卵子凍結の助成金と聞くと、凍結費用を本人が受け取る制度を思い浮かべるかもしれません。この奨励金を受け取るのは従業員ではなく、休暇制度や福利厚生制度を整えた企業です。休暇制度の整備に20万円、費用補助の福利厚生制度の整備に40万円が、定額で出ます。
令和8年度は、事前エントリー(7月21日〜29日)も交付申請の締切(8月21日)も終わっています。申請できたのは、事前エントリーの抽選を通った企業だけでした。次の募集があるかどうかは、公式ページに記載がありません。
ここからは次の募集に備えて、どんな企業が対象になるか、何を整えるかを順に見ていきます。
卵子凍結に係る職場環境整備奨励金の要点まとめ
正式名:卵子凍結に係る職場環境整備奨励金
だれが
- 申請者
- 事業者(都内で事業を営む企業・法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(風俗営業等は対象外)
- 利用目的
- 卵子凍結のための休暇制度・福利厚生制度の整備
- 対象地域
- 東京都内
- 従業員数
- 都内勤務の常用労働者2人以上(うち40歳未満の女性1人以上)
いくら
- 補助上限額
- 40万円(福利厚生制度の整備)。休暇制度の整備は20万円
- 補助率
- 定額
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年8月21日まで(事前エントリーは7月29日まで。終了)
- 事業の完了
- 2026年9月29日〜12月28日の奨励事業実施期間内
うちの会社は対象になる?
奨励金の対象は「卵子凍結のための制度を整えた企業」です。次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 従業員が全員男性である
- ✕ 過去にこの奨励金を申請した
- ✕ 卵子凍結の休暇制度がすでにある
常用労働者は期間の定めなく雇われている人か、1年を超えて雇われる見込みの有期雇用の人のことです。役員は含まれません。40歳未満の女性従業員は都内勤務の常用労働者で、雇用保険に入っている人が当てはまります。社内相談員(制度の相談を受ける人)にも2人の任命が必要で、うち1人は女性です。
就業規則の届出は、常用労働者が10人未満の事業所でも必要です。過去に「働く女性のライフ・キャリアプラン応援事業制度整備助成金」へ申請した企業は、この奨励金を申請できません。ただしその助成金で休暇制度のみを整えて受給し運用している場合は、福利厚生制度の整備事業だけ申請できます。
いくら出る?
奨励金は、制度の整備に対する定額です。事業は2つあります。
| 事業 | 金額 | 申請のしかた |
|---|---|---|
| 休暇制度等整備事業 | 20万円 | 単独で申請できる |
| 福利厚生制度整備事業 | 40万円 | 休暇制度と同時に申請するか、過去に休暇制度のみを実施して運用している場合に単独で申請できる |
- 休暇制度だけを整える:20万円 × 1事業 = 20万円
- 過去に休暇制度のみを実施済みで、福利厚生制度だけを整える:40万円 × 1事業 = 40万円
- 休暇制度と福利厚生制度を同時に申請する:事業ごとに上の2つの額
2つを同時に申請したときの合計額は、募集要項に書かれていません。合計60万円になるのかは、窓口の担当者に確かめるのが確実です。また、福利厚生制度で従業員に補助する卵子凍結の費用は企業の負担です。奨励金は、制度を整えたことに対する定額です。
何を整える?
