大学や研究機関の技術を、試作から量産の実証まで進めたいスタートアップに、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が費用の2/3を補助する制度です。量産化実証は1/2になる場合があります。補助事業で、委託研究ではありません。
第10回の提案受付は2026年9月8日に終わりました。次の第11回は2027年4月上旬の予定です。応募の入口は、VC等から出資を受けているか、受ける見込みであることです。STSとPCAでは、自己負担になる1/3の分を出資や融資で確保できているかも問われます。
ディープテック・スタートアップ支援事業の要点まとめ
正式名:ディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)
だれが
- 申請者
- 日本の未上場の中小企業(ディープテック・スタートアップ)
- 対象業種
- 経産省所管の鉱工業技術(ロボティクス・AI・素材・医療機器など)
- 利用目的
- 実用化の研究開発、量産化実証、海外技術実証
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 製造業等は資本金3億円以下か従業員300人以下
いくら
- 補助上限額
- 上限30億円(複数のフェーズを通じた累計)
- 補助率
- 2/3(量産化実証は1/2の場合あり)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 第11回は2027年4月上旬の予定(第10回は2026年9月8日に終了)
- 事業の完了
- 最長6年(各フェーズは最長4年)
うちの会社は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ すでに上場している
- ✕ 技術開発の要素が少ない事業
- ✕ 医薬品・再生医療等製品の開発
設立年数には例外があります。初めてVC等から資金を調達して5年以内(量産化実証は10年以内)なら、設立から10年を超えていても応募できます。VC等とは、ベンチャーキャピタルやシードアクセラレータ、スタートアップへの投資機能を持つ金融機関などの法人です。事業会社が持つ投資部門のCVCも、出資元として数えます。
中小企業の基準は、主たる業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっています。どちらか一方を満たせば足ります。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業(上の2業種を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
基準を満たしても、みなし大企業は対象外です。大企業が発行済株式の1/2以上を持つ会社、複数の大企業が2/3以上を持つ会社、役員の1/2以上を大企業の役員や職員が占める会社を指します。直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える会社と、大企業の持分法適用会社も対象外です。
出資の要件は、VC等と事業会社で扱いが違います。事業会社などから出資を受けるときは、その持株比率が50%未満で、連結の対象でないことが要ります。VC等の出資には、この持株比率の制限はかかりません。
技術の分野は、日本成長戦略会議が示した17の戦略分野に当たる、経済産業省所管の鉱工業技術です。原子力は除きます。医薬品や再生医療等製品の開発は原則対象外ですが、創薬の支援技術や医療機器は対象です。スマートフォンのアプリのコーディングのように技術開発の要素が少ないものと、既存製品を買って使うだけの事業は対象外です。
いくら戻ってくる?
補助率は、フェーズごとに次のとおりです。
| フェーズ | 上限額 | 補助率 | 応募の前提 |
|---|---|---|---|
| STS(実用化研究開発の前期) | 3億円(5億円まで引き上げ可) | 2/3以内 | 補助対象費用の1/3以上の出資。VC等かCVCの出資を含む |
| PCA(実用化研究開発の後期) | 5億円(10億円まで引き上げ可) | 2/3以内 | 補助対象費用の1/3以上の出資か融資。融資のみは不可 |
| DMP(量産化実証) | 25億円 | 2/3以内か1/2以内 | 出資額の要件なし。連携先との覚書が必須 |
STSとPCAの上限を引き上げるには、事業会社との連携先の関心表明書か、海外技術実証の計画書を出します。両方を出しても構いません。DMPの補助率は、補助対象費用の1/6以上の出資を所定の期間内に得たと示せば2/3以内です。示さなければ1/2以内になります。
- 補助対象費用が3億円:3億円 × 2/3 = 2億円。残る1億円が自己負担で、1/3以上の出資か融資を用意する
- 補助対象費用が6億円(STS):6億円 × 2/3 = 4億円 → 上限の3億円。連携先の関心表明書があれば5億円まで
- 補助対象費用が30億円(DMP):出資を示すと20億円、示さないと15億円(30億円 × 1/2)
- STSからPCA、DMPへ進む場合:通算で6年以内、補助金の累計は30億円まで
上限30億円は、ステージゲート審査を通ってフェーズをまたいだ場合の累計です。1回の採択で受け取れる額ではありません。ステージゲート審査とは、資金調達のタイミングで外部の有識者が、事業の継続や追加の支援を審査する仕組みです。
補助金は、実際に使った費用に対して払われます。審査の結果や予算によっては、提案額から減らして交付決定されます。
何に使える?
