この助成金で迷いやすいのは、金額よりも「いつ払った費用が対象か」です。助成対象期間は令和8年(2026年)4月1日からで、発注・契約・実施・支払いのどれか1つでもその前に済んだ経費は対象になりません。
東京都内の中小企業が外国で特許を出願するとき、費用の2分の1以内(最大400万円)を東京都中小企業振興公社が助成します。令和8年度は第1回が2026年5月22日、第2回が2026年10月16日(どちらも17時)で、2回とも募集を終えています。
特許は国ごとに取り直しが必要です。日本で取った特許の効力は海外に及ばないので、進出先ごとに出願の費用がかかります。その費用の一部を、後払いで助成する制度です。
外国特許出願費用助成事業の要点まとめ
正式名:外国特許出願費用助成事業
だれが
- 申請者
- 都内の中小企業者・中小企業団体・一般社団(財団)法人
- 対象業種
- 指定なし
- 利用目的
- 外国への特許出願・中間手続の費用
- 対象地域
- 東京都内(都内で実質的に事業を営んでいること)
- 従業員数
- 資本金・従業員数が業種別の上限以内(本文に表)
いくら
- 補助上限額
- 400万円(出願経費のみは300万円)、1年度1社1出願
- 補助率
- 対象経費の1/2以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 第1回は5月、第2回は2026年10月16日17時で終了
- 事業の完了
- 最長2028年11月30日まで
自分の会社は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 日本国内への出願・国内移行
- ✕ 4月1日より前に発注・支払った
- ✕ 医療法人・学校法人・宗教法人
- ✕ 大企業が経営に参画している
- ✕ 登録料・維持年金だけの出願
2つ目は、個人事業者なら2026年4月1日以前に開業届を出していることです。基準日は4月1日で、都内で1年以上事業をしているか、1年未満でも都内で創業して実質的に事業をしている必要があります。「実質的に」は、建物があるだけではなく、ホームページや看板、雇用の状況などから都内に根付いて活動していると判断されることです。
中小企業者は、資本金と常時使用する従業員数で決まります。どちらか一方が上限以内なら範囲に入ります。公社の募集要項にある上限は次の表です。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業(下記以外) | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
大企業が経営に参画している会社は、中小企業でも対象外です。大企業が1社で株式の2分の1以上を持つ、複数の大企業で3分の2以上を持つ、役員の2分の1以上を大企業の役員や従業員が兼ねている場合が当たります。
過去に公社の助成金を受けた会社は、決められた期日までに「活用状況報告書」を出していることが前提です。出願人は共同でも構いませんが、共同出願契約書で発明、権利の持分、費用の負担割合を決めておく必要があります。
いくら戻る? 計算してみる
助成額は、助成対象経費の2分の1以内です。千円未満は切り捨てになります。
上限は2段階です。外国出願に審査請求や中間手続まで含めて申請するなら400万円、出願に要する経費だけなら300万円です。
- 外国出願の経費が200万円:200万円 × 1/2 = 100万円
- 審査請求・中間手続まで含めて経費が1,000万円:1,000万円 × 1/2 = 500万円 → 上限の400万円
- 出願経費だけで経費が700万円:700万円 × 1/2 = 350万円 → 上限の300万円
経費の金額は計算のための例です。実際の助成額は、完了検査のあとに確定します。交付決定の時点の助成予定額は上限で、検査の結果、減ることがあります。
上限に届くのは、対象経費が800万円以上のとき(審査請求・中間手続を含む場合)です。出願の費用だけで申請する場合は、600万円で300万円に届きます。
「1年度1社1出願」は、1年度に助成を受けられる出願案件が1社につき1件という意味です。出願先の国はいくつでも構いません。第1回で不採択でも、内容を見直して第2回に同じ案件で再応募できます。
何が経費になる?
