従業員の奨学金を会社が肩代わりしたら、その費用に補助は出るのか。出ます。ただし補助されるのは従業員への貸付ではなく、会社が従業員に支給する「手当」です。会社が奨学金返還支援制度を作り、手当を出した額の1/2(埼玉県多様な働き方実践企業は2/3)を、1人につき年9万円(同じく年12万円)まで補助します。
支援は1人につき最大6年間です。年12万円の上限を6年続けると、1人あたり最大72万円になります(認定企業の場合)。受け取るのは従業員ではなく、会社です。
埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金の要点まとめ
正式名:埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金(令和8年度)
だれが
- 申請者
- 事業者(県内に事業所がある中小企業等)
- 対象業種
- 業種問わず(学校・医療・福祉法人、NPO等を含む)
- 利用目的
- 従業員の奨学金返還を支援する手当の支給
- 対象地域
- 埼玉県内
- 従業員数
- 規定なし(業種ごとに中小企業の基準あり)
いくら
- 補助上限額
- 1人最大72万円(認定企業の年12万円×6年。通常は年9万円)
- 補助率
- 1/2(埼玉県多様な働き方実践企業は2/3)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年6月1日〜2026年10月23日(予算に達して終了。当初の期限は11月30日)
- 事業の完了
- 2027年3月31日まで
うちの会社と従業員は対象になる?
会社が次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
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支援する従業員は、次のすべてに当てはまる人です。
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次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 貸付で支援する
- ✕ みなし大企業に当たる
- ✕ 労働関係法令に違反している
- ✕ 暴力団等に当たる
- ✕ 返還免除型の奨学金
- ✕ 他団体の返還支援と重複
中小企業等の基準は、業種で決まります。製造業・建設業・運輸業は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下です。どちらか一方を満たせば該当します(ゴム製品製造業・ソフトウェア業・旅館業は別の基準で、詳しくは中央会のページに載っています)。医療法人・学校法人・社会福祉法人は、従業員100人以下です。
みなし大企業とは、中小企業でも大企業が議決権の1/2以上を持っているなど、実質は大企業と同じに扱われる会社のことです。風俗営業(麻雀屋、パチンコ屋、ゲームセンターなど)も、対象外とされています。
正社員とは、期間の定めのない契約で、長期雇用を前提にした待遇を受けている人をいいます。試用期間中でも、正社員なら対象です。「6年以内」は、申請する年度の4月1日の時点で数えます(4月2日以降に採用された人は採用日の時点です)。正社員になった月を1か月目として、72か月目までが対象期間です。卒業直後で返還が猶予されている期間があれば、6か月を上限に、その期間は数えません。前の職場で、同じ埼玉県のこの制度の支援を受けていた期間は、通算されます。
「返還中」には、申請日に現に返している場合のほか、申請する年度から返還を始める予定の場合も含まれます。
事業主と同居している親族と、法人の取締役(理事)は、原則として対象外です。ただし、事業主の指揮命令に従っていて、勤務時間や賃金の払い方が他の従業員と同じなら、対象になる場合があります。
線を引く理由は、この補助金が、返還の負担が重い若手の定着を支える制度だからです。貸付は手当ではありません。返還免除型の奨学金(県の医師育成奨学金や介護福祉士修学資金など)は、すでに人材確保を目的にした仕組みなので、外れます。
いくら補助される?
補助されるのは、会社が支給した手当の1/2です。多様な働き方実践企業は2/3です。ただし1人あたりの年額に上限があり、通常は9万円、認定企業は12万円です。
- 月1万円の手当を12か月(通常企業):12万円 × 1/2 = 6万円
- 月1.5万円の手当を12か月(通常企業):18万円 × 1/2 = 9万円 → ちょうど上限
- 月2万円の手当を12か月(通常企業):24万円 × 1/2 = 12万円 → 上限の9万円
- 月2万円の手当を12か月(認定企業):24万円 × 2/3 = 16万円 → 上限の12万円
- 月1.5万円の手当を12か月(認定企業):18万円 × 2/3 = 12万円 → ちょうど上限
手当が年18万円に届くと、通常企業は上限の9万円に、認定企業は上限の12万円に届きます。手当を月2万円にしても、通常企業の補助額は9万円のままです。
支援は最大6年間なので、年額の上限に6年を掛けると、通常企業は1人あたり54万円、認定企業は72万円です。72万円に届くのは、認定企業が毎年18万円以上の手当を、6年間出し続けたときです。認定は、認定を受けた翌年度から適用されます。途中で認定を受けた場合は、その分だけ下がります。この54万円と72万円は、年額の上限に年数を掛けた計算上の最大で、公式ページに合計額の記載はありません。
給与を翌月に払う会社が新規に申し込む場合は、その年度の支援対象期間が11か月になります(事業計画書の注記)。
支給の方法は、毎月の給与、賞与に合わせる、年1回のいずれかが規程例に載っています。中央会の規程例では、本人の奨学金返還額を超えて支給しない定めになっています。
何に使える?