対象にならないもの
- 汎用品や、この事業以外にも使う機械装置
- 消費税と、運転資金
- 交付決定の前に使った費用
- 研究開発の要素がある業務の外注
- 量産化実証のために国外に建てる建物や、置く機械装置
- 設備を入手して置くだけで、研究開発の成果が出ない経費
対象になるもの
- 機械装置等費:土木・建築工事費、機械装置の製作・購入・借用費、保守・改造修理費
- 労務費:研究員費、補助員費(人件費単価は健保等級に基づく)
- その他経費:消耗品費、旅費、外注費、諸経費
- 委託・共同研究費:大学や事業会社に出す研究費
- 特許出願の費用:補助期間内に出願が終わったもの
委託・共同研究費は、補助対象費用の総額の50%未満に収めます。大学などの間接経費は、直接経費の30%が上限です。有償でサンプルを出荷した場合は、その収入額を補助対象費用から減らします。海外の研究実施場所での支出は、原則として補助対象費用の総額の1/2までです。
量産化実証(DMP)では、量産技術の研究開発に加え、生産設備や検査設備の設計・製作・購入・導入・運用の費用が対象です。設置する建屋の設計・工事費も含まれます。
申請の流れ
- 事前相談をする(事業者→DTSU事務局。任意で、提案受付期間の前日まで)
- GビズIDを取る(事業者。Jグランツに必要で、取得に2週間以上かかることがある)
- 出資や融資を確保する(事業者→VC等・金融機関。STSとPCAは所定の期間内に補助対象費用の1/3以上)
- 提案書をJグランツで出す(事業者→NEDO。受付期間内だけで、持参・郵送・メールは不可)
- 審査を受ける(NEDO。書面審査のあと、必要に応じて経営者面談とプレゼン審査)
- 採択のあと、交付申請をする(事業者→NEDO。交付決定の通知を受けてから事業を始める)
- 事業を進める(事業者。年1回程度のモニタリングを受ける)
第10回の日程は、二次審査が2026年11月30日〜12月18日、採択が2027年1月中旬、交付決定が2027年3月上旬以降の予定です。採択は交付決定ではありません。事業開始日は交付決定通知書に書かれ、それ以前の経費は計上できません。
所定の期間とは、提案締切日の6か月前から採択後にNEDOが指定する日までを基準にした期間です。回ごとの日程一覧で決まります。
提案は1回の受付で、1社が1つのフェーズにだけ出せます。2社以上の連名では出せません。提案書は日本語で書きます。
必要な書類
準備できた 0 / 8
出資が済んでいる場合は、出資等報告書に投資契約書の写しと入金の通帳の写しを添えます。投資契約書の資金使途は、提案する事業と合っている必要があります。まだ済んでいない場合は、意向確認書を出し、採択後の指定日までに出資を実行します。
パートナーVCとは、出資のうち最大の額か持株比率を持ち、経営や資金調達を支援するVC等またはCVCです。ハンズオン計画書は、その候補が作ります。STSではDTSU事業に限り、パートナーVCがいることが必須です。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 出資が実行されない:所定の期間内に出資や融資が着金しないと、採択が取り消されることがあります。
- 交付決定の前に使った費用:出資を受けた後でも、交付決定日より前の費用は補助の対象外です。
- 要件から外れた:上場する、大企業の持分法適用会社になる、中小企業の基準を超えると、事業が終わることがあります。
- 補助期間中に販売を始めた:研究開発が終わったとみなされ、事業が終わることがあります。顧客の意見を研究開発に生かすための有償サンプルは認められることがあるので、始める前にNEDOへ相談します。
- ステージゲート審査を通らない:結果によっては、支援が打ち切られます。
- 不正や不合理な重複:同じ内容で別の研究費を受けていると、不採択、採択の取り消し、減額のどれかになります。不正があれば返還と応募の制限です。
併用・税金・次の募集で押さえること
- GX事業との関係:GX事業は、CO2の排出削減に効く分野に絞った姉妹の制度です。1回の提案受付で、DTSUかGXのどちらか一方にしか応募できません。DTSUの支援中はGXと同時に受けられません。
- NEP事業との関係:ディープテック分野の人材発掘・起業家育成事業(NEP)を実施中の会社は、DTSUの採択から1か月以内にNEPを終えます。
- 他の補助金との併用:申請はできます。ただし同じ目的と内容で複数の補助金は受けられず、NEDOが重なりを確かめます。
- 圧縮記帳:補助金で取得した固定資産には、圧縮記帳(補助金の分だけ帳簿価額を減らして課税を抑える仕組み)を使えます。細かい扱いは税理士に確かめます。
- 収益納付:補助期間の終了年度の翌年度から5年間、事業化状況報告書を出します。相当の収益が出たと認められると、交付額を上限に納付します。
- 財産の処分:取得した機械装置などを処分制限期間内に処分するときは、NEDOの承認が要ります。
- 国際共同研究開発:海外の事業者との共同研究は、別の公募です。上限は1件1億円、補助率は2/3以内で、日程はNEDOの公募一覧で確かめます。
よくある質問
次の公募はいつですか?
