令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の老齢基礎年金の満額は、月額70,608円(年額847,300円)です。 前年度から月額1,300円(年額15,600円)の増額で、4年連続のプラス改定になりました。ただし「満額」を受け取れるのは、保険料をきちんと納め続けた人だけです。この記事では、満額の条件と、未納・免除期間があった場合にどれだけ減るのかを整理します。
老齢基礎年金の満額の要点まとめ
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間(480か月)、国民年金の保険料をすべて納めた場合に「満額」を受け取れる仕組みです。会社員・公務員の期間(厚生年金加入期間)も、この480か月の計算に含まれます。
満額はどう決まるか(改定率のルール)
老齢基礎年金の満額は、物価や賃金の変動に応じて毎年度見直されます。令和8年度は、物価変動率(+3.2%)が名目手取り賃金変動率(+2.1%)を上回ったため、名目手取り賃金変動率にもとづいて改定されました。国民年金(基礎年金部分)は前年度から1.9%、厚生年金の報酬比例部分は2.0%、それぞれ増額改定されています。
そもそも老齢基礎年金とは
老齢基礎年金は、国民年金に加入していたすべての人が対象になる年金です。自営業者・フリーランス(第1号被保険者)、会社員・公務員(第2号被保険者)、専業主婦・専業主夫(第3号被保険者)のいずれも、20歳から60歳までは国民年金の被保険者となり、老後は老齢基礎年金を受け取る仕組みになっています。「満額」という言葉は、この老齢基礎年金について、加入義務のある40年間をすべて納付済みにした場合の上限額を指す言葉です。
満額の条件:480か月(40年)すべて納付
満額を受け取るには、20歳から60歳になるまでの480か月間、保険料を全額納付済みである必要があります。次のいずれかの期間があると、その分だけ満額から減額されます。
- 保険料を納めなかった期間(未納期間)
- 保険料の免除・猶予を受けた期間(追納しなかった場合)
学生納付特例や納付猶予は「未納」とは異なりますが、追納しない限り、その期間分は満額の計算に反映されません。 学生納付特例の詳しい仕組みは、別記事「国民年金学生納付特例とは?所得基準と追納の注意点」で解説しています。
満額に届かない場合の計算式
満額に届かない場合の年金額は、次の式で計算されます。
満額 × 保険料納付済月数 ÷ 480か月
満額に届いているかどうかは自分で計算できる
自分が満額に届くかどうかを大まかに把握するには、20歳から60歳までの間で、次の期間を数えてみることが出発点になります。
- 会社員・公務員として厚生年金に加入していた期間(月数)
- 自営業・フリーランスとして国民年金保険料を実際に納付していた期間(月数)
- 配偶者の扶養に入っていた期間(第3号被保険者、月数)
- 保険料の未納期間(納め忘れがあった期間、月数)
- 保険料の免除・猶予を受け、追納していない期間(月数)
1〜3の合計が480か月(40年)であれば満額に届いています。4・5の期間がある場合は、その月数分だけ満額から目減りします。正確な月数は自己申告での計算に頼らず、ねんきん定期便やねんきんネットの記録で確認することをおすすめします。 自分の記憶と実際の記録が食い違っていることは珍しくありません。とくに転職を何度も経験している人や、若い頃に短期のアルバイトを転々としていた人は、加入記録が細切れになっていることが多く、記憶だけに頼ると見落としが生じやすい点に注意してください。
シミュレーション:納付状況別の年金額(令和8年度満額を基準)
| ケース | 納付済月数 | 年金額(年額) | 満額との差 |
|---|---|---|---|
| 40年間フル納付 | 480か月 | 847,300円 | 0円 |
| 3年間(36か月)未納があった場合 | 444か月 | 約783,255円 | 約64,045円減 |
| 学生納付特例2年間(24か月)を追納しなかった場合 | 456か月 | 約804,935円 | 約42,365円減 |
| 10年間(120か月)未納があった場合 | 360か月 | 635,475円 | 211,825円減 |
