高額介護サービス費は1か月に払った介護サービスの自己負担が所得区分ごとの上限を超えたとき、超えた分があとから戻る仕組みです。上限は課税世帯の一般的な区分で月4万4,400円、住民税非課税世帯で月2万4,600円です。申請は市区町村から届く案内に沿って初回だけ行えば、2回目以降は登録した口座に自動で振り込まれるのが基本です。
令和8年8月には、所得区分を判定する年金収入等の基準額が80万9,000円から82万6,500円に変わりました。月の上限額は変わっていません。この記事では上限額の一覧、見直しの中身、計算例、申請方法と期限を、厚生労働省と自治体の公式資料で確かめた内容にもとづいて整理します。
住宅改修費や福祉用具購入費など、介護保険のほかの給付とあわせた全体像は介護の補助金まとめ|住宅改修・福祉用具・高額介護費で扱っています。
高額介護サービス費とは何か、わかりやすく
介護保険のサービスを使うと、費用の1〜3割を自己負担します。高額介護サービス費はこの自己負担額が1か月の合計で上限を超えたときに、超えた分が支給される高額介護サービス費制度です。介護保険法第51条(予防給付は第61条)が根拠で、上限額は政令の介護保険法施行令で定められています。全国どこでも上限額は同じで、変わるのは窓口と案内の出し方です。
対象者は要介護・要支援の認定を受けて介護保険のサービスを使い、1か月の自己負担が上限を超えた人です。認定を受けていない人は対象になりません。横浜市の案内では、介護予防・生活支援サービス(総合事業)の自己負担も対象に含めています。
何が対象かは、章を分けて後ろで整理します。先に覚えておきたいのはサービスの利用料の自己負担だけが対象で、施設の食費・居住費や福祉用具の購入費、住宅改修費は対象外という点です。
似た3つの制度との違い
介護保険には、負担を軽くする仕組みがほかにもあります。
| 高額介護サービス費 | 福祉用具購入費・住宅改修費 | 補足給付(食費・居住費の負担限度額認定) | |
|---|---|---|---|
| 軽くするもの | サービス利用料の自己負担 | 用具購入・住宅改修の自己負担 | 施設に払う食費・居住費 |
| 仕組み | 上限超過分をあとから払い戻す | 利用時に7〜9割を給付 | 所得と預貯金で負担額そのものを下げる |
| 上限の単位 | 月額(所得区分で段階あり) | 年間10万円(用具)・20万円(改修) | 日額(部屋のタイプと段階で決まる) |
| 申請のタイミング | 利用後(原則初回のみ) | 都度 | 利用前に認定が必要 |
この記事で扱うのは、いちばん左の高額介護サービス費です。
上限額の一覧(所得区分別)
月額の利用者負担上限額は、本人と同じ世帯の所得で決まります。横浜市の公式ページと、厚生労働省の支給事務の資料にある区分を並べます。
| 所得区分 | 月額の上限 |
|---|---|
| 現役並み所得者Ⅲ(課税所得690万円以上の人がいる世帯) | 14万100円(世帯) |
| 現役並み所得者Ⅱ(課税所得380万円以上690万円未満の人がいる世帯) | 9万3,000円(世帯) |
| 課税世帯で課税所得380万円未満(一般) | 4万4,400円(世帯) |
| 世帯全員が住民税非課税 | 2万4,600円(世帯) |
| 住民税非課税のうち、老齢福祉年金の受給者、または前年の公的年金等収入額とその他の合計所得金額の合計が82万6,500円以下の人 | 2万4,600円(世帯)、このうち個人は1万5,000円 |
| 生活保護を受けている人など | 1万5,000円(個人) |
生活保護の区分は個人単位です。1万5,000円に下げたことで生活保護の被保護者でなくなる場合は、世帯で1万5,000円になると、横浜市と厚生労働省の資料に書かれています。
「世帯」とは何か、個人と世帯の違い
世帯とは、住民基本台帳で同じ世帯になっている人のことです。横浜市は世帯の上限は介護サービスを使った全員の負担の合計に対する上限で、個人の上限は利用した本人の負担に対する上限だと説明しています。
課税世帯の区分は世帯にいる65歳以上の人のうち、課税所得がいちばん高い人で決まります。たとえば課税所得380万円以上690万円未満の人が1人いれば、ほかの家族が一般の所得でも世帯の上限は9万3,000円になります。
課税所得とは、年収だとどのくらいか
課税所得とは、収入から必要経費にあたる控除や所得控除を引いたあとの金額です。通帳に入る年金や給与の額とは違います。目安として名古屋市の令和3年8月の見直し資料は、現役並み所得を次のような年収で示しています。
