国立公園の入口に閉めたままの旅館が残っている。取り壊して新しい宿や店を入れたくても、解体の費用が先に立ちふさがります。
その費用の1/2を国が補助します。令和8年度の当初公募は2026年5月12日から6月2日17時までで、すでに終わりました。続く2次公募は2026年7月6日から10月30日17時(必着)までです。窓口は環境省ではなく執行団体の公益財団法人北海道環境財団です(執行団体とは、国の補助金の公募や審査の実務を任された団体のことです)。
応募の前に確かめたいのは順番です。整備工事の補助は、利用拠点計画が環境省に出ているか、利用拠点整備改善計画が認定されていないと申請できません。 計画がなければ令和8年度は計画づくりに補助を使い整備工事の応募は令和9年度という流れでした。
国立公園等利用拠点滞在環境等上質化事業の要点まとめ
正式名:国立公園等利用拠点滞在環境等上質化事業(令和8年度当初公募)
だれが
- 申請者
- 民間企業・個人事業主・NPO・自治体など(計画策定は自治体等のみ)
- 対象業種
- 指定なし(公園利用者向けサービスを行う施設・事業)
- 利用目的
- 廃屋撤去・多言語サイン・無料Wi-Fi・トイレ洋式化・景観改善・山小屋や宿の改修
- 対象地域
- 全国の国立公園と対象の国定公園の利用拠点
- 従業員数
- 規定なし(公募要領に記載なし)
いくら
- 補助上限額
- 公募要領に上限額の記載なし
- 補助率
- 補助対象経費の1/2以内(利用拠点整備改善計画の策定は2/3以内)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年5月12日〜2026年6月2日(終了)。2次公募は10月30日まで
- 事業の完了
- 交付決定日から2027年2月28日まで
自分の事業は申請できる?
次の4つにすべて当てはまれば、申請の見込みがあります。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 撤去するだけで跡地を活用しない
- ✕ 廃屋化させた本人が自分で撤去する
- ✕ 交付決定の前に発注・契約する
- ✕ 同じ年度に国の別の補助金を受ける
利用拠点計画とは、自治体や地域協議会が地域の目標と整備の内容・時期を決めて環境大臣に出す計画です。利用拠点整備改善計画は、国立公園の宿舎などが集まる拠点について、地域協議会が定めて環境大臣の認定を受ける法定の計画です。どちらもない場合は先に計画づくりから始めます。
廃屋の撤去には例外があります。土地と廃屋を持つ民間事業者が撤去し、跡地を原則10年間自治体やDMO(観光地域づくり法人)などへ無償で貸す形なら対象です。土地と廃屋を持つ自治体が撤去する場合も対象です。
「国立公園の中ならどこでも」とはなりません。対象になるのは公園利用者向けサービスの施設が集まる地域です。自分の敷地が入るかどうかは事前相談で確かめます。
何に使える?
最初に、使えないものです。
- 撤去だけで終わる事業(跡地に公園利用者向けの民間事業を入れることが条件)
- 備品(移動できるテーブル、ソファ、大型テレビなど)と消耗品
- 消防防災設備(火災報知器、消火器、スプリンクラー)
- 建物の躯体の新設工事(床・天井・壁・屋根などの構造部分)
- 省エネ性能を上げるだけの設備更新
- 自然資源を説明する案内板(別事業の多言語解説等整備事業の対象です)
使えるのは、次の区分です。
- 計画づくり(A):利用拠点計画や利用拠点整備改善計画を策定する調査・検討の費用
- 廃屋の撤去(B-1):使われていない公園利用者向けの建物と、敷地の立木などの撤去・処分
- 多言語サイン、無料Wi-Fi、トイレ洋式化(B-2):英語併記が基本です。トイレは和式から洋式への交換や洋式の新設・増設が中心です
- 外構や外観の修景(B-3):門、塀、植栽、街灯、建物の外観など、公道から見える部分
- 休業施設の転用(B-4):利用が減った宿などを、インバウンド対応を前提に内装・設備から作り替える
- 景観の引き算(B-5):無電柱化、展望をさえぎる木の伐採、駐車場の緑地化など
- 滞在環境の改善(B-6):重点利用拠点での建築物の撤去、広場・ベンチ・遊歩道・トイレなどの整備
- 山小屋の改修(C):内装・外装・設備と、令和8年度から加わった外構や通路の整備
- 国立公園ならではの宿泊施設の改善(D):令和8年度の新設メニュー。国立公園宿舎事業を行う人が対象です
対象地域は、A〜Cで令和8年度から国定公園にも広がりました。ただしWi-Fiの機器やトイレ洋式化には細かい要件があり、たとえば無料Wi-Fiは「Wi-Fi 6以上」の機器と認証方式の指定があります。区分ごとの要件は、公募要領の別表で確かめてください。
いくら補助される?
