BCP(事業継続計画)をまだ作っていなくても、防災用品の購入に使えるのか。使えません。この助成金は要件を満たすBCPを提出できることが申請の前提です。さらに以前にこの助成金の交付を受けた事業者は、再び申請できません。
BCPとは地震や感染症などの不測の事態に備えて、中核となる事業を続ける方法を平常時に決めておく計画のことです。東京都と東京都中小企業振興公社(以下、公社)が、そのBCPを実行するための設備や備蓄品の費用を、1/2以内(小規模企業は2/3以内)で助成します。令和8年度の募集は年3回で、最後の第3回は2027年1月8日から15日17時までです。
BCP実践促進助成金の要点まとめ
正式名:BCP実践促進助成金
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)、中小企業団体
- 対象業種
- 金融・保険業、農林水産業を除く
- 利用目的
- 安全・防災、脱炭素・省エネ
- 対象地域
- 東京都
- 従業員数
- 中小企業者(資本金か従業員数の上限は業種別・本文)
いくら
- 補助上限額
- 500万円(単独型。連携型は本文)。下限10万円
- 補助率
- 2分の1以内(小規模企業は3分の2以内)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年5月13日〜2027年1月15日(年3回の募集)
- 事業の完了
- 第3回は2027年4月1日〜7月31日
募集は次の3回です。
| 回 | 電子申請の期間 | 助成対象期間 |
|---|---|---|
| 第1回 | 2026年5月13日〜19日(終了) | 2026年8月1日〜11月30日 |
| 第2回 | 2026年9月9日〜15日(終了) | 2026年12月1日〜2027年3月31日 |
| 第3回 | 2027年1月8日〜15日 | 2027年4月1日〜7月31日 |
どの回も受付の終わりは最終日の17時です。予算の執行状況によっては、受付が早く終わることがあります。
うちの会社は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ NPO・社団・医療法人など
- ✕ 金融・保険業、農林水産業
- ✕ 事業税などを滞納している
- ✕ 他の助成で同じ経費を受けた
設備を置く場所は、都内の自社の事業所が原則です。都内に本店があれば、近県(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・山梨)の事業所にも置けます。自社が単独で占有する場所に限られ、個人宅は使えません。
「1年以上」は申請日の時点で数えます。個人事業主は税務署に出した開業・廃業等届出書の写しで、納税地や主たる事業所が都内にあることを確かめます。
要件を満たすBCPは次のどれかで作ったものです。
- 公社のBCP策定支援事業(BCP策定講座かBCP策定コンサルティング)を受けて作ったBCP
- 中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」(国の認定制度)の認定を受け、その内容で作ったBCP
- 平成28年度以前に、東京都または公社のBCP策定支援事業などで作ったBCP
BCPには基本方針、想定するリスク、緊急時の対応、役割分担、重要業務と目標復旧時間、発動の条件、訓練計画、実践に必要な物資(品名・個数・設置場所・必要な理由)などを書きます。経営者が自ら参画して作ったものであることも見られます。
中小企業者は資本金か従業員数のどちらか一方が次の数字以下なら該当します。ただし、大企業が1社で株式の1/2以上を持つ会社や、役員の1/2以上を大企業の役職員が兼ねている会社は、数字に合っていても対象外です。
| 業種 | 資本金または従業員数 |
|---|---|
| 製造業(ソフトウェア・情報処理サービス含む)、その他 | 3億円以下または300人以下 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円以下または900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下または100人以下 |
| サービス業(旅館業を除く) | 5千万円以下または100人以下 |
| 旅館業 | 5千万円以下または200人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下または50人以下 |
小規模企業者は中小企業者のうち、常時使用する従業員が製造業・その他で20人以下、卸売業・小売業・サービス業で5人以下の事業者です。助成率が2/3以内になります。
いくら戻ってくる?