| 区分 | 年収の目安 |
|---|---|
| 現役並み所得相当(上限4万4,400円のまま) | 約383万円以上約770万円未満 |
| 現役並み所得Ⅱ(上限9万3,000円) | 約770万円以上約1,160万円未満 |
| 現役並み所得Ⅲ(上限14万100円) | 約1,160万円以上 |
同じ資料には世帯の65歳以上の人が1人だけなら年収約383万円以上、複数いれば合計520万円以上が目安だという注記もあります。この年収は目安です。判定は課税所得で行われるので、実際の区分は届いた通知書で確かめてください。
令和8年8月に何が変わったか
厚生労働省は令和8年6月25日付の介護保険最新情報Vol.1516で、健康保険法施行令等の一部を改正する政令(令和8年政令第219号)を知らせました。新しい基準がいつから使われるかというと、施行日の令和8年8月1日からです。
改正の趣旨は、通知にこう書かれています。介護保険法施行令が定める上限額の所得区分には、前年の公的年金等収入金額と合計所得金額の合計が80.9万円以下であることが基準の一部として入っています。令和7年の老齢基礎年金(満額)が80.9万円を超えることを踏まえ、低所得の人の自己負担に影響が出ないよう、80.9万円を82.65万円に見直しました。
何が変わり、何が変わらなかったか
| 令和8年7月まで | 令和8年8月から | |
|---|---|---|
| 区分の判定に使う年金収入等の基準額 | 80万9,000円以下 | 82万6,500円以下 |
| 該当する区分の月額上限(個人) | 1万5,000円 | 1万5,000円(変更なし) |
月額上限は1万5,000円のままです。変わったのは、年金収入がいくらまでならこの区分に入るかという判定の線です。線が上がったので、これまでわずかに外れていた人が新しく入る場合があります。
令和8年7月以前の利用分はどちらで判定するか
政令の附則第10条はサービスを使った月が令和8年8月以後なら新しい規定、同年7月以前なら従前の例による、と定めています。令和7年8月のサービス分も令和8年7月のサービス分も、新基準は使いません。払い戻しの通知書は、月ごとにどちらの基準で判定されたかを見て確かめます。
同じ見直しで動いたほかの制度
同じ82.65万円への見直しは、ほかの制度にもあります。福生市が出した介護保険べんり帳の内容変更のお知らせは、高額介護サービス費、特定入所者介護サービス費(補足給付)、介護保険料、高額医療合算介護サービス費の「80万円」の記載を82.65万円に変えると書いています。手元のリーフレットやチラシに80万9,000円と書かれていたら、令和8年8月分からは82万6,500円と読み替えます。
医療保険側の高額療養費と高額医療・高額介護合算療養費の所得区分では、政令第1条により「80万6,700円」が「82万6,500円」に改められました。介護側の80万9,000円とは、改正前の数字が違います。
補足給付では、年金収入等が82.65万円以下の人が「利用者負担第2段階」にあたります。福生市のお知らせによると介護保険施設等の居住費・滞在費に対する補足給付の支給額も、令和8年8月から見直されました。金額は市区町村の資料で確かめてください。
非課税年金は含めるか
遺族年金や障害年金は非課税年金です。横浜市は公的年金等収入額を税法上の課税対象になる公的年金等の収入とし、障害年金や遺族年金などの非課税年金は含まれないと説明しています。一方補足給付の厚生労働省のリーフレットは、年金収入金額に非課税年金も含むと注記しています。同じ金額の線でも、制度によって数え方が違います。
いくら戻るか(計算例)
払い戻し額は、1か月の自己負担額の合計から上限額を引いた差額です。
例1 1割負担で月6万円かかった場合
| 所得区分 | 月額上限 | 払い戻される額 |
|---|---|---|
| 一般(課税所得380万円未満) | 4万4,400円 | 6万円-4万4,400円=1万5,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 2万4,600円 | 6万円-2万4,600円=3万5,400円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 9万3,000円 | 上限に届かず払い戻しなし |
