2020年、改正健康増進法が全面施行されました。屋内は原則禁煙となり、事業者には喫煙者・非喫煙者双方への配慮が求められています。千代田区は丸の内・秋葉原・神田など、就業者・来街者の多いエリアを抱えています。路上喫煙対策と受動喫煙防止の両立が課題です。「公衆喫煙所設置助成事業」は、この課題に応える制度です。

対象になるのは、誰もが無料で使える公衆喫煙所を設置する事業者です。ビルオーナーや飲食店が分煙スペースを整える際の有力な選択肢になります。助成額は、新規設置費用が上限700万円です。維持管理費は年間最大264万円(重点地域は408万円)です。

助成の対象は「公衆喫煙所」に限られます。自店の客だけが使う喫煙室とは、目的が違うからです。誰でも使える場所を増やすことで、区全体の受動喫煙対策につなげる狙いがあるとみられます。

なぜ千代田区はこの助成を用意しているのか

2020年4月の改正健康増進法全面施行と東京都受動喫煙防止条例により、多くの飲食店・オフィスビルで屋内は原則禁煙となり、喫煙者・非喫煙者双方への配慮が事業者に求められるようになりました。千代田区は丸の内・秋葉原・神田など就業者・来街者が多いエリアを抱え、路上喫煙対策と受動喫煙防止を両立させる必要があります。

そこで区は「喫煙者と非喫煙者の共生を図る」ことを目的に、誰でも無料で利用できる公衆喫煙所の設置・維持管理にかかる経費を助成する仕組みを設けています。ビルの空きスペースを活用して公衆喫煙所を設ければ、テナント・近隣飲食店の受動喫煙対策に貢献しつつ、区からの継続的な助成も受けられる形です。

対象になるのはどんな人・どんな喫煙所か

助成対象者の範囲は広く設定されています。

  • 法人・団体・個人のいずれでも対象(業種は問わない)
  • ただし国、行政法人、地方公共団体、公社、鉄道事業者等の公共的団体は対象外
  • 喫煙所の設置場所が千代田区内であれば、区外に所在する事業者・区外に居住する人でも申請可能

対象となる喫煙所は「屋内公衆喫煙所」と「屋外公衆喫煙所(コンテナ型喫煙所)」の2種類です。次の要件をすべて満たす必要があります。

  • 運営: 誰もが無料で利用できる(会員登録不要)/おおむね1日8時間以上かつ週5日以上運営/近隣の居住者・テナント・町会等から了解を得る/運営開始後最低5年間は継続運営する/法令に抵触せず公序良俗に反しない形態・運営であること
  • 設置場所: 公道に面する建物の1階に設置(満たさない場合でも道路から見える場所に案内表示をすれば対象になり得る)/受動喫煙防止に十分配慮した場所/設置により周辺の生活環境改善が見込まれる場所
  • 設備: 室外から室内へ向かう風速0.2メートル毎秒以上を確保/給排気設備を設け室内の空気を屋外へ排気/出入口に扉を設け壁・天井で室外と完全に区画
  • 標識: 喫煙目的の場所であることが分かる標識、20歳未満の立入り禁止を示す標識をそれぞれ掲示

重要なのは、この制度が対象にしているのは「誰でも無料で使える公衆喫煙所」だという点です。従業員や自店の客だけが使う喫煙専用室はこの要件を満たさないため対象外になり得ます。飲食店の店舗の一部を仕切って併設する形でも対象にはなりますが、その場合店舗で使う備品購入費や店舗部分の賃料など、喫煙所の運営に直接関係のない費用は対象外です。喫煙所内への自動販売機設置や広告事業(ポスター掲示等)は認められています。

助成率・上限額はいくら?4種類の経費で整理する

助成対象経費は「設置経費(新規)」「設置経費(更新)」「維持管理経費」「地域共生経費」の4種類に分かれます。

助成対象経費助成率助成限度額回数・期間
設置経費(新規)100%700万円原則1回限り
設置経費(更新・5年経過後の修繕/取替)100%300万円5年に1回(再申請可)
維持管理経費賃料・賃料相当額は100%/その他80%年額264万円(重点地域は年額408万円)年1回(再申請可)
地域共生経費100%200万円原則1回
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  • 設置経費(新規)の対象例: 内装改修工事費用(給排気設備の取付工事等)、防犯カメラ設置費用、空気清浄機・灰皿等の備品購入費用
  • 設置経費(更新)の対象例: 運営開始から5年経過後の設備の修繕・取替にかかる費用(内装改修工事、空気清浄機・灰皿等の買い替え)。更新経費の助成を受けた場合、そこからさらに5年間の継続運営が必要
  • 維持管理経費の対象例: 賃料(または賃料相当額)、水道光熱費、空気清浄機等の保守費用、清掃・ごみ処理委託費用
  • 地域共生経費の対象例: 区が実施する環境測定結果や運営状況、周辺地域の状況等から総合的に勘案し、喫煙所と周辺地域との共生に資すると認められる経費

なお、賃料に清掃費・水道光熱費等の管理費が含まれていて内訳が明確でない場合、維持管理経費の助成率は80%になります。年度の途中で喫煙所を設置した場合は月割計算です。

さらに重要なのは、5年間の運営継続ができなかった場合は助成金の一部を返還しなければならないという点です。設置経費700万円という金額の大きさに惹かれて申請する前に、5年以上その場所で公衆喫煙所を運営し続けられるか(賃貸借契約の期間、テナント入れ替えの見込みなど)を必ず確認しておく必要があります。