NEDOの日程一覧(2026年7月版)では、第11回の提案受付が2027年4月上旬の予定です。第12回は2027年10月上旬から中旬の予定です。公募回数とスケジュールは変わる可能性があると注記されています。新規の公募と採択は2027年度まで行う予定で、公募は通年で年4回程度の受付を目指すと書かれています。日程は、NEDOの公募ページに載る日程一覧で確かめます。
補助金ですか、委託ですか。返す必要はありますか?
NEDOの補助事業で、委託研究ではありません。公募要領が返還を明記しているのは、不正があった場合です。事業化で相当の収益が出たと認められたときは、交付額を上限に納付する場合があります。補助期間の終了年度の翌年度から5年間、毎年、事業化状況報告書も出します。補助対象の費用の中に、大学や事業会社に出す委託・共同研究費がありますが、これは補助事業の費目の一つです。
町工場の設備投資にも使えますか?
使えません。対象は、技術の確立に長い研究開発と大きな資金が要る、ディープテック・スタートアップです。既存製品を買って使うだけの事業や、装置を入れて置くだけで研究開発の成果が出ない経費は対象外になります。量産化実証(DMP)でも、量産技術の研究開発や実証の要素が要ります。環境を整えるだけの提案は難しいと、NEDOのFAQは答えています。設備更新が目的なら、別の補助金を探すほうが合います。
VCの出資がまだない会社でも応募できますか?
応募できる場合があります。STSとPCAは、出資意向確認書を提案書に付ければ、採択後の指定日までに出資を実行する形で応募できます。意向確認書の発行はVC等の意思によるため、出資の話が固まってからの応募になります。DMPは出資額の要件がありませんが、採択後の指定日までにVC等かCVCが株主に加わっている必要があります。
どのフェーズで応募するか、どう決めますか?
自社の事業の段階に合うフェーズを1つ選びます。売上高や調達額のような定量的な基準はありません。公募要領では、プロトタイプづくりの段階がSTS、主要市場の獲得を目指す段階がPCA、量産体制の検証が要る段階がDMPです。審査は応募したフェーズで行われ、別のフェーズに振り替えて採択されることはありません。迷うときは事前相談で確かめられます。
上限30億円は、誰でも受け取れますか?
受け取れません。30億円は、ステージゲート審査を通ってSTS、PCA、DMPとフェーズをまたいだ場合の累計です。通算の事業期間は6年以内です。1回の採択で受け取れる額は、STSで3億円か5億円、PCAで5億円か10億円、DMPで25億円までです。審査の結果や予算によっては、提案額から減らして交付決定されることもあります。
エンジェル投資家やクラウドファンディングの出資は数えられますか?
数えられません。株式投資型クラウドファンディングとエンジェル投資家の出資は、出資の要件に加算できないと明記されています。事業会社による貸付や現物出資も、資金調達に含まれません。数えられるのは、VC等、CVC、事業会社の出資と、PCAでは金融機関の融資です。海外の事業会社の出資は加算できます。融資だけでPCAに応募することはできません。
設立から10年を超えていますが応募できますか?
応募できる場合があります。設立年数は、STSとPCAで10年以内、DMPで15年以内が原則です。例外として、初めてVC等から資金を調達して5年以内(DMPは10年以内)なら応募できます。STSとPCAには、応募に必要な出資や融資の1/2以上がVC等の出資、という例外もあります。J-Startupに選ばれていても、年数の要件そのものは変わりません。
不採択のあとに再応募できますか?
再応募はできます。前回からの進捗を提案内容に反映する必要があります。再応募でも応募要件を改めて満たす必要があるので、STSとPCAでは出資の要件を確かめます。申請内容を次の回へ引き継ぐことはできません。不採択の場合は理由を付けた通知が届き、希望すればオンラインでのフィードバックも受けられます。希望はDTSU事務局のメールに連絡します。
SaaSやアプリの開発は対象ですか?
対象になりえます。SaaSやアプリの開発も、技術開発の要素があれば対象です。ただしスマートフォンのアプリのコーディングのように技術開発の要素が少ないものは、対象外です。ITサービス向けのソフトウェア開発も、対象外になる場合があります。実用化とは、製品を市場に出すために必要な開発を指します。個別の事業が当たるかどうかは、事前相談で確かめます。
採択のあとに上場したらどうなりますか?
事業が終わる可能性があります。この制度は未上場の企業が対象なので、上場した時点で応募要件を満たさなくなります。海外の市場に上場している企業は、最初から応募できません。大企業の持分法適用会社になった場合や、中小企業の基準を超えた場合も同じです。補助事業の途中でこうした変化が見込まれるときは、早めにNEDOへ相談します。
問い合わせ先はどこですか?
NEDOスタートアップ支援部のDTSU事務局です。メールはdtsu@nedo.go.jpで、原則としてメールで問い合わせます。審査の経過や採否にかかわる質問には答えてもらえません。事前相談は、提案書の受付期間の前日までに、相談用シートに内容と希望日時を書いて送ります。1者30分以内で、原則オンラインです。期限の直前は相談が混み合うため、早めに申し込みます。