補助額は、総事業費から寄付金などの収入を引いた額と補助対象経費を比べて少ないほうに補助率を掛けて決まります。1,000円未満は切り捨てです。
- 整備事業の例(補助率1/2):対象経費400万円 × 1/2 = 200万円
- 計画の策定の例(利用拠点整備改善計画、2/3):対象経費300万円 × 2/3 = 200万円
- 対象外の経費が混ざる例:総額800万円のうち対象経費が600万円なら、600万円 × 1/2 = 300万円(総額800万円の半分の400万円にはなりません)
補助額の計算は総額ではなく補助対象経費が基準です。 見積書の段階で対象になる項目と対象外の項目を分けておくと、自己負担の見通しが立ちます。
上限額は公募要領に書かれていません。審査を踏まえて申請額が調整されることもあり、交付決定額を超えた分の経費は補助されません。満額が出る前提で資金計画を立てるのは避けます。
申請の流れ(順番がいちばんの落とし穴)
- 現地事務所へ相談する(申請者→環境省の自然保護官事務所・管理官事務所。事業計画を持って応募前に)
- 計画との整合を確かめる(申請者→自治体や財団。利用拠点計画か認定済みの利用拠点整備改善計画に事業が載っているか)
- 見積を取る(申請者→施工業者。原則3社以上。見積依頼は交付決定前でも構いません)
- 応募する(申請者→財団。jGrantsか電子メール。当初は6月2日、2次公募は2026年10月30日の17時必着)
- 採択を受けて交付申請する(申請者→財団。結果は締切の約1か月後が目安。2次公募は月ごとのとりまとめ日の約1か月後)
- 交付決定のあとに契約・着工する(申請者→施工業者。2027年2月28日までに終える)
- 完了実績報告を出す(申請者→財団。完了後30日以内か、3月5日のいずれか早い日まで)
jGrantsで出す場合は、GビズIDという国の電子申請の共通IDが要ります。発行に2〜3週間かかるので早めの取得がおすすめです。支払いは銀行振込が原則で、手形や小切手は認められません。補助金は原則として精算払いです。事業者が先に全額を立て替え、完了後の確認を経て支払われます。
必要な書類
準備できた 0 / 14
法人は、直近2決算期の貸借対照表・損益計算書・確定申告書一式を出します。個人事業主は、本人確認書類と直近2期分の確定申告書です。設立から日が浅いときは別の書類になります。承諾書が要るのは、申請者と土地の所有者が違うときです。事業の区分ごとにチェックシートが分かれているので、自分の区分のものを使います。
消費税のチェックリストは別紙4です。登記事項証明書は発行から3か月以内のものを出します。写真には撮影日を書きます。利用拠点計画の写しは、環境省に出した(または認定を受けた)ものを付け申請する事業に線や枠を付けて示します。廃屋撤去と建築物等の撤去では、土地の登記事項証明書、解体物件の写真、アスベスト調査報告書も要ります。国定公園の場合は、訪日外国人旅行者の誘致に関する目標と計画を示す資料も付けます。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に契約した:交付決定日より前の発注・契約・支出は対象外です。見積依頼だけなら認められます。
- 計画に載っていない:整備事業は、拠点計画か認定済みの整備改善計画に位置づけが必要です。事業を足すなら計画の変更が要ります。
- 期日までに完了実績報告がない:交付決定を受けていても、補助金を受け取れなくなります。
- 計画外の工事を足した:事業内容の変更は、発注・契約の前に財団の承認が要ります。完了時に分かった計画外の設備や工事は対象外になることがあります。
- 虚偽の記載があった:交付決定の取り消しと補助金の返還があり得ます。
- 複数年度の計画を続けなかった:2年目以降の事業をやめると、過年度の補助金の一部または全部を返す場合があります。
令和8年度の変更点と、ほかの補助との関係
令和8年度の公募ではDの「国立公園ならではの宿泊施設整備改善事業」が新設されました。Cに山小屋の周辺環境の整備が加わり、A〜Cの対象地域に国定公園が入りました。応募書類の様式も、令和7年度から変わっています。
併用には制限があります。同じ年度に国から別の補助金を受けて行う事業は、この補助金の対象外です。消費税の仕入控除税額(課税事業者が後で還付を受けられる消費税)がある場合は、その分を引いて補助額を計算します。
案内板や展示物の多言語解説は、別事業の「国立公園等多言語解説等整備事業」です。同じ国立公園等資源整備事業費補助金の中にありますが、窓口のページと対象経費が分かれています。
よくある質問
今から申請できますか?