わずか3年間の未納でも、年間約6.4万円、老後20年間受け取り続けると考えると約128万円の差になります。「あとで追納すればいい」と先延ばしにせず、未納期間があるなら早めに追納を検討する価値があります。 追納のメリットと期限については、別記事「国民年金の追納メリットは年金増額と節税の2本柱」で詳しく解説しています。
老齢基礎年金の請求手続き(満額かどうかにかかわらず共通)
老齢基礎年金は、満額であっても満額に届いていなくても、請求(裁定請求)の手続きをしなければ受け取れません。65歳になる3か月ほど前に、日本年金機構から年金請求書が送付されるのが一般的な流れです。必要事項を記入し、戸籍謄本や住民票、振込先の通帳の写しなどを添えて、年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。「満額かどうか」は年金額の計算の話であり、請求手続き自体は誰でも同じ流れになります。
満額と物価上昇の関係
老齢基礎年金は毎年度の物価・賃金の変動に応じて改定されますが、実際に受け取る年金額の増え方が、生活実感としての物価上昇に完全に追いつくとは限りません。近年の年金額改定では、物価の上昇率よりもやや低い「名目手取り賃金変動率」を用いて改定されることがあり、年金の実質的な価値(購買力)は、物価が大きく上昇する局面では目減りしやすいという指摘もあります。「満額」という数字だけを見るのではなく、その時々の物価水準とあわせて実質的な生活費への影響を考えることも大切です。毎年度の改定内容は日本年金機構の公式ページで発表されるため、定期的にチェックしておくと、老後の家計プランを見直すきっかけになります。とくに受給が近づいてきたタイミングでは、最新の満額と自分の見込み額を照らし合わせて確認する習慣をつけておくとよいでしょう。年金は一度受給が始まると自動的に改定が反映されるため、加入中の段階でしっかり記録を確認しておくことが、将来の安心につながります。老後の生活水準を左右する大切な数字なので、早いうちから関心を持っておくことをおすすめします。定期的にねんきん定期便を確認する習慣をつけておくと、将来の見通しが立てやすくなります。分からないことがあれば、遠慮せず年金事務所の窓口で相談してください。老後の安心のために、今から少しずつ準備を進めていきましょう。分からないことがあれば、いつでも年金事務所に相談できます。
満額に近づける・満額を超えて増やす方法
満額そのものに届かせる方法と、満額のさらに上に上乗せする方法の2種類があります。
- 満額に近づける方法: 未納・免除期間があれば追納する(原則10年以内)。60歳までに納付済月数が480か月に届かない場合、60歳以降65歳になるまで任意加入して納付月数を増やすこともできます。
- 満額の上に上乗せする方法: 付加年金に加入する。月400円の付加保険料を納めると、老齢基礎年金に「200円×納付月数」が一生涯上乗せされます。付加年金の詳しい仕組みは、別記事「付加年金とは?月400円で年金を増やせる仕組み」で解説しています。
満額の年金額をもとにした簡単な生活費シミュレーション
老齢基礎年金の満額(令和8年度で月額70,608円)だけで暮らす場合を想定し、他の主な収入がない単身世帯のケースで生活費の目安を考えてみます。総務省の家計調査等では、高齢単身無職世帯の平均的な消費支出は月15万円前後とされることが多く、満額の老齢基礎年金だけでは、平均的な生活費のおよそ半分程度しか賄えないという試算になります。老齢厚生年金がある会社員だった人や、貯蓄・就労収入がある人はこの限りではありませんが、自営業者やフリーランスで国民年金のみに加入してきた人は、この差をどう埋めるかが老後設計の重要なポイントになります。付加年金や国民年金基金、iDeCoなど、老齢基礎年金に上乗せできる制度を早めに検討しておくことで、老後の収入の選択肢を広げることができます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の違い
「満額」という言葉は老齢基礎年金だけに使われる概念です。会社員・公務員として厚生年金に加入していた人は、老齢基礎年金にくわえて、給与・加入期間に応じた老齢厚生年金を上乗せで受け取ります。老齢厚生年金には「満額」という決まった上限額はなく、加入期間と現役時代の給与によって金額が変わります。 自営業者やフリーランスで国民年金だけに加入してきた人は、老齢基礎年金の満額(令和8年度で年額847,300円)が老後の年金収入のベースになります。
