「新事業進出補助金」は、2026年に「ものづくり補助金」と統合されました。旧制度単体では、もう新規に申請できません。今から申請するなら、統合後の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の中の「新事業進出枠」を見る必要があります。この記事では、旧制度がどう変わったか、今から使うにはどうすればいいかを整理します。
「新事業進出補助金」という名前で検索して出てくる情報は使えません
旧制度の公募要領・締切・申請様式は、いずれも現行制度には使えません。制度の変遷を時系列で確認しておきましょう。
- 2025年度: 「中小企業新事業進出補助金」として創設。事業再構築補助金の後継的な位置づけでした
- 2026年度: 「ものづくり・商業・サービス補助金」と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に
統合後の制度は3つの枠に分かれています。旧・新事業進出補助金をお探しなら、選ぶのは新事業進出枠です。
- 革新的新製品・サービス枠: 旧「ものづくり補助金」に近い枠。新製品・新サービスの開発が対象
- 新事業進出枠: 旧「新事業進出補助金」に近い枠。既存事業と異なる新市場への進出が対象
- グローバル枠: 海外市場開拓に向けて新設された枠
第1回公募の申請受付は2026年9月30日に始まり、締切は2026年10月30日18:00です。採択発表は2027年1月頃の予定です。
現行の「新事業進出枠」はいくらもらえるか
上限額は従業員規模で変わります。
| 従業員規模 | 基本の補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助率は1/2、一定条件を満たすと2/3です。「最大9,000万円」に届くのは、従業員101人以上で賃上げ特例を使った場合だけです。従業員20人の会社なら、上限は2,500万円(賃上げ特例で3,000万円)にとどまります。
対象は、既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出です。機械装置費または建物費のどちらかが必須経費で、店舗や工場の新設・改修にも使えます。ただし創業1年未満の事業者は、新事業進出枠の対象外です。創業間もない場合は、別の創業系の補助金を検討することになります。
新事業進出枠で対象になる経費
機械装置費・建物費のどちらかが必須ですが、それ以外にも次の経費が対象になります。
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 広告宣伝・販売促進費
応募時に計上した経費が、すべてそのまま対象として認められるわけではありません。新市場への進出という取組みに必要だと事業計画で説明できることが前提です。詳細は公募要領で確認してください。
業種別・活用イメージ
新事業進出枠は業種を問いません。3つの業種で、投資規模と補助額のイメージを見てみましょう。
① 印刷業(従業員21〜50人、基本上限4,000万円) チラシ印刷中心から、需要が伸びている食品包装向けの特殊印刷という新市場へ進出したい。専用印刷機と検査装置一式の見積もりは8,000万円。 → 8,000万円 × 1/2 = 4,000万円の補助(基本上限に到達)。自己負担4,000万円で、新市場向けの生産ラインを立ち上げられます。
② 飲食業(従業員6〜20人、基本上限2,500万円) 店内飲食中心の飲食店が、セントラルキッチンを新設して弁当・惣菜の卸事業という新市場に進出したい。厨房設備・冷凍設備の見積もりは5,000万円。 → 5,000万円 × 1/2 = 2,500万円の補助(基本上限に到達)。既存の店舗運営とは異なる卸売という新事業を、自己負担2,500万円で立ち上げられます。
③ サービス業(従業員101人以上、賃上げ特例適用で上限9,000万円) 店舗型のフィットネスジムが、法人向けの健康経営コンサルティング事業という新市場に進出したい。オンライン指導システムの構築とコンサルタントの専門家経費を含む見積もりは1億3,500万円。 → 賃上げ特例を満たせば補助率2/3が適用され、1億3,500万円 × 2/3 = 9,000万円(上限に到達)。既存のジム運営で培ったノウハウを、法人向け事業という新市場に展開できます。
承認までの重要なタイミングと必要書類