奨励金は、募集要項の「取組事項」をすべて実施した企業に出ます。休暇制度の条件を先に見ます。
- 年5日以上の休暇とする
- 連続して取るか、分けて取るかを選べるようにする
- 休暇の期間の始まりと終わりを決める
- 取得したことで、昇給や賞与で不利に扱わない
- 期間を限った制度にしない
福利厚生制度の条件は次のとおりです。
- 採卵準備の投薬、採卵、卵子凍結の費用を補助の対象に含める
- 東京都の登録医療機関の利用を必須にする
- 所得による制限をつけない
- 正社員を必ず対象にする
休暇制度の事業では休暇のほかに、卵子凍結を理由に使えるテレワーク制度等(モバイルワーク・サテライトオフィス勤務・在宅勤務・フレックス制・時差勤務のうち1つ以上)も定めます。すでに要件を満たす制度があり就業規則に定めてあれば、新たに整える必要はありません。
どちらも就業規則に定めて、労働基準監督署へ届け出ます。届出と施行は、奨励事業実施期間(2026年9月29日〜12月28日)の中に行います。施行日だけは、実施期間の終了の翌月1日でも認められます。実施期間より前に届け出ると、対象外になります。
そのほか社内説明会は業務時間内に開き、東京都の資料を使います。都内勤務の従業員が30人以下の会社は全員、30人を超える会社は30人以上の出席が必要です。
申請の流れ
次の順番で進みます。奨励事業は、すべて終わってから審査されます。
- 事前エントリーをする(企業の担当者→東京都。7月21日10時〜7月29日17時。抽選で予定30社)
- 結果を受け取る(東京都→企業。受付最終日から3開庁日以内にメール)
- 交付申請をする(企業→Jグランツ。8月21日17時まで。GビズIDプライムが要る)
- 奨励事業を実施する(企業。9月29日〜12月28日。意向調査・相談員の任命・制度の整備と届出・説明会・理解度チェック)
- 実績報告を出す(企業→東京都。1月19日17時まで)
- 奨励金を受け取る(東京都→企業。確定通知の約1か月後)
事前エントリーは、企業の担当者本人が入力します。代理人の入力は無効になります。交付申請のあとに書類の差し替えや追加はできません。GビズIDプライムは、国の電子申請に共通で使うIDです。デジタル庁の審査があって発行に時間がかかるため、早めの取得が勧められています。
必要な書類
交付申請で出す主な書類です。全一覧は募集要項の別表2にあります。
準備できた 0 / 12
履歴事項全部証明書は、発行から3か月以内のものです。個人事業主は、開業届の写しと住民票を出します。都外に本店がある場合や本店が事業の実態のない場所にある場合は、水道光熱費の領収書や賃貸借契約書などで、都内で事業を営んでいることを示します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 実施期間より前に始めた:奨励事業は、決められた実施期間の中で行います。期間より前の開始や、期間の延長はできません。
- 社内相談員がいなくなった:退職や休業で、社内相談員が不在の期間ができると対象外です。交付申請から事業の完了まで続きます。
- 説明会の条件を外した:東京都が出す資料を使わなかった場合や、業務時間外に開いた場合、出席人数が足りない場合は、説明会を開いても対象外です。
- 書類が期限までにそろわなかった:提出後の差し替えや、期限後の追加はできません。そろわない場合は対象外になります。
- 事業を途中でやめた:交付決定のあとに中止すると、理由にかかわらず再度の申請はできません。
- ヒアリングや追加書類に応じなかった:審査で求められた書類や、ヒアリング・現地調査に応じないと対象外です。
融資や公表のことも知っておく
奨励金の取り組みを実施した中小企業は、東京都中小企業制度融資の「女性活躍推進融資(TOKYOウィメン・ビズ・サポート)」の対象になります。信用保証料の3分の2の補助や、利率の優遇が受けられます。制度融資での中小企業の定義は、この奨励金とは異なります。
奨励金の額が確定したあと東京都のホームページで企業名、業種、従業員数、交付年度などが公表されます。公表への同意は、申請の要件のひとつです。
同じ理由で国・東京都・区市町村の別の補助金を受けている場合は、この奨励金を受けられません。
よくある質問
従業員が実際に卵子凍結をしていなくても申請できますか?
申請できます。奨励金の対象は、休暇制度や福利厚生制度などの「整備」です。募集要項の要件にも、従業員が実際に卵子凍結を行ったことは入っていません。反対に制度を整えたあとに社内説明会を開き、理解度チェックまで行うことが取組事項に含まれています。制度を作るだけでは足りず、社内への周知までが対象です。
男性従業員しかいない企業は対象になりますか?
