退職金制度を自社で作ると、規程づくりも積み立ての管理も自分でやることになります。中小企業退職金共済制度(中退共)なら、国の共済に掛金を払うだけで退職金制度が持てて、初めて加入する事業主は、掛金の1/2(1人あたり月5,000円まで)を加入後4か月目から1年間、国が助成します。
助成は現金で振り込まれるものではなく、毎月の掛金から差し引かれる形です。対象は業種ごとの規模の基準に収まる中小企業の事業主で、申込みは随時、金融機関などの窓口で受け付けています。
中小企業退職金共済制度の要点まとめ
正式名:中小企業退職金共済制度(中退共)
だれが
- 申請者
- 中小企業の事業主(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種指定なし(業種ごとに規模の基準あり)
- 利用目的
- 従業員の退職金制度づくり、掛金の助成
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 業種ごとに50〜300人以下(資本金でも可)
いくら
- 補助上限額
- 新規加入は1人あたり月5,000円まで(1年間)
- 補助率
- 新規加入は掛金の1/2、月額変更は増額分の1/3
いつ・どこへ
- 申請受付
- 随時(公式ページに締切の記載なし)
- 公式サイト
- 中小企業退職金共済事業本部(中退共)
うちの会社は加入できる?助成は出る?
加入できるのは、業種ごとに決まった規模に収まる中小企業者です。資本金・出資金か常用従業員数のどちらか一方が基準以内なら該当します。個人企業や公益法人等は、常用従業員数で見ます。
| 業種 | 常用従業員数 | または資本金・出資金 |
|---|---|---|
| 一般業種(製造業など) | 300人以下 | 3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
助成の対象になるのは、次の3つにすべて当てはまる場合です。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 3
次のどれかに当たると、新規加入の助成は出ません。
- ✕ 同居の親族だけを雇っている
- ✕ 社会福祉施設職員等退職手当共済に加入
- ✕ 加入済みで掛金を変えていない
ほかにも、適格退職年金制度から移行してきた事業主、解散存続厚生年金基金から資産移換の申出を希望する事業主、特退共事業を廃止した団体から資産引渡の申出を行う事業主、合併等に伴い企業年金から資産移換の申出を行う事業主などが対象外とされています。心当たりがあれば、申込みの前に中退共本部に確かめてください。
事業主と生計が同じ同居の親族も、小規模企業共済制度に加入しておらず、従業員としての実態を確認できる書類を出せば、加入そのものはできます。助成が出ないのは、雇っているのが同居の親族だけの場合です。
いくら戻ってくる?
助成は2種類あります。
- 新規加入助成:初めて加入する事業主に、掛金月額の1/2(1人あたり上限5,000円)を、加入後4か月目から1年間
- 月額変更助成:掛金月額を増やしたときに、増額分の1/3を、増額した月から1年間
月額変更助成は、増額する前の掛金月額が18,000円以下の場合です。20,000円以上の掛金月額からの増額は対象外です。掛金月額は16種類(5,000円〜18,000円の次は20,000円)から選ぶ決まりで、18,000円と20,000円の間の額はありません。
助成が出るのは、新しく加入したときと、掛金を増やしたときの2つの場面だけです。毎月の掛金は、助成額が引かれた金額で口座から振り替えられます。
計算例です。
- 掛金月額6,000円 × 1/2 = 3,000円(月)。1年で36,000円
- 掛金月額12,000円 × 1/2 = 6,000円 → 上限の5,000円(月)。1年で60,000円
- 掛金月額3,000円のパート従業員 × 1/2 = 1,500円 + 特例の上乗せ400円 = 1,900円(月)
- 掛金月額を10,000円から14,000円に増額:4,000円 × 1/3 = 1,333円 → 1,330円(月)。10円未満は切り捨て
