失業手当の計算の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当・失業保険) |
| 対象者 | 個人(離職して求職中の方) |
| 対象地域 | 全国 |
| 総額の計算式 | 基本手当日額×所定給付日数 |
| 基本手当日額の出し方 | 賃金日額(離職前6か月の給与合計÷180)×給付率50〜80% |
| 所定給付日数 | 90日〜360日(年齢・被保険者期間・離職理由で決まる) |
| 基本手当日額の上限(45〜59歳) | 9,110円(令和8年8月1日〜) |
| 基本手当日額の下限(全年齢) | 2,562円(令和8年8月1日〜) |
| 給付制限(自己都合退職) | 原則1か月(2025年4月改正。過去5年に2回以上の自己都合退職で受給資格決定を受けた場合は3か月) |
| 公式サイト | ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 |
失業手当の「総額」は、1日あたりの金額(基本手当日額)を出して終わりではありません。そこに「何日分もらえるか」(所定給付日数)をかけて、初めて実際に受け取れる総額が分かります。 この記事では、年齢・月収・離職理由が異なる3つのケースで、実際に計算過程を追いながら総額を出します。
1日あたりの金額の詳しい計算式は「失業手当 いくら」の記事、もらえる日数の詳しい決まり方は「失業保険 期間」の記事で解説しています。この記事はその2つを組み合わせて「結局いくらもらえるのか」を計算する内容です。
計算の全体像:総額=日額×日数
失業手当の受給総額 = 基本手当日額 × 所定給付日数
この式自体はシンプルですが、2つの掛け算要素それぞれに複数の分岐があります。
- 基本手当日額:離職前6か月の給与から出す「賃金日額」に、給付率(50〜80%)をかけて算出。賃金が低いほど給付率が高い
- 所定給付日数:年齢・被保険者期間・離職理由(自己都合か会社都合か)の組み合わせで90日〜360日の間で決まる
この2つを実際の数字にあてはめて、3つのケースで計算してみます。
計算シミュレーション3例
ケース1: 29歳・事務職、月収24万円、被保険者期間5年、自己都合退職
ステップ1: 賃金日額を出す
賃金日額=24万円×6か月÷180=8,000円
ステップ2: 基本手当日額を出す(30歳未満の給付率表を適用)
賃金日額8,000円は「5,480円以上13,490円以下」の区分にあたるため、
y=0.8×8,000−0.3×{(8,000−5,480)/(13,490−5,480)}×8,000 ≒ 5,645円
ステップ3: 所定給付日数を確認する
自己都合退職・被保険者期間5年(10年未満)は、一般の受給資格者の表で90日です。
ステップ4: 総額を計算する
5,645円×90日=約50.8万円
自己都合退職には給付制限(原則1か月)があるため、離職から実際に振込が始まるまで2か月半〜3か月ほどかかります。 総額は約50.8万円でも、受け取り終えるまでの生活費は別に見込んでおく必要があります。
ケース2: 42歳・製造業、月収32万円、被保険者期間8年、会社都合(倒産)退職
ステップ1: 賃金日額を出す
賃金日額=32万円×6か月÷180=10,667円
ステップ2: 基本手当日額を出す(30〜44歳の給付率表を適用)
賃金日額10,667円は「5,480円以上13,490円以下」の区分にあたるため、
y=0.8×10,667−0.3×{(10,667−5,480)/(13,490−5,480)}×10,667 ≒ 6,461円
ステップ3: 所定給付日数を確認する
会社都合(倒産)退職は特定受給資格者に該当します。35歳以上45歳未満・被保険者期間5年以上10年未満は180日です。
ステップ4: 総額を計算する
6,461円×180日=約116.3万円
会社都合退職は給付制限がなく、待期期間7日を経ればすぐに支給が始まります。 ケース1と月収差はさほど大きくないのに、総額はおよそ2.3倍になっています。これは日額の差だけでなく、所定給付日数が90日と180日で2倍違うことが主な要因です。
ケース3: 52歳・営業職、月収38万円、被保険者期間25年、自己都合(定年ではない)退職
ステップ1: 賃金日額を出す
賃金日額=38万円×6か月÷180=12,667円
ステップ2: 基本手当日額を出す(45〜59歳の給付率表を適用)
賃金日額12,667円は「5,480円以上13,490円以下」の区分にあたるため、