例2 夫婦が別々にサービスを使っている場合(一般・世帯上限4万4,400円)
夫の自己負担が3万円、妻が2万5,000円なら、世帯の合計は5万5,000円です。上限4万4,400円を引いた1万600円が払い戻されます。夫婦それぞれは上限に届かなくても、夫婦合算で超えることがあります。
例3 世帯パターン別の計算
| 世帯 | 負担割合と月の利用料 | 上限 | 払い戻される額 |
|---|---|---|---|
| 住民税非課税世帯 | 1割・4万円 | 2万4,600円 | 1万5,400円 |
| 一般(課税所得380万円未満) | 2割・8万円 | 4万4,400円 | 3万5,600円 |
| 課税所得690万円以上 | 3割・15万円 | 14万100円 | 9,900円 |
| 老齢福祉年金の受給者(個人単位) | 1割・3万円 | 1万5,000円 | 1万5,000円 |
上限が高い区分ほど払い戻しは小さくなります。所得の低い区分に手厚い設計です。
年間上限はあるか
かつては1割負担の世帯だけに、年間446,400円(37,200円の12か月分)という上限がありました。埼玉県の通知によるとこれは平成29年8月から令和2年7月までの3年間の激変緩和措置で、令和2年7月31日で終わっています。いまの高額介護サービス費は、月ごとの上限だけです。
申請方法と必要書類
申請の流れ
高額介護サービス費は、支給を受けるのに申請が要ります。対象と思われる人には、市区町村から申請のお知らせが届きます。横浜市は、対象サービスの利用から約4か月後(遅れる場合もある)に案内を送るとしています。案内が届いたら、次の順に進めます。
- 案内に同封された支給申請書に記入する
- 振込先の口座を指定して、郵送・オンライン・窓口のどれかで出す(横浜市の場合)
- 2回目以降に払い戻しがあれば、初回に指定した口座へ自動で振り込まれる(自動償還)
厚生労働省の支給事務の資料も受給者の負担を減らすために申請は初回のみで足りるようにし、申請時に利用者負担額の申告や領収書の添付を求めず、初回に指定した口座に振り込むよう、市町村へ求めています。
申請書の書き方と必要書類
横浜市の申請に必要なものは次の4点です。
- 高額介護サービス費支給申請書(対象と思われる人に区役所から届く)
- 介護保険被保険者証(写しでも可)
- 印鑑(朱肉を使うもの。申請者以外の口座に振り込む場合のみ)
- 通帳やキャッシュカードなど、振込先口座が確認できるもの
申請書(申請用紙)の様式と記入例は自治体ごとに違います。記入例が付いているかは、届いた案内で確かめてください。
マイナンバーの確認書類を求める自治体があると書く解説もありますが、横浜市の必要書類の一覧には入っていません。自治体によって違うので、案内の記載で確かめます。
いつ戻るか
案内が届くまでに、利用から数か月かかります。そこから申請して振込までにかかる日数は、確認できた公式資料に書かれていませんでした。2回目以降は自治体が自動で計算するので、通知書が届いて振込を待つ流れになります。
期限は2年、さかのぼって申請もできる
高額介護サービス費は、2年で時効にかかります(総合事業分は5年)。横浜市の案内にあります。厚生労働省の資料によると時効は介護保険法第200条第1項にもとづき、サービスを受けた日の属する月の翌月初日から進みます。
案内を見落としていた場合でも時効にかかっていなければ、過去の分に遡って申請できます。遡及できる範囲は2年が限度です。何か月分までさかのぼれるかは、窓口で確かめます。
本人が亡くなっていた場合は相続人が申請する
被保険者が亡くなったあとでも、払い戻しの対象になる月があれば申請できます。横浜市は、被保険者本人がすでに亡くなっている場合は相続人から手続きしてもらうと案内しています。申請書のほかに申立書や戸籍謄本などが必要になる場合があるので、保険者の窓口に聞いてください。
死亡後に払い戻しを受けた場合に、その金額が相続財産として相続税の計算や相続放棄の判断に関わるかは、確認できた公式資料に書かれていませんでした。税務署、弁護士、市区町村の窓口で確認してください。
世帯合算と世帯分離
上限額の多くは世帯単位です。同じ世帯に複数の利用者がいれば、自己負担を合算して世帯の上限と比べます。それぞれ単独では上限に届かなくても、夫婦合算で上限を超えることがあります。別世帯の親族の分は合算できません。