短時間労働者の特例掛金(掛金月額4,000円以下)には、新規加入助成の上乗せがあります。掛金月額2,000円なら300円、3,000円なら400円、4,000円なら500円です。
加入の流れ
申込みに期限はありません。いつでも出せます。
- 従業員の同意を取る(事業主→従業員。加入させる人ごと)
- 掛金月額を決める(事業主。従業員ごとに)
- 申込書と口座振替依頼書を書く(事業主。申込書は窓口かPDFで入手。同居の親族のみを雇う事業所かどうかも申込書で申し出る)
- 添付書類を確かめる(事業主。規模などで要らない場合もある)
- 窓口に出す(事業主→金融機関か委託事業主団体。申込金は不要)
窓口に出した日が、契約が成立した日になります。契約日を指定して、前もって出すことはできません。掛金は契約成立日の属する月分から請求され、毎月18日(休業日なら翌営業日)に口座から振り替えられます。審査が済むと、中退共本部から従業員ごとの退職金共済手帳が届きます。通常は申込みから1か月ほどで、書類に不備があると1か月半以上かかることがあります。
原則として、従業員は全員を加入させます。期間を定めて雇う人、季節的業務の人、試用期間中の人、短時間労働者、休職中の人、加入に反対の人などは、この原則から外れます。
新規加入助成のために、申込書とは別の申請書を出す必要は、公式ページに書かれていません。申込書の記入要領には、従業員の代表者が意見を記入して署名する欄があることが書かれています。助成は現金で支給されず、掛金から差し引かれる形で行われます。
掛金月額を増やすときは、手帳の「掛金月額変更申込書」を、増額したい月の前月15日までに封書で中退共本部の保全課へ送ります。電子申請もできます。掛金を前納している月分は増額できません。
必要な書類
準備できた 0 / 4
中小企業者の証明書は、常時雇用する従業員数が一般業種で250人以上、卸売業とサービス業で90人以上、小売業で40人以上の場合に要ります。営利法人は、資本金等が基準内であることを示す登記簿謄本などで代えられます。
労働条件通知書(または労働契約書)の写しは、パートタイマーを加入させる場合に、短時間労働者であることの証明として付けます。
申込書はPDFで作れます。表紙の右下に「様式1-○(2026.04)」とある最新様式が望ましいとされています。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 同居の親族だけを雇っている:新規加入助成も月額変更助成も対象外です。第三者の従業員を雇っていることが前提になります。
- 掛金を減らした:月額変更助成の期間(12か月)中に掛金月額を減らすと、助成は打ち切られます。減額できるのは、従業員が同意したときと、厚生労働大臣が継続の著しい困難を認めたときだけです。
- 増額をやり直した:助成期間中にもう一度増額すると、前の月額変更助成は中止され、新しい助成に切り替わります。
- 増額前の掛金が高かった:増額前の掛金月額は、過去に払った中でいちばん高い額で見ます。18,000円を超えていた時期があれば、対象外になることがあります。
ほかにも使える助成がある?
中退共に加入した企業に、独自の補助金を出している自治体があります。国の助成とは別の仕組みなので、お住まいの市区町村や都道府県の案内も見ておくと、負担をさらに減らせる場合があります。
一覧は中退共の公式サイトの「掛金助成自治体等」のページにあります。自治体の補助の条件は、国の助成とは別に自治体ごとに決まっています。
よくある質問
助成はいつから、いつまで受けられますか?
新規加入助成は、加入後4か月目から1年間です。加入した月からではないので、最初の3か月分は助成がありません。月額変更助成は、掛金を増額した月から1年間です。どちらの助成も、掛金から助成額が差し引かれた額が口座から振り替えられます。資金繰りは、助成が始まる前の金額で組んでおくと安全です。
資本金と従業員数は、どちらか一方を満たせばよいですか?
どちらか一方を満たせば、中小企業者に該当します。たとえば製造業などの一般業種で、資本金が4億円でも、常用従業員数が300人以下なら該当します。基準は業種ごとに違い、卸売業とサービス業は従業員100人以下、小売業は50人以下です。自社がどの業種に当たるか迷う場合は、中退共本部に確かめてください。
同居の親族を従業員として加入させられますか?