中小企業者は対象経費の1/2以内、小規模企業者は2/3以内です。上限は500万円、下限は10万円です。
- 中小企業者が発電機と安否確認システムに200万円:200万円 × 1/2 = 100万円
- 小規模企業者が同じ200万円:200万円 × 2/3 = 133万3千円(千円未満は切り捨て)
- 中小企業者の経費が1,200万円:1,200万円 × 1/2 = 600万円 → 上限の500万円
- 経費が15万円:15万円 × 1/2 = 7.5万円 → 下限の10万円に届かない
下限は助成金の額にかかります。対象経費(税抜)に直すと、中小企業者は20万円、小規模企業者は15万円が最低ラインです。対象外の経費を引いたあとの額がこれを下回ると、申請の要件を満たしません。
備蓄品には別の上限があります。募集要項の備蓄品リスト(28品目)の対象経費は、助成対象場所の従業員(役員を含む)1人あたり3万円までです。マスクや消毒液もこのリストに入っています。従業員20人なら60万円が上限で、備蓄品に100万円使っても、対象になるのは60万円です。60万円 × 1/2 = 30万円が助成の目安になります。
ほかにも物品・設備の品目数はすべて合わせて20品目まで、設置工事の費用は機器本体の25%までという上限があります。基幹システムのクラウド化は、助成額の上限が150万円で、500万円の枠の中に含まれます。
何に使える?
線引きは被災したあとに通常の事業へ早く戻るための物かどうかです。被災している最中に平時のまま営業を続けるための物は対象になりません。
対象にならないもの
- パソコン・スマートフォン・タブレット・日常使いできるモバイルバッテリー
- 乾電池・文房具・金庫・冷蔵庫・テレビ・扇風機など汎用性の高い物
- 予備の生産設備や業務システム(NASの予備機・ポータブル電源の予備機など)
- Wi-Fi設備のように建物の付加価値を高める物
- 車両・電気自動車と、その充電設備
- 来店客・近隣住民・入居者など、従業員以外のための物
- 平常時の売電や節電にも使う発電設備
- 中古品・リース・割賦で買う物
- 保守費・通信費・設計費・保険料・既存設備の撤去費
- 消防法や建築基準法で設置が義務づけられている物
対象になるもの
- 発電機・ポータブル電源・無停電電源装置(非常時に使う可搬式のもの)
- 従業員の安否確認システム
- データのバックアップ用のNAS・クラウドサービス
- 制震・免震ラック・飛散防止フィルム・転倒防止装置
- 従業員用の非常食・水・簡易トイレ・毛布・簡易浄水器
- 土のう・止水板(ハザードマップの提出が要ります)
- 感染症対策のマスク・消毒液・体温計
- 基幹システム(ERP・CRM・SFAなど)のクラウド化
- 耐震診断(自社所有で、昭和56年5月31日以前に建てた建物。技術評定を伴うもの)
NASはストレージ(HDDなど)に通信機器を備えたものが対象です。ストレージサーバーやファイルサーバーは対象外です。
よく誤解されるポイント
「業者が『補助金の対象』と言っていた」:公社は、一部の業者が自社製品や工事を対象だと説明していることに注意を呼びかけています。個別に認めているものではありません。購入の前に品目が対象経費に当たるかを募集要項で確かめてください。
「買ってから申請すればよい」:交付決定の日より前に導入した設備は対象外です。交付決定は助成の対象事業として決まったという意味で、支払いの保証ではありません。発注契約、購入、支払のすべてを、助成対象期間の4か月以内に終える必要があります。
「ネットで安い物を選べばよい」:安さだけでは通りません。審査では設備の必要性と妥当性が見られます。ポータブル電源のように買える物は、市場価格が参考にされ、同等の性能の製品から大きく離れた価格の申請品目は対象になりません。
「単独型と連携型は同じ」:別の申請です。単独型は1つの事業者が自社用に使う設備で、連携型は複数の事業者が共用する設備です。連携型は上限が1,000万円ですが、「連携事業継続力強化計画」の認定が要件で、助成率は1/2以内です。この記事は単独型の内容です。
申請の流れ
- BCPを作る(事業者。公社のBCP策定講座などを受けるか、事業継続力強化計画の認定を受ける。申請の前に済ませる)