新事業進出枠も、jGrants(電子申請システム)での申請が前提です。着金までの主なタイミングは次のとおりです。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 検討を始めたらすぐ | GビズIDプライムを取得する(発行に数日〜1か月) | マイナンバーカードまたは郵送申請書類 |
| 申請準備中 | 事業計画を策定する(認定経営革新等支援機関への相談を推奨) | 事業計画書、決算書等 |
| 〜2026年10月30日18:00 | 電子申請システム(jGrants)で応募 | 事業計画書、見積書、必要な添付書類一式 |
| 2027年1月頃 | 採択発表 → 交付決定 | ― |
| 交付決定後 | 補助事業実施(発注・契約・支払い) | 契約書・見積書・請求書・領収書等 |
| 事業終了後 | 実績報告 → 精算払 | 実績報告書、支払いを証明する証憑 |
交付決定より前に発注・契約した費用は対象外になります。締切に合わせて急いで発注してしまうと、その分がまるごと対象外になるおそれがあるため注意してください。
3つの枠、自社はどれを選べばいいか
統合後の制度には3つの枠がありますが、「新事業進出補助金」を探して来た方の多くは新事業進出枠が対象です。とはいえ、他の2枠のほうが合うケースもあるため、簡単な見分け方を示しておきます。
- 今ある製品・サービスをより良くしたい、新製品を開発したい → 革新的新製品・サービス枠(旧ものづくり補助金)
- 今と違う市場・違う事業に進出したい → 新事業進出枠
- 海外への進出・海外市場の開拓を考えている → グローバル枠
迷う場合の判断基準は「今の事業の延長線上か、それとも別の市場への挑戦か」です。新製品を今の顧客に売るなら革新的新製品・サービス枠、新しい顧客層・新しい市場に売るなら新事業進出枠という違いがあります。
審査で重視されるポイント
新事業進出枠は、事業計画書の内容そのものが審査されます。中小機構が示す考え方をふまえると、次の点が重視されます。
- 既存事業とのシナジー: なぜ今の会社がその新市場に進出できるのか、既存の技術・顧客基盤・ノウハウとのつながりを説明できるか
- 市場の成長性: 進出先の市場が、これから伸びる見込みがあるか
- 収益計画の実現可能性: 投資額に見合った売上・利益が、根拠を持って見込めるか
- 賃上げへの取組み: 事業の成長を、従業員の賃上げにつなげる計画になっているか
「新しいことに挑戦したい」という思いだけでは審査を通りません。 既存事業の強みがどう新事業に活きるのかを、数字と根拠を添えて説明することが求められます。
新事業進出補助金と事業再構築補助金は何が違うのか
「新事業進出補助金」を調べる過程で「事業再構築補助金」の名前も見かけた方が多いはずです。この2つの関係を整理します。
事業再構築補助金は2025年3月の第13回公募で新規受付を終了しました。その役割を引き継いで生まれたのが「中小企業新事業進出補助金」で、これが2026年度に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へさらに統合されています。つまり「事業再構築補助金→新事業進出補助金→新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(新事業進出枠)」という一本の系譜です。
制度の考え方は近く、「既存事業と異なる新しい市場・高付加価値事業への挑戦」を支援する点は共通しています。違うのは上限額と対象経費の細部で、事業再構築補助金の最終回(第13回)は最大1億円(GX進出類型・中堅企業)でしたが、現行の新事業進出枠は最大9,000万円です。
事業再構築補助金の内容をより詳しく知りたい方は、事業再構築補助金はもう終了?最大1億円の枠と今使える後継制度で解説しています。
他の2枠(革新的新製品・サービス枠、グローバル枠)の内訳は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は何に使える?で解説しています。
いつ申請できるか。現行のスケジュール
第1回公募の申請受付は2026年9月30日に始まり、締切は10月30日18:00です。採択発表は2027年1月頃の予定です。
受付は電子申請システム(jGrants)のみです。最初にやることはGビズIDプライムの取得です。マイナンバーカードがあれば最短即日、郵送申請は最大1か月ほどかかります。締切から逆算して、今すぐ着手しておく価値があります。GビズIDは他の補助金の申請にも共通して使えるIDなので、取得しておいて損はありません。
検討を始めるときに整理する4つのこと
思いつきのままでは、計画書になりません。次の順で整理します。