加入はできます。事業主と生計が同じ同居の親族も、従業員としての実態を確認できる書類を出せば加入できます。申込み後に中退共から確認書(チェックシート)が届くので、労働条件通知書の写し(無いときは労働条件確認書)と、賃金の支払いが分かる書類(賃金台帳など)を添えて返送します。これらが無いと契約は成立しません。ただし、雇っているのが同居の親族だけの事業主は、助成の対象になりません。
パートタイマーも加入できますか?
加入できます。短時間労働者には、一般の従業員より低い特例の掛金月額が用意されています。パートタイマーを加入させる場合は、短時間労働者であることの証明として、労働条件通知書か労働契約書の写しを申込書に添えます。特例掛金(掛金月額4,000円以下)の人には、新規加入助成の上乗せもあります。
掛金を減らすと、助成はどうなりますか?
月額変更助成の期間(増額から12か月)の途中で掛金月額を減らすと、助成は打ち切られます。新規加入助成の掛金は、公式ページに減額の扱いが書かれていませんでした。掛金を下げる予定がある場合は、手続きの前に中退共本部へ電話で確かめるのが確実です。
掛金月額が20,000円以上でも、増額の助成は出ますか?
出ません。月額変更助成の対象は、増額前の掛金月額が18,000円以下の場合です。20,000円以上の掛金月額からの増額は、助成の対象外とされています。また、増額前の掛金月額は、過去に払った中で最も高い額で見ます。以前に高い掛金を払っていた従業員は、今の金額が低くても対象外になることがあります。
助成額に端数が出たらどうなりますか?
助成額の10円未満の端数は切り捨てです。たとえば掛金月額を10,000円から14,000円に増やすと、増額分4,000円の1/3は1,333円ですが、助成は1,330円になります。新規加入助成は掛金月額の1/2が基本なので、掛金月額を10円単位で決めている限り、端数が問題になる場面はあまりありません。
申込みに申込金や手数料はかかりますか?
申込金は要りません。最寄りの金融機関か委託事業主団体の窓口に、必要書類を出すだけです(申込書の記入要領には委託保険会社も提出先に挙がっています)。委託事業主団体は、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、青色申告会などです。ゆうちょ銀行、農協、漁協、ネット銀行、外資系銀行では申込書を受け付けていません。一部の個人向け支店でも扱いがないので、事前に窓口へ確かめてください。
従業員は全員を加入させる必要がありますか?
原則として、事業主が雇う従業員は全員を加入させます(包括加入の原則)。ただし、期間を定めて雇う人、季節的業務の人、試用期間中の人、短時間労働者、休職中の人、近く雇用が終わることが明らかな人、加入に反対の意思を示した人は、この原則から外れます。加入させる人ごとに、本人の同意を取ってから申込書を書きます。
申込みの期限はありますか?
申込みの期限は、確認した公式ページに書かれていませんでした。申込書を窓口に出した日が契約の成立日になり、その手続きはいつでもできます。助成は加入後4か月目から1年間なので、加入が遅れるほど、助成を受け始める時期も遅れます。国の制度の見直しで内容が変わることもあるため、申込みの前に公式ページの最新情報を見ておいてください。
自治体の独自の助成と、国の助成は両方受けられますか?
国の助成とは別に、中退共に加入した企業に独自の補助金を出す自治体があります。両方を受けられるかどうかは、自治体ごとの決まりによります。中退共の公式サイトには「掛金助成自治体等」のページがあるので、まず自社のある自治体が載っているかを見てください。載っていれば、その自治体の窓口に条件を確かめます。
問い合わせ先はどこですか?
一般の中退共は、中小企業退職金共済事業本部(電話 03-6907-1234)です。電話の受付は平日の午前9時から午後5時までです。加入の相談は、無料相談やオンライン説明会も案内されています。建設業・清酒製造業・林業の期間雇用者向けには、別の特定業種の制度(建退共・清退共・林退共)があります。
