高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以降も離職せずに同じ会社(または転職先)で働き続け、賃金が60歳時点より下がった人に支給される給付金です。似た名前の「高年齢再就職給付金」は、一度離職して基本手当(失業手当)を受給してから再就職した人が対象であり、両者の対象者ははっきりと分かれます。
高年齢雇用継続基本給付金制度は雇用保険の制度で、窓口はハローワークです。この記事の数値は、すべて厚労省(厚生労働省)が公表しているリーフレット「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」で確認したものです。
この記事では、まず自分がどちらに当てはまるかを判定したうえで、基本給付金の支給要件・金額・期間について、順を追って詳しく解説します。制度全体の概要は高年齢雇用継続給付とは?2025年改正で上限10%にでも確認できます。
高年齢雇用継続基本給付金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 60歳以降、離職せず継続雇用(転職含む)で賃金が下がった雇用保険の一般被保険者 |
| 高年齢再就職給付金との違い | 離職して基本手当を受給していれば再就職給付金、していなければ基本給付金 |
| 主な支給要件 | 雇用保険の被保険者期間が通算5年以上、60歳到達時と比べ賃金が75%未満に低下 |
| 支給率 | 賃金が64%以下に低下で各月賃金の10%。64〜75%未満は低下率に応じて段階的に減少 |
| 支給限度額 | 支給対象月に支払われた賃金が397,369円以上の月は支給対象外(令和9年7月31日までの額) |
| 最低限度額 | 算定された支給額が2,562円以下のときは支給されない(同上) |
| 支給期間 | 60歳に達した月から65歳に達する月まで(被保険者期間5年未満なら5年到達月から) |
| 申請の時期 | 初回は支給対象月初日から4か月以内。2回目以降は指定された月ごとに申請 |
60歳を過ぎても働き続ける方が増える一方で、再雇用後に賃金が下がるのは一般的な現象です。定年後の再雇用契約を結ぶ前に、この給付金の仕組みを知っておくと、賃金交渉や今後の生活設計の材料にもなります。
まず確認すること:離職したかどうか
高年齢雇用継続給付には2種類あり、「60歳以降に離職して基本手当を受給したかどうか」で自動的に振り分けられます。
- 高年齢雇用継続基本給付金: 離職せず働き続けた(転職しても失業手当を受給していなければこちら)
- 高年齢再就職給付金: 一度離職して基本手当を受給し、その後再就職した
同じ人が両方を選んで受け取ることはできません。どちらに該当するかは、60歳以降の働き方の履歴で自動的に決まります。
高年齢雇用継続基本給付金の支給要件
基本給付金を受け取るには、次の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あること
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
- 60歳到達時点の賃金と比べて、現在の賃金が75%未満に低下していること
被保険者期間の「通算5年」は、転職していても雇用保険への加入が継続していれば通算されます。ただし、被保険者でない期間(1年を超えるブランク等)があると、通算が途切れる場合があるため注意が必要です。
支給率の計算:賃金がどこまで下がると、いくらもらえるか
支給率は、60歳時点の賃金に対する低下率によって変わります。
| 60歳時点比の賃金水準 | 支給率 |
|---|---|
| 64%以下に低下 | 各月の賃金の10% |
| 64%超75%未満に低下 | 低下率に応じて10%未満の段階的な率 |
| 75%以上(下がっていない、または下がり幅が小さい) | 支給対象外 |
2025(令和7)年4月の法改正により、支給率の上限は従来の15%から10%に引き下げられました。
令和7年・令和8年の法改正と、廃止の見通し
改正の適用の境目は、厚生労働省のリーフレットに明記されています。
令和7年3月31日までに60歳となった方等は支給率が異なります
つまり次のように分かれます。
