払限度額や対象地域で変わる掛金によって決まります。補助枠が上限に達すると補助が打ち切られるため、加入の前に、取扱代理店で掛金の見積を取ってください。
保険金は何に使えますか?
弁護士報酬、鑑定費用、その他の訴訟対応の費用が対象です。ただし、引受保険会社が支出を事前に承認したものに限られます。損害賠償金や和解金、懲罰的賠償金、罰金は対象外です。自社の役職員の報酬や、本来業務に付随する交通費・宿泊費も出ません。費用を使う前に、保険会社へ連絡して承認を得てください。
どの国の訴訟が対象になりますか?
アジア全域(日本、北朝鮮を除く)か、全世界(日本、北朝鮮を除く)のどちらかを選びます。日本国内の訴訟は対象になりません。取引先や進出先が、アジアに限られるのか、欧米にも広がるのかで選びます。パンフレットには、権利侵害の指摘を受けた国と地域として、中国、アメリカ、欧州などが挙がっています。
いつまでに加入すればよいですか?
補助を受けられるのは、2026年7月1日始期から2027年2月1日始期までの加入です。保険期間は2027年6月30日までの予定で、途中加入は毎月1日が始期になります。最終の始期日が2027年2月1日なので、その日付までに加入手続きを終える必要があります。月ごとの申込締切は、代理店で確かめてください。
掛金はいくらくらいですか?
公式の案内に、掛金の金額は書かれていません。掛金は、支払限度額(500万円・1,000万円・3,000万円・5,000万円)と対象地域の選び方で変わります。引受保険会社の3社で内容が異なるため、パンフレットを取り寄せるか、取扱代理店に見積を依頼してください。補助後の自己負担は、見積額の1/2が目安です。
保険に入ったあとで訴えられても保険金は出ますか?
保険期間中に訴訟や仲裁を起こされた場合に、そのあとに負担した費用に対して保険金が出ます。つまり、訴えられる前に入っておくことが前提です。すでに警告状が届いている場合の扱いは、公式の案内に書かれていません。加入の前に、取扱代理店か引受保険会社に事情を伝えて確かめてください。
更新するときも補助を受けられますか?
受けられます。2年目以降の更新では、補助率が掛金の1/3になります。ただし補助は国の予算の成立が前提で、内容が変わる場合があるため、翌年度も同じ条件で続くとは限りません。更新の案内は、加入した運営団体や代理店から届きます。資金計画では、自己負担が2/3になることを見込んでください。
窓口はどこですか?
補助事業全般は、特許庁の総務部国際協力課海外展開支援室(電話03-3581-1101、内線2577)です。保険の内容や加入については、日本商工会議所総務部(03-3283-7832)、全国商工会連合会企業支援部リスクマネジメント課(03-6206-6264)、全国中小企業団体中央会総務企画部(03-3523-4904)に聞けます。