対象にならないものから確認します。
- 国内の消費税
- 国内向けの振込手数料、振込先負担の手数料
- 登録料、維持年金(審査継続中の維持年金を含む)
- 助成対象期間より前に出願が終わった国の審査請求料・中間手続費用
- 各国への移行を期間内に1か国も終えられなかったPCT出願の経費
- 親会社・子会社・関連会社との取引にかかる経費
- 共同出願人どうしの取引にかかる経費
- 現金・手形・小切手での支払い、ポイント分
- 交付申請書に載せていない国の追加や、発明の変更に伴う経費
対象になるのは、外国出願から中間手続までの必要最小限の経費です。
- 外国出願手数料(直接出願、PCT国際出願の手数料、各国への移行手数料)
- 審査請求料と中間手続の費用(特許審査ハイウェイなどの早期審査の利用や、情報開示の費用を含む)
- 代理人費用(国内の弁理士と現地の代理人)
- 翻訳料
- 先行技術調査の費用
- 国際調査手数料、国際予備審査手数料
- 通信費、運送料、海外送金の手数料
PCT出願は、1つの出願で多くの国に出願した扱いになる国際出願の仕組みです。PCT出願の本体を2026年4月1日より前に発注していると、その分は対象外です。その場合でも、各国への移行を期間内に発注から支払いまで終えるなら、移行の経費は対象になります。
申請から助成金が入るまで
- GビズIDプライムを取る(事業者→デジタル庁。申請の2〜3週間前までに。未取得の場合)
- 募集要項と申請書を取り寄せる(事業者→公社のサイト。記入例も同じページにある)
- Jグランツで交付申請をする(事業者→公社。受付期間の17時まで)
- 申請書類を書留などで送る(事業者→知財センター。同じ期限の中で)
- 審査を受け、交付決定を受ける(公社→事業者。第2回は令和9年3月下旬頃の予定)
- 出願と支払いを終え、完了後15日以内に実績報告をする(事業者→公社)
- 完了検査のあと、確定通知を受けて請求する(公社→事業者。助成金は一括の後払い)
GビズIDプライムは、国の電子申請に共通で使うIDで、発行に2〜3週間かかります。募集が始まってから取ると間に合いません。
交付申請は、Jグランツでの入力と、紙の書類の郵送の両方が要ります。どちらかが欠けると、適正な申請として扱われません。郵送は簡易書留、レターパック、宅配便(信書用)など記録の残る方法に限られます。持参、普通郵便、FAX、メールは受け付けられません。封筒の表に「外国特許出願費用助成金申請書類在中」と書きます。
交付決定は、審査を通ったことと助成予定額を知らせる通知です。助成対象期間は2026年4月1日から2028年11月30日までで、期間内に外国への出願などを完了させます。
審査は書類が中心で、必要なときは面接があります。見られる点は、出願の動機と目的、特許性、市場性、独占性、出願後の事業展開と資金調達の見込みです。
必要な書類
準備できた 0 / 9
書類は組織の形で変わります。登記簿謄本は発行から3か月以内のものを原本で出します。個人事業者の納税証明書は、事業税が非課税なら税務署の所得税納税証明書(その1)に変わります。マイナンバーが載った書類は受け取ってもらえず、黒塗りして出します。
申請後に書類の加筆や修正はできません。返却もされないので、送る前に控えを取っておきます。
助成金がもらえなくなるのはどんなとき?
- 期間より前に動いた:発注・契約・実施・支払いのどれかが2026年4月1日より前に終わっていると、その経費は対象外です。
- 期間内に終わらなかった:2028年11月30日までに、発注から支払いまでを終えられない分は対象外です。外国への出願が完了したことを確認できないと、助成金は交付されません。
- 証拠書類がそろわない:契約書、完了報告、請求書、振込控、通帳を、助成事業者の名義でそろえます。国内と現地の代理人の全員分が必要です。
- 支払い方法が合わない:助成事業者の名義の口座からの振込が原則です。役員や従業員の口座からの振込や、他の取引との相殺は対象外になります。
- 申請内容と違う使い方をした:交付決定のあとに出願する発明を変えたり、国を追加したりすることはできません。国を減らすのは認められます。
- 不正や要件違反があった:交付決定が取り消され、すでに受け取った分は返還を求められます。
併用と、助成を受けたあとの報告
同じ発明に対して、特許庁や自治体、JETROなど別の公的機関の助成金に併願することはできます。ただし同じ出願テーマで助成を受けられるのは1つだけで、両方に採択されたら一方を辞退します。
助成を受けたあとは、完了した年度の翌年度から5年間、毎年「活用状況報告書」を出します。権利化に成功したかどうかに関係なく提出します。帳簿と書類は5年間の保存が要ります。
よくある質問
令和8年度の募集はもう終わっていますか?
