障害のある契約社員を正社員にしたいとき、使えるのがこの助成金です。中小企業なら1人につき最大120万円。ただし、転換する日の前日までにキャリアアップ計画を労働局へ出していないと、対象になりません。
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)の要点まとめ
正式名:キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(障害のある労働者を正社員などに転換する事業主)
- 対象業種
- 全業種
- 利用目的
- 障害のある有期・無期雇用労働者の正社員化
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(中小企業と大企業で支給額が異なる)
いくら
- 補助上限額
- 120万円(支給対象者1人あたり)
- 補助率
- 定額(詳細は本文の表を参照)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 締切の記載なし(計画書は転換日の前日までに提出)
うちの会社と従業員は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たる人は、対象外です。
- ✕ 就労継続支援A型の利用者
- ✕ 事業主や取締役の3親等以内の親族
- ✕ 正社員で雇う前提で採用した人
- ✕ 同じ人が以前に助成の対象になった
補足を4点です。キャリアアップ管理者は、有期雇用労働者などのキャリアアップに取り組む担当者のことで、複数の事業所や労働者代表との兼任はできません。「転換前の別の規定」とは、契約社員やパートの賃金の額や計算方法が、就業規則などで正社員と別に決まっている状態です。有期雇用労働者は契約期間に定めのある人、無期雇用労働者は期間の定めはなくても、正社員に適用される労働条件が適用されていない人を指します。以前に助成の対象になった人は、正社員化コース(有期から正規への転換)か、この障害者正社員化コースの支給を受けた人です。転換の形によっては、これらの支給を受けた人が対象外になります。
対象の障害は、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病、高次脳機能障害です。転換した日の時点で、このどれかに当たる必要があります。
転換先の正社員は、賞与または退職金の制度と昇給が就業規則に定められている正社員に限ります。「賞与は支給しない」「賞与の支給は会社業績による」と書かれた規定は対象外です。
いくらもらえる?
支給額は、転換の形と障害の種類で決まります。1年を最初の6か月(第1期)と次の6か月(第2期)に分け、2回に分けて支給されます。
| 転換の形 | 重度身体・重度知的・精神 | 重度以外の身体・知的、発達、難病、高次脳機能 |
|---|---|---|
| 有期雇用 → 正規雇用 | 120万円(60万円 × 2期) | 90万円(45万円 × 2期) |
| 有期雇用 → 無期雇用 | 60万円(30万円 × 2期) | 45万円(22.5万円 × 2期) |
| 無期雇用 → 正規雇用 | 60万円(30万円 × 2期) | 45万円(22.5万円 × 2期) |
上の表は中小企業の額です。大企業は、重度身体・重度知的・精神で90万円・45万円・45万円、それ以外で67.5万円・33万円・33万円になります。
- 契約社員の精神障害のある人を、正社員にする:60万円 × 2期 = 120万円
- 契約社員の発達障害のある人を、正社員にする:45万円 × 2期 = 90万円
- 契約社員の発達障害のある人を、無期雇用にする:22.5万円 × 2期 = 45万円
- 大企業が、精神障害のある契約社員を正社員にする:45万円 × 2期 = 90万円
有期雇用から無期雇用への転換は、転換後の1週間の所定労働時間が20時間以上の場合に限ります。支給額が、その期の賃金の総額を超えるときは、賃金の総額が上限になります。短時間勤務の人を転換する場合は、表の額に届かないことがあります。
この助成金は、正社員化コースの支給申請の上限人数には数えられません。
申請の流れ
- キャリアアップ管理者を決める(事業主→事業所ごとに1人)
- キャリアアップ計画書を出す(事業主→管轄の労働局→転換日の前日まで)
- 本人の同意を得て、就業規則に基づき転換する(事業主→対象の労働者)
- 転換後6か月分の賃金を払う(事業主→対象の労働者。転換前より下げない)
- 第1期を申請する(事業主→労働局→6か月分の賃金を払った日の翌日から2か月以内)
- 次の6か月分の賃金を払い、第2期を申請する(同じく払った日の翌日から2か月以内)
キャリアアップ計画書は、計画期間(3年以上5年以内)、対象者、目標、実施する措置を書いて出します。有期雇用労働者などを含む全従業員の代表の意見を聴く必要もあります。厚生労働省のパンフレットは、確認に時間がかかることがあるため、転換の1か月前など余裕をもった提出を勧めています。転換日の前日が土日・祝日・12月29日から1月3日に当たるときは、その翌日が期限です。
第1期の申請で不支給になると、第2期は申請できません。
必要な書類
準備できた 0 / 11
事業所確認票は中小企業事業主のみで、登記事項証明書などで代えられます。支払方法・受取人住所届は、口座が未登録か変更するときだけで、通帳の写しなど口座が分かる書類も付けます。代理人が申請するときは委任状(原本)も要ります。第2期の添付書類は、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿の3つで足ります。賃金台帳と出勤簿は、第1期は転換前の6か月分も要ります。障害を示す書類は障害の種類で異なります。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の写し、または医師の診断書などです。
不支給になるのはどんなとき?