- 令和7年4月1日以降に60歳に達した方(その時点で被保険者期間が5年以上ない方は、5年以上となった日が令和7年4月1日以降の方)… 上限10%
- 令和7年3月31日までに60歳に達した方 … 経過措置として上限15%
令和8年(2026年)現在、この10%のルールが適用されています。令和8年度に支給率そのものの追加変更はありませんが、支給限度額・最低限度額・賃金月額の上限下限は毎年8月1日に改定されます。
制度の廃止については、現時点で決定された事実はありません。 2025年の改正は65歳までの継続雇用が定着したことを踏まえた段階的な縮小で、今後さらに見直される可能性はあります。最新の内容は厚生労働省の公表情報でご確認ください。
高年齢雇用継続基本給付金の額はいくらか(シミュレーション)
ケース1: 60歳時点の賃金月額28万円→60%(16万8,000円)に低下
賃金が64%以下に下がっているため、支給率は10%です。
- 計算式: 16万8,000円×10%=16,800円(毎月)
ケース2: 60歳時点の賃金月額32万円→64%(20万4,800円)に低下
64%以下まで下がっているため、支給率は各月賃金の10%です。
- 計算式: 20万4,800円×10%=20,480円(毎月)
低下率が大きいほど支給率も高くなるため、賃金の下がり幅が大きい人ほど、割合としては手厚い給付を受け取れる仕組みになっています。
支給率の早見表(計算式と計算方法)
低下率が64%超75%未満の場合の支給率は、厚生労働省のリーフレットに早見表として載っています。自分の低下率の行を見れば、計算せずに支給率が分かります。
低下率の計算方法
まず低下率を出します。
低下率(%)= 支給対象月に支払われた賃金額 ÷ 賃金月額 × 100
ここでいう「賃金月額」は、原則として60歳に到達する前6か月間の平均賃金です。受給資格確認通知書や支給決定通知書に記載されています。
支給率の早見表
| 低下率 | 支給率 | 低下率 | 支給率 |
|---|---|---|---|
| 75.00%以上 | 0.00% | 69.50% | 4.60% |
| 74.50% | 0.39% | 69.00% | 5.06% |
| 74.00% | 0.79% | 68.50% | 5.52% |
| 73.50% | 1.19% | 68.00% | 5.99% |
| 73.00% | 1.59% | 67.50% | 6.46% |
| 72.50% | 2.01% | 67.00% | 6.95% |
| 72.00% | 2.42% | 66.50% | 7.44% |
| 71.50% | 2.85% | 66.00% | 7.93% |
| 71.00% | 3.28% | 65.50% | 8.44% |
| 70.50% | 3.71% | 65.00% | 8.95% |
| 70.00% | 4.16% | 64.50% | 9.47% |
| — | — | 64.00%以下 | 10.00% |
低下率・支給率とも、小数点以下第3位を四捨五入して第2位まで算定します。 支給額は小数点以下を切り捨てて整数にします。
支給率の計算式(早見表にない低下率の場合)
低下率が64%を超えて75%未満の場合、支給額は次の考え方で求めます。
支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 支給率
厚生労働省のリーフレットには、賃金月額30万円の方の計算例が示されています。
支給対象月に支払われた賃金が20万円のとき。低下率が66.67%で64%を超えていますので、支給額 = 14,545円
同じ方が18万円まで下がった場合は、低下率が60%で64%以下なので、18万円 × 10% = 18,000円です。
賃金が2万円下がっただけで、給付金は3,455円増えます。 64%のラインをまたぐかどうかが金額に大きく効きます。
「みなし賃金」で減額されることがある
賃金が下がった理由によっては、実際に支払われた賃金ではなく「みなし賃金」で低下率を判定されます。これを知らないと、計算した額より少ない給付金しか入らず驚くことになります。
みなし賃金が算定される理由
厚生労働省のリーフレットは、次の4つを挙げています。
- 被保険者本人の非行等による懲戒が原因である賃金の減額
- 疾病または負傷等による欠勤、遅刻、早退などによる賃金の減額
