賃上げをすると、設備投資の半分(上限200万円)が戻ってくるのか。戻ってきます。ただし入口の条件があり、賃上げ前の事業場内最低賃金が、地域別最低賃金より51円以上高くなければ申請できません。最低賃金ぎりぎりで雇っている事業場は、この補助金の対象外です。
とちぎ賃上げ環境整備促進補助金の要点まとめ
正式名:とちぎ賃上げ環境整備促進補助金
だれが
- 申請者
- 事業者(県内に事業場がある中小企業事業者)
- 対象業種
- 業種の指定なし(風俗営業等は対象外)
- 利用目的
- 賃上げとあわせた設備投資・労働環境の改善
- 対象地域
- 栃木県内に事業場があること
- 従業員数
- 業種別の上限あり(製造業等は300人以下など)
いくら
- 補助上限額
- 200万円(複数事業場分の合計でも200万円)
- 補助率
- 1/2
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年5月18日〜2026年12月21日(予算額に達したら終了)
- 事業の完了
- 完了後20日以内か2027年2月15日の早い方に報告
- 公式サイト
- 栃木県「とちぎ賃上げ環境整備促進補助金」
うちの事業場は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 7
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 引上げ前の最賃が地域別最賃+51円未満
- ✕ 大企業の子会社などのみなし大企業
- ✕ 賃上げの対象が雇入れ後6か月未満
事業場内最低賃金とは、その事業場で最も低い時給のことです。月給や日給の人は、時給に換算して比べます。通勤手当・家族手当・賞与・時間外手当は計算に入れません。
中小企業事業者は、資本金と常時使用する労働者数のどちらか一方が基準以内であれば該当します。事業主・役員・日雇いなどの臨時の人・試用期間中の人は、労働者数に入れません。
| 業種 | 資本金 | 労働者数 |
|---|---|---|
| 製造業など(下記以外) | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
みなし大企業とは、大企業が株式の2分の1以上などを持っていて、規模は小さくても中小企業として扱われない会社のことです。直近3年分の課税所得の年平均が15億円を超える会社も対象外です。派遣社員や在籍出向で来ているスタッフは、自社が給与を払っていないため、人数にも最賃の計算にも入りません。
賃上げ前の最賃は何円からOK?
線を引くのは、賃上げを実施した日に適用されている栃木県の最低賃金です。公式ページは、令和8年10月1日から1,125円に改定されるとしています。
| 賃上げを実施した日 | 栃木県最低賃金 | 引上げ前の事業場内最賃の範囲 |
|---|---|---|
| 2026年9月30日まで | 1,068円 | 1,119円〜1,500円 |
| 2026年10月1日以降 | 1,125円 | 1,176円〜1,500円 |
10月1日以降に賃上げするなら、時給1,125円の事業場は対象外です。1,176円以上に上げて支払ったあとなら申請でき、そのうえで実績報告までにさらに50円以上上げます。対象外の事業場は、厚生労働省の業務改善助成金が使える場合があります。
いくら補助される?
補助率は1/2です。上限は200万円で、上限に届くのは対象経費が400万円以上のときです。
- 対象経費が120万円の場合:120万円 × 1/2 = 60万円
- 対象経費が300万円の場合:300万円 × 1/2 = 150万円
- 対象経費が500万円の場合:500万円 × 1/2 = 250万円 → 上限の200万円
複数の事業場(A店、B店など)をまとめて申請しても、補助額の合計は200万円までです。上限を超えたときは、各事業場の対象経費の割合に応じて県が按分します。予算の上限に達した場合も、計算より低い額で交付が決まることがあります。
何に使える?