対象にならないもの
- 会社から従業員への貸付金
- 返還免除型の奨学金の返還に当たる手当
- 手当の根拠となる文書(規程)がない支給
対象になるもの
- 就業規則や賃金規程などで定めた、奨学金返還のための手当
- 日本学生支援機構以外の奨学金(自治体・大学・民間などが貸与するもの)の返還を支える手当
- 厚生労働省所管の職業訓練に係る融資のうち、技能者育成資金融資の返還を支える手当
- 日本学生支援機構の代理返還(会社が機構に直接返す方法)による支援
代理返還も、補助対象の期間中であれば対象です。手当を出す根拠は、就業規則などに定めた文書でなければなりません。常時10人未満で就業規則がない会社は、奨学金返還支援制度を定めた社内規程を提出すれば申請できます。
申請の流れ
- 奨学金返還支援制度を規程に定める(会社。就業規則・賃金規程・制度規程。規程例は中央会のページにあります)
- GビズIDプライムを取る(会社→デジタル庁。申請はjGrants経由で、発行に時間がかかります)
- 対象の従業員の書類を集める(会社→従業員。雇用契約書、奨学金の返還計画がわかる書類など)
- 交付申請を出す(会社→中央会 奨学金返還支援室。jGrantsで申請。2026年度は予算に達して10月23日に受付を終えた)
- 交付決定を待つ(中央会→会社。決定の前に手当の支給を始めない)
- 手当を支給する(会社→従業員。規程で決めた方法で)
- 実績報告と請求を出す(会社→中央会。2月末まで、賃金台帳や給与明細の写しを付ける)
- 補助金を受け取る(中央会→会社)
交付決定とは、補助を出すと正式に決める通知のことです。決定の前に手当の支給を始めると、原則として補助の対象外になります。やむを得ない事情があるときは、事前着手届を出して承認を得れば例外になりますが、その年度の4月1日より前にはさかのぼれません。支給を始めたことが「着手」に当たるかどうかの定義は、実施要領に書かれていません。規程を作った直後の支給は、中央会に先に確かめるのが安全です。
審査は書類にもとづいて行い、予算の限度額に達するまで交付を決定します。年度の途中で対象の従業員を増やすときや、手当の額を増やすときは、変更承認申請(様式第3号)を速やかに出します。補助事業に関する経理の証拠書類は、完了した年度の翌年度から5年間、保存します。
必要な書類
準備できた 0 / 9
就業規則・賃金規程などの写しは、労働基準監督署の受付印のあるものを付けます。雇用契約書は、労働条件通知書でも構いません。ただし、正社員になった当初に交付されたものです。返還額と計画がわかる書類は、日本学生支援機構の奨学金なら「口座振替(リレー口座)加入通知」と「スカラネットPS」です。他の奨学金は、中央会に問い合わせます。
暴力団排除の誓約事項(様式第1号の2)は、申請書の提出をもって同意したことになります。補助対象中小企業等確認書には、県のページなどで事業者名を公表することへの同意欄がありますが、これは交付決定の要件ではありません。前回の申請から就業規則・賃金規程・制度規程の奨学金に関する部分を変えていない場合は、これらの添付を省略できます。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に手当を支給し始めた:原則として対象外です。事前着手届の承認が要ります。
- 貸付で支援した:企業から従業員への貸付金は、補助の対象になりません。
- 対象外の従業員を含めた:正社員でない、正社員になって6年を過ぎた、県外の事業所に勤めている、などです。
- 従業員の返還が滞った:滞納があった年度は、その年度のうちに補填されれば交付されます。翌年度以降の補填は、滞納期間のぶんが交付されません。
- 支給後に増額の変更を出した:手当を支給したあとの補助金額の増額は認められません。変更は支給の前に出します。
不正に受給した場合は、交付決定が取り消され、補助金を返還する義務を負います。
よくある質問
まだ奨学金返還支援制度がない会社でも申請できますか?
制度を作れば申請できます。この補助金は、会社が奨学金返還支援制度を設けて手当を支給することが前提で、制度がなければ申請の入口に立てません。就業規則か賃金規程に手当の定めを入れるか、制度規程を作ります。常時10人未満で就業規則がない会社は、社内規程の提出が必要です。規程例は、中央会のページにあります。
パートや契約社員の奨学金も対象になりますか?
