産業医や保健師を呼ぶ費用を、自社で申請して補助してもらえるのか。できません。申請者になれるのは商工会・組合などの団体で、個々の中小企業が機構に直接申し込む仕組みはありません。2026年度は予算の上限に達し、2026年7月10日に交付申請の受付が終わりました。
団体が産業医や保健師と契約して傘下の中小企業にサービスを提供すると、その費用の9割(1団体500万円まで、都道府県単位の団体は1,000万円まで)が助成されます。自社が入っている団体がこの助成金を使うかどうかで、負担が変わります。
団体経由産業保健活動推進助成金の要点まとめ
正式名:団体経由産業保健活動推進助成金
だれが
- 申請者
- 事業主団体・共同事業主・労災保険の特別加入団体
- 対象業種
- 業種不問(傘下に中小企業を持つ団体)
- 利用目的
- 産業医・保健師による産業保健サービスの提供
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(団体の傘下の過半数が中小企業)
いくら
- 補助上限額
- 1団体500万円(都道府県事業主団体は1,000万円)
- 補助率
- 助成対象経費の9/10(構成事業主の負担額で変わる)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年6月10日〜2026年7月10日(予算上限により終了)
- 事業の完了
- 2027年1月22日まで(交付決定日から)
- 公式サイト
- 労働者健康安全機構「助成金」
うちの団体は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
団体の種類は、事業協同組合、商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、一般社団・財団法人などが挙がっています。上のほかに、傘下の事業主が10者以上で協定書を結んだ共同事業主と、労災保険の特別加入団体も対象です。
中小企業とは、資本金か労働者数のどちらか一方が基準以内の事業主です。資本金は3億円以下(小売・サービス業は5,000万円以下、卸売業は1億円以下)、労働者数は300人以下(小売業は50人以下、卸売・サービス業は100人以下)です。労働者を雇っていない事業主は、数える母数に入れません。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 個々の会社が単独で申請する
- ✕ 傘下の事業主が存在しない会社
- ✕ 無料の産業保健センターを使う
- ✕ 同じ措置で別の補助金を受ける
3つ目は取り違えやすい線です。地域産業保健センターや産業保健総合支援センターの無料サービスを使った分は、助成の対象になりません。有料で産業医や保健師と契約した費用が対象です。
いくら助成される?
助成額は、助成対象経費に9/10を掛けた額です。上限は1団体で500万円です。都道府県事業主団体は1,000万円まで出ます。構成事業主が50以上で、所在地が複数の市区町村か複数の都道府県にまたがり、主たる地域の外の事業主が半数以上いる団体です。定款や会則などで、複数の市区町村・都道府県の事業主を構成事業主とすることが明らかなことも条件です。サービスごとの上限もあり、超えた分は対象に入りません。申請書に書く助成対象経費は、消費税込みの金額です。
手引に載っている計算例です。ストレスチェックと職場環境改善と事務費用を組み合わせたとき、助成対象経費は179万4,000円になります。
- 助成対象経費179万4,000円 × 9/10 = 161万4,600円
- 職場環境改善を14者に10万円ずつ実施:140万円 → サービスの上限130万円で頭打ち
構成事業主から参加費を集めると、助成額が変わります。助成対象経費が260万円で、構成事業主の負担が200万円のときは、260万円 × 9/10 = 234万円です。負担が270万円に増えると、実費500万円から270万円を引いた230万円が助成額になり、団体の持ち出しは0円になります。
何に使える?