- 事業所の休業
- 妊娠、出産、育児、介護等による欠勤、遅刻、早退などによる賃金の減額
要するに、本人や会社に責任がある減額、または他の社会保険で保障されるべき減額は、雇用保険で埋めるべきものではないという考え方です。
みなし賃金が使われた場合の計算
- 支給対象月に実際に支払われた賃金額に、減額部分を加算してみなし賃金を出します
- みなし賃金にもとづいて低下率と支給率を出します
- 実際に支払われた賃金額に支給率をかけて支給額を出します
リーフレットの例で確認します。賃金月額30万円、支給対象月に実際に支払われた賃金が18万円、そのうち欠勤による減額が3万円あった場合です。
- 減額がなければ低下率は 18万円 ÷ 30万円 = 60.00% で、支給額は 18万円 × 10% = 18,000円のはず
- しかし減額があるので、みなし賃金は 18万円 + 3万円 = 21万円
- このときの低下率は 21万円 ÷ 30万円 = 70.00%、支給率は 4.16%
- 支給額は 18万円 × 4.16% = 7,488円
同じ18万円を受け取っていても、病気で欠勤した分が含まれると給付金は18,000円から7,488円へ減ります。 差は1万円を超えます。
支給限度額と最低限度額(上限額・最低限度額)
金額には上下2つの枠があります。いずれも令和9年7月31日までの額で、毎年8月1日に毎月勤労統計の平均定期給与額により改定されます。
支給限度額 397,369円
- 支給対象月に支払われた賃金が397,369円以上の場合、給付金は支給されません
- 支払われた賃金額と算定された支給額の合計が397,369円を超える場合は、397,369円からその賃金を差し引いた額が支給されます
最低限度額 2,562円
算定された支給額が2,562円以下のときは、給付金は支給されません。
リーフレットの例では、賃金月額30万円の方が支給対象月に8千円しか受け取らなかった場合、低下率2.67%で支給額は8千円 × 10% = 800円になりますが、2,562円以下なので支給されません。
賃金月額そのものの上限額・下限額
低下率の分母になる「60歳到達時の賃金月額」にも枠があります。
- 算定した額が522,000円を超える場合は、522,000円として扱われます
- 算定した額が96,090円を下回る場合は、96,090円として扱われます
60歳時点で月60万円もらっていた方でも、賃金月額は522,000円で計算されます。 高収入の方ほど、低下率が実感より高く出る(=支給率が低く出る)ことになります。
高年齢雇用継続基本給付金の支給期間は「60歳から65歳まで最長5年」
基本給付金の支給期間は、60歳に達した月から65歳に達する月までです。被保険者期間が5年に満たない場合は、5年に達した月から支給が始まります。最長でも65歳に達する月までで終了し、それ以降は延長できません。
これに対し、高年齢再就職給付金の支給期間は、再就職時点の基本手当の支給残日数によって1年または2年に分かれます(いずれも65歳に達する月が上限)。基本給付金より対象になる期間が短く設定されています。
| 高年齢雇用継続基本給付金 | 高年齢再就職給付金 | |
|---|---|---|
| 対象になる人 | 離職せず働き続けた人 | 離職して基本手当を受給後、再就職した人 |
| 支給期間 | 60歳到達月〜65歳到達月(最長5年) | 支給残日数200日以上で2年、100日以上200日未満で1年(65歳到達月が上限) |
| 支給残日数100日未満 | — | 対象外 |
| 再就職手当との関係 | 関係なし | 再就職手当を受給した場合は対象外(選択制) |
再就職手当との「選択制」に注意
離職して基本手当を受給していた方が再就職した場合、「再就職手当」と「高年齢再就職給付金」のどちらか一方しか受け取れません。 一般的には、支給残日数が多く残っているうちに再就職できるなら再就職手当の方が有利になるケースが多いですが、賃金の下がり幅や勤続見込み年数によって有利不利は変わります。両方の見込み額を比較してから選ぶことをおすすめします。再就職手当の金額は再就職手当はいくら?計算式と3パターンの例で計算できます。
高年齢雇用継続基本給付金と年金を同時に受け取ると、年金額が調整される場合がある