- 今の事業のままで続けた場合の見通しを整理する
- 挑戦したい新しい事業の内容を言葉にする
- 必要な設備投資の規模感を見積もる
- 既存事業とのつながり・シナジーを事業計画として説明できるようにする
審査で効くのは「なぜ今、新しい事業に挑戦するのか」の説明です。既存事業の強みをどう活かすのか、自分の言葉で整理しておいてください。既存事業とのシナジーの説明の仕方次第で、審査での伝わり方が変わる場面もあります。
統合前の「中小企業新事業進出補助金」との違い
「新事業進出補助金」という名前で検索する方の中には、2025年度に実施されていた「中小企業新事業進出補助金」(統合前の単独制度)の情報を探している方もいるはずです。統合前後で何が変わったかを整理します。
| 比較項目 | 中小企業新事業進出補助金(2025年度・統合前) | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(2026年度・現行) |
|---|---|---|
| 制度の位置づけ | 単独の制度 | ものづくり補助金と統合された制度の1枠 |
| 枠構成 | 単一枠 | 3枠(革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠) |
| 補助上限額 | 最大9,000万円 | 最大9,000万円(新事業進出枠。他の枠は上限が異なる) |
| 申請方法 | 単独で申請 | 3枠のいずれかを選んで申請 |
上限額そのものは大きく変わっていませんが、「単独の制度」から「3枠のうちの1つ」という位置づけに変わった点が最大の違いです。この変化にともない、申請時にはまず3枠のどれに該当するかを見極める必要があります。
新事業進出枠でよくある勘違い
「新事業進出補助金」という名前から誤解されやすい点を、いくつか整理しておきます。
- 「新しいことを始めれば何でも対象」ではない: あくまで「既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出」が条件です。今の事業の延長線上での改善(既存商品のマイナーチェンジなど)は対象になりにくく、革新的新製品・サービス枠のほうが近いことがあります
- 「上限9,000万円」は誰でも受け取れるわけではない: 従業員101人以上かつ賃上げ特例達成時の金額です。中小・小規模事業者の多くは、実際にはこれより低い上限になります
- 「採択されれば即入金」ではない: 補助金は精算払いです。事業を実施し、実績報告を経て、ようやく入金されます。投資額はいったん自己資金や借入で用意する必要があります
- 「事業計画さえ出せば通る」ではない: 既存事業とのシナジー・市場の成長性・収益計画の実現可能性が、具体的な数字とともに問われます
これらの誤解を解いたうえで、自社の状況が本当に新事業進出枠に合うかを見極めることが、無駄な準備を避ける近道です。
新事業進出補助金と間違えやすい別の制度
検索していると、似た名前の制度も目にすることがあります。
- 中小企業成長加速化補助金: 売上高100億円を目指す中堅企業向けの制度で、対象規模が異なります
- ものづくり補助金: 統合により「革新的新製品・サービス枠」として同じ制度の中に含まれています
- 事業再構築補助金: 上で触れたとおり、すでに新規受付を終了した旧制度です
新分野への挑戦には、この補助金以外の制度が使える場合もあります。他に使える補助金がないか気になる場合は、subsidiesデータベースで全国型・都道府県型の制度もあわせて確認できます。
よくある質問
新事業進出補助金はまだ申請できますか?
いいえ。2026年に「ものづくり補助金」と統合され、現行制度は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。旧制度単体での新規申請はできません。
統合後、上限額はいくらになりましたか?
現行制度は3枠構成で、上限は最大9,000万円です。旧・新事業進出補助金の役割を引き継ぐ「新事業進出枠」は、従業員規模により2,500万円〜9,000万円(賃上げ特例込み)です。
事業再構築補助金と何が違うのですか?
事業再構築補助金は2025年3月の第13回公募で終了した旧制度です。その役割を引き継いで生まれたのが新事業進出補助金で、現在はさらに「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合されています。系譜としては一本につながっていますが、上限額や運用は変わっています。
締切はいつですか?