終わっています。第1回は2026年5月8日から5月22日の17時まで、第2回は2026年10月1日から10月16日の17時まででした。公社のページにも「令和8年度は募集終了」と出ています。次の募集の予定は、公社の公式ページには書かれていません。募集が出たときの準備として、GビズIDプライムの取得と、出願の費用の見積もりを先に進めておけます。
400万円と300万円の違いは何ですか?
審査請求や中間手続まで含めて申請するなら上限は400万円、出願に要する経費だけなら300万円です。中間手続は、出願後に特許庁の審査官とやり取りする手続きのことです。確定する額は、実際にかかった対象経費の2分の1と助成予定額の低い方です。出願の経費だけだった場合は、300万円以下の範囲になります。
1年度1社1出願とはどういう意味ですか?
1年度に助成の対象にできる出願案件が、1社につき1件という意味です。1件の出願案件を複数の国に出すのは構いません。国の数に決まりはなく、経費の合計が上限の範囲に入ればよいことになっています。別の発明を同じ年度にもう1件申請することはできません。第1回で不採択だった場合は、同じ案件で第2回に再応募できます。
すでに出願した特許の費用も対象になりますか?
助成対象期間は2026年4月1日からで、発注または契約、実施、支払いのすべてが期間内に終わった経費だけが対象です。期間より前に1つでも済んでいる経費は対象外になります。パリ条約による直接出願が期間前に終わっていれば、その出願の経費は対象になりません。PCT出願は、本体が期間より前なら対象外、各国への移行はこれからなら対象です。
交付決定の前に代理人へ依頼してもいいですか?
助成対象期間の開始日は2026年4月1日で、交付決定の日ではありません。この日以降の発注や契約は、交付決定より前でも対象経費になる仕組みです。ただし、不採択になれば助成金は出ず、費用は自己負担になります。交付申請書に書いていない国の追加や、発明の変更は後からできないので、依頼前に出願国と内容を決めておきます。
日本国内への出願は対象になりますか?
なりません。PCT出願で日本へ国内移行する分も対象外です。この助成金は外国への出願だけを対象にしています。国内の出願については、区や市が助成制度を設けている場合があるため、事業所の所在地の産業課や経済課、商工課に確認します。登録料と維持年金は、外国の出願でも対象になりません。
意匠や商標も同じ枠で申請できますか?
できません。公社には、外国意匠出願費用助成金、外国商標出願費用助成金、外国実用新案出願費用助成金が別にあります。権利の種類ごとに申請します。令和8年度にこれらのどれかへ申請済みの場合、1部だけ出す書類は、内容が直近で変更がなければ提出を省略できます。3部提出する書類は省略できません。
共同出願でも申請できますか?
申請できます。共同出願の内容が書かれた契約書か協定書を添付します。発明の特定、権利の持分、外国出願の費用負担割合が書かれている必要があります。助成額は、申請者の費用負担割合に応じて決まります。1件の出願案件に対する上限は、共同出願でも400万円(出願経費のみは300万円)です。相手は大企業でも構いません。
弁理士に申請を頼めますか?
Jグランツの上での当初の申請手続きに限り、行政書士などが代理申請の機能を使えます。申請者はGビズIDで委任の手続きをし、公社に同意書を出します。申請の確認と提出、受付後の手続き、完了検査への対応は、申請者本人(代表者か連絡担当者)が行います。出願を請け負う弁理士や代理人は、代理申請を引き受けられません。
助成金はいつ入金されますか?
後払いで、一括で支払われます。出願が完了したあと、公社の職員が訪問して書類を原本と照らして確認する完了検査があります。そのあとに助成金の額が確定し、確定通知を受けて請求書と印鑑証明書(発行から3か月以内)を出します。事前の支払いや分割払いには対応していません。完了検査は事業所を訪問する形が原則です。
他の助成金との併用はできますか?
同じ発明で別の公的機関の助成金に併願するのは構いません。ただし、同じ出願テーマで助成を受けることはできません。公社が実施する他の助成金に同じ内容で併願することも認められていません。両方に採択された場合は、一方を辞退します。国や自治体から同一内容で助成を受けていないことが、申請要件の1つになっています。
問い合わせ先はどこですか?
東京都知的財産総合センターの外国特許出願費用助成金担当です。電話は03-3832-3656(平日9時から17時)です。助成金の申請前に、申請内容を無料の知財相談で確認することもできます。希望する場合は、事前に公社のサイトから予約します。審査の内容についての個別の問い合わせには答えてもらえません。