y=0.8×12,667−0.3×{(12,667−5,480)/(13,490−5,480)}×12,667 ≒ 6,724円
ステップ3: 所定給付日数を確認する
自己都合退職・被保険者期間25年(20年以上)は、一般の受給資格者の表で150日です。
ステップ4: 総額を計算する
6,724円×150日=約100.9万円
同じ自己都合退職でも、被保険者期間が長いケース3はケース1の約2倍の総額になります。 所定給付日数が90日(10年未満)から150日(20年以上)に増えるためです。勤続年数が長い方ほど、総額への影響が大きくなります。
3ケースの比較表
| ケース | 年齢 | 月収 | 離職理由 | 基本手当日額 | 所定給付日数 | 総額の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 29歳 | 24万円 | 自己都合 | 約5,645円 | 90日 | 約50.8万円 |
| 2 | 42歳 | 32万円 | 会社都合(倒産) | 約6,461円 | 180日 | 約116.3万円 |
| 3 | 52歳 | 38万円 | 自己都合 | 約6,724円 | 150日 | 約100.9万円 |
月収の差(24万→38万円、約1.6倍)よりも、離職理由と被保険者期間による所定給付日数の差の方が、総額へのインパクトが大きいことが分かります。同じ月収でも、会社都合か自己都合か、被保険者期間が長いか短いかで総額は数十万円単位で変わります。
月収×所定給付日数の総額早見表(30〜44歳)
3つのケース以外の水準も知りたい場合のために、月収18万〜34万円(30〜44歳の給付率表を適用)で、所定給付日数別の総額を一覧にしました。自分の月収に近い行を探し、該当する所定給付日数の列を確認してください。
| 月収(額面) | 基本手当日額 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 18万円 | 約4,683円 | 約42.1万円 | 約56.2万円 | 約70.2万円 | 約84.3万円 |
| 22万円 | 約5,358円 | 約48.2万円 | 約64.3万円 | 約80.4万円 | 約96.4万円 |
| 26万円 | 約5,899円 | 約53.1万円 | 約70.8万円 | 約88.5万円 | 約106.2万円 |
| 30万円 | 約6,307円 | 約56.8万円 | 約75.7万円 | 約94.6万円 | 約113.5万円 |
| 34万円 | 約6,582円 | 約59.2万円 | 約79.0万円 | 約98.7万円 | 約118.5万円 |
同じ月収でも、所定給付日数が90日から180日に増えるだけで総額は2倍になります。 総額を左右する主な要因は月収の大小より、離職理由と被保険者期間による所定給付日数の違いだということが、この表からも分かります。
失業手当には税金・社会保険料がかからない
基本手当(失業手当)は非課税です。 所得税・住民税は課税されず、雇用保険料や厚生年金保険料・健康保険料も天引きされません。この記事で計算した総額は、そのまま手取り額として受け取れる金額という点は、在職中の給与収入と比較する際に押さえておくとよいポイントです。
一方で、国民健康保険料・国民年金保険料は別途自分で支払う必要があります。 失業手当は非課税ですが、退職後の社会保険(国民健康保険への切り替え、年金の第1号被保険者への切り替え等)の手続きと保険料の負担は、総額の計算とは別に発生する点に注意してください。
総額の計算でよくある誤算
- 賃金日額の上限に気づかず、実際より高い金額を見込んでしまう:月収が高い方ほど、賃金日額の上限(年齢区分ごとに16,540円〜18,220円程度)に達し、それ以上は給付率50%が一律に適用されます。年収ベースで単純に67%や80%を掛けて計算すると、実際の総額より大きく見積もりすぎることがあります
- 離職理由の判定が確定する前に「会社都合のはず」と決めて計算してしまう:離職票の記載と実態が食い違う場合、特定受給資格者に該当するかどうかの認定に時間がかかり、所定給付日数の確定が遅れることがあります。判定が確定するまでは目安の計算にとどめてください
- 給付制限の期間を総額に含めて考えてしまう:給付制限は「支給が始まるまでの期間」であり、総額の計算そのものには影響しません。ただし総額を受け取り終えるまでの期間は、給付制限の有無で1〜3か月変わります