60歳台前半で老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を受け取りながら働いている方が、高年齢雇用継続基本給付金もあわせて受け取る場合、年金の一部が支給停止(調整)されることがあります。これは、在職老齢年金の仕組みによる調整に加えて、高年齢雇用継続給付を受け取っていることそのものが、年金額の追加調整の対象になるためです。
具体的な調整率は、2025年4月の改正で標準報酬月額の最大6%相当から最大4%相当に引き下げられました。 これは支給率が15%から10%に縮小されたのにあわせた見直しです。それ以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たしていた方には、経過措置として旧ルール(最大6%)が適用される場合があります。「給付金と年金の両方を満額で受け取れる」わけではないという点は、事前に理解しておく必要があります。実際の調整額は年金事務所での試算が必要になるため、年金を受給しながら継続雇用を検討している場合は、早めに年金事務所に相談することをおすすめします。
受け取るデメリットはあるか
「もらうと損をするのでは」と心配される方がいるので、デメリットになり得る点を正直に並べます。
| 項目 | 実際のところ |
|---|---|
| 年金が減る | これが唯一の実質的なデメリットです。 60歳台前半の老齢厚生年金を受けている方は、標準報酬月額の最大4%相当が支給停止されます |
| 所得税・住民税が増える | 増えません。 雇用保険の給付金は非課税です |
| 社会保険料が上がる | 上がりません。 給付金は標準報酬月額の計算に含まれません |
| 退職金が減る | 無関係です。 退職金は会社の規定で決まるもので、雇用保険の給付とは別です |
| 手続きが面倒 | 2か月に一度の申請が続きます。多くは会社の労務担当者が行います |
年金の調整を差し引いても、受け取らないより手取りが増えるのが通常です。 ただし損益分岐点は人により異なるため、年金を受給しながら働く方は年金事務所での試算をおすすめします。
何歳まで、いつからいつまでもらえるのか
期間について、よくある3つの聞かれ方に順に答えます。
いつから(いつからもらえるか)
60歳に達した月からです。ただし条件が2つあります。
- 賃金が75%未満に低下した月からが支給対象です。60歳になっても賃金が下がらなければ、下がった月まで支給は始まりません
- 被保険者期間が通算5年に満たない場合は、5年に達した月からになります
いつまで(何歳まで・いつまでもらえるか)
65歳に達する月までです。何歳までかというと、65歳までです。 これを過ぎての延長はできません。
60歳ちょうどから受け始めれば最長5年間、63歳から始まれば2年間で終わります。開始が遅れた分だけ、受け取れる期間は短くなります。
退職後はどうなるか
離職すると、その時点で基本給付金は終了します。 退職後は、次の状況に応じて別の制度に切り替わります。
- 失業手当(基本手当)を受給する … 65歳未満の離職なら基本手当、65歳以上なら高年齢求職者給付金です
- 基本手当を受給したあと再就職した … 高年齢再就職給付金の対象になります
- 基本手当を受給せずに次の会社で働き始めた … 被保険者期間が続いていれば、引き続き基本給付金の対象です
失業保険(基本手当)と高年齢雇用継続基本給付金を、同時に受け取ることはできません。 働いていることが給付の前提なので、失業状態とは両立しないためです。
この制度でいう「賃金」とは何か(賞与・通勤手当・交通費の扱い)
低下率の判定に使う賃金とは何を指すのか。ここが金額を左右します。
厚労省のリーフレットでは、低下率の分母になる「賃金月額」を原則として60歳に到達する前6か月間の平均賃金と定義しています。分子になるのは、支給対象月に実際に支払われた賃金額(みなし賃金が算定される場合はみなし賃金額)です。
- 賞与(ボーナス) … 賃金月額の算定は原則として60歳到達前6か月間の平均賃金にもとづくもので、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)は含まれません
- 通勤手当・交通費(通勤費) … 月ごとに支払われる通勤手当は、通常の賃金として扱われます。6か月分をまとめて支給する定期代のように、3か月を超える期間ごとに支払われるものは扱いが異なることがあります