世帯分離をして世帯を分けると別世帯として判定されるので、上限額が変わることがあります。厚生労働省の資料では現役並み所得の区分は世帯単位で適用され、世帯構成が変わったときは再判定することになっています。介護費用を抑えることだけを目的にした世帯分離を自治体がどう扱うかは、確認できた資料からは分かりませんでした。補足給付では、世帯を分けた配偶者も判定に含まれます。やる前に、市区町村の介護保険担当課へ相談してください。
何が対象で、何が対象外か
対象になるのは、介護保険のサービスの自己負担分です。次の表で境目を確かめます。
| サービス・費用 | 高額介護サービス費の対象か |
|---|---|
| 訪問介護・訪問看護 | 対象 |
| デイサービス(通所介護) | 対象 |
| ショートステイの介護サービス費 | 対象 |
| ショートステイの食費・滞在費 | 対象外(補足給付の別枠) |
| 施設サービス(特養・老健等)の介護サービス費 | 対象 |
| 施設の食費・居住費・日常生活費 | 対象外 |
| 福祉用具貸与(レンタル) | 対象 |
| 特定福祉用具の購入 | 対象外(年間10万円の別枠) |
| 住宅改修 | 対象外(年間20万円の別枠) |
| おむつ代など実費の請求 | 対象外 |
| 区分支給限度基準額を超えた利用分 | 対象外(全額自己負担) |
横浜市の案内でも介護予防・生活支援サービス事業の一部、施設サービスなどの食費・部屋代等、特定福祉用具購入、住宅改修の費用は対象外です。区分支給限度基準額を超えた分は、介護保険の給付の枠の外なので全額が自己負担になります。
対象施設と老人ホームの扱い
施設に入っている人の自己負担は、施設の種類で扱いが分かれます。
- 特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健。老人保健施設とも呼ぶ)、介護医療院:施設サービスの介護費の自己負担が対象です。特養入所者でも、食費と居住費は対象外です
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム(厚生労働省の類型で「介護付」):ホームが提供する介護サービスの自己負担が対象です。家賃や食費は介護サービス費ではないので対象外です(食費・部屋代等は対象外という横浜市の案内と同じ扱い)
- 住宅型の有料老人ホーム:厚生労働省の類型では、介護が必要になったら入居者が選んだ地域の訪問介護などを使います。その在宅サービスの自己負担が対象になります
請求書の内訳は、「介護サービス費」「食費」「居住費」「日常生活費」のように分かれています。対象になるのは、このうち介護サービス費の自己負担分です。請求書を見て何が対象になるか迷ったら、担当のケアマネジャー(ケアマネ)に聞くとサービスごとの内訳を確認できます。
補足給付(食費・居住費)との違いと預貯金の要件
食費・居住費の負担を軽くする補足給付(特定入所者介護サービス費)は高額介護サービス費とは別の制度で、利用前に市区町村の認定を受けておく必要があります。所得だけでなく、預貯金の額にも要件があります。福生市が紹介している令和8年8月からの内容は次のとおりです。
| 利用者負担段階 | 所得の状況 | 預貯金(単身/夫婦) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受けている人など | 要件なし |
| 第1段階 | 住民税非課税の老齢福祉年金受給者 | 1,000万円以下/2,000万円以下 |
| 第2段階 | 前年の合計所得金額と年金収入額が82.65万円以下 | 650万円以下/1,650万円以下 |
| 第3段階① | 82.65万円超120万円以下 | 550万円以下/1,550万円以下 |
| 第3段階② | 120万円超 | 500万円以下/1,500万円以下 |
高額介護サービス費にはこの預貯金の要件がありません。施設に入る予定があるなら、食費・居住費の認定は利用前に申請しておきます。高額介護サービス費は利用後の払い戻しなので、順番が逆になる点に注意してください。
所得区分はいつの所得で決まるか
前年の所得で、毎年8月に更新される
区分の判定は、前年の所得にもとづきます。厚生労働省の支給事務の資料では、市町村民税の所得が前年中の所得で算定されることから、毎年8月1日を基準日として定期的に判定し、8月1日以降に使うサービス分から、その判定の上限額を適用するとしています。
一度決まった区分が使われる期間は、8月から翌年7月までのサービス分です。年の途中で収入が減っても、その期間のうちは区分がすぐには変わりません。退職や年金の受け取り開始の直後は、この時間差が出やすくなります。