対象にならないものを先に挙げます。
- 健康診断そのものの実施費用
- 団体に属する医師・保健師が実施した活動
- 録画動画を流すだけの研修、リーフレットを配るだけの啓発
- 団体や構成事業主が持つ施設での会議費
- 茶菓代、外国旅費、日当、宿泊費、振込手数料
- 団体と産業保健サービス提供会社の代表者が同じ場合のサービス費用
- 団体内の周知広報の費用(広報誌への掲載など)
- 団体が構成事業主に自ら行うサービス(費用の支払いが生じないため)
対象になるのは、次の8つの産業保健サービスと、事務の一部を外部に任せる費用です。サービスを受けるのは構成事業主に限られ、構成事業主以外に専門家を派遣した費用は対象外です。女性特有の健康課題に関する管理職向け研修や全従業員向け研修も、公式ページで助成対象とされています。
| サービス | 団体の上限(都道府県事業主団体) |
|---|---|
| ストレスチェック(50人未満の事業場) | 60万円(120万円) |
| 医師による健康診断結果の意見聴取 | 60万円(120万円) |
| 医師・保健師による保健指導 | 60万円(120万円) |
| 医師による面接指導 | 60万円(120万円) |
| 健康相談 | 20万円(40万円) |
| 治療と仕事の両立支援 | 130万円(260万円) |
| 職場環境改善 | 130万円(260万円) |
| 健康教育研修・周知啓発 | 20万円(40万円) |
サービスごとに、単価の上限もあります。ストレスチェックの実施は1人200円、集団分析は構成事業主1者3,000円、意見聴取は1人200円、治療と仕事の両立支援は1人3,000円です。事業場を訪問する保健指導・面接指導・健康相談と、職場環境改善は、構成事業主1者あたり10万円まで、研修教育も1者あたり10万円までです。健康相談の窓口を常時開く場合は、1か月10万円までです。事務費用は50万円までで、サービス費用の5分の1も超えられません。経費の対象は、報酬、旅費、会議費、印刷製本費です。
申請の流れ
2026年度の流れです。次回も大きくは変わらない見込みですが、日付は年度ごとに変わります。
- 構成事業主の一覧と見積書をそろえる(団体。サービスごとの単価と人数が分かる内訳で)
- 交付申請を出す(団体→労働者健康安全機構。郵送・jGrants・Googleフォームのいずれか。審査は原則1か月以内)
- 交付決定を受ける(機構→団体。この日より前に提供したサービスは対象外)
- サービスを提供する(団体。2027年1月22日まで)
- 支給申請を出す(団体→機構。終了の翌日から30日以内か2027年1月29日のいずれか早い日まで)
- 支給決定を受けて振り込まれる(機構→団体)
jGrantsで申請するにはgBizID(国の電子申請に共通のID)が要ります。取得に1〜2週間かかります。
支給申請では、次の書類を出します。支給申請書(様式第12号)と続紙、事業実施結果報告書(様式第13号)、産業保健サービス提供者との契約書の写し、資格証の写し、領収書か振込記録の写し、労働保険概算・確定保険料申告書等の写しです。契約書は金額によらず必要で、注文書や申込書では認められません。結果報告書には、サービス内容の効果検証を書くため、構成事業主にアンケートを取っておきます。サービスごとに、実施報告書、満足度調査、研修の資料や写真なども求められます。
必要な書類
準備できた 0 / 10
事務費用の見積書は、外部機関に事務を任せるときだけ出します。事務を頼める相手は、サービス提供会社以外で、団体やサービス提供会社と代表者が同じ会社や、同じ住所の会社は対象外です。見積書は「一式」ではなく、内容・数量・単価・金額が書かれたものにします。活動が2年に満たない団体は、決算書が直近1年分で足ります。交付申請書の続紙(支給要件確認書)には、団体の活動内容、主たる労働保険番号と法人番号、構成事業主の数、中小企業の数、振込先を書きます。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定前のサービス:契約は交付決定の前でもよいのですが、助成されるのは決定日から2027年1月22日までに提供した分だけです。
- 構成事業主による支払い:構成事業主が代わりに支払う流れは認められません。構成事業主から集めた費用で団体が支払い、助成金を受けたあとに構成事業主へ渡す流れも同じです。定款に定めた会費を原資にするのは構いません。支払いは団体が直接行い、原則は振込です。
- 計画と違う実施:計画の一部をやらなかったときは、支払った額に関わらず実施した分で減額されます。内容を変えるときは変更申請が必要です。
- 録画だけの研修:研修は質疑応答のある双方向の形にします。録画の配信だけでは対象になりません。
- 労働保険料の滞納など:前年度より前の保険年度に労働保険料の滞納があると、交付されません。過去3年以内の不正受給も同じです。そのほか、過去1年の間に労働関係法令違反で送検された場合や、企業名の公表を受けた場合、倒産している場合、同じ措置で国や自治体の別の補助金を受けている場合も交付されません。
- 年度内の再申請:申請は1団体につき年度ごとに1回限りです。同じ人が代表の団体や、同じ住所の団体が複数申請しても、受理されるのは最初の1団体だけです。
今年度の変更点と併用
2026年度は、手引と支給要領を6月10日に公表して申請を始めました。予算の上限に達したため、7月10日に交付申請が終わっています。手引の上の締切は11月30日でしたが、申請は先着順で、予算がなくなった時点で打ち切られます。
受付が終わるときは、予算上限に達した日の前日までに機構に届いたものだけが受理されます。達した日と翌日以降に届いた申請は受け付けられません。予算の執行状況は、機構のウェブサイトで毎週公表されます。公表された申請状況では、6月10日の受付開始から7月10日までの累計は26件でした。
同じ年度に、同じ措置内容で国や地方公共団体の別の補助金を受けている場合は、交付されません。2027年度に実施されるかどうかは、機構の案内に記載がありません。例年の動きを機構の産業保健業務指導課(0570-783046)に確かめるのが確実です。
よくある質問
中小企業が自社だけで申請できますか?