自分の会社の手当がどう扱われるかは、賃金台帳の区分によって変わります。 判断に迷う場合は、管轄のハローワークに賃金台帳を持参して確認してください。ここは一律の答えを出せる部分ではないため、推測で計算しないことをおすすめします。
副業・アルバイト・役員・公務員の扱い
副業やアルバイトをしている場合
この給付金は雇用保険の被保険者である事業所での賃金を基準に判定されます。副業先が雇用保険の適用対象でなければ、その収入は低下率の判定に入りません。ただし、雇用保険は原則として主たる事業所1か所でのみ加入します。 どの事業所が主たる勤務先になるかで判定が変わるため、複数の勤務先がある方はハローワークに確認してください。
60歳以降にアルバイト・パートへ切り替えた場合
雇用保険の被保険者資格を維持していれば、雇用形態を問わず対象になり得ます。 週の所定労働時間が短くなって雇用保険の加入対象から外れると、その時点で対象外になります。
役員になった場合
取締役など、雇用保険の被保険者でなくなる立場になると対象外です。 兼務役員(役員でありながら労働者としての性質も持つ方)については個別の判定が必要になるため、ハローワークへの確認が必要です。
公務員の場合
この給付金は雇用保険の制度なので、雇用保険に加入していない公務員は対象外です。 国家公務員・地方公務員には、それぞれの制度で別の仕組みが設けられています。所属先の共済組合・人事担当部署にご確認ください。
課税・年末調整・確定申告の扱い
高年齢雇用継続基本給付金は非課税です。 雇用保険法にもとづく給付なので、所得税・住民税はかかりません。
その結果、次のようになります。
- 年末調整に含めません。 給与ではないので、源泉徴収票にも載りません
- 確定申告でも申告不要です。 医療費控除などで確定申告をする場合も、この給付金を収入として記載する必要はありません
- 配偶者控除・扶養の判定にも影響しません。 非課税所得なので、所得金額に算入されません
給付金を受け取っても、税金の手続きは何も増えません。 増えるのは2か月に一度の支給申請だけです。
社会保険料・税金への影響
高年齢雇用継続基本給付金は、雇用保険から支給される給付金であり、非課税です。 所得税・住民税の対象にはなりません。
一方で、基本給付金そのものは、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額の計算には含まれません。 60歳以降の賃金が下がった場合、実際の賃金(給付金を含まない額)を基準に標準報酬月額が見直され、それに応じて社会保険料も下がります。給付金を受け取っているからといって、社会保険料の計算が変わるわけではない点に注意してください。
60歳を境に転職した場合、どちらの制度で判定されるか
60歳の誕生日を挟んで転職した場合、転職前後で雇用保険への加入が途切れずに続いていれば、被保険者期間は通算されます。 ただし、転職にあたって一度離職票を受け取り、基本手当を受給した場合は、その時点で「高年齢再就職給付金」側の扱いに切り替わります。
- 転職はしたが、失業手当を受け取らずにすぐ次の会社で働き始めた場合: 高年齢雇用継続基本給付金の対象(被保険者期間が通算されていれば)
- 一度離職して基本手当を受給し、その後再就職した場合: 高年齢再就職給付金の対象
離職と再就職の間に基本手当を受給したかどうかが、唯一の分かれ目になります。 失業手当をあえて申請せずに次の職場へ移った方が、結果的に基本給付金側の対象になるケースもあるため、転職のタイミングで迷った場合はハローワークに事前相談しておくと安心です。
会社側が受け取る助成金との関係
高年齢者の継続雇用を進める企業向けには、65歳超雇用推進助成金など、事業主向けの助成金も別に用意されています。これらは会社が申請する制度であり、従業員本人が受け取る高年齢雇用継続基本給付金とは別建てです。両方が同時に活用されることもありますが、支給要件や申請者が異なるため、混同しないようにしてください。
60歳到達時の手続きを忘れると、給付が遅れることがある
高年齢雇用継続基本給付金の支給額は、60歳到達時点の賃金月額を基準にして計算されます。 そのため、60歳に到達したタイミングで、会社は「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」をハローワークに提出し、基準となる賃金額を確定させる手続きが必要です。