世帯構成が変わったとき
転入・転出・死亡・65歳到達などで世帯が変わると、随時再判定されます。たとえば44,400円だった世帯に、課税所得380万円以上690万円未満の65歳以上の人が転入していたことが後から分かれば、転入月の翌月までさかのぼって9万3,000円が適用されます。
払い戻しのあとで返還を求められることがある
厚生労働省の資料には、判定をやり直す場面が2つ書かれています。世帯構成の変更の届出が遅れて分かったときと、修正申告で所得が更正されたときです。この場合すでに払い戻した過去分と新しい上限額で計算し直した額との差額を、被保険者との間で調整します。
差額の調整の方法(返還金を請求するのか、次回以降の払い戻しから差し引く相殺にするのか)は、確認できた資料に書かれていませんでした。遡る範囲は追加の給付が2年、不当利得の返還請求は地方自治法にもとづき5年が限度です。返還や返納の通知が届いたら、通知書の問い合わせ先に確認してください。
生活保護を月の途中で始めた場合
生活保護の区分は、1万5,000円(個人)です。厚生労働省の支給事務の資料は、月の途中で生活保護が開始された場合、その月の初日にさかのぼって新しい区分を適用すると定めています。月の途中で受給が始まっても、その月の分から1万5,000円の上限で計算されます。
高額医療・高額介護合算療養費との関係
医療費と介護費の両方がかさむ世帯には、年間で合算する制度があります。各医療保険と介護保険の自己負担の1年間(8月から翌年7月)の合計が上限を超えたとき、超えた分が支給される高額医療・高額介護合算療養費です。支給を受けるには、加入している医療保険の窓口で申請します。横浜市は国民健康保険か後期高齢者医療制度に加入している人は区役所の保険年金課、被用者保険の人は加入先の医療保険が窓口だと案内しています。
高額介護サービス費や高額療養費で戻った分を引いたあとの自己負担が、合算の対象です。基準額は所得区分で決まります。
医療費控除との関係
介護費用がかさむ世帯は、医療費控除も使えるか気になります。国税庁は医療費控除の金額を「実際に支払った医療費の合計額から、保険金などで補てんされる金額を引いた額」で計算すると説明しています。高額介護サービス費で戻った分も、補てんされた金額として差し引くのが基本です。
訪問看護など医療系のサービスや、一定の施設サービスの自己負担は、医療費控除の対象になる場合があります。払い戻しの額が確定するのは、利用月から数か月後です。確定申告の時期までに額が分からないと、控除額を正しく出せないことがあります。計算の考え方は医療費控除はいくら戻る?所得税と住民税で二重に効くで解説しています。
市区町村ごとの違いと独自の助成
高額介護サービス費の上限額は国の政令で決まるので、市区町村で変えることはできません。窓口は保険者の市区町村で、東京都なら区市町村、政令指定都市(札幌市、さいたま市、千葉市、川崎市、相模原市、新潟市、京都市、大阪市、岡山市、広島市、神戸市、名古屋市、福岡市、熊本市など)なら区役所や支所の介護保険の担当課です。横浜市は区役所の保険年金課が窓口になっています。
差が出るのは、市区町村の独自の助成です。横浜市には、在宅サービスやグループホームの利用者負担を3〜5%に軽くする「介護サービス自己負担助成」があります。助成の内容は、収入と金融資産の基準で決まります。社会福祉法人が運営するサービスの利用者負担を軽くする減免の制度も、横浜市の案内にあります。ほかの市区町村にも同じような制度があるかは、お住まいの介護保険の担当課のページで確かめてください。
見落としやすい要因
- 福祉用具購入費や住宅改修費を、高額介護サービス費の対象だと思い込んでいる。実際は年間10万円・20万円の別枠
- 案内が届いたのに手続きを放っている。時効は2年で、過ぎると払い戻しを受けられない
- 世帯合算をしていない。同じ世帯に複数の利用者がいると、合算で上限を超えることがある
- 食費・居住費の軽減と混同している。補足給付は利用前の認定が要る
- 令和8年8月の見直しで上限額が下がったと思っている。変わったのは判定の基準額
編集部の判断として、案内が届いたら先に申請書の口座欄だけでも埋めて出すことを勧めます。時効は利用した月ごとに進むので、出すのが遅れるほど古い月から払い戻しを受けられなくなるからです。
よくある質問
高額介護サービス費とは何ですか?施設に入所していても使えますか?