- 計画書が転換のあとになった:計画書は転換の前日までに労働局へ出します。転換してから出しても対象外です。
- 転換後の賃金を下げた:転換後6か月の賃金を、転換前6か月より減らすと支給されません。比べる賃金には、通勤手当や時間外手当のような変動する手当は含みません。
- 事業主都合で離職させた:転換日の前日の6か月前から1年を経過する日までに、解雇など事業主都合で雇用保険の被保険者を離職させた事業主は対象外です。
- 定年まで1年未満だった:転換後の雇用形態に定年があるときは、転換日から定年までが1年以上ないと対象外です。
- 試用期間を付けた:転換後に試用期間を付けると、試用期間が終わった翌日が転換日になります。試用期間は転換の前に済ませます。
- 申請期間を過ぎた:賃金を払った日の翌日から2か月以内が期限です。第1期、第2期とも同じです。
- 不正受給になった:支給後に分かると返還になり、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金がかかります。
併用と注意点
同じ対象労働者について、65歳超継続雇用推進助成金(高年齢者無期転換コース)の支給を受けた事業主には、この助成金は支給されません。同じ行為や同じ経費に2つ以上の助成金を申請した場合も、片方しか支給されないことがあります。
「100%受給できる」「診断と査定は無料」と一方的に勧誘する業者に、厚生労働省は注意を呼びかけています。厚生労働省や労働局が関与している事実はないと、パンフレットに書かれています。
よくある質問
障害者手帳がない人も対象になりますか?
手帳がなくても、診断書などで確認できれば対象になることがあります。身体障害は指定医か産業医の診断書、発達障害と高次脳機能障害は医師の診断書です。精神障害は、統合失調症、そううつ病、てんかんなら主治医の診断書で足ります。それ以外の精神障害は手帳の写しが必要です。難病は医療受給者証などで確認します。書類の組み合わせは障害ごとに決まっているため、転換の前に労働局で確かめてください。
パートから正社員にした場合も「有期から正規」ですか?
パートでも契約期間に定めがあれば、有期雇用労働者に当たり、正社員への転換は「有期雇用から正規雇用」です。ただし、転換前に6か月以上、正社員と賃金の額や計算方法が異なる就業規則などの適用を受けていることが条件です。就業規則に「個別の雇用契約書で定める」としか書かれていない場合は、差が確認できず対象外になります。
無期雇用から正社員への転換も対象ですか?
対象です。中小企業で重度身体・重度知的・精神の人は60万円、それ以外の人は45万円です。ここでいう無期雇用労働者は、期間の定めはなくても、正社員に適用される労働条件が適用されていない人を指します。正社員との違いが就業規則などに書かれていることが、有期雇用の場合と同じく求められます。
短時間正社員への転換でも使えますか?
使えます。勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員の3つは「多様な正社員」と呼ばれ、正規雇用労働者に含まれます。ただし、多様な正社員の区分を就業規則などに規定している必要があります。また短時間正社員は、時間あたりの基本給や賞与、退職金が通常の正社員と同等であることが条件です。
転換後に賃金を下げてもよいですか?
下げられません。転換後6か月の賃金は、転換前の6か月より減らしてはならず、第2期の申請でも、第1期から合理的な理由なく引き下げていないことが条件です。原則として、所定労働時間1時間あたりの賃金で比べます。基本給と定額の手当は含み、通勤手当や時間外手当、歩合給のように月ごとに変わる手当は含みません。
家族を正社員にした場合も対象ですか?
事業主や取締役の3親等以内の親族は対象外です。3親等以内には、血族のほか、配偶者と姻族も含まれます。経営者の家族の障害者を雇用している場合は、転換しても支給されません。親族以外の従業員でも、正社員で雇う前提で採用した人や、転換前の3年以内に正社員だった人は対象外になります。
就労継続支援A型の利用者は対象ですか?
対象外です。就労継続支援A型事業の利用者は、対象となる労働者の要件から除かれています。A型の事業所から一般の雇用へ移った人の扱いについては、厚生労働省のパンフレットに記載がありません。該当しそうなときは、転換の前に管轄の労働局へ確かめてください。計画書の提出も転換の前日までなので、確認は早めにしておくと安心です。
何人まで申請できますか?
この助成金は、キャリアアップ助成金の正社員化コースにある支給申請の上限人数には数えられません。ただし、障害者正社員化コース自体の人数の上限は、パンフレットに書かれていませんでした。複数人を続けて転換するときは、1人ごとに要件を満たす必要があります。人数が多い場合は、先に労働局へ確認すると確実です。
中小企業はどう判定されますか?
業種ごとに資本金と常時雇用する労働者数の上限があります。小売業(飲食店を含む)は5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、その他の業種は3億円以下または300人以下です。資本金などのない事業主は、労働者数で判定します。
申請の窓口と問い合わせ先はどこですか?
事業所の所在地を管轄する都道府県労働局です。ハローワークを通じて出せる場合もあります。郵送もできますが、期限内に労働局へ届く必要があります。書き方に迷うときは、最寄りの労働局かハローワークに聞きます。パンフレットの20ページに、都道府県労働局の一覧があります。
試用期間は設けてもよいですか?
転換後に試用期間を設けると、試用期間が終わった翌日が転換日になり、賃金を比べる期間や申請の期限もそこから数えます。パンフレットは、適性の見極めや訓練は転換前の取り組みの中で行い、正社員になってから試用期間を設けないよう注意しています。試用期間を設ける予定があるときは、転換日の考え方を労働局で確かめてください。