この手続きが遅れると、実際の給付金申請ができるようになるまでの期間も後ろ倒しになります。 60歳を迎える前に、会社の労務担当者へ手続きの進捗をあらかじめ確認しておくと、スムーズに申請へ進めます。
不支給になる要因(貰えないケースの整理)
「対象だと思っていたのに支給されなかった」という不支給の通知が届く主な原因を、ここまでの内容から整理します。
- 賃金が75%以上を維持している … 下がり幅が小さいと対象外です
- 支給対象月に支払われた賃金が397,369円以上 … 高い賃金水準のままだと、その月は支給されません
- 算定された支給額が2,562円以下 … 最低限度額に届かないと支給されません
- みなし賃金で判定され、低下率が75%以上になった … 病気による欠勤などが原因の減額は、減額がなかったものとして判定されます
- 被保険者期間が通算5年に達していない … 5年に達した月から支給が始まります
- 65歳に達する月を過ぎた … 期間の上限です
- 60歳到達時等賃金証明書が提出されていない … 基準となる賃金月額が確定していないと、支給の判定ができません
不支給決定通知書には理由が記載されます。 納得できない場合は、通知書を持って管轄のハローワークで説明を求めてください。
継続雇用制度(再雇用・勤務延長)との関係
多くの企業は、60歳定年後も希望者を継続雇用する制度(再雇用制度や勤務延長制度)を導入しています。高年齢雇用継続基本給付金は、この継続雇用制度を利用して働き続ける方の多くが対象になります。 再雇用時に賃金が下がるのは一般的なパターンであり、その下がり幅が75%未満であれば給付金の対象になり得ます。
再雇用契約を結ぶ際に、賃金がどの程度下がるのかを事前に把握しておくことで、給付金がいくらになるかのおおまかな見込みも立てられます。会社から提示される再雇用後の賃金条件は、60歳到達時点の賃金と比較して75%を下回るかどうかを確認する材料になります。生活設計を考えるうえでも、この見込みを早めに立てておくことは重要です。
再雇用後、賃金がさらに下がった場合
再雇用契約が1年ごとの更新制になっている会社では、更新のたびに賃金が見直され、さらに下がることがあります。 この場合、支給率も賃金の低下幅に応じて見直されます。毎年の契約更新時に、新しい賃金水準での支給率を確認しておくとよいでしょう。
賃金がどのくらい下がると対象になるか、具体的な目安
「75%未満に低下」といっても、実際にどのくらいの下がり方なのかイメージが湧きにくいかもしれません。次の目安で確認してください。
| 60歳時点の賃金月額 | 75%のライン(このラインを下回れば対象) |
|---|---|
| 25万円 | 18万7,500円 |
| 30万円 | 22万5,000円 |
| 35万円 | 26万2,500円 |
| 40万円 | 30万円 |
再雇用後の賃金が、このラインをわずかでも下回れば支給対象になります。 逆に、再雇用後も賃金が75%以上を維持している場合は、たとえ多少下がっていても対象外になる点に注意してください。会社から提示された再雇用条件の金額を、このラインと照らし合わせてみることをおすすめします。
高年齢雇用継続基本給付金の申請|申請方法・必要書類・申請期限
誰が提出するか
提出者は事業主(会社)です。 ただし厚生労働省のリーフレットには「やむを得ない理由のため、事業主を経由して提出することが困難な場合や被保険者本人が自ら申請手続を行うことを希望する場合は、被保険者本人が提出することも可能です」と書かれています。
提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。電子申請もできます。
申請期限(いつまでに出すか)
| 回 | 提出時期 |
|---|---|
| 初回の支給申請 | 最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4か月以内 |
| 2回目以降 | ハローワーク所長が指定する支給申請月の支給申請日。原則として2か月に一度 |