介護保険のサービスの自己負担(1〜3割)が1か月の合計で所得区分ごとの上限を超えたとき、超えた分があとから払い戻される制度です。特養や老健などの施設サービスの自己負担分も対象です。上限は課税世帯の一般的な区分で月4万4,400円、住民税非課税世帯で月2万4,600円などです。施設の食費・居住費や日常生活費は対象外で、補足給付で軽くします。申請は原則、初回だけです。
高額介護サービス費は毎月申請が必要ですか?
原則として初回のみです。初回の申請で口座を登録すれば2回目以降は自治体が自動で計算し、対象になる月があれば登録した口座に振り込みます。厚生労働省も市町村に対し、申請は初回のみで足りるようにすることを求めています。
申請の期限はいつまでですか?過ぎたらどうなりますか?
時効は2年で、サービスを受けた月の翌月初日から数えます(総合事業分は5年)。過ぎると払い戻しを受けられません。時効にかかっていなければ、さかのぼって申請できます。案内が届いたまま放っていた場合は、早めに市区町村の窓口へ連絡してください。
払い戻しはいつ入金されますか?
対象月の利用から案内が届くまでに数か月かかり、横浜市は約4か月後としています。申請から振込までの日数は、確認できた公式資料に書かれていません。2回目以降は自動で計算されるので、通知書を見て口座の入金を確かめます。
令和8年8月の見直しで上限額は下がりましたか?
上限額そのものは変わっていません。変わったのは住民税非課税世帯のうち最も低い区分に入るかどうかを判定する年金収入等の基準額で、80万9,000円から82万6,500円に上がりました。
令和8年7月以前の利用分には、新しい基準額が使われますか?
使われません。政令の附則第10条で、サービスを使った月が令和8年7月以前なら従前の例による、と定められています。新基準の82万6,500円で判定されるのは、令和8年8月以降のサービス分からです。
福祉用具はレンタルと購入のどちらが対象ですか?
レンタル(福祉用具貸与)は介護サービスの利用料に含まれるので対象です。購入費は年間10万円を上限とする別の枠で、高額介護サービス費の対象外です。住宅改修も年間20万円を上限とする別枠です。
世帯分離をすると上限額は下がりますか?
別世帯として判定されるので、区分が変わることはあります。ただし介護費用を抑えるためだけの世帯分離を自治体がどう扱うかは、確認できた資料からは分かりません。補足給付では世帯を分けた配偶者も含めて判定されます。実行する前に、市区町村の介護保険担当課へ相談してください。
本人が亡くなっている場合、相続人が申請できますか?
できます。横浜市は、被保険者本人がすでに亡くなっている場合は相続人の手続きになると案内しています。申請書のほかに申立書や戸籍謄本が必要になる場合があるので、保険者の窓口に確認してください。
有料老人ホームやケアハウスでも使えますか?
特定施設入居者生活介護の指定を受けた「介護付」の有料老人ホームでは、ホームが提供する介護サービスの自己負担が対象です。家賃や食費は対象外です。住宅型の有料老人ホームでは、入居者が選んだ外部の訪問介護や通所介護の自己負担が対象になります。ケアハウスなど、ほかの施設の扱いは市区町村の窓口で確かめてください。
おむつ代や食費は対象になりますか?
対象外です。高額介護サービス費は、介護保険のサービスの自己負担だけを見ます。請求書に「おむつ代」や「食費」が別の項目で載っていれば、その分は計算に入れません。食費・居住費は、補足給付の認定で軽くします。
年の途中で収入が減ったら、上限額はすぐ下がりますか?
すぐには下がりません。区分は前年の所得にもとづいて、毎年8月1日を基準日に判定されます。収入が減った年は、翌年8月の判定で反映されます。
高額介護サービス費で戻ったお金は、医療費控除にどう影響しますか?
国税庁は、保険金などで補てんされる金額を医療費の合計から差し引いて控除額を計算すると説明しています。高額介護サービス費で戻った分も差し引く対象です。両方を申告するときは、払い戻しが確定した金額を見て計算してください。
払い戻しのあとで、返還を求められることはありますか?
あります。世帯構成の変更の届出が遅れたときや、修正申告で所得が更正されたときは、すでに払い戻した分と計算し直した額との差額を調整することになります。調整の方法は自治体で違う可能性があるので、返還金や相殺の通知は通知書の問い合わせ先に確認してください。