- アルバイト等の収入を計算に反映し忘れる:失業認定期間中に収入があると、収入額に応じて基本手当日額が減額されることがあります。総額の見込みより実際の受取額が少なくなる場合があります
自分はどのパターンに近いか(早見の場合分け)
3つの計算例のうち、どれが自分に近いかをまず確認すると計算の見通しが立てやすくなります。
| あなたの状況 | 近いケース | 目安 |
|---|---|---|
| 20〜30代、勤続年数が短め(10年未満)、自己都合で退職 | ケース1 | 総額は50万円前後になりやすい(給付制限で受給開始も遅れる) |
| 30〜40代、倒産・解雇など会社都合で退職 | ケース2 | 所定給付日数が長く(180日前後)、総額が伸びやすい |
| 50代、勤続年数が長い(20年以上)、自己都合で退職 | ケース3 | 被保険者期間の長さで所定給付日数が150日まで伸びる |
| 60〜64歳で退職予定 | いずれとも異なる | 給付率の下限が45%(他は50%)、上限額も7,830円と他の年齢より低い区分になる |
より細かい年齢区分・被保険者期間の所定給付日数は「失業保険 期間」の記事の一覧表で確認してください。
総額シミュレーションで見落としやすい3点
- 給付制限の有無で「総額を受け取り終えるまでの期間」が変わる:自己都合退職には原則1か月の給付制限があり、総額は同じでも受け取り終わるまでの期間が会社都合退職より長くなります
- 失業認定期間中の収入は総額から差し引かれることがある:認定期間中にアルバイト等で収入があると、収入額に応じて基本手当日額が減額される場合があります。詳しい計算式は「失業手当 いくら」の記事で解説しています
- 早期に再就職すると、総額を待たずに一時金(再就職手当)に切り替わる:所定給付日数を多く残して再就職が決まると、残日数分の基本手当の代わりに再就職手当(基本手当日額の60〜70%相当×残日数)を一括で受け取れます。総額だけを見て「長く失業していた方が得」とは言えません
退職金・企業年金は総額の計算に影響するか
退職金は、基本手当の計算(賃金日額の算出)には含まれません。 賃金日額はあくまで「離職前6か月間に毎月決まって支払われた賃金」が対象で、退職金のような一時金は対象外です。退職金をいくら受け取ったかによって、失業手当の総額が減ることはありません。
ただし、次のような場合は総額そのものではなく「受け取れるかどうか」に影響することがあります。
- 会社の役員に就任している場合:役員報酬を受けている間は、原則として雇用保険の被保険者ではなくなるため、失業手当の対象外になります
- 再就職先が決まっている状態で離職した場合:離職日の翌日から働く予定がある場合、「失業の状態」に該当しないため、そもそも受給資格が認定されません
総額の計算式自体(基本手当日額×所定給付日数)は、退職金の有無に関わらず同じです。 退職金を受け取ったことを理由に、ハローワークへの申請をためらう必要はありません。
高年齢求職者給付金との違い(65歳以上の場合)
65歳以上で離職した場合、これまでの「基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金」という別の制度が適用されます。 計算の考え方が根本的に異なるため、65歳以上の方は注意が必要です。
- 高年齢求職者給付金は、日額での支給ではなく一時金として、基本手当日額の30日分または50日分(被保険者期間1年未満は30日分、1年以上は50日分)が一括で支給されます
- 「基本手当日額×所定給付日数」という総額の計算式そのものは使いません
64歳までに離職する場合はこの記事の計算式が適用されますが、65歳以降の離職は別制度になるため、該当する場合はハローワークで高年齢求職者給付金の内容を確認してください。
計算に必要な情報を確認する順番
総額を自分で概算するときは、次の順番で確認すると効率的です。
- 離職前6か月の給与明細を用意し、毎月の賃金(賞与を除く)を合計する
- 合計を180で割り、賃金日額を出す
- 年齢区分に応じた給付率表にあてはめ、基本手当日額を出す
- 離職理由(自己都合か会社都合か)と被保険者期間から所定給付日数を確認する
- 基本手当日額×所定給付日数で総額を算出する
自分で計算した金額と、実際にハローワークで決定される金額は数百円〜数千円程度ずれることがあります。 正式な賃金日額は、離職票に記載される確定した賃金額をもとにハローワークが算定するため、ここでの計算はあくまで目安として扱ってください。
よくある質問
総額を最大化するために、離職理由を会社都合にしてもらうことはできますか?