線引きは「生産性や働きやすさが上がるか」です。同じ設備でも、使い方で対象か対象外かが分かれます。
対象にならないもの
- 古くなった設備を同じ性能のものに替える更新
- 単なるパソコンの買い替え、汎用のタブレット
- LED電球への交換など、経費を減らすだけのもの
- 一般的な備品・什器、事務用機器、広告宣伝費
- 既存設備の撤去・処分費、建物の解体費
- 建物の建設費、土地造成を伴う工事
- 車両(車検証の用途が「貨物」のものを除く特種用途自動車など)と船舶
- 振込手数料、消費税等
対象になるもの
- 生産性向上:POSレジシステム、リフト付き特殊車両、顧客・在庫・帳票管理システム、配膳ロボット、国家資格者などの専門家による業務フローの見直し
- 労働環境の改善:キッズスペースの設置、女性用更衣室の整備、段差のスロープ化、床の防滑加工、休憩室の設置・改善
- 設備を入れるための運賃、搬入費、取付費
- 中古品(同程度の物品で、中古品流通事業者2者以上の相見積もりが要る)
老朽化した設備を同等性能のものに替えるだけでは対象外です。古くなったのを機に、より高い能力の機器へ替えて、作業時間が減る・売上が伸びるといえる場合は対象になります。この判断は個別に分かれるため、公式ページは申請前の事前相談を原則としています。
申請の流れ
- 事前相談シートをメールで送る(事業者→県労働政策課。申請の前に)
- 交付申請書と事業計画書などを出す(事業者→県。電子申請か郵送。2026年12月21日まで)
- 交付決定を受けてから、納品・正式契約・支払をする(事業者。決定の通知より前は対象外)
- 実績報告を出す(事業者→県。完了後20日以内か2027年2月15日の早い方まで)
- 額の確定の通知を受けて、交付請求書を出す(事業者→県。請求後に県が支給)
- 状況報告書を出す(事業者→県。実績報告書の提出日の前日か、賃上げから6か月たった日の遅い方から1か月以内。その間の賃金台帳の写しを添える)
交付決定とは、県が補助金を出すと決めて知らせる通知のことです。これより前に正式契約や支払をした分は、補助の対象になりません。先着順で、予算額に達した場合は期間中でも受付が終わります。
必要な書類
準備できた 0 / 9
見積書は、一式表記ではなく内訳が分かるものを出します。履歴事項全部証明書は、発行から6か月以内のものです。賃金台帳の写しは、賃上げが済んでいなければ直近6か月分、賃上げ済みなら引上げ前6か月分と引上げ後の分を出します。個人事業主は、直近の確定申告書の写しか青色申告決算書の写しで代えます。開業したばかりで確定申告がなければ、開業届の写しを出します。
就業規則には、賃上げ後の最低賃金を全労働者の下限として定めます。従業員が10人未満で就業規則がない場合は、賃上げ後の最賃と実施日を書いた書面と、労働者代表の意見書で代えられます。労働条件通知書では代わりになりません。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に契約や支払をした:納品・正式契約・支払のどれかが決定前だと対象外です。発注だけは決定前でも差し支えありません。
- 賃上げのあとに賃金を下げた:時給を下げたり、労働時間や日数を減らして月給を下げたりすると、交付決定が取り消されることがあります。
- 解雇等をした:申請日などの6か月前から申請日までに解雇等をしていると、そもそも要件を満たしません。
- 予算がなくなった:先着順です。12月21日の前でも、予算額に達すると受付が終わります。
- クレジットカードで払った:支払は現金か、申請者名義の銀行振込に限ります。小切手・手形・クレジットカードは認められません。
- 取得した設備を勝手に処分した:1件50万円以上の財産は、他の用途に使う、貸す、譲る、捨てるときに県の承認が要ります。
取り消されて補助金を返すときは、年10.95%の加算金がつきます。
似ている制度との違いは?
栃木県には「とちぎ賃上げ加速・定着支援金」という名前の近い制度が別にあります。この記事の補助金は、設備投資の費用を補助するものです。どちらも要件を満たせば、同じ設備の費用でなければ併用できます。補助の目的が重なると判断された場合は、調整されることがあります。
消費税の扱いは、課税区分で変わります。免税事業者と簡易課税事業者は税込み額で、一般課税事業者は原則として税抜き額で申請します。
よくある質問
最低賃金ぎりぎりで雇っている事業場でも申請できますか?
そのままでは申請できません。賃上げ前の事業場内最賃が、実施日に適用されている地域別最賃より51円以上高いことが要件です。ただし、先に51円以上高い水準へ引き上げ、その賃金を実際に払ったあとなら申請できます。そのうえで、実績報告までにさらに50円以上上げる必要があります。対象外になる事業場は、厚生労働省の業務改善助成金を確かめてください。
賃上げは申請より前にしてもいいですか?