- GビズIDプライムを取る(事業者→デジタル庁のGビズID。発行に2〜3週間かかるので、早めに)
- 公社のページで申請のエントリーをする(事業者→公社。GビズIDの発行とエントリーが済んでいないと受け付けられません)
- 申請書と見積書などをそろえる(事業者。第3回の締切は2027年1月15日17時)
- Jグランツで電子申請する(事業者→公社。持参・郵送・メールは不可)
- 審査を受け交付決定を待つ(公社→事業者。第3回は2027年3月下旬の予定)
- 交付決定のあとに発注し、期間内に設置・支払いを終える(事業者。2027年4月1日〜7月31日)
- 完了報告と検査を受け、助成金を請求する(事業者→公社。支払いは後払い)
Jグランツは国が運営する補助金の電子申請システム、GビズIDプライムはそこに入るためのIDです。
必要な書類
準備できた 0 / 10
個人事業主は履歴事項全部証明書のかわりに開業届を出します。小規模企業者で申請するときは、公社の確認書と、労働保険料の報告の写しも要ります。賃貸の建物で工事をするときは、貸主の承諾書が要ります。見積書を出すときは発注先の会社案内、事業に許認可が要るときは許認可証の写し、設置に2日以上かかるときは工程表も出します。マイナンバーが載った書類は受け取れないため、黒塗りして出します。
見積書は工事費を伴わない1基30万円(税抜)以上の機器では、同じ製品で2社以上の分が要ります。工事費を伴う機器とクラウドサービスは、金額にかかわらず2社以上の見積書が必要です。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に買った:交付決定日より前に導入した設備は、対象外です。
- 期間内に支払いが終わっていない:助成対象期間の外にかかった発注や支払いは、対象になりません。
- 振込以外で払った:普通預金・当座預金からの振込以外(現金、手形、小切手、電子マネーなど)の支払いは、対象外です。
- 申請内容が他社と同じだった:ほかの事業者の申請と同一か、きわめて似た内容の申請は、不採択になります。
- 予算が先になくなった:予算の執行状況によっては、締切の前に受付が終わります。
併用と確認できなかったこと
同じ経費で公社・国・都道府県・区市町村などから補助金や助成金を二重に受けることはできません。東京都や国のテレワーク助成金の対象になる経費も、原則として対象外です。
第3回の募集要項は確認した時点では公社のページに載っていませんでした。公社のページには「第3回募集のご案内は今冬掲載予定」とあります。この記事の要件は令和8年度第2回の募集要項(単独型)にもとづいています。第3回で要件が変わる可能性があるため、申請の前に、公社のページで第3回の募集要項を確かめてください。
よくある質問
BCPを作っていなくても申請できますか?
申請できません。要件を満たすBCPを提出できることが、申請の前提です。公社のBCP策定講座などを受けて作る方法のほか、事業継続力強化計画の認定を受ける方法があります。申請の受付が始まってから講座を探すのでは間に合わないことがあるため、第3回を狙うなら、BCPの策定を先に進めておきます。BCPには申請する物品が必要な理由と数量も書きます。
以前にこの助成金を受けた会社は、もう一度申請できますか?
申請できません。募集要項の申請要件に「以前に、単独型BCP実践促進助成金およびBCP実践促進助成金の交付を受けたことがないこと」があります。つまり受けられるのは1回です。次の機会がないため、BCPの物資の一覧は、最初の申請で見落としなく入れておくことを勧めます。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。開業届を出して都内で営業していて、都内で実質的に1年以上事業を行っていることが条件です。納税地や主たる事業所が都内にあることを、開業・廃業等届出書の写しで確かめます。法人の登記簿謄本のかわりに、開業届を提出します。助成率は中小企業者の1/2以内が基本です。小規模企業者に当たれば2/3以内になります。
パソコンやタブレットは買えますか?