令和8年5月から秋葉原・神田エリアは助成が拡充

千代田区は令和8年5月1日から秋葉原・神田エリアの一部を「重点地域」に指定し、重点地域内に設置する公衆喫煙所について維持管理経費の助成上限を引き上げました。

区分維持管理経費の年額上限
重点地域以外(区内全域)264万円
重点地域(秋葉原・神田エリアの一部)408万円
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重点地域では開放時間についても一定の拡充要件が設けられています。令和8年4月1日以降に発生した経費が拡充の対象で、新規設置経費(700万円枠)は拡充の対象外、あくまで維持管理経費のみが拡充される点に注意してください。秋葉原・神田エリアで店舗やビルを構える事業者は、対象地域に該当するかを千代田区の指定地域一覧で確認する価値があります。

申請の流れと必要書類——まず「事前相談」が必須

千代田区の公衆喫煙所設置助成は、事前に必ず区(安全生活課)へ相談したうえで申請書類を提出する流れになっています。工事契約や物件の賃貸借契約を進める前に、設置予定場所が要件(公道に面する1階、風速確保の見込みなど)を満たせそうかを相談しておくと手戻りが少なくなります。

設置経費の申請で必要になる主な書類は次のとおりです。

  1. 助成金交付申請書(第1号様式)
  2. 設置・運営計画書(第2号様式)
  3. 建物の登記事項証明書(所有物件の場合・発行後3か月以内)または賃貸借契約書の写し(賃借物件の場合)
  4. 見積書(工事・備品等、2社以上。内訳が明記されたもの)
  5. 設置場所周辺の地図、公衆喫煙所の図面
  6. 風速0.2メートル毎秒以上を確保できることが分かる書類(計算書類等)
  7. 生活環境条例の遵守確認書
  8. 国その他団体からの補助金等の支援状況が分かる書類(受けていない場合は誓約書)
  9. 近隣の居住者・テナント・町会等からの同意書

申請から交付決定、工事完了を経て実績報告に至るまで、それぞれの段階でおおむね数週間〜1か月程度の期間がかかる想定で計画しておくと安心です。

維持管理経費は、助成金交付申請書と維持管理費用の内訳が分かる書類(清掃委託契約書、空気清浄機メンテナンス契約書等)を添えて申請します。前払いを選ぶ場合は年度始めに申請書を提出する必要がある点も押さえておきましょう。

東京都の受動喫煙対策助成との違い・使い分け

東京都も別途、飲食店・宿泊施設向けの受動喫煙対策支援策を用意しています。

  • 東京都保健医療局「受動喫煙対策支援補助金」: 都内の中小飲食店・宿泊施設を対象に、喫煙専用室の設置等にかかる経費の一部を助成
  • 東京都中小企業振興公社「飲食事業者向け経営基盤強化支援事業(受動喫煙防止対策支援助成金)」: 同じく受動喫煙防止のための設備投資等を支援

千代田区の公衆喫煙所設置助成事業は「誰でも無料で使える公衆喫煙所」を対象にしている点が最大の違いです。自店の客・従業員だけが使う喫煙専用室を設けたい飲食店は、千代田区の助成の要件(誰でも無料利用)を満たさない可能性があるため、その場合は都の受動喫煙対策の助成が候補になります。逆に、ビル所有者やテナントが公道に面する1階スペースなどで公衆が使える喫煙所を作る場合は、千代田区の助成の方が上限額(設置700万円・維持管理年264万〜408万円)が大きく候補になり得ます。どちらの制度が自社のケースに合うかは、設置しようとしている喫煙所が「誰でも無料で使えるもの」か「自社利用の専用室」かで整理すると判断しやすくなります(併用可否・詳細要件は必ず両制度の窓口で確認してください)。

店舗の改装は国の補助金が使えることもあります。あわせてこちらの記事で解説しています。

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分煙スペースの内装改修や什器購入は、小規模事業者持続化補助金の「販路開拓」の取組として対象経費に含められる場合があります。千代田区の助成と組み合わせられれば自己負担をさらに圧縮できる可能性がありますが、併用可否は必ず両制度の最新要領で確認してください。

公衆喫煙所の設置以外にも自社が対象になる補助金・助成金がないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。

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5年間の運営継続要件や、東京都の助成との使い分け、重点地域の該当有無など判断に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。

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よくある質問

飲食店が自店の喫煙専用室を作る場合も対象になりますか?

この助成の対象は「誰でも無料で利用できる公衆喫煙所」です。自店の客・従業員だけが使う喫煙専用室は「誰もが無料で利用できる」要件を満たさない可能性が高く、対象外になり得ます。店舗の一部を仕切って公衆喫煙所を併設する形であれば対象になりますが、その場合も店舗で使う備品費や店舗部分の賃料は助成対象外です。自店専用の喫煙室を検討している場合は、東京都の受動喫煙対策支援補助金など別制度の対象になるか確認することをおすすめします。

屋外に設置するコンテナ型の喫煙所でも申請できますか?

できます。この制度は「屋内公衆喫煙所」だけでなく「屋外公衆喫煙所(コンテナ型喫煙所)」も対象にしています。屋外設置の場合、申請書類の一部(登記事項証明書等)の扱いが異なる可能性があるため、事前相談の段階で千代田区安全生活課に設置形態を伝えて確認するとスムーズです。

区外の会社が千代田区内にビルを持っている場合も申請できますか?

申請できます。助成対象者は「喫煙所の設置場所が千代田区内であれば、区外に所在する事業者や区外に居住する方でも助成を受けることができる」と明記されています。ただし国、行政法人、地方公共団体、公社、鉄道事業者等の公共的団体は対象外です。


免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。助成率・上限額・対象経費・申請要件・重点地域の指定範囲や運営時間要件は変更される場合があるため、申請前に必ず千代田区の公式ページおよび最新の要綱でご確認ください。

出典: