時間外労働の上限を下げたり、年次有給休暇を取りやすい仕組みに変えたりした中小企業に、かかった経費の3/4を国が助成します。この助成金は国の予算に限りがあり、交付申請の期限である11月30日より前に受付が終わることがあります。
上限額は、選ぶ成果目標と賃上げ加算の組み合わせで変わります。まず自社が対象かを確かめ、そのあとで金額を見てください。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の要点まとめ
正式名:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(労災保険の適用を受ける中小企業事業主)
- 対象業種
- 全業種(業種ごとに資本金・従業員数の基準あり)
- 利用目的
- 時間外労働の削減、年休・特別休暇の導入、労務管理の設備・研修
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 業種ごとに基準あり(小売50人以下、サービス100人以下など)
いくら
- 補助上限額
- 成果目標ごとの上限+加算額(賃上げ加算は30人超で最大360万円)
- 補助率
- 3/4(30人以下で条件を満たすと4/5)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年4月13日〜2026年11月30日(予算で早期終了あり)
- 事業の完了
- 交付決定から2027年1月31日まで
うちの会社は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると、対象外か、その成果目標は選べません。
- ✕ 過去に同じ成果目標で申請した
- ✕ 過去1年に労働法令違反が明らか
- ✕ 交付決定の前に経費を払った
「労働法令違反が明らか」とは、送検された場合や、複数回の是正勧告で企業名を公表された場合などです。同じ成果目標の申請は、他のコースで出したものも含みます。
資本金か従業員数の基準は、どちらか一方を満たせば足ります。主たる事業ごとの基準は次のとおりです。
| 主たる事業 | 資本金・出資の総額 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院 | 基準なし | 300人以下 |
| その他の事業 | 3億円以下 | 300人以下 |
年休管理簿は、年次有給休暇の付与実績にかかわらず全ての事業場で必要です。常時10人以上の労働者がいる事業場は、年休の時季指定に関する定めのある就業規則を、交付申請の前に労働基準監督署へ届け出ておきます。
成果目標を1つ以上選ぶ前提で、事業実施計画に労働時間等設定改善法にもとづく措置を入れる必要もあります。具体的には、労使の話し合いの機会の整備、苦情を受ける担当者の配置、労働者への計画の周知の3つです。
成果目標はどれを選ぶ?
成果目標は3種類あり、1つ以上を選んで達成を目指します。
- 時間外・休日労働の上限設定:36協定(時間外・休日労働の上限を労使で決めて労働基準監督署に届ける協定)の上限を月60時間以下、または月60時間超80時間以下に下げて届け出ます。
- 年次有給休暇の計画的付与:会社が年休の取得日をあらかじめ決める仕組みを、新しく入れます。
- 時間単位の年休と特別休暇:時間単位で取れる年休と、特別休暇を1種類以上、新しく入れます。
1つ目を選ぶには、令和8年4月1日以前の2年間に、月45時間を超える時間外労働が少なくとも1か月あったことが条件です。1年単位の変形労働時間制の労働者は月42時間になります。交付申請の前に、月60時間(月80時間以下に下げるなら月80時間)を超えて協定した36協定を届け出ていることも要ります。
2つ目と3つ目は、同じ仕組みを既に入れている会社は選べません。成果目標を3つとも選ぶと、成果目標の上限額は最大で200万円(150万円+25万円+25万円)です。計画的付与の労使協定が既にある会社や、年休の付与日数が5日以下の労働者しかいない会社は、2つ目が選べません。
いくらもらえる?
助成額は、次の2つのうち低いほうです。1,000円未満は切り捨てます。
- 選んだ成果目標の上限額と加算額の合計
- 対象経費の合計 × 補助率
成果目標ごとの上限額は次のとおりです。時間外・休日労働の上限設定は、事業の前後で36協定の上限をどれだけ下げたかで決まります。
| 36協定の上限(交付申請日に有効なもの) | 事業後に月60時間以下 | 事業後に月60時間超80時間以下 |
|---|---|---|
| 月60時間超80時間以下 | 100万円 | ― |
| 月80時間超 | 150万円 | 50万円 |
年次有給休暇の計画的付与と、時間単位の年休・特別休暇は、それぞれ上限25万円です。
補助率は3/4です。常時使用する労働者が30人以下で、労務管理用ソフトや設備などの導入・更新を含み、費用の合計が30万円を超えるときは4/5になります。
- 年休の計画的付与を入れて、研修や専門家への相談に40万円かけた:40万円 × 3/4 = 30万円 → 上限の25万円
- 時間外労働の上限を月80時間超から月60時間以下に下げ、勤怠管理ソフトと打刻機器の導入に120万円かかった:120万円 × 3/4 = 90万円(上限150万円に届かない)
- 従業員20人の会社が、年休の計画的付与と時間単位年休の2つを選び、勤怠管理ソフトなどに36万円かけた:36万円 × 4/5 = 28.8万円(上限50万円に届かない)
賃上げ加算と割増賃金率の加算
成果目標に、賃金を上げる取組を足すこともできます。賃上げの対象にできる労働者は30人までで、引上げ率は3%以上・5%以上・7%以上から選びます。常時使用する労働者が30人を超える会社の加算額は次のとおりです。
| 引上げ人数 | 3%以上 | 5%以上 | 7%以上 |
|---|---|---|---|
| 1〜3人 | 6万円 | 24万円 | 36万円 |
| 4〜6人 | 12万円 | 48万円 | 72万円 |
| 7〜10人 | 20万円 | 80万円 | 120万円 |
| 11〜30人 | 1人あたり2万円(上限60万円) | 1人あたり8万円(上限240万円) | 1人あたり12万円(上限360万円) |
常時使用する労働者が10人以上30人以下の会社は、5%以上と7%以上の加算が2倍になります。10人未満の会社は、同じ5%以上と7%以上が2.5倍になります(5%以上で1〜3人なら60万円、7%以上なら90万円)。10人未満は、対象にできる人数が1〜9人の表です。
賃上げの対象にできるのは、雇い入れた日の翌日から交付申請日までが3か月を超える労働者です。賃上げ加算を足すと、次の2つが追加で必要です。
- 就業規則などを変更して施行し、引上げ後の賃金を1か月分以上支払う
- 引上げ後6か月分の賃金の支払状況を、30日以内に労働局へ報告する
賃金を引き下げたり、対象の事業場で解雇や退職勧奨があったりすると、賃上げ加算の成果目標は達成していない扱いになります。
割増賃金率を上げる加算もあります。月60時間以内の時間外労働の割増賃金率を5%以上引き上げると25万円、月45時間超60時間以内の割増賃金率を5割以上にして、1人あたり10時間以上の時間外労働を減らすと75万円です。両方なら100万円が加わります。75万円の加算は、令和8年4月1日以前の2年間に月45時間を超える時間外労働をした労働者が1人以上いることも条件です。
何に使える?
対象にならないものを先に挙げます。
- 乗用自動車、パソコン、タブレット、スマートフォンの導入・更新(原則)
- 法令で義務づけられている措置に係る内容
- 単なる経費削減が目的の内容
- 労働者の不快感の軽減や、作業の快適化だけが目的の内容
- 社会保険労務士事務所など、自社の専門知識で取り組める内容
- 日本国外で実施する内容
- 交付決定の前や、事業実施予定期間の外に行う内容
対象になる改善事業は次のとおりです。いずれか1つ以上を実施します。
- 労務管理担当者への研修、労働者への研修、周知・啓発(勤務間インターバル制度や業務研修を含む)
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定などの整備
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
- 上の2つに当たらない、労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
助成の対象になる経費は、交付決定日から支給申請日までに実際に払った費用です。謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、広告宣伝費、機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費、備品費、委託費が挙げられています。
改善事業の種類によっては、対象経費に上限があります。
- 研修(労務管理担当者向けと労働者向けの合計):30万円まで(社労士などの提出代行者・事務代理者が受託するときは10万円まで)
- 周知・啓発、外部専門家のコンサルティング、就業規則・労使協定の整備(36協定を除く)、人材確保の取組:それぞれ合計10万円まで
- 36協定の整備、就業規則・労使協定の届出:それぞれ合計1万円まで
設備・機器の導入には、この表に上限が載っていません。
オフィスのエアコン更新、スポットクーラー、机や椅子の増設、LED電球への交換は、対象外の例として挙げられています。パソコンも、POSや会計給与のような特定業務専用のシステムを動かすために導入すると明らかなときは、対象経費に含められます。
申請の流れ
- 成果目標と改善事業を決める(事業者。事業実施計画も作る)
- 交付申請書を労働局に出す(事業者→都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)。2026年11月30日午後5時まで。Jグランツでも出せます)
- 交付決定を待つ(労働局→事業者。申請から原則1か月以内に通知されます)
- 改善事業を実施する(事業者。交付決定の日から2027年1月31日まで)
- 支給申請をする(事業者→労働局。事業実施予定期間の終わりから30日後か2027年2月5日の、早いほうまで)
支給申請のあと、労働局が内容を審査して交付額を確定します。確定までは原則1か月以内です。契約を結ぶときは、原則として一般の競争に付す必要があります。
必要な書類
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上の7行は交付申請のとき、残りは支給申請のときに出します。36協定・賃金台帳などは、改善事業の前の時間外・休日労働の時間数が分かる書類です。タイムカードや日報でも構いません。賃金台帳の写しは、賃上げ加算か割増賃金率の加算を使うときに、交付申請日の前月1か月分を添えます。
見積書は、複数の事業者から取った2社以上のものが原則です。同じ企業グループ内の2社では、相見積りになりません。
支給申請では、話し合いの参加者名簿と議事録、担当者や事業実施計画を周知した文書の写し、導入した機器の写真なども求められます。就業規則の申立書は、常時10人未満で、就業規則を労働基準監督署に届け出ていない事業場だけが出します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 予算がなくなった:全国の交付申請額が国の予算を超えるおそれがあるとき、交付決定は行われません。期限の11月30日が予告なく変わることもあります。
- 交付決定の前に払った:助成の対象になるのは、交付決定日から支給申請日までに実際に払った費用です。先に契約して払うと対象外です。
- 成果目標を達成できなかった:助成額は成果目標の達成状況に応じて決まります。計画どおりに届出や制度導入が終わらないと、額が下がるか出ません。
- ほかの補助金と重なった:同じ年度に、同じ改善事業や成果目標で国や自治体から別の補助金を受けていると、交付決定は行われません。
- 法令違反や保険料の滞納がある:過去1年に労働基準関係法令の違反が明らかな場合や、労働保険料の滞納が続いている場合も対象外です。
- 期間内に終わらなかった:改善事業を行えるのは、交付決定の日から1月31日までです。遅れそうなときは、事前に労働局へ届け出ます。
併用・消費税の扱い
同じ年度に同じ会社が受けられる交付決定は1回だけです。不交付になった場合や、受けた決定を取り消した場合も同じ扱いになります。
消費税は、交付申請の時点で仕入控除税額(仕入れにかかった消費税のうち、納める消費税から差し引ける部分)が分かるなら、その分を引いて申請します。分からないときは、あとで確定した時点で助成金を返します。
よくある質問
中小企業事業主かどうかは、何で決まりますか?
主たる事業ごとに決まる、資本金・出資の総額か、常時使用する労働者数のどちらかが基準以内なら該当します。たとえば小売業は5,000万円以下か50人以下、サービス業は5,000万円以下か100人以下、卸売業は1億円以下か100人以下です。両方満たす必要はありません。さらに労災保険の適用事業主であることも条件になります。
成果目標は複数選べますか?
選べます。1つ以上選ぶ仕組みで、選んだ成果目標の上限額と、賃上げ加算などの加算額を合計したものが助成額の上限になります。ただし、既に同じ制度を入れている場合や、過去に同じ成果目標で申請している場合は選べません。助成額は、この上限と、対象経費に補助率を掛けた額のうち低いほうです。
受付はいつまでですか?
交付申請の期限は2026年11月30日の午後5時です。ただし国の予算に限りがあるため、期限の前に予告なく受付が終わることがあります。申請してから交付決定まで原則1か月かかり、交付決定の前には工事や購入を始められません。実施を決めたら、早めに労働局へ申請書を出してください。
交付決定の前に買った機器は対象になりますか?
対象になりません。助成の対象になるのは、交付決定日から支給申請日までに実際に払った費用です。見積もりを取るだけなら問題ありませんが、契約して代金を払うのは交付決定のあとにしてください。業者の納期が長い機器は、交付決定の連絡が来る時期を逆算して、発注のタイミングを決めておくと安心です。
パソコンやタブレットは対象ですか?
原則として対象になりません。乗用自動車、パソコン、タブレット、スマートフォンの導入・更新は、対象外と案内されています。POSや会計給与のような特定業務専用のシステムを動かすために導入すると明らかなパソコンは、例外として含められます。勤怠管理などの労務管理用ソフトウェアや、労務管理用機器、デジタル式運行記録計は対象になる改善事業です。機器の種類で迷うときは、労働局か働き方改革推進支援センターに聞いてください。
賃上げ加算は従業員30人を超える会社だけですか?
30人以下の会社も使えます。30人を超える会社の表のほかに、10人以上30人以下の会社には5%以上と7%以上の加算が2倍になる表が、10人未満の会社には別の表が用意されています。賃上げ対象にできる労働者は30人までです。就業規則を変更して施行し、引上げ後の賃金を1か月分以上支払うことが条件になります。
補助率が4/5になるのはどんなときですか?
常時使用する労働者が30人以下で、労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計、労働能率の増進に資する設備・機器のいずれかを導入し、改善事業の費用の合計が30万円を超えるときです。それ以外は3/4です。たとえば36万円かかれば、4/5で28.8万円、3/4なら27万円と差が出ます。
どこに申請しますか?
会社の所在地を管轄する、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。電子申請のJグランツも使えます。申請書の書き方で迷ったときは、都道府県ごとに設置されている働き方改革推進支援センターが相談を受けています。申請書は、社会保険労務士などの代理人が出すこともできますが、決定の通知は会社に届きます。
支給申請はいつまでにしますか?
事業実施予定期間の終わりから30日後の日か、交付決定を受けた年度の2月5日のうち、早いほうまでです。令和8年度なら2027年2月5日が最後の日になります。支給申請書と事業実施結果報告書を、同時に労働局へ出します。提出後、原則1か月以内に交付額が確定します。
過去に受給した会社は、また使えますか?
成果目標が同じ交付申請は、過去の年度に出したものも含めて交付決定されません。別の成果目標を選べば申請できます。時間外・休日労働の上限設定だけは、一定の条件を満たせば複数年度にわたって選べるとされています。自社の場合に当たるかは、労働局の窓口で確かめるのが確実です。
相談先はどこですか?
申請窓口は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。都道府県ごとにある働き方改革推進支援センターでも、申請前の相談を受けています。電話で聞く前に、厚生労働省の案内ページにある交付要綱、支給要領、申請マニュアルを手元に置いておくと、確認したい箇所を伝えやすくなります。