過去の満額の推移(改定率の目安)
老齢基礎年金の満額は、物価・賃金の変動に応じて毎年度見直されます。近年は物価上昇を背景に増額改定が続いており、令和8年度まで4年連続のプラス改定となりました。満額はその年度限りの数字であり、翌年度にはまた見直されるため、「令和8年度は70,608円」という数字も、将来の受給時点では変わっている可能性がある点に留意してください。すでに受給を始めている人も、年度が変わるたびに年金額が改定される場合があります。
学生時代・無職期間の未納が満額に与える影響を具体的に見る
学生時代に国民年金の加入義務があるにもかかわらず未納・学生納付特例のままにしていた期間があると、将来の満額に影響します。たとえば大学の4年間(48か月)を学生納付特例のまま追納しなかった場合、満額から次のように減額されます。
- 納付済月数: 480か月−48か月=432か月
- 年金額: 847,300円×432÷480=762,570円
- 満額との差: 847,300円−762,570円=84,730円(年額)の減少
老後20年間受け取り続けると仮定すると、この差だけで約169万円の開きになります。学生時代の4年間を追納するかどうかは、生涯で見ると決して小さくない金額の差につながります。 学生納付特例と追納の詳しい仕組みは、別記事「国民年金学生納付特例とは?所得基準と追納の注意点」で解説しています。
会社員期間がある人の年金額は「満額」だけでは決まらない
厚生年金に加入していた期間がある人は、その期間も老齢基礎年金の納付済月数としてカウントされます(厚生年金加入中は国民年金の保険料も納めているのと同じ扱いになるため)。つまり、会社員として長く働いた人は、それだけで老齢基礎年金の納付済月数が積み上がりやすく、満額に届きやすいという傾向があります。一方で、老齢基礎年金の満額に加えて、給与に応じた老齢厚生年金が上乗せされるため、会社員だった人の年金収入は「満額の老齢基礎年金+老齢厚生年金」という2階建ての構造になります。
昭和31年4月1日以前生まれの人は満額が異なる
年金制度上の計算ルールにより、昭和31年4月1日以前に生まれた人の満額は月額70,408円と、通常の満額(70,608円)よりわずかに低く設定されています。生年月日によって満額そのものが異なる点は、あまり知られていないため注意してください。
海外に住んでいた期間・任意加入しなかった期間の扱い
海外に居住していた期間で日本の国民年金に任意加入しなかった期間は「合算対象期間(カラ期間)」として扱われ、受給資格期間(10年)の判定には算入されますが、年金額の計算(満額に対する納付済月数)には反映されません。 つまり、海外居住期間が長い人は、受給資格自体は得られても、その分だけ年金額が満額から目減りする可能性があります。海外赴任の経験がある人は、帰国後に任意加入や追納を検討する余地がないか確認しておくとよいでしょう。
産前産後期間・育児休業期間は満額の計算にどう影響するか
国民年金の産前産後期間(出産予定月の前月から4か月間)は、保険料が全額免除されますが、この期間は老齢基礎年金の年金額の計算上、保険料を納付したものとして扱われます。 つまり、産前産後の免除期間があっても、その分は満額の計算に不利にはなりません。会社員の産前産後休業・育児休業期間中の厚生年金保険料も同様に免除され、将来の年金額の計算上は保険料を納めたものとして扱われる仕組みになっています。
厚生年金加入者の老齢基礎年金は自動的に満額になるとは限らない
「会社員として40年間働けば自動的に満額になる」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。老齢基礎年金の納付済月数としてカウントされるのは、20歳から60歳までの40年間(480か月)のうち、国民年金の被保険者期間として扱われる部分だけです。20歳になる前や60歳を過ぎてから働いていた期間は、老齢厚生年金の対象にはなっても、老齢基礎年金の納付済月数には算入されません。
たとえば大学卒業後の22歳から会社員として働き始めた人は、20歳から22歳までの2年間(24か月)は国民年金に任意加入していなければ未納期間になり、そのままでは満額に届きません。「学生時代に国民年金に加入していなかった」というケースは会社員でも珍しくなく、社会人になってから気づくことが多いため、自分の年金記録を早めに確認しておくことをおすすめします。