離職理由は事業主が作成する離職票の記載と、実態にもとづいてハローワークが判定します。本人の希望だけで変更できるものではありませんが、実態が解雇や長時間労働、賃金未払い等による離職であれば、特定受給資格者・特定理由離職者として扱われる可能性があります。離職票の記載に疑問がある場合はハローワークに相談してください。
総額が決まった後で、月収が上がる前提で再計算してもらえますか?
できません。基本手当日額は離職前6か月間に実際に支払われた賃金の実績で計算されるため、離職後の収入見込みは反映されません。
パート・アルバイトの場合も同じ計算式で総額が出ますか?
はい、計算式自体は正社員と同じです。ただし雇用保険の加入期間や賃金水準によって、給付率や所定給付日数が変わるため、詳細はハローワークで確認してください。
60歳で定年退職した場合、総額の計算は他の年齢と違いますか?
定年退職は一般の受給資格者として扱われ、被保険者期間のみで所定給付日数(90日〜150日)が決まります。ただし基本手当日額の給付率表は60〜64歳専用の区分(給付率の下限45%、上限7,830円)が適用されるため、45〜59歳までと同じ賃金水準でも日額が変わる場合があります。
総額の見込みを、退職前に会社に計算してもらうことはできますか?
会社は離職証明書の作成には関わりますが、基本手当日額・所定給付日数の正式な決定はハローワークが行います。退職前の見込み額を知りたい場合は、給与明細をもとに自分で概算するか、ハローワークインターネットサービスの案内を確認してください。
再就職手当をもらうと、当初計算した総額より受け取る金額は減りますか?
一概には言えません。再就職手当は残った所定給付日数に応じて支給率(60%または70%)をかけた一時金のため、早期に再就職するほど当初の総額に近い金額を、より短期間で受け取れる場合があります。詳しい支給要件はハローワークで確認してください。
複数の会社を掛け持ちしていた場合、総額の計算はどうなりますか?
複数の事業所で同時に雇用保険に加入することは原則できず、主たる賃金を受ける1つの事業所での加入が基本です。副業・兼業をしていた場合の賃金日額の扱いは個別の雇用形態によって異なるため、ハローワークで確認してください。
育児休業給付金を受給していた場合、失業手当の総額の計算に影響しますか?
育児休業給付金の受給自体は、離職前6か月の賃金日額の計算には直接影響しません。ただし育休中に賃金が大きく下がっていた期間がある場合、その期間の扱いについて特例計算がないか、ハローワークで確認することをおすすめします。
総額の計算をシミュレーションツールで行う場合、注意点はありますか?
インターネット上の自動計算ツールは目安として便利ですが、賃金日額の端数処理や年齢区分の境目(誕生日と離職日の前後関係)によって、実際にハローワークで決定される金額と数百円単位でずれることがあります。正式な金額は、離職票の確定した賃金額をもとにハローワークが算定します。
総額を一括で受け取ることはできますか?
原則としてできません。基本手当は4週間に1度の失業認定日ごとに、その期間分がまとめて振り込まれる仕組みです。ただし早期に再就職が決まった場合は、残りの日数分を再就職手当として一時金でまとめて受け取れることがあります。
傷病手当金を受けながら失業手当を計算することはできますか?
同時には受けられません。基本手当は「働ける状態にあるが職がない」ことが前提であるのに対し、傷病手当金は「働けない状態」を前提とした制度のためです。求職の申込み後に病気やケガで働けなくなった場合は、基本手当の代わりに傷病手当(傷病手当金とは別制度)に切り替わることがあります。
賃金日額の計算にインセンティブ・歩合給は含まれますか?
含まれます。名称が「歩合給」「インセンティブ」であっても、毎月決まって支払われる賃金として扱われる場合は、賃金日額の計算対象になります。ボーナスのように臨時に支払われるものと区別が難しい場合は、給与明細の記載区分をもとにハローワークで確認してください。