できません。申請者は、事業主団体・共同事業主・労災保険の特別加入団体です。個々の中小企業が機構に申し込むことはできません。自社が加盟している商工会や組合がこの助成金を使っていれば、産業医の面談や研修を安く受けられる可能性があります。加盟団体に、産業保健サービスを助成金で提供する予定があるか確かめるところから始めてください。
株式会社や社会福祉法人は申請団体になれますか?
傘下の構成事業主がいなければ、なれません。この助成金は、事業主団体が傘下の構成事業主にサービスを提供する場合の費用を助成します。法人の種類で決まるのではなく、構成事業主が存在するかどうかで決まります。構成事業主がいない株式会社や社会福祉法人、学校法人は、事業主団体等に当たりません。申請団体の要件は、労働者を雇う傘下の事業主が3者以上いることと、活動実績が1年以上あることです。
傘下に大企業が混ざっていても申請できますか?
申請できます。構成事業主のうち、中小企業事業主が全体の2分の1を超えていれば要件を満たします。ただし、中小企業以外の構成事業主だけに行ったサービスの費用は助成の対象外です。親会社の出資は考慮せず、子会社の資本金だけで中小企業かどうかを判断します。労働者を雇っていない事業主は、数える母数に入れません。
助成額はいくらまでですか?
1団体で500万円までです。条件を満たす都道府県事業主団体は1,000万円までです。助成対象経費の9/10が助成額になり、サービスごとの上限もあります。たとえば健康相談は20万円、職場環境改善は130万円が団体の上限です。構成事業主から参加費を集めると、助成額が下がる場合があります。
構成事業主から参加費を取ってもよいですか?
取ることはできます。ただし負担額の合計で助成額の計算が変わります。助成対象経費の9/10が、実費から構成事業主の負担を引いた額以下なら、9/10がそのまま助成額です。超える場合は、実費から負担額を引いた額が助成額になります。負担を重くしすぎると、助成を受ける意味が薄れるので、事前に計算しておきます。
無料の産業保健センターを使った分は対象になりますか?
対象になりません。地域産業保健センターや産業保健総合支援センターなど、無料のサービスは助成の対象外です。この助成金は、有料の産業医や保健師、産業保健サービスを提供する事業者と契約した費用に対して出ます。契約した相手が有資格者であることも条件で、サービスによっては医師や保健師の関与が必要です。
録画動画の研修は対象になりますか?
録画の配信だけのオンデマンド研修は対象になりません。研修の一部に録画を使うのは構いませんが、視聴のあとで受講者の質問に答えるなど、双方向の形にする必要があります。オンラインで実施することは可能です。リーフレットを配るだけの啓発も対象外で、支給申請のときに資料と研修の様子が分かる写真を出します。
交付決定の前に契約してもよいですか?
契約すること自体は制限されていません。ただし助成されるのは、交付決定日から事業実施予定期間の終了日までに提供したサービスの費用だけです。2026年度は、期間の終わりが2027年1月22日でした。決定前に始めたサービスの費用は、契約済みでも対象になりません。見積書に決定前の日付のサービスが入っていないか確かめます。
助成金はいつ振り込まれますか?
サービスを提供したあとの支給申請で決まります。交付決定のあとにサービスを実施し、実施結果報告書などを添えて支給申請を出します。機構が審査して支給を決定し、そのあとで団体の口座に振り込まれます。機構のリーフレットには、支給は2027年3月31日までとあります。支給申請は、助成対象期間の終了の翌日から30日以内か、2027年1月29日のいずれか早い日までです。
2027年度も申請できますか?
実施されるかどうかは、機構の案内に記載がありません。2026年度は6月10日に申請を始めて、7月10日に予算の上限で終わりました。申請が先着順で、予算がなくなると締切前に終わる制度です。次の募集に備えるなら、構成事業主の一覧、見積書、直近2年分の決算書を前もって用意しておきます。公表のタイミングは、機構に確認してください。