満額に届かない人が実際にどのくらいいるか
日本年金機構やねんきんネットの統計では、老齢基礎年金を満額で受け取っている人は必ずしも多数派ではないとされています。学生時代の未納・免除、転職の合間の未納期間、海外居住期間などにより、満額に届かない人が一定数存在します。「自分だけが満額に届いていないのではないか」と不安に感じる必要はなく、まず自分の納付記録を確認し、対処できる部分(追納・任意加入)があるかを確認することが現実的な対応です。
60歳から65歳まで働きながら年金を増やす方法(任意加入と繰下げの組み合わせ)
60歳の時点で納付済月数が480か月に届いていない人は、60歳から65歳になるまでの間、国民年金に任意加入して保険料を納めることで、納付済月数を増やせる場合があります。この任意加入とあわせて、老齢基礎年金の受給を66歳以降に繰下げれば、増額された年金額のベースとなる納付済月数自体も増やせるため、両方を組み合わせることで、より大きな増額効果が期待できます。ただし、任意加入できる期間や条件には制限があるため、詳しくは年金事務所で確認してください。
障害基礎年金・遺族基礎年金との関係
老齢基礎年金の「満額」という考え方は、あくまで老齢基礎年金に固有の仕組みです。障害基礎年金は障害等級に応じた定額(納付済期間に関係なく一定額)が支給され、遺族基礎年金も同様に定額に子の加算額を足した金額が支給されます。老齢基礎年金だけが納付済期間に応じて金額が変動するという違いがあるため、混同しないよう注意してください。
よくある質問
老齢基礎年金の満額は今後も上がり続けますか?
物価や賃金の変動によって毎年度見直されるため、上がる年もあれば据え置き・減額になる年もあります。令和8年度までは4年連続の増額改定でしたが、将来の改定率を保証するものではありません。最新の金額は日本年金機構の公式ページで確認してください。
60歳を過ぎてから未納期間に気づきました。もう満額にはできませんか?
保険料の未納期間がある場合、原則として60歳以降65歳になるまで国民年金に任意加入し、保険料を納めることで納付済月数を増やせる場合があります。ただし条件があるため、年金事務所や市区町村の国民年金担当窓口で確認することをおすすめします。
老齢基礎年金の満額だけで生活できますか?
老齢基礎年金の満額(令和8年度で年額847,300円)は、月額に換算すると約7万円です。生活費の水準は世帯構成や地域によって異なるため、一概には言えませんが、老齢厚生年金や貯蓄、就労収入など複数の収入源とあわせて老後の生活設計を考えることが一般的です。
満額かどうかは、どこで確認できますか?
毎年届く「ねんきん定期便」で、これまでの納付済期間と、その時点での年金見込み額が確認できます。より詳しい記録は日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できるほか、年金事務所の窓口でも相談できます。
未納期間があるかどうか忘れてしまいました。今から確認する方法はありますか?
「ねんきんネット」に登録すると、これまでの国民年金・厚生年金の加入記録(納付済み・未納・免除の別)を一覧で確認できます。ねんきんネットの利用にはマイナンバーカードでのログインや、基礎年金番号を用いた登録が必要です。年金事務所の窓口でも、加入記録の確認ができます。
満額の老齢基礎年金に、老齢厚生年金を合わせるとどのくらいになりますか?
会社員として厚生年金に加入していた期間がある人は、老齢基礎年金(満額であれば令和8年度で年額847,300円)に加えて、老齢厚生年金が上乗せされます。老齢厚生年金の額は、加入期間と現役時代の給与水準によって個人ごとに大きく異なるため、一概な金額を示すことはできません。自分の見込み額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。
配偶者の扶養に入っていた期間(第3号被保険者)は満額の計算にどう影響しますか?
会社員・公務員に扶養されている配偶者(国民年金の第3号被保険者)の期間は、保険料を実際には納めていなくても、老齢基礎年金の納付済期間として扱われます。つまり、専業主婦(主夫)として第3号被保険者だった期間は、満額の計算上、未納として扱われることはありません。ただし、第3号被保険者としての届出が漏れていた「未届期間」がある場合は、別途手続きが必要になることがあるため、心当たりがある人は年金事務所に確認してください。