令和8年度の当初公募は、2026年6月2日17時で受付を終えています。ただし2次公募が2026年7月6日から10月30日17時(必着)の日程で行われます。月ごとに応募をまとめて審査し、最後のとりまとめ日は10月30日で、結果通知は11月下旬の予定です。補助金の予算の上限に達したと分かった時点で、受付が早く終わることもあります。2次公募は当初と様式・記載要領が変わっているので財団の2次公募のページから最新の様式を取り直して使います。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。民間企業・個人事業主・一般社団法人・財団法人・NPO法人・自治体・観光協会などが申請者として挙げられています。ただし計画づくりの事業は、自治体や地域協議会などに限られます。国立公園宿舎事業を行う人が対象のDの事業のように、区分ごとに申請者が絞られるものもあります。個人は本人確認書類と直近2期分の確定申告書を出します。
補助上限額はいくらですか?
公募要領に、1件あたりの上限額は書かれていません。補助額は補助対象経費に1/2(計画策定のうち利用拠点整備改善計画は2/3)を掛けて決まります。審査を経て申請額が調整されることがあり、採択されても満額にならない場合があります。上限の有無や目安を知りたいときは、財団へメールで問い合わせる方法があります。
計画がまだない場合はどうなりますか?
整備事業には、利用拠点計画か認定済みの利用拠点整備改善計画が必要です。令和8年度はAの計画策定支援事業でいずれかの計画をつくり、令和9年度に整備事業へ応募する流れが示されていました。応募の前に自分で計画を策定し、環境大臣へ提出または認定を受ける道もあります。まず地域の自治体や環境省の現地事務所に拠点の計画があるかを確かめるのが近道です。
旅館の客室を改装する費用は対象ですか?
条件つきで対象になります。利用が止まった、または減った宿を、インバウンド対応を前提に作り替える内装・設備の整備(B-4)が当てはまります。稼働率などで利用の減少を示す必要があります。老朽化に伴う内装の更新だけのものや、備品、消防設備は対象外です。国立公園宿舎事業を行う事業者は、Dの事業も選択肢になります。
Wi-Fiやトイレの洋式化も対象ですか?
対象です(B-2)。無料Wi-Fiは、Wi-Fi 6以上に対応した機器で、SMSなどの認証方式を使い、共通シンボルマークの掲出まで行うことが要件です。トイレは、不特定多数が使えるものが対象で、和式から洋式への交換や、洋式の新設・増設が基本です。利用者を限ったトイレや、建物の躯体の新設工事は対象外です。
廃屋の撤去だけでも補助されますか?
撤去だけでは対象外です。跡地に、公園利用者向けのサービスを行う民間事業を入れることが条件です。また廃屋にした所有者が自分で撤去する事業も対象外です。例外は、民間の所有者が撤去して跡地を原則10年間自治体やDMOに無償で貸す場合と、自治体が所有者として撤去する場合です。申請前にアスベストの有無も確認します。
見積はいつ取ればいいですか?
見積の依頼と入札は、交付決定の前でも認められています。ただし契約と着工は必ず交付決定日以降です。発注先は、原則として3社以上の見積など、競争の働く手続きで決めます。提出した見積書に基づいて採択額が決まり、不採択もあるため、見積を取った業者と先に契約してしまう進め方は避けます。
補助金はいつ支払われますか?
原則は精算払いです。事業者が費用を先に立て替え、完了実績報告のあと、財団が書類審査や現地調査を行って補助額を確定します。支払いはその後です。支払いは銀行振込が原則で、完了報告までの資金は自分で用意します。支払いの完了日は、その年度の2月26日を超えないように求められています。
事前相談は必要ですか?
必要です。応募前に公園を所管する環境省の自然保護官事務所・管理官事務所などへ、応募内容と同じ事業計画を持って相談することが公募要領で求められています。工作物の設置、施設の改修・撤去、伐採などは、自然公園法の許可や届け出が要る場合があります。相談した内容は、提出書類の別紙1に記入します。
多言語解説の案内板は、この事業で出せますか?
自然資源を説明する案内板や展示物は、別事業の多言語解説等整備事業の対象です。この事業のB-2は、道案内や注意、施設名を示す多言語の標識が中心で、解説や宣伝が主目的のものは含みません。案内板がどちらに当たるか迷うときは応募前に財団へメールで質問します。件名の指定があるので、公式ページで確認してください。
申請を第三者に頼めますか?
条件つきで頼めます。申請者の了解のもとで手続代行者に依頼でき、不備のないよう申請者も内容を共有します。工事を請け負う施工業者は、手続代行者にはなれません。手続代行者への報酬は、補助対象経費に入りません。正式な交付決定通知などは、申請者あてに届きます。