買えません。パソコン、スマートフォン、タブレット、日常使いできるモバイルバッテリーは、汎用性が高い備品として対象外です。この助成金は被災したあとに通常の事業へ戻るための物を支えるものです。データのバックアップに使うNASやクラウドサービスは対象ですが、端末そのものは対象になりません。クラウド化でも通信機器やパソコンなどの端末の費用は含まれません。
ポータブル電源は対象になりますか?
対象になります。ただし非常時に設置して使う可搬式であることと、平常時の売電や節電に使わないことが条件です。必要とする電気量に見合った容量であることも見られます。予備の生産設備にあたるポータブル電源の予備機は、対象外です。5年間保存・使用できない物(保証期間の短いものなど)も対象外のため、申請書の別紙に、選んだ理由と必要な容量を書きます。
備蓄品はいくらまで対象になりますか?
従業員(役員を含む)1人あたり3万円が、対象経費の上限です。従業員20人なら60万円になります。対象になるのは従業員用の非常食、水、簡易トイレ、毛布、簡易浄水器などです。来客用や地域住民用は対象になりません。保存期限の短い非常食のように、5年間保存・使用できない物も対象外です。個数は従業員数を超えない範囲で、必要な理由を示して決めます。
設置工事の費用も助成されますか?
設置に直接必要な工事費は対象です。材料費、雑材料費、直接仮設費、労務費、運搬費などが入ります。ただし機器の設置経費は、機器本体の25%が上限です。労務費は東京都が定める公共工事設計労務単価の上限を超えた分が対象外になります。建物の改修や増築、LAN配線工事、既存設備の撤去・処分の費用は対象外です。
見積書は何社分が必要ですか?
物の種類で変わります。工事費を伴わない1基30万円(税抜)以上の機器や物品は、同じ製品で2社以上の見積書が要ります。工事費を伴う機器や物品、クラウドサービスの導入費は、金額にかかわらず2社以上です。詳細が分からない見積書は、対象外になることがあります。申請日の時点で有効な見積書を出し、単価や規模の根拠が分かる内訳を付けます。
助成金はいつ支払われますか?
事業が終わったあとの後払いです。助成対象期間内に発注、設置、支払いを終え、完了報告を出します。公社が完了検査で事業が交付決定どおりに行われたかと、経費が適切に支払われたかを確認し、助成金の額が確定します。検査の結果、実際の支払額が交付予定額より減ることもあります。購入の代金はいったん自己資金で払うことになります。
第3回の受付はいつですか?
2027年1月8日9時から1月15日17時までです。申請はJグランツの電子申請だけで、締切を過ぎると申請ボタンを押せなくなります。助成対象期間は2027年4月1日から7月31日で、交付決定は3月下旬の予定です。予算の執行状況によっては、受付が早く終わることもあります。GビズIDの発行に2〜3週間かかるため、申請を考えているなら先に取っておきます。
業者に「この商品は助成の対象」と言われました。信じてよいですか?
そのまま信じず、募集要項で確かめてください。公社は一部の業者が自社製品や工事を助成金の対象だと説明しているが、公社が個別に認めているものではないと、募集要項で注意しています。対象になるかは、品目が対象経費の範囲に入るか、BCPに必要な理由が書かれているかで決まります。迷ったら公社の設備支援課に先に問い合わせます。
連携型とは何が違いますか?
複数の事業者が共用する設備を買うときの申請です。上限は1,000万円で、助成率は1/2以内です。申請の前提として中小企業強靱化法に基づく「連携事業継続力強化計画」の認定が必要です。単独型は1つの事業者が自社で使う設備が対象です。中小企業団体の場合は、団体が共有する設備が対象で、組合員が取得する設備は、組合員が単独型で申請します。
問い合わせ先はどこですか?
助成金の申請については、公社の企画管理部 設備支援課(電話 03-3251-7889、受付は9時〜12時と13時〜17時)です。BCPの策定支援については、総合支援部 総合支援課(電話 03-3251-7885)です。制度全般は東京都産業労働局 商工部 経営支援課(電話 03-5320-4783)が窓口です。GビズIDやJグランツの操作は、GビズIDヘルプデスク(電話 0570-023-797)へ問い合わせます。
