築50年を超える老舗料理店の建物を、このまま朽ちさせたくない。でも修繕費用は自己資金だけでは心もとない——そんなときに、クラウドファンディングの手数料を都が肩代わりしてくれる制度がありました。令和6年度分の受付は2025年1月31日で終了しています。
運営は東京都産業労働局観光部。この補助金の仕組みは変わっています。都が直接工事費を補助するのではなく、事業者がクラウドファンディングで集めた資金にかかる「手数料」を補助するという設計です。補助上限100万円、補助率2/3以内でした。
観光資源の保全等に係るクラウドファンディングを活用した資金調達支援の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人・個人事業主。都内の宿泊・旅行・飲食・小売事業者等の観光関連事業者) |
| 制度名 | 観光資源の保全等に係る「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」 |
| 対象業種 | 宿泊業、旅行業、飲食サービス業、小売業等の観光関連事業者 |
| 利用目的 | クラウドファンディング利用時の手数料(利用手数料・決済手数料・早期振込手数料)の補助(まちづくり・地域振興、資金繰り・融資) |
| 対象地域 | 東京都内 |
| 従業員数 | 規定なし(個人事業主を含む都内事業者) |
| 補助上限額 | 100万円 |
| 補助率 | 補助対象経費の2/3以内(千円未満切り捨て) |
| 申請受付 | 令和6年度分は終了(2025年1月31日必着) |
| 公式サイト | 東京都産業労働局「観光資源の保全等に係るクラウドファンディングを活用した資金調達支援」 |

補助対象は「工事費」ではなく「CF手数料」
この制度の最大の特徴は、補助対象が「施設の修繕費用そのもの」ではなく、「クラウドファンディングを利用する際に事業者が支払う手数料」だという点です。 通常の補助金は工事費や設備費に直接補助が出ますが、この制度は違います。
- 利用手数料
- 決済手数料
- 早期振込手数料
これらの手数料に対して、補助対象経費の2/3以内、上限100万円が補助される仕組みでした。例えば、CFの利用手数料が300万円かかった場合、その2/3は200万円になりますが、上限100万円が適用され、実際の補助額は100万円になります。
「築50年以上」という明確な線引き
対象になる観光施設・技術には、「概ね築50年以上が経過した」「概ね50年以上の実績がある」という明確な年数の基準がありました。
- 観光施設: 都内で所有・管理運営する建物で、概ね築50年以上経過し、東京の魅力発信に資するもの(有形文化財・東京都選定歴史的建造物は原則除く)
- 技術等: 概ね50年以上の実績がある技能・技術で、東京の魅力発信に資するもの
老舗の伝統技術や、長年営業を続けてきた歴史的な建物が対象で、新しくオープンした店舗の改装費用などは対象になりません。 「東京の魅力発信」という趣旨に沿った、歴史の積み重ねがある観光資源の保全を後押しする制度でした。
対象になる取り組みの例
補助対象となる事業には、次の2つのパターンがありました。
| 目的 | 取組例 |
|---|---|
| 観光施設の維持・保全 | 地域に根差した老舗料理店の維持・補修工事、老朽化した観光施設の復元・補修工事 |
| 技術等の維持・保全 | 都内の伝統工芸品や自然を活用した体験プログラムの企画、地域特産品を紹介する展示会の開催 |
建物の修繕だけでなく、伝統技術を体験プログラムとして発信する取り組みも対象に含まれていた点は、単なる「保存」だけでなく「発信」も重視する制度趣旨を表しています。
CFサイトへの掲載前に申請が必要という順序
この制度で最も注意すべき手順があります。「交付申請はCFサイトへの掲載前に行う」必要があり、CFサイトに掲載済みのプロジェクトは補助対象になりません。
クラウドファンディングを始めてから「後付けで」この補助金を申請することはできません。 順序は次のとおりです。
- 東京都へ交付申請(CFサイト掲載前)
- 交付決定(審査に約3週間)
- CFサイトにプロジェクトを掲載
- 資金調達・手数料支払い・リターン提供
- 実績報告・完了検査
- 補助金額の確定・請求・支払い
また、交付申請は1回限りで、複数回の申請は認められていませんでした。目標調達額を達成できなければ、手数料を払ってもリターンを提供しても補助対象にならないという、クラウドファンディング特有のリスクも制度に組み込まれています。
使えるCFサイトが指定されていた
この制度では、都が選定した「取扱CF事業者」のサービスを使うことが条件でした。令和6年度は「株式会社MotionGallery(MOTION GALLERY)」が指定されていました。他のクラウドファンディングサイトを使った場合は補助対象になりません。
次に似た制度が出たときの備え方
令和6年度分は終了していますが、次に似た制度が出た場合に備えて準備できることを整理します。
- 保全したい観光施設・技術が「概ね築50年以上」の要件を満たすか確認しておく
- CFプロジェクトの目標調達額と、それに伴う手数料の見込み額を試算しておく。 手数料の2/3、上限100万円という計算式に当てはめられるようにしておくとスムーズです
- 目標調達額を達成できる見込みが立つまで、CFサイトへの掲載を待つ。 交付申請と掲載開始の順序を誤ると補助対象から外れます
- GビズIDを取得しておく。 電子申請(Jグランツ経由)にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行に2〜3週間かかります
よくある質問
令和6年度分にはもう申請できませんか?
できません。受付は2025年1月31日必着で終了しています。
既にクラウドファンディングを始めてしまった場合は申請できますか?
できません。交付申請はCFサイトへの掲載前に行う必要があり、既に掲載済みのプロジェクトは補助対象外とされていました。
目標調達額に届かなかった場合はどうなりますか?
補助対象になりません。「CFサイト掲載時に設定した目標調達額を達成していること」が補助金交付の要件の一つで、未達成の場合は「変更等承認申請書」を提出して事業を中止する扱いになります。