第1回公募の申請受付は2026年9月30日、締切は10月30日18:00です。最新のスケジュールは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、または公式サイトでご確認ください。
創業したばかりの会社は新事業進出枠を使えませんか?
いいえ、創業1年未満の事業者は新事業進出枠の対象外です。創業して間もない場合は、革新的新製品・サービス枠や、他の創業系の補助金(創業助成金など)を検討することになります。自社の創業時期を確認したうえで、どの制度が使えるか整理しておきましょう。
事業再構築補助金で不採択だった計画は、新事業進出枠でも通りませんか?
そうとは限りません。事業再構築補助金と新事業進出枠は審査基準の細部が異なります。不採択の理由が「事業計画の説明不足」であれば、既存事業とのシナジー・市場の成長性をより具体的に書き直すことで、新事業進出枠では評価が変わる可能性があります。同じ計画をそのまま出し直すのではなく、指摘された点を踏まえて練り直すことをおすすめします。
新事業進出枠と革新的新製品・サービス枠、両方に申請できますか?
同じ投資内容で重複して申請することはできません。ただし、新事業への進出と、既存事業の新製品開発という別々の取組みであれば、それぞれの枠で別々に申請することは制度上想定されています。何を・どちらの枠で申請するかを、事業計画を立てる段階で整理しておく必要があります。
GビズIDプライムはどこで取得できますか?
デジタル庁が運営するGビズID公式サイトから、オンラインで申請できます。マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、最短即日で取得できる「オンライン即時発行」の方法があります。書類を郵送する方法もありますが、審査に数週間かかることがあるため、時間に余裕がない場合はオンライン発行を選んでください。
個人事業主でも新事業進出枠に申請できますか?
はい。法人だけでなく、個人事業主も中小企業者の要件を満たせば対象です。既存事業と異なる新市場への進出という条件は、法人・個人事業主とも共通です。
中堅企業でも申請できますか?
はい。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業者だけでなく中堅企業(資本金・従業員数が中小企業の基準を超えるが、大企業には該当しない企業)も対象に含まれます。ただし上限額・補助率は中小企業者と異なる場合があるため、自社の区分を公募要領で確認してください。
応募が不採択だった場合、再チャレンジできますか?
はい。次回以降の公募に再度応募できます。不採択となった理由(多くは事業計画の説明不足)を踏まえて計画を練り直すことで、採択の可能性を高められます。
新事業進出枠の申請は誰が手伝ってくれますか?
事業計画の作成は自社で行うのが基本ですが、認定経営革新等支援機関(商工会議所・金融機関・税理士など、国が認定した支援機関)に相談しながら進めることもできます。必須要件ではありませんが、審査を意識した計画づくりには相談する価値があります。
採択後、事業を継続しなければいけない期間はありますか?
はい。補助事業完了後も、一定期間の事業化状況報告が求められます。詳細な期間・報告内容は公募要領で定められているため、申請前に確認しておくと安心です。
複数の新事業に同時に進出する計画でも申請できますか?
1つの事業計画の中に複数の取組みを含めることは可能ですが、審査では「なぜその複数の取組みが必要か」の説明が求められます。焦点がぼやけた計画より、1つの新市場への進出に絞った計画のほうが、審査では評価されやすい傾向があります。
申請準備にはどれくらいの期間が必要ですか?
GビズIDの取得だけで数日〜1か月、事業計画の策定にはさらに数週間かかることが一般的です。締切(10月30日18:00)から逆算し、余裕を持って準備を始めることをおすすめします。
見積書は何社分取ればいいですか?
対象経費の内容によっては、相見積もり(複数業者からの見積もり取得)が求められる場合があります。特に高額な設備投資では、1社だけの見積もりでは不十分と判断されることがあるため、早めに複数業者へ声をかけておくと安心です。
採択後に事業計画の内容を変更できますか?
軽微な変更は認められる場合がありますが、事前に事務局への相談・承認が必要です。無断で当初計画から大きく外れた投資を行うと、実績報告の段階で対象外と判断されるおそれがあります。計画を変更したい場合は、着手前に必ず事務局へ相談し、書面での承認を得てから進めるようにしてください。