かまいません。賃上げは2025年10月1日以降から事業完了期日までの間なら、交付申請の前に実施してもよいとされています。ただし、引き上げた賃金の支払いは、実績報告書を出す日までに済ませます。実績報告の前に、引上げ後の賃金で1回以上は支払う必要があります。10月1日より前に上げても、その月の最初の賃金支給日に間に合わせる上げ方なら、要件を満たすと扱われます。
賃上げを2回に分けてもいいですか?
できます。2回に分けて上げる場合も、2025年10月1日以降の引上げの合計が50円以上になっていることが条件です。たとえば時給1,200円を、まず1,230円、のちに1,250円へ上げる形です。合計の50円以上は満たしています。ただし最初の引上げの前の時給が、実施日の地域別最賃より51円以上高いことが前提です。迷う場合は事前相談で確かめてください。
パート従業員だけ時給を上げる場合、就業規則はどうしますか?
設定した事業場内最賃は、事業場の全労働者に適用する必要があります。パート用の就業規則だけ直しても足りません。雇用形態ごとに規則が分かれている場合は、すべての規則を改正します。いずれかの規則に、全労働者に適用すると書く方法もあります。申請書類には、最低賃金を定めた就業規則を添えます。
雇って6か月たっていない人の賃上げも対象ですか?
対象になりません。賃上げの対象にできるのは、雇入れ後6か月を経過した労働者です。事業場内最賃の人が雇入れ後6か月未満のときは、6か月以上勤めている人のうち賃金が最も低い人の額を、事業場内最賃として申請します。見習い・試用期間中の人が、あとで賃金が上がる予定でも、それは賃上げには数えません。
パソコンの買い替えは対象になりますか?
単なる買い替えは、原則として対象外です。汎用のタブレットも同じ扱いです。ただしPOSレジシステムを入れるときに、既存の端末では動かないため、そのシステムと一体で使う端末を買う場合は対象になることがあります。使い道と設備全体との関係で判断が変わるため、見積を取る前に事前相談で確かめておくと安心です。
壊れた機械を新しく買い替えた費用は出ますか?
同等性能の機器への入れ替えは対象外です。壊れた、古くなったのを機に、より高い能力の機器を入れて、生産性や労働能率の向上が認められる場合は対象になります。たとえば作業時間が短くなる、一度に処理できる量が増える、といった効果を事業計画書で説明できるかがポイントです。古い設備の撤去・処分費は、対象外です。
発注はいつからできますか?
申請後、交付決定の前でも、発注すること自体は差し支えありません。ただし交付決定の前に、売買契約などの正式な契約を結ぶか、代金を支払うと対象外です。納品も交付決定のあとでなければなりません。デモ機を無償で借りて試すのは、設備投資にあたらず、決定後に購入契約を結べば補助を受けられます。
事前相談は必ず受けるのですか?
原則として、申請の前に所定の様式でメールの事前相談をします。要件に合う見込みと、注意点を確かめるためです。送り先は県の労働政策課のメールで、様式は公式ページにあります。事前相談は、交付の可否を約束するものではありません。添付書類の内容や予算の状況によって、結果が変わることがあります。
複数の店舗や工場で申請すると上限はどうなりますか?
事業者ごとの上限が200万円です。A店、B店など複数の事業場の分を申請して、補助額の合計が200万円を超えるときは、200万円が上限になります。各事業場の対象経費の割合に応じて県が按分して、交付額を決めます。申請は、要領の算出方法に沿って1件にまとめて出します。
とちぎ賃上げ加速・定着支援金と併用できますか?
それぞれの要件を満たせば併用できます。公式のよくある質問に、併給が可能だと書かれています。ただし、他の助成金と補助の目的が重なると認められた場合は、併給調整の対象になることがあります。同じ設備の費用を二重に補助してもらうことはできません。不明な点は、県の労働政策課に問い合わせてください。
中古品や自社施工の設備でも対象ですか?
中古品は対象になります。型式や年式が同程度の物品について、中古品流通事業者2者以上から相見積もりを取ります。中古品流通事業者以外から買ったものは対象外です。自社で施工・製造するものは原則として対象外ですが、施工に使う原材料費だけを事業費にするなら対象になります。