2回目以降の指定日は、ハローワークから交付される「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に印字されています。初回を除き、指定された支給申請月中に出す必要があります。
提出書類
- 高年齢雇用継続給付支給申請書
- 初回は「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」という用紙を使います
- 払渡希望金融機関指定届(上記の用紙にあるものを使用)
この申請書にはマイナンバーを記載して提出します。
添付書類
- 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
- 支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など)と、被保険者の年齢が確認できる書類(運転免許証か住民票の写し。コピーも可)
あらかじめマイナンバーを届け出ている方は、年齢確認書類の写しを省略できます。
①②は初回の支給申請時(または支給申請前)に受給資格を確認するために必要です。初回申請の前にあらかじめ提出して受給資格を照会しておくこともでき、その場合は交付された受給資格確認通知書を支給申請書に添付する形になります。
書類の書き方で迷ったら
申請書の記入例は、ハローワークの窓口で様式とあわせて確認できます。 用紙そのものに記載要領が付いているほか、会社の労務担当者が例年の書き方を把握していることが多いので、まずは社内で確認してください。記入内容そのものは賃金台帳の数字を転記する性質のものなので、賃金台帳・出勤簿を手元に揃えてから書き始めると迷いません。
申請の流れ(初回)
- 60歳到達時に、会社が六十歳到達時等賃金証明書をハローワークへ提出し、基準となる賃金月額を確定させる
- 賃金が75%未満に低下した月(支給対象月)が発生する
- その支給対象月の初日から4か月以内に、受給資格確認票・(初回)支給申請書を提出する
- ハローワークが審査し、支給決定通知書と次回分の支給申請書が交付される
- 以後、指定された支給申請月ごとに2か月分をまとめて申請する
振込日はいつか
支給決定がなされた後、届け出た金融機関の口座に振り込まれます。 支給申請が2か月に一度なので、入金もおおむね2か月に一度のペースになります。具体的な振込日は支給決定通知書で確認してください。厚生労働省のリーフレットには、支給決定から振込までの日数は明記されていません。正確な入金日は管轄のハローワークにご確認ください。
高年齢再就職給付金を選ぶべきか、再就職手当を選ぶべきか(判断の目安)
離職して基本手当を受給していた方が再就職する場合、再就職手当と高年齢再就職給付金のどちらかを選ぶことになります。判断の目安を整理します。
- 支給残日数が多く残っている場合: 再就職手当の給付率(60〜70%)が有利になりやすい傾向があります
- 再就職後、長期間にわたって賃金が下がった状態が続く見込みの場合: 高年齢再就職給付金は最長2年間、毎月の賃金の低下分を補ってもらえるため、総額で見ると有利になることがあります
- 迷ったら両方の見込み額を試算する: ハローワークの窓口で、それぞれの制度でいくらになるかの目安を確認できます。担当者に相談する際は、離職前の賃金・再就職後の賃金・支給残日数の3つを伝えるとスムーズです
一度どちらかを選んで受給が始まると、あとから別の制度に切り替えることはできません。 再就職が決まった段階で、早めに試算しておくことを強くおすすめします。給付額の差は、長期間になるほど大きく積み重なっていきます。
高年齢雇用継続基本給付金についてよくある誤解
- 「年金をもらっているから給付金はもらえない」という誤解: 年金と給付金は同時に受け取れます。ただし、前述のとおり年金額が一部調整されます
- 「給付金をもらうと退職金が減る」という誤解: 退職金の算定基準は会社の規定によるものであり、雇用保険の給付金とは無関係です
- 「パートに切り替えたら対象外になる」という誤解: 雇用保険の被保険者資格を維持していれば、パートへの切り替え後も対象になり得ます
- 「会社が申請しないなら自分ではどうにもならない」という誤解: 本人が直接ハローワークで手続きすることも可能です。会社の対応が遅い場合は、自分から動くことも検討してください
よくある質問
60歳で転職し、新しい会社の賃金が下がった場合も対象になりますか?