対象になりません。社内相談員には、必ず女性を1人以上任命する必要があります。あわせて、申請日時点で40歳未満の女性従業員を1人以上雇っていることも要件です。従業員がすべて男性の企業は、要件を満たさないものとされています。女性従業員がいても40歳以上の人だけの場合は、40歳未満の要件に当てはまりません。
従業員が2人だけの会社でも申請できますか?
申請できる可能性があります。要件は、都内に勤務する常用労働者が2人以上いることです。社内相談員にも常用労働者2人(うち1人は女性)を任命するため、2人の会社はその2人がそのまま相談員になる形です。役員は労働者に含めません。ただし兼務役員としてハローワークに認められている場合は、書類を出せば労働者として数えます。
すでに卵子凍結の休暇制度がある場合はどうなりますか?
休暇制度等整備事業は申請できません。就業規則の本則や付属規程にすでに卵子凍結のための休暇制度が書かれていると、実際に使われていなくても「導入済み」とみなされます。一方で過去にこの奨励金や前身の助成金で休暇制度のみを整えて受給し、運用している場合は、福利厚生制度整備事業だけを単独で申請できます。
休暇は何日以上にすればよいですか?
従業員1人あたり年5日以上です。休暇の基準となる期間(1月1日〜12月31日など)の始まりと終わりも、就業規則に書きます。連続して取る方法と、分けて取る方法の両方を認めます。有給か無給かは問われませんが、はっきり定めます。休暇を取ったことで昇給や賞与の査定で不利に扱うことはできません。
福利厚生制度では、どんな費用を補助すればよいですか?
採卵準備のための投薬、採卵、卵子凍結にかかった費用は、必ず補助の対象に含めます。補助は金額でも、補助率でも定められます。東京都の登録医療機関の利用を必須にすることも要件です。年齢の上限をつける場合は40歳未満を下回らないようにします。モデルケースとして、1人あたり上限20万円が示されています。
就業規則は、従業員が10人未満でも届け出が必要ですか?
必要です。この奨励金では常用労働者が10人未満の事業所も、管轄の労働基準監督署に就業規則を届け出ていなければ申請できません。本則のほかに賃金規程などの付属規程がある場合は、すべてあわせて届け出ます。都外に本社がある場合は都内の事業場を管轄する署に届け出るか、本社でまとめて届け出ます。
申請は代理人に頼めますか?
事前エントリーは、企業の担当者本人が入力します。代理人が入力すると無効です。交付申請は社会保険労務士や行政書士など、法令に基づいて行う人に限り代行が認められます。Jグランツでは、GビズIDで委任の設定をしていないと代理申請になりません。ただし都は申請企業が作った書類として審査し、連絡も企業の担当者としか取りません。
Jグランツで検索しても申請ページが出ないのはなぜですか?
この奨励金は限定公開で、Jグランツで検索しても表示されません。申請できる企業に確定した連絡のメールで、申請ページのアドレスが知らされます。申請には、GビズIDのプライムアカウントが要ります。デジタル庁の審査があり、取得に時間がかかります。期限の延長はないので、早めの取得が勧められています。
奨励金はいつ振り込まれますか?
奨励金の交付額の確定通知書が送られてから、1か月程度です。実績報告の期限は1月19日の17時で、その報告を審査して額が確定します。振込先は、申請時に出す支払金口座振替依頼書に書いた口座です。確定通知の前に実施した取組の写真や理解度チェックの集計結果なども、実績報告として出します。
抽選に外れたら、次の年にまた申請できますか?
公式ページには、次の募集があるかどうかの記載がありません。要件としては、過去にこの奨励金を申請したことがないことが挙げられています。事前エントリーで抽選に外れた場合に、その企業が「申請した」と数えられるかも、公式ページでは確認できませんでした。次の募集の案内が出たとき、労働環境課や窓口へ確かめてください。
問い合わせ先はどこですか?
申請については、はたらく女性スクエア(東京都労働相談情報センター青山事務所)の卵子凍結に係る職場環境整備奨励金担当です。電話は03-6427-7260です。事業全体については東京都産業労働局雇用就業部の労働環境課 女性活躍推進担当で、電話は03-5320-4645です。事前エントリーに関する問い合わせは、エントリーした担当者のみ受け付けられます。