対象になりません。支援できるのは正社員だけです。ここでいう正社員は、期間の定めのない労働契約で、長期雇用を前提にした待遇を受けている人です。有期の契約社員やパートは該当しません。ただし、就業規則で正社員に位置づけられていれば、試用期間中でも対象です。契約社員から正社員に転換した人は、転換した月から数えます。
中途採用の社員も対象になりますか?
対象になります。県の案内にも、中途採用を含むと書かれています。「6年以内」は、その会社で正社員になった月を1か月目として数えます。以前の会社でこの制度の支援を受けていた期間があれば、通算されます。中途で入った時期によっては、支援期間が6年より短くなります。採用日を確かめて、計画を立てると安心です。
日本学生支援機構以外の奨学金でも使えますか?
基本的に対象になります。自治体・大学・公益法人・民間企業が貸与する奨学金も含まれます。ただし、医療・福祉などの特定分野や、企業の人材確保・地域への定着を目的にして返還が免除されるものは、対象外です。県の医師育成奨学金、介護福祉士修学資金、保育士修学資金が例です。それ以外で迷うものは、県に確認のうえ回答があります。
会社が代理返還をしても対象ですか?
対象になります。日本学生支援機構の代理返還制度のように、会社が返還額の一部または全額を機構に直接返す場合も、補助対象の期間中であれば、補助金の交付対象です。従業員に手当を渡す形でも、会社が直接返す形でも、規程などの文書に根拠があることが前提になります。制度の詳しい内容は、機構のページで確かめられます。
「多様な働き方実践企業」とは何ですか?
テレワークや短時間勤務など、多様な働き方を実践している企業を、県が認定する制度です。埼玉県産業労働部の多様な働き方推進課が認定します。認定を受けていると、補助率が2/3、上限が1人年12万円に上がります。年度の途中で認定された場合は、認定の翌年度から、この高い基準が適用されます。
6年間の補助はどう数えますか?
正社員になった月を1か月目として、72か月目までです。補助の対象は年度ごとに決まり、令和8年度は2026年4月1日から2027年3月31日までの手当です。毎年度、申請が必要です。新規学卒者などで返還が猶予される期間があれば、6か月を上限に、その期間は数えません。たとえば猶予が6か月なら、7か月目から78か月目が対象になります。
2年目以降も、同じ書類を出しますか?
毎年度、交付申請から出し直します。ただし、前回から就業規則・賃金規程・制度規程の奨学金に関する部分を変えていなければ、確認書にチェックを入れて、規則や規程の添付を省略できます。事業計画書には、前年度から続けて申請する人かどうかを記入する欄があります。
年度の途中で従業員が退職・異動したらどうなりますか?
採用された月から、退職した月までが対象です。県内の事業所から県外へ異動した場合は、前の月までが対象です。県外から県内へ異動した場合は、翌月から対象になります。病気などで休職した場合は、有給の期間は対象で、無給の期間も奨学金返還支援の手当を出していれば対象です。対象者が変わるときは、変更承認申請を出します。
いつまでに申請すればいいですか?
当初は2026年6月1日から11月30日までの予定でしたが、予算に達したため、10月23日に受付を終えました。予算の範囲内で受け付ける制度なので、期限より前に終わることがあります。申請は、国の電子申請システムjGrantsで行います。GビズIDプライムの取得が先に必要で、ID発行に時間がかかります。申請を決めたら、まずIDの取得を始めておくと安心です。
実績報告はいつ、何を出しますか?
当該年度の2月末までに、実績報告書(様式第6号)を出します。手当を支払ったすべての月の賃金台帳や給与明細の写しなど、支給額がわかる書類を付けます。3月分は、支給する見込みで出します。もし3月に支給しなかった場合は、実績報告書を修正して出し直し、中央会と精算します。請求は、報告の内容が確認されたあとに行います。
手当は従業員の税金や社会保険料の対象になりますか?
県の資料には、取扱いが書かれていません。Q&Aは問い合わせ先を案内しています。社会保険料は、健康保険料・厚生年金保険料なら年金事務所、雇用保険料なら埼玉労働局です。課税の扱いは、会社から所轄の税務署に直接問い合わせます。給与として手当を出す前に、確認しておくと安心です。
問い合わせ先はどこですか?
申請や書類は、埼玉県中小企業団体中央会の奨学金返還支援室(電話 048-700-4600)です。受付は平日です。制度そのものについては、埼玉県産業労働部の就業支援課(電話 048-830-4538)に問い合わせられます。対象になるか迷う従業員や奨学金がある場合は、申請の前に中央会へ相談すると、書類の出し直しを防げます。