離職して基本手当を受給していなければ、転職先での賃金低下でも高年齢雇用継続基本給付金の対象になり得ます。ただし、被保険者期間が通算5年以上あることが条件です。
パートタイムで働いている場合も対象になりますか?
雇用保険の一般被保険者であれば、雇用形態を問わず対象になります。週の所定労働時間が短く雇用保険の加入対象外であれば、対象にはなりません。
高年齢雇用継続給付は将来廃止される予定はありますか?
2025年4月に支給率が段階的に縮小されたのは、65歳までの継続雇用が定着してきたことを踏まえた見直しです。現時点で制度自体の廃止は決定されていませんが、今後も見直しが行われる可能性はあります。最新の制度改正の内容は厚生労働省の公表情報でご確認ください。
老齢厚生年金を受け取りながら基本給付金をもらうと、結局手取りは増えますか?
年金の一部が支給停止されても、多くの場合は給付金と残りの年金・賃金を合計した手取り額はプラスになります。ただし、賃金の低下幅や年金額によって損益分岐点は人ごとに異なるため、年金事務所やハローワークで個別の試算を受けることをおすすめします。 「給付金をもらうと年金が減るから損」と単純に判断しない方がよいでしょう。
60歳到達時の賃金証明書の手続きは誰がやってくれますか?
多くの場合、会社の労務担当者が手続きを行います。ただし、手続きが漏れていることもあるため、60歳を迎える前に自分から労務担当者へ確認しておくと安心です。
高年齢雇用継続基本給付金を受け取っている間に転職した場合、給付は続きますか?
転職先でも雇用保険に継続して加入し、賃金が引き続き75%未満に低下した状態であれば、支給要件を満たす限り給付は続きます。ただし、転職にあたって離職票を受け取り、基本手当を申請した場合は、その時点で高年齢再就職給付金側の扱いに切り替わります。
会社が申請手続きを忘れていました。さかのぼって受け取れますか?
支給申請には時効があり、原則として各支給対象月の初日から起算して2年を経過すると請求できなくなります。2年以内であれば、さかのぼって申請できる可能性があるため、心当たりがある場合は早めにハローワークへ相談してください。
60歳になる前から、給付金の見込み額を試算してもらえますか?
正式な支給額は60歳到達時の賃金が確定してから計算されますが、現在の賃金水準をもとにした概算であれば、ハローワークの窓口で相談に応じてもらえることがあります。再雇用後の賃金条件が固まった段階で、一度相談してみるとよいでしょう。
60歳を過ぎてから初めて雇用保険に加入した場合、対象になりますか?
支給要件である「雇用保険の被保険者期間が通算5年以上」を満たしていないため、60歳を過ぎてから雇用保険に加入した方は、当面は対象になりません。それまでの勤務先で雇用保険に加入していた期間があれば通算できる可能性があるため、被保険者期間の履歴をハローワークで確認しておくとよいでしょう。
支給対象月ごとに賃金が変動する場合、給付額もその都度変わりますか?
はい。支給額は支給対象月ごとの賃金を基準に、その都度きちんと計算し直されます。月によって残業代やインセンティブの額が変わる場合、給付額もそれに連動して変動する仕組みになっています。
支給決定通知はどのような方法で届きますか?
多くの場合、会社の労務担当者を経由して、支給決定通知書が本人に渡されます。本人が直接申請した場合は、ハローワークから自宅に郵送されることが一般的です。通知が届かない場合は、申請したハローワークに確認してください。
免責事項: 本記事の内容は2026年9月時点で確認できた厚生労働省・ハローワークの公表情報にもとづきます。支給率・限度額は制度改正・年度改定により変更される場合があるため、実際の申請にあたっては必ず最寄りのハローワークで最新の内容をご確認ください。本記事は制度の解説を目的とするものであり、社会保険労務士による申請書類の作成代行を示唆するものではありません。
